satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

気ままな神さま達の日常記録 vol.16

こちらは『学びや! レイディアント学園』の番外編でございます。スピンオフというか、なんというか。全く本編に関係のない皆々様に焦点を当てたお話となっています。
前回、お料理大会前まできました。
そして、関係ないけど、しれっとこれ専用のタグも作りました。ここまでこの企画が続くと思わなくて、今まで作ってなかったのです(笑)
過去話はタグから追えるのでぜひぜひ。



☆さくっと登場人物紹介☆
アルフ:転生の神様であり、従者ミィの旦那様。普段からのほほんとしたお方。

ミィ:アルフに仕える蒼い目をした白猫であり、アルフの奥様。念力である程度のことはできちゃう。

フォース:制御者の一人。普段はステラの制御者として、あれこれ世話を焼いているし、天界でも誰かの世話をしてる。

鈴流:フォースの持つリボンの付喪神であり、フォースの奥様。好奇心旺盛であり、やると決めたらやる。

エレル:制御者の一人。真っ直ぐで素直な猫耳少女(の見た目をしてるだけで、実年齢は少女じゃない)。多分、今回の一番の被害者。





★ドキドキ!? 天界クッキング★
鈴流、ミィ、エルの二人と一匹は、天界にあるキッチンの一つに入り、料理をしている。
そんな中、おれはアルフ様とキッチンの隣の空き部屋で待機していた。ただ待機するだけでは、時間の無駄と判断したのか、アルフ様は仕事を持ち込んで、楽しそうにしていた。
そして、おれはと言うと……
「あ、フォースくん。この本、そっちに置いといてくれる?」
「はい」
アルフ様の手伝いをしていた。
おれも、ただ待つだけなのは暇だから、手伝う分には一向に構わない。しかし、どうして、おれがアルフ様の手伝いをさせられてるのかは、よく分からない。手伝って~と頼まれた記憶もなく、なんかこう……その場の流れで手伝っている気がする。
いや、別にいいんだけども。暇だから。
アルフ様が仕事中だから当たり前なのだが、おれ達は会話を交わすでもなく、必要があれば、一言二言話す程度だった。そのため、この部屋は静寂が当たり前である。
何が言いたいかって、時折、隣の部屋から、騒いでいる声が聞こえてくるのだ。
「きゃー!! 鈴流様!? そんな勢いよく割ったら、卵の殻があぁぁ!?」
「あれ~? この前はこのやり方で、ちゃんとできたんだけどな~?」
「嘘ですよね!? 卵はこう……平面なところでですね……?」
どんなやり方で卵を割ったんだろう。ボウルやシンクの角で思いっきりぶつけたんだろうか。或いは、力任せにぶつけたのか。
どちらにせよ、不器用にも程があるのでは……?
「にゃっ!」
「おわ! ミィちゃん、すごい器用だ!」
「念力を使って、卵の殻を取ってくれたんだ。ありがとー! そんなこともできるんだね、ミィちゃん!」
「にゃにゃにゃーん!」
どうやら、混入してしまった卵の殻はミィの念力で取り除いたようだ。一件落着……と言うべきなのか。新たな災難の幕開けなのか。
しかしまあ、予想通りだ。エルが一番苦労してる。ごめん、エル。いつか埋め合わせするわ……
アルフ様も隣の喧騒を聞いていたんだろう。小さな笑い声が聞こえてきた。
「隣は凄く盛り上がってるみたいだね?」
「……みたいですね。注意しますか?」
「いいや、大丈夫だよ。それにしても……楽しみだな~♪ 久しぶりにミィの料理が食べられそうだし」
どこか楽しそうに仕事をしていたのも、ミィの手料理が食べられるからだったらしい。
……ミィの手料理と言えば。
「おれ、ミィが料理できるなんて、知りませんでした。いつも、おれが作るの見てるだけだったし……作りたそうにしてる素振りもなかったので」
まあ、そもそもの話、猫が料理できるなんて思わないのだが。とは言え、ミィは念力が使える。やろうと思えば、できるのだろう。ただ、やってるイメージは全くないけど。
「まあね。と言っても、フォースくんの料理には負けるから、ミィ自身が作ることは、なかなかないけどね? 簡単な料理だったら、念力でできちゃうんだ~♪」
「そうなんですね」
「うん♪ 元々、人間の頃から器用な子ではあったんだ。それにあの頃は、森暮らしだったからね。狩りから食材の解体、加工、料理まで、ぜ~んぶ一人でできてたな。それに伴って、料理も得意だった感じだね」
へぇ……教えてもらっといてあれだが、全く想像ができない。
それはきっと、おれが猫のミィしか知らないから。人だったミィの姿を知らないから、どうもイメージしづらいのだろう。
「流石に、今のミィは複雑な工程のある料理は無理だろうけど、ミィ自身が本気になれば、煮込み料理ならできるんじゃない? 角煮とか?」
「……なぜ、数ある煮込み料理から角煮なんですか?」
「ん? あの子がお肉好きだから?」
単純な理由だった。
まあ、思い返してみれば、ミィは基本何でも食べるが、魚よりも肉の方が食いつきはよかったように思う。
猫になった今でも、魚より肉派、なのかもしれない。
「ふふふっ♪ 楽しみだね、ミィと鈴流ちゃんの料理」
「……」
どちらかと言えば、おれは恐怖の方が勝るのだが……これは言わないでおこう。

