satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

気ままな神様達の日常記録 vol.18

こちらは『学びや! レイディアント学園』の番外編でございます。スピンオフというか、なんというか。全く本編に関係のない皆々様に焦点を当てたお話となっています。
今回はファウスの従者……ではなく、アルフさんの従者達がメインです。お楽しみに。



☆さくっと登場人物紹介☆
ファウス:力の神様。自堕落な神で、毎回のように部下のフォースに仕事を手伝ってもらう日々。

フォース:制御者の一人。下界ではやる気なし、サボりの常習犯だけど、天界ではクソ真面目でファウスに叱責を飛ばしてる。

エレル:制御者の一人。仕事は好きではないので、ファウスの仕事もあまり手伝わない。(というか、手伝えない)

ユウ:制御者の一人。フォースがいない時は積極的にファウスの仕事の手伝いをするいい子。でも、大抵、キャパを越える仕事量なので、てんてこ舞い。

ラウラ:制御者の一人。仕事はできるが、性格が性格なので、滅多に手伝わない。でも、鬼ではないので、状況が状況であれば手伝ってくれる。

ミィ:白い子猫でアルフの従者。アルフの遣いとして、一番の古参。本をこよなく愛する読書家。

チェル:白い兎でアルフの従者。年上(先輩)に対して、丁寧な物腰で接する。フィアのことを姉のように慕っている。

フィア:紺色の鳥でアルフの従者。従者としては一番の若手だが、持ち前の気品のよさと冷静さで誰よりも落ち着いた物腰で接する。



★神の遣い、最後のメンバー★
ここは天界。様々な神が住まう世界。
そんな天界のとある一室にて、オレンジ髪の少年が机に突っ伏していた。
「フォースさま……これで、最後……のはず……や、やっと……おわっ……た……です?」
恐る恐るといった雰囲気で問いかけてきたそいつには目もくれず、おれは無言で手元の書類を抜けなく確認していく。
記入漏れがないか。サイン忘れはないか。期日は問題ないか等々……
それら全てを確認し終えてから、書類全てを取り纏め、ちらりとマスターを見下ろした。
「お疲れさん」
「あ、ありがとう……ござい、ました……一生分の働きをした気がします……あの山を一日で終わらせたんだもんな。……つまり、これはもう、しばらく休んでもいいのでは!?」
「戯れ言が。寝言は寝て言え。クソ上司」
書類の山を作ったのはマスターが仕事を溜め込んだせいだ。その遅れを今日中に取り戻したにすぎない。つまり、だ。
「明日には別の仕事が振ってくるぞ」
「そんな殺生なぁ~……!」
「当たり前だろうが。毎度毎度、こんなに仕事を溜め込みやがって。馬鹿なんじゃないの?」
「や~……ほら、仕事ってしたくないじゃない? いつだって寝て過ごしていたいじゃない?」
……これが世の人々が崇め奉る神様の実態です。もうこの世の終わりだよ。
ちなみに。
こんなクソアホ神様であるファウスが司るのは、力である。戦が激減した現代において、何の効力も持たない駄目神に成り下がった……わけがなく。
悲しいかな、下界にはマスターが管理しているレア武器─神器がいい例─とか、人々に与えている能力とか、今でもそれなりに管理しなきゃなんない「あれこれ」は存在する。
……何が言いたいかって、この駄目神が寝て過ごせるはずがないってことで。
「寝言は寝て言え」
「その台詞、二度目では!? 分かった! もう休みが欲しいなんて言わない! でも、せめて、もうちょっと労いの言葉をくれてもいいんじゃないかなぁ!?」
「自分で自分の首を絞めてたくせに、なんで労いの言葉が必要なんだよ?」
「君の上司が頑張ったからですけど!」
「お前の仕事なんだから、頑張るのは当然だろ。つか、労いの言葉ならおれが欲しいわ。おれ、全く関係ないんですけど」
