satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

気ままな神さま達の日常記録 vol.8

こちらは『学びや! レイディアント学園』の番外編でございます。スピンオフというか、なんというか。全く本編に関係のない皆々様に焦点を当てたお話となっております。
前回、仕事をすっぽかしていたファウスを追い出したその後の話をやります。


☆さくっと登場人物紹介のコーナー☆
アルフ:転生の神様。穏やかな性格でにこにこしながら、みんなを見守る優しいお方。また、従者(?)でもあり、妻でもあるミィとは、どこでも仲良し。

ファウス:力の神様。ずぼらな性格で部下である制御者達(特にフォース)からの信用度は低い。趣味は料理。

フォース:制御者の一人で、最高位の色を制御する。現在、ステラの制御者として下界で暮らしている。天界では振り回されポジ。

ミィ:アルフに仕える蒼い目をした白猫。誰にでも優しい性格。天界にある図書館の主。アルフ以外だと、フォースと仲がいい。


★おねだり子猫と紅の制御者。時々、転生の神★
おれが散らかったキッチンを見渡している間、アルフ様は腕の中にいるミィを優しく撫でていた。それをミィは嬉しそうに受け入れている。
「図書館にいないと思ったら、ミィはフォースくんと一緒だったんだね~?」
「みぃ~♪」
今日一日、ずっと一緒にいたわけではないが……この際、どうでもいいか。
「フォースくん、こっち帰ってきてから、会ってなかったよね? お帰り~♪」
「はい。……まあ、最近はここと下の行き来が激しいんですが」
「そうだったんだ。忙しないね」
「何日も空けると、主がうるさいので」
学園が夏休みになり、すぅの里帰りについていったおれだったが、あそこにいても、ウザい小僧に付きまとわれるだけ。だからと言って、ラル達の方に行くわけにもいかない。遠いし。面倒臭い。
つーことで、おれはおれで里帰りというか、避難所の一つとしてこちらに来ていた。何か用事があるわけでもなく、誰かに呼ばれたわけでもなく、行ったり来たりを繰り返している。が、その中でアルフ様とは顔を会わせていなかった。
「あはは。そっか~♪ あ、もしかして、僕、お邪魔だったかな?」
話が戻ったな。お邪魔とはどれだろう。マスターに対するあれのことなのか、おれとミィのことか……? 後者なら、むしろ、こっちの台詞ですけどね。
「いえ、そんなことは。それより、マスターが申し訳ありません。アルフ様の仕事に支障を来しているとは思ってませんでした」
「うん? あぁ、さっきの。あれは明日の仕事で使うヤツだから、今のところは大丈夫だよ。だから、顔を上げて?」
そう仰ってくださるが、あのアホのことだ。あぁしてアルフ様からの催促がなかったら、取り掛かりはもっと遅くなっていただろう。
仮にそうなっていたとしても、真面目なアルフ様からのかなり強気な催促があるだけだとも思うけど。
おれはアルフ様に言われた通りに顔を上げる。頑なに頭を垂れていたとしても、アルフ様は半強制的に顔を上げさせる。この方はそういう方である。
「しかし、早いに越したことはないでしょう?」
「そだね。相手がファウスさんなら、尚更早い方がいいよ!」
……分かる。分かるが、こうも澄みきった笑顔で言われるのも何だかなぁ。
良くも悪くも、流石、アルフ様……と言うべきなのだろうか。
アルフ様はキッチンに放置された食材や道具類を見て、再びおれへと目線が移る。
「ここを見る限り、ファウスさんはまた、何かを作ろうとしていたのかな?」
「みたいですよ。まあ、何を作りたかったかまでは、聞きませんでしたけど。時間の無駄ですし」
一応、レシピ本はオペラという、チョコレートケーキのページが開かれている。実際、それを作りたかったかは分からない。あのアホが作れるとも思えないが。
なぜ、できもしないことを進んでやろうとするのか。謎すぎる。マスターに聞いたところで「やりたかったからだよ!」としか言われなさそう。……ウザい。
「何かを作ろうとしていたマスターの邪魔をミィがしていた様です。で、そこをおれが合流した形になります」
「なるほど~……いつものだね!」
「そうですね」
「にゃふんっ!」
アルフ様に抱かれるミィが自信満々に鳴く。「私、いいことしたでしょ」みたいなニュアンスだろうか。
そんなミィにアルフ様はニコッと笑い、優しく撫でる。
「うんうん。つまり、ミィは食材達の命を守ったんだね♪ 偉い偉い♪」
「! みゃあん♪」
アルフ様の言葉にミィは一段と顔を輝かせ、甘えるようにアルフ様に擦り寄った。それを拒まず、アルフ様も嬉しそうにしている。おれの存在なんて、眼中にないかのように。
……隙あらば、どこでもイチャつくな、この夫婦。
『あはは! そこは、私達もあんまり変わらないと思うよっ♪』
