satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

気ままな神さま達の日常記録 vol.7

こちらは『学びや! レイディアント学園』の番外編でございます。スピンオフというか、なんというか。全く本編に関係のない皆々様に焦点を当てたお話となっております。
神様の一人、アルフさんの従者兼奥様のミィちゃん主役の話が終わり、安定のフォース視点で参ります。説教回だね☆
ということで、今回も登場人物紹介からだ!


☆さくっと登場人物紹介のコーナー☆
アルフ:転生の神様。穏やかな性格でにこにこしながら、みんなを見守る優しいお方。また、従者(?)でもあり、妻でもあるミィとは、どこでも仲良し。

ファウス:力の神様。ずぼらな性格で部下である制御者達(特にフォース)からの信用度は低い。趣味は料理。

フォース:制御者の一人で、最高位の色を制御する。現在、ステラの制御者として下界で暮らしている。天界では振り回されポジ。

ミィ:アルフに仕える蒼い目をした白猫。誰にでも優しい性格。天界にある図書館の主。アルフ以外だと、フォースと仲がいい。



★おねだり子猫と紅の制御者。時々、転生の神★
ここは天界。様々な神様達が暮らす世界。
基本的に人目に触れることがない神々であるが故に、下界には知られてはないが、そこに住まう人々の為、色んな仕事をしている。
……基本的には。
現状を分かりやすく説明しよう。
おれが見下ろす先には、その辺で元気よく走り回っていてもおかしくない位の子供が、ぷるぷると震えながら、正座をしている。さながら、親に怒られ、反省する子のように。
しかし、残念ながらここにいるのが、単なる子供な訳がない。情けなく震える子供みたいなこいつは、神様だ。
そして、おれの上司とも言える力の神、ファウス様だ。……こいつに仰々しく『様』なんて、つけたくもない。
「おれ、この前も言ったよな。あんたが料理する度に、ろくなことにならないって。だから、キッチンに立つなって、命じたはずなんですけど?」
自身の体の大きさにあっていないローブのフードを被り、おれと目線を合わせないようにしている辺り、自覚しておきながら、やらかしたと見た。
「人と話すときは、目を見たらどうですかね」
「やー……だって、フォース、めちゃ怒ってるしぃ……怖いじゃん?」
そりゃあね!? お前が約束、破ったからね!? つか、神様が説教でビビってんじゃねぇよ! なんなん!?
言いたいことは終わりが見えない程、山積みだが、それを口にしてしまったら、何日もかかる。そこで、おれはぐっと我慢し、一言だけ言う。
「行け、ミィ」
「みゃっ!」
おれの頭の上でふんふんしていたミィ─多分、マスターを叱るおれの真似だと思う─にマスターに向かって、突撃命令をした。素直なミィはマスターに飛び付き、器用にフードを脱がす。
「ぎゃあ!? ちょ、ミィちゃん!?」
「にゃ!」
反省しなさい、とでも言いたげなミィ。実際は知らんが。
「で、何するつもりだったのか、教えてくんない?」
とは言ったものの、周りの状況を見れば、何かの料理を作りたかったのは分かる。そりゃ、ここは天界になぜか存在するキッチンだ。そんなキッチンには、散乱する調理器具に、無造作に開かれたレシピ本がある。そして、床に飛び散る紫の液体(粘度高め)。
おれの知る限り、粘度のある紫色の液体なんて、毒以外知らないし、調理器具も様々なものが散らかっている。そんな状況下では、何を作りたかったかまでは、予測不可能。
いやまあ、あそこのレシピ本に載っているどれか、ではあるだろう。じゃなきゃ、あそこに置いてある意味が分からない。
「えっとですね……この前、ふらっと立ち寄った図書館で『初心者でも簡単! ちょっぴり豪華なお菓子レシピ集☆』ってのを見つけましてですね」
本のタイトルを言うときだけ、声色を変えるの、腹立つ。ぶん殴りたい。
「その本見て、豪華なお菓子を作って、フォースを驚かそうかなーって……思った次第でして。はい」
「あぁ、そう。よかったね。別の意味で、おれを驚かせてるよ。目標達成したな。おめでとう」
「おめでとうって顔、してない!」
それに対する解答は、実際はめでたくないから、です。
しかしまあ、やりたかったことは分かった。マスターの中では、お菓子を完成させて、おれを驚かせたろう……という魂胆があった、と。
……神様の癖にちっせ。何だ、こいつ。暇か? 暇なのか? 働けよ、駄目神様が。
「そこら辺に飛び散ってる紫のあれは?」
「湯煎したチョコをミィちゃんが落としました」
「あ?」
「ごめんなさい」
……いや、チョコを紫にする手はある。ホワイトチョコレートに着色料を使うことだ。着色料でなくても、チョコペンには紫は存在する。あるけども。