あれから数十分後。
キッチンからエルだけが先に戻ってきて、何を言うでもなく、空いてる席に座り、机に突っ伏していた。
そんなエルを見れば、どんな形であるかは分からなくとも、何かしらの事故はあったんだろうなと思う。
「……よく頑張ったな?」
「なんで、疑問系……?」
お前の活躍をこの目で見ていないから。
しかしまあ、時々、聞こえてくるエルの叫び声を聞いてれば、頑張ってるんだろうなぁとは思うだろ。
うぐぅ~……まさか、鈴流様の料理の腕があそこまで壊滅的だとは思わず……! はっ!? フォース、もしかして」
「よくは知らないよ。実際に見てないし。けど、ヤバいってのは話に聞いてた」
「それ、教えてくれてもよくない?」
教えてもよかったけど。
鈴流の料理の腕前は壊滅的らしいってのを伝えた上で、「一緒にやってやってくんない?」なんて、流石に言えない。
「教えたら、手伝ってくれんだろ?」
「聞いても手伝うよ! ミィちゃんを一人に……あ、いや、一匹に? 一匹にできないもん!」
「じゃ、知らなくても問題なかっただろ」
「人には心の準備ってもんが必要な時があるんだよ!?」
おれらは人に分類していいのやら。……見た目は人だからいいのか?
「んなこと、どうでもいいよーー!?」
「あはは♪ お疲れ様、エレルちゃん。どう? 料理は上手くいったかい?」
ニコニコと笑うアルフ様の質問に、エルは数秒間、考える素振りを見せる。そして、難しい顔をしつつも、小さく頷いた。
「なんとか……? 少し焦げちゃったけど、大丈夫だと思います。多分」
「多分て……何の卵料理を作ったの?」
「え? ん~とね……?」
エルが答える前に、部屋の扉が開く音が聞こえる。そちらに目を向ければ、トレイを片手に笑顔で入ってきた鈴流と、ミィがいた。
「お待たせしましたー!」
「にゃ~ん♪」
鈴流は意気揚々とおれ達の前に何かを置く。そこには白い皿の上に乗ったオムレツ(?)のような卵料理がある。
オムレツだと思ったのは、アルフ様の前に置かれたものがそうだったから。だから、おれのもそうなんだろうな、と思っただけだ。実際、鈴流の作ったものだけを見せられていたら、オムレツだと思えたかは怪しいところだ。
ミィが作ったオムレツは綺麗で艶々した黄色で、形も整えられた楕円形。
対して、鈴流が作ったそれは、焦げた跡が所々見受けられるし、形も崩れてしまっていて、なんとも残念な姿になってしまっている。
「ラルちゃん直伝、愛情たっぷりのオムレツで~す! どうっ!?」
どう、と言われてもなぁ?
素直に言うべきか、お世辞を言うべきか。悩ましいところである。
……いやまあ、なんだ。始めから、完璧なものが出てくるとは思っていない。それなら……
「……うん。まあ、いいんじゃない? この辺、炭になってる気がするけど」
「ほわ!? なんで、分かるのー!? ケチャップで隠したのに!」
隠れてないから指摘したんだけど。
ちなみに、そのケチャップも謎にハートマークを描いている。これにはどう反応すればいいんだろう。そう言えば、ミィの方にもあったけれど。
何をどう思ったのか、鈴流は満面の笑みを浮かべ、楽しそうに説明し始めた。
「実はね、こういうのやってみたかったの! ハートの形をした料理を大好きなフォースに食べてもらうっ! 定番なんでしょ?」