事の発端としては、休日、家(すぅ達との暮らしてる方)で本を読んで過ごしていたところに、マスターが泣きながら助けてくれって言われたところから始まる。
訳を聞いてみれば、仕事が溜まりに溜まって首が回らなくなったので、助けて欲しいという救難要請だった。
この時点で無視してもよかったのだが、如何せん、他の神様方にご迷惑をかけてしまっているので、無下にできなかったのである。
「フォース! さっき頼まれたやつ、お届けできたよー!」
と、元気よく入室してきたのは、おれの仲間の一人、エルだ。
「サンキュ。こっちは全部片付いたから、残りも頼む。他の奴らは?」
「後で来るよー! これを渡せばいいんだね! えーっと……?」
「それ、兄貴から拝借した資料」
「ウィル様ね。りょーかいっ♪ 返してくる!」
忙しないなぁ……まあ、あれくらい動いてくれた方がさっさと終わるけど。
エルが出てって数分後、ユウとラウラも戻ってきてくれた。
「さっき、エレルちゃんとすれ違ったよ。もう終わりそうなんだって?」
「あぁ。残りを届けたり、資料を元に戻せばね。……二人とも、頼めるか?」
「もちろん♪」
こういう時、大抵トンズラするラウラですら、手伝ってんだから、余程、切羽詰まってたんだろうな。……いや、そうなる前に取りかかれやって話なんだけども。
おれはユウとラウラに書類を手渡し、二人を送り出す。
「え、あの子達……俺がこんなんなってるのに、心配の言葉もなかったよ……?」
「日常茶飯事だからだろ」
「ひえん……俺の部下達がみぃんな、冷たい……」
それこそ、いつものことだ。
さて、おれはやることはやったし、帰るか。
「フォースくん、フォースくん」
「? どうした。なんか忘れもん?」
先程、部屋を出て行ったはずのラウラが扉から顔を覗かせていた。
「君にお客様。……僕はちゃーんと伝えたからね? じゃあね~♪」
と、言いたいことだけ言って、さっさと言ってしまう。が、なぜか扉は閉めずに行ってしまったのだが。
「……なんなんだ、あいつ?」
説明もなしに勝手な行動をするのは、ラウラらしくもあるが……というか、おれに客、か。扉を完全に閉めなかったのは、その客とやらがいたから?
おれが扉まで出向く前に、そのお客とやらがひょっこりと顔を覗かせた。
「にゃあ!」
「ミィ……?」
アルフ様の従者、白猫のミィだ。でも、こいつなら、自分の念力で扉を開けられるんじゃ?
なんて思っていたら、訪問者は一匹ではなかったらしい。
『ファウス様、こんにちは!』
『お邪魔します♪』
部屋を訪れたのは二匹の獣。
一匹は赤い目が特徴的な真っ白な兎。
もう一匹は綺麗な尾を揺らす、紺色の鳥。
お察し通り、この二匹もアルフ様の従者である。兎の方はチェル。鳥の方はフィアって名前だ。
「おりょ……チェルちゃんはともかく、フィアちゃんが来るなんて珍しいね? 君、アルフさんの部屋から出ててこないのに」
『えぇ。普段はそうなんですけれど、今回はアルフ様の頼みでここへ来ましたの』
『それとは別件で、ミィさんがファウス様にご用があるみたいです!』
「にゃっ!」
「ほ~……? ミィちゃんが俺に? フォースにじゃなく」
「にゃにゃっ!」
ミィはマスターの言葉を肯定するように何度も頷く。
こう言っちゃなんだが、ミィがマスターに用事なんて早々ない。それこそ、アルフ様に頼まれて~ってなら、まだ分かるけど、今回はそうじゃなさそうだ。
まあ、何にせよ、こいつらに聞いてみりゃ分かるか。
「それで? ミィ達の用件って?」
『はいっ♪ それでは……まずはアルフ様のご依頼から! これから、アルフ様とその従者達で『叡智の図書館』の大整理をすることになってるんです』
もうそんな時期か。
『叡智の図書館』は世界のあらゆる知識が保管されている神聖な場所だ。下界ではすでに存在しない書物も、あそこなら保管しているから、おれとしては、調べ物にはもってこいの場所である。
そんな図書館はミィが主(?)として、住み着いているからか、アルフ様が管理している……みたいな感じになっている。