今、床に広がるのは毒々しい紫。あの色を着色料で出せるだろうか。いや、そもそも、まともな料理を作れないマスターが、着色なんて発想に辿り着くはずもない。つまり、あれは普通のチョコレートだと思われる。それがホワイトなのか、ビターなのか、ミルクなのかは、さておきだ。
「にぃ……?」
ミィがあからさまに「チョコって、こんな色だっけ?」と困惑気味に首を傾げている。
おれだって、同じ気持ちである。
「……はぁ。で? 仕事は?」
「そそそりゃあ、お、終わってますとも!! とーぜんですよぉー!!」
明らかに動揺している。多分、いや、絶対に終わっていない。まあ、マスターの仕事がきちっと終わった試しがないのは、ある種、おれ達の常識だ。ここの片付けをやらせた後にでも、仕事も片付けてもらえばいいだろう。
「ったく……とりあえず、ここを」
「あー! いたいた! ファウスさーん!」
おれの言葉と被さるように入ってきたのは、こちらも少年のような見た目の神様。転生の神、アルフ様だ。
ひょこっと、キッチンの入り口から顔を出したかと思えば、何の躊躇いもなく、おれ達のところへ近付いてきた。そして、正座しっぱなしのマスターの傍でしゃがみ、にこっと笑う。
「僕が頼んだ急ぎの書類、そろそろ終わってるかなって思って、捜してんだ。あれがないと、僕の明日の仕事ができないんだよ~♪」
「あ、アルフさん! いえ、アルフ様!? その話、今はタブーってやつでして!!」
「え? どれ? 仕事の話? 僕の仕事に支障が出るって辺り?」
「全部!」
この状況に突っ込むでもなく、仕事の話をする辺り、アルフ様のスルースキルは見事である。いや、仕事に真面目なだけなのか、ある程度、予測がつくから、言わないだけなのか。
……と、言うか、だ。
「おい」
「へ、あの、フォースさ……わひゃ!?」
おれは逃げ腰のアホの首根っこを掴んだ。最初の説教時よりも、ぶるぶる震える情けない神について思考するよりも、聞くべき事を聞く必要がある。
「手短に答えろ。貴様、アルフ様に頼まれた仕事を放置して、遊び呆けていたのか?」
「あ、あの、いちお、俺……君の……いえ! あなた様の、上司、みたいな人……なんだけどな~?」
「聞こえなかったか。聞かれたことに手短に答えろと、おれは言ったんだが」
「ごめんなさい!! 遊んでいたつもりは、ないんですが、い、息抜き感覚……では、ありましたね。あ、あはは~♪」
「そうか。それはつまり、遊び呆けていた、と捉えても、間違いではないな」
「い、いや、呆けてたつもりは」
「そもそも、息抜きで、完成に時間のかかる菓子作りなぞ、選ぶ阿呆がどこにいる。んなこたぁいいから、仕事しろ! クソ上司がぁぁ!!!」
「ぎゃふっ!!!」
力の限り、アホを入り口めがけて、ぶん投げる。アホは一直線に入り口を通り抜け、壁に激突。普通の人なら、気絶間違いなしだが、あれでも一応、神様だ。あんなので、くたばってもらっては困る。
「さっさと終わらせてこい!! そして、二度とアルフ様を困らせんじゃねぇぇ!!」
「さーいえっさぁあぁ!!! いってきまぁぁ!!!」
「ファウスさーん! よろしくね~♪」
「にゃ~♪」
おれの怒号にマスターは、バネのように飛び起き、一目散に自室へと向かう。そんなアホの背中に向かって、アルフ様はミィを抱きながら、楽しそうに手を振って見送っていた。そして、ミィもアルフ様の真似をしている。
おれは盛大にため息をつきつつ、周りを見渡す。そこには、マスターが放置していった惨状が映るばかり。本来、マスターにやらせるはずだった片付けが残されたまま。……当然だ。させる前におれが追い出したのだから。優先順位を考えれば、ここの片付けよりも、神としての仕事が上である。そして、自身の仕事ならいざ知らず、今回は他者の神の仕事に関連する仕事だ。そりゃ、そっちの方が大事って奴だ。
……つーことは、だ。ここは、おれが片付けるしかないわけだ。もちろん、放置したって構わない。構わないが、変な噂が立つのもよろしくない。只でさえ、ヤツはクソ不真面目、というレッテル貼られてるのだ。それのせいで、あれこれ気を回すのは、こちらである。これ以上、身動きを取りにくくする必要性があるだろうか。いや、ない。
……なんか、一気に疲れた。なんで、毎度毎度、あんなアホの尻拭いしてるんだろう。



~あとがき~
ラルとツバサちゃん達が楽しい夏休みを送っている中、フォースは変わらず、ファウスを叱る日々を送っています。

次回、キッチンに残された制御者と子猫と神様の話。
この三人(二人と一匹)だけってのは、去年なかった組み合わせですね。

なんかフォースだけ夏休み感ゼロじゃね?? やってること、いつもと変わらんのだが。大人って大変だね……←
ということで、一方その頃的な立ち位置であります。時系列は本編とほぼ変わりませんね。夏休みの出来事です!

ではでは。