定番……なんだろうか?
なんかこう……付き合いたてのカップルとか、新婚とか……幸せオーラ爆発させてる奴らの特権かと思っていた。なんなら、こういうのって、創作物の中でしか存在していないと思っていたが。
なかなか手を出さない─単純に疑問だらけで、箸が進まないだけ─おれにエルは、どうでもいいフォローに入れ始めた。
「味は大丈夫だと思う。というか、他のよりはだいぶ、オムレツだから!」
「むしろ、他のやつはどうなってるんだよ」
「言わなくても分かるでしょ。全部、炭化しましたが!?」
「はあ? なんで」
「そんなの、私が聞きたいよー!! ミィちゃんは平気なのに、鈴流様が使うところだけ、火加減がバグってるんだもーーーん!!」
鈴流の得意属性、火じゃないんだけどね。というか、火だったとして、ここのコンロに干渉できるわけもないのだが。
「あれ? ここのコンロ、そんなに火力高かったっけ~?」
と、アルフ様は首を傾げながら、ミィお手製のオムレツを食べている。
そんなアルフ様の疑問にミィも首を傾げ、エルも諦めたように項垂れてしまう。
多分、なんかあったんだな。あの空間で。
……とりあえず、あらかた、疑問に思っていた件は答えてもらったので、おれも食べることにした。
第一、マスターのゲテモノ料理に比べれば、鈴流のなんて、至極普通である。悲しいかな、あれに慣れているせいか、お陰か、鈴流のこれは問題ないように思う。まあ、所々、失敗した箇所は見受けられるけどもだ。
フォークを使い、一口大のオムレツを口に運んだ。
その様子をどこか不安そうに見守る鈴流をおれはちらりと見上げる。
「ど、どうでしょーか……そ、その、お口に合う、ですか……?」
「食えなくはない」
「そ、それは、美味しくないってこと!?」
「いや? 炭化してないとこは美味しいよ」
「ほんと!?」
「うん」
炭化してるとこは食えなくはないってだけ。本来、そこは食べる必要はないんだろうけど、せっかく頑張って作ったんだろうし、黙って食うか。
「ふふ♪ ミィ、作ってくれてありがとう。とーっても美味しいよ~♪」
「にゃ~♪」
アルフ様に褒められ、ミィは嬉しそうに喉を鳴らす。そして、アルフ様はエレルにも目を向ける。
「エレルちゃんもありがとうね? ミィ達を手伝ってくれて」
「はっ!? い、いえ! 私は何もしてないですから!」
鈴流の監督者って簡単な役割ではなかったと思う。謙遜する必要はないが、まあ、その辺りは従者としての立場もあるんだろう。おれも褒められても、素直に受け取らんし。
……それにしても、だ。
「ふふ~ん♪ 上手くできてよかった! 次は何しよ~かな~?」
次があるのなら、何かしらの対策はした方がいいな。はてさて、どうしたものか。



~あとがき~
エレルの料理の腕は中の中くらい。平均値です。

次回、とある方のお部屋、魔改造話。

この天界組話の中で、フォースが料理(お菓子作りだったけど)する回はありましたが、他メンツの話はこれが初めてですね。そんな中で、ミィちゃんと鈴流がピックアップされた訳であります。
他メンバーにスポットが当たることはないと思いますが……少なくとも、鈴流以下の腕を持つのはファウスだけだと思うので、ご安心ください(?)。

ではでは。