おれの中で、鈴流が余計な一言を言った気がするが、完全無視を決め込む。反応したら終わりである。無視だ。無視。
いやまあ、確かに、鈴流はどこだってお構い無しにくっついてくる馬鹿だけど、おれはアルフ様みたいに構ってはいない。……その場合、イチャついているに入るのだろうか。
どうでもいいことを考えながら、おれはようやく、キッチンの片付けに手をつけ始める。まずは、散らかった調理器具をシンクへ放り投げ、食材は冷蔵庫。床は……モップの水拭きでどうにかなるだろう。よし、やりますかね。面倒だけど。
「ん? フォースくん、もしかして、ここを片付けるの?」
一通り、ミィとの触れ合いに満足したのか、アルフ様がおれに質問を投げ掛ける。おれは片付けの手を止めず、それに答えた。
「えぇ、まあ。普段、使われない場所とは言え、このまま放置するわけにもいません。ですが、やらかした犯人にやらせようにも、仕事でいないので」
「犯人って……フォースくんは相変わらず、辛辣だねぇ」
貴方程ではないと思いますが。
「みっ!」
何を思ったのか、ミィがアルフ様の腕から抜け出し、おれの前に立ち塞がる。いや、体格的に塞がっている様には見えない。見えないが、彼女の心理的には、邪魔をしたいのだろう。多分。……なってなくはないけど、あまり支障がないところが何とも言えない。
数秒、お互いに見つめ合う。そして、おれは作業を再開させた。考えたところで何も分からない。おれの能力が効かないミィの考えなんて、見通せるはずもない。なら、手を動かした方がいいというものである。
が、それが気に食わなかったのだろう。ミィはむすっと不満げな表情を浮かべると、おれが拾おうとしていた木べらに乗っかり、こちらに向かって猫パンチを繰り出した。
「うみゃぁぁ!! にゃー!」
「勇ましい鳴き声で、大変素晴らしいと思うけど、大して効かんぞ。あと、邪魔なんだけど」
「みっ! みっ!!」
「すみません。おれの話を聞いてくれませんか、ミィさん」
「みゃー!!」
無視!?
呼び掛けをガン無視し、ひたすらおれの腕に猫パンチをしている。こういう時は大抵、何かを訴えたいという意思の現れである。それを考えて、言い当てないとこれは終わらない。……面倒臭いな。先に片付けてしまいたいのだが。
「もしかしたら、ミィはフォースくんの作るお菓子が食べたいんじゃないのかな?」
「……はい?」
「みゃ!」
困惑するおれの傍で、ミィはこくこくと頷いた。アルフ様はおれの内心なぞ露知らず、ミィの通訳を続けた。
「しばらく、フォースくんのお菓子、食べてないもんね~? で、目の前には沢山の材料がある。食べたくなっちゃうのも仕方ないよね」
え、仕方ないの? 仕方ないですまされるの?
「ってことみたいだから、フォースくんさえよければ、作ってほしいな? ほら。これらを残しておくと、近いうちにファウスさんがまた、やらかしちゃうと思うからさ」
……もちろん、おれがここで材料を消費したとて、どうせ、どこぞで調達してくるとは思っている。しかしまあ、少なくとも、ここにある食材達は無駄にならずにすむのは、確かだ。
神の命には従うべし、というのが、神に仕えるおれ達の常識。……ま、今回のは命令でもなんでもないから、さっきの言葉に強制力はない。もっと言えば、アルフ様はおれの仕える神ですらない。縛るものはない……けど。
おれはちらりとミィの様子を窺う。
おねだりする幼子のように、うるうると上目遣いでおれを見上げていた。
どこぞの娘よりは可愛げがある。流石、愛玩動物。……って、中身はおれよりも年上ですけどね! そこんとこ、自覚してますかね、リュミエールさん。
「……畏まりました。簡単なものでよければ、お作り致します。……ミィも、それでいいか?」
「みゃあっ!」
「ありがとう、フォースくん! よかったね、ミィ。久々にフォースくんのお菓子が食べられるよ♪」
「にゃあ! みゃあ~ん♪」
乗っかっていた木べらからすんなりと退くと、再びアルフ様の元へと戻っていく。
何だか、してやられた感がする。……この後、用事もないから、問題はないのだが。いや、ミィが喜んでいるのなら、それはそれで構わないのだけれども。
「ところで、フォースくん」
「はい。何でしょう?」
「さっきからずっと気になってたんだけど……床のこれ、なんだい?」
と、アルフ様が指差したのは例の紫色の液体だ。そりゃ、初見で分かるはずもない。
「マスター曰く、湯煎したチョコレートだとか」
「ちょこれーと」
「一般的に言う、茶色くて甘いあれですね。なぜ、あのような変化を遂げたのかは、分かりかねますが」
「流石、ファウスさんだね~」
……ノーコメントで。



~あとがき~
おっわらないだとー!!

次回、猫のために料理するお兄ちゃんとそれを見守る神様の話。

次でラストかな。はい。
そして、大して言うことも思い付かない!
終わります!!

ではでは!