……厳密に言えば、アルフ様の管轄ではないらしいのだが。
『それで……もし、フォースさんのご都合がよろしければ、この後一緒に来ていただけたらと思いまして!』
ん? おれか。
元々、このまま帰ろうとしていたし、図書館に行くのは構いはしないのだが……あ? ちょっと待て。
「……来る? 手伝うの間違いじゃなく?」
『はい。もちろん、手伝っていただけるのなら、大変助かりますわ。……実は、アルフ様のご指名先は、フォースさんではなく、鈴流さんなの』
「……アルフ様が鈴流を呼んでるってことか?」
『はいっ! アルフ様が言うには、ぜひ、鈴流さんに手伝っていただきたいんだとか! 強制はしないって言ってたので、お二人がよろしければ、なんですけど』
うーん?
アルフ様と鈴流はこれといった共通点はない。そもそも、鈴流は付喪神。兄貴みたいに、誰かの下についている神ではない。だから、アルフ様と鈴流に特別な接点があるとは思えないのだが……まあ、いいや。
あの方の思考を読もうなんて、千年早いってやつだ。……おれみたいな凡人には分かるはずもない。
「分かった。こっちが完全に片付いたら行く。後、おれも蔵書整理、手伝うよ。アルフ様にもそう伝えてくれ」
アルフ様の従者は皆、動物だ。人の手が一人でもあった方が早めに終わるだろう。
『わ~! ありがとうございます、フォースさん!』
『あら♪ それは助かりますわ。ありがとうございます、フォースさん』
チェルは嬉しそうに耳をピコピコと動かし、フィアも翼を扇子のようにして、口許を隠しながら優雅に微笑む。
とりあえず、アルフ様の頼みとやらは分かったけど、ミィの用事が何なのかが分からない。分からないけど……
「にぃ~……」
「え? え? なんで、そんな不機嫌なの……?」
言葉が通じないミィだけど、明らかに不機嫌なのは分かる。つまり、マスターがミィに対して何かしたんだろう。とは言え、マスター本人は心当たりがなさそうだが。
そんなマスターの様子が気に食わなかったらしい。ミィの瞳がキラリと光り、目にも止まらぬ早さでマスターに襲いかかった。
「にゃにゃにゃっ!!!」
「うぎゃあぁぁ!? いきなりの猫パンチはやめてください!?」
『ありゃりゃ~……ミィさん、大分お怒りモードだね、お姉ちゃん』
『うふふ♪ まあ、あの惨劇を目の前にしたらね。ミィさんの気持ちも分かるわ』
チェルとフィアはミィの不機嫌な理由、知ってるのか?
『はい。ミィさん、ファウス様に怒ってるんですよ。そりゃあもう、カンカンなんですから!』
『というのも、ミィさんの用事もファウス様を叱責するためですわ。ここまでの道中でも、ファウス様のこと、あんぽんたん、とか、毎回毎回、とか色々と言っていたんですよ?』
「……そいや、お前らはミィの言葉、分かるんだっけ」
おれの言葉に二匹はこくりと頷く。
『ま、分かるって言いましたけど、完全には分かりませんけどね~……? 何て言うか、片言程度です』
『それにミィさんの言葉を私達が片言程度に分かるのも……ミィさんと似たような存在だから、なのでしょう。単語程度ならすんなりと理解できてしまうんですよ』
ミィと似たような存在。
おれはちらりと二匹……いや、二人を見る。
アルフ様の従者であるルリとガーラと、チェルとフィアは魂の色が違う。そりゃ、個々の特性があるんだから、色が違うのは当たり前なのだが、前提として、二人はあの二匹と魂の質が違う。
もっと言えば、この二人、人間の魂の質を持っているのだ。だからこそ、ミィと似たような存在、と言えるのかもしれない。
そして、何の因果か、おれはこの二人と似たような魂の色を持ってるやつを知っていた。だからだろう。こいつらを見ていると、時々、とある白い姫様と青い王子様の姿がちらつく時がある。
「……はぁ。世間って案外、狭いもんだよな」
『? フォースさん? どうかしましたか?』
チェルが不思議そうに首を傾げながら、おれを見上げる。そんな仕草すら、あの姫さんを彷彿させるのだから、血筋ってのは恐ろしいものだ。
「いんや。なんでも。……で? 結局、ミィはなんでマスター相手に怒ってるんだっけ?」
『あら、そうでした。その話をしていましたね。先日、返却された本が汚されていたんですよ。……あぁ、『返却』というより、『戻ってきた』が正しいかもしれませんわ』
つまり、マスターの部屋の扉に施された魔法で戻された本がってことか。
『そうです! その本がなんかよく分からない液体まみれになって、酷い有り様なんですよ。それも、一冊だけじゃなくて、何冊も。そりゃ、ミィさんもカンカンになるでしょう?』
『その本の修繕をアルフ様が行っているんです。……アルフ様はそこまでお怒りではないのだけれど、ミィさんは見ての通りですわ』
と、フィアが指し示す先には、マスターに飛びかかって、これでもかと怒りを露にするミィの姿がある。そして、マスターは未だにその理由を理解していないらしく、頻りに首を傾げていた。
『ミィさんの怒りも当然だよ! 私達の中でも一番の読書家だもん!』
『あら? チェルちゃんも相当な読書家ではなくって?』
『えっ! そんなことないよ!? 私が読むのは、薬草とか魔法とか……あと、機械のこととか! その、自分の興味のある分野だけだもん。……なんなら、お姉ちゃんの方が読んでるんじゃない?』
『どうかしら。今は昔程、多くの知識を必要としてないから……だから、今の私もチェルちゃんと同じ。興味のある分野しか読まないわ』
『ほんとかな~……?』
ふむ。つまり、マスターの手元から戻ってきた本が謎の液体で汚れて戻ってきた。それが一冊や二冊の話ではない、と。
『えと、そうですね……まあ、十数冊くらい、ですかね? ね、お姉ちゃん?』
『えぇ。そこまで多くはないけれど、少なくもない……くらいの数だったと思うけれど』
なるほど。
マスターが本を元に戻さないのは日常茶飯事だ。だからこそ、アルフ様はここの扉に魔法を施してくださっている。
よくはないが、そうした方が効率的だし、確実に元に戻るからこその手段だった。……しかし、だ。
「マスター」
「いてて……え。な、何? 俺、今、ミィちゃんの猫パンチ攻撃を耐え忍んでるとこなんだけど」
「お前、アルフ様に余計な仕事増やしてんじゃねぇぞ」
「……え? アルフさんに? 何の話……って、痛い痛い痛い!?」
おれはお構いなしにマスターの首根っこを掴み上げ、ギリギリと締め上げていく。
「そうでしょうねぇ!? お前が知らないうちに図書館の大切な本を汚してんだからなぁ!? お前のちんけな脳みそよりよっぽど大切な知恵の結晶なんですけど!?」
「フォースさん!? 俺のことをなんだと思ってるんですか!?」
「うるせぇ!!」
「反論の余地なし!?」
──おれがマスターを締め上げている横で、ミィは呆然とした様子でおれ達を見上げていた。
「み、みぃ……?」
『あらあら♪ 予想はしていたけれど、結局、こうなるのねぇ』
フィアはどこか楽しそうに笑い、チェルは戸惑ったようにフィアを見つめた。
『ね、お姉ちゃん。この後、どしよっか?』
『……そうねぇ。まあ、私達の仕事は終わっているし……ミィさんのお仕事もフォースさんが請け負ってくれたみたい。……なら、私達は主様の元へ戻りましょう』
「にゃあ」
『そ、そだね……!』
と、小さな動物達が部屋をそろそろと退出した。
あいつらがいなくなった後もおれはマスターに説教をしていたんだが……まあ、その辺は特筆する必要はないよな?



~あとがき~
五周年! 新キャラ!!
もういないと思ってた? 私もですわ!

次回、図書館の整理。

アルフさんの従者、チェル&フィアでした。
え? フィアって名前のキャラいなかったかって? 誰かににてる? いやぁ、偶然だよ、偶然←
ということで、答え合わせはまたいつか。

ではでは。