satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

気ままな神様達の日常記録 vol.19

こちらは『学びや! レイディアント学園』の番外編でございます。スピンオフというか、なんというか。全く本編に関係のない皆々様に焦点を当てたお話となっています。
前回の続きっぽい感じですね。指名を受けた鈴流とそれに付き添うフォースの話です。



☆さくっと登場人物紹介☆
フォース:制御者の一人。生前の名前はカルマ。この名前で呼ばれることは滅多にない。

鈴流:付喪神。元は人間で赤の継承者として、フォースと過ごしていた。現在は自由気ままな神様ライフを送っている。

ルリ:アルフの従者の一匹。生前、フォースと仲がよく、今でも彼のことを『カル』と呼び、慕っている。大人なお姉さん気質。

ガーラ:アルフの従者の一匹。ルリ同様、フォースと仲がよく、今でも彼のことを慕っている。意外とツンデレだったり。



★図書館の大掃除。
神と従者とモフモフと。★
おれと鈴流は『叡智の図書館』へ向かうため、長く続く廊下を歩いていた。厳密に言えば、鈴流はおれの周りをふよふよと浮いているだけで、歩いてないのだが。
「……そいや、アルフ様がなんで鈴流に用があるのか聞いてねぇや」
「あはは♪ フォースってば、ファウスさんを説教するのに夢中だったもんね~♪」
うるせぇ。別に夢中になってねぇわ。
大体、あのアホが不甲斐なくて、どうしようもなく救いようのない馬鹿なのが悪い。
……なんてことを鈴流に説いたところで意味はないので、ぐっと我慢するとして。
「で? 鈴流に心当たりはないわけ? アルフ様に呼ばれる理由」
「え? ん~ん? なーんにも!」
……ですよねぇ。
鈴流はあっけらかんとして無邪気な笑みを浮かべている。
鈴流は常におれと一緒にいるとはいえ、天界に姿を現すことはほとんどない。その理由も特にないようで、本人曰く、わざわざ天界で姿を見せる必要性を感じていないらしい。
「私がアルフさんと会う時って、いっつもフォースと一緒だもん。だから、私個人の関わりなんてないよ?」
「それもそうか」
「でしょ~? まあ、行けば分かるさ! ごーごー!」
鈴流はくるりと旋回し、おれの前を通過して飛んでいく。鈴流はいつも通り、自由奔放である。対して、おれはのんびりと後ろからついていった。

目的地の図書館に到着し、重苦しい扉を開ける。すると、大量の本で埋め尽くされた棚が無数に並ぶ空間が目の前に広がった。
「ひょわ~~~! 本がいっぱい!」
「あれ? お前、ここに来たことなかったっけ?」
「ないっ! だって必要ないもん」
思い返せば、一度たりとも来たこともないんだったか。そもそも、文字の読み書きができない鈴流にとって、この場所は最も縁遠い場所なのかもしれない。
「そいや、お前から文字の読み書きを覚えたいとも言われなかったな」
「うん。だって、フォースが読んでくれるでしょ?」
……さいですか。
さて、アルフ様はどこにいるかなぁっと。
おれは本棚の間を縫うように辺りを見渡しつつ、奥へと進んでいく。
「あ、フォース! あそこにフォースのおともだちがいる!」
「あ? 友達?」
鈴流が指差した方向には、大量の本を乗せた荷車を引くガーラの姿と、そんなガーラの頭の上にちょこんと座るルリの姿があった。
あちらも鈴流の声が聞こえていたのか、ちらりとこちらを振り向いた。そして、荷車をパッと離して、こちらへと駆け寄ってくる。
『カル♪ それに鈴流ちゃんも。ごきげんよう♪』
『よお、お二人さん! チェル達の伝言、聞いて来てくれたのか? サンキューな!』
ルリはガーラからおれの肩の上に移動し、ガーラも楽しそうに尻尾を振る。
おれはガーラの頭を撫でながら、思わず苦笑してしまう。
「うん。まあ、それはいいんだけど……ガーラ、荷車を置いてくるのは駄目なんじゃない?」
『問題ない。誰も盗りゃしねぇさ』
そういう問題か……?
まあ、こいつらとは久々の再会ではあるので、とやかく言うことは止めておこう。
「アルフ様の従者達が整理してるってのは知ってたけど、お前達もいたんだな」
『おうよ。見ての通り、ここはめっちゃ本があるからな。普段、地上で働くオレらにも召集がかかったってわけだ♪』
『アルフ様やミィちゃんだけじゃ、いつまで経っても終わらないでしょう? だから、みぃんなで手分けしてやっているのよ』
「ほへ~……そうなんだね! なら、二人は何してたの? たくさんの本、運んでたみたいだけど」
鈴流は少し離れたところに放置されている荷車へと目を向ける。従者の中でも一番の力を持つガーラが運び役に適してるのは分かるけど。
『アルフ様の選別が終わった本を戻す作業だな』
『ちなみに……ミィちゃんとフィアちゃんも別のところで同じ作業をしているわ』
運ぶだけでなく、戻し作業もガーラ達が担っているのか。
しかし、ミィには念力があるが、他の奴らにそんな力はなかったはず。そして、アルフ様の従者は全員が動物だ。本棚に戻すなんて、簡単な作業じゃないはずなんだが……
なんてことを考えていると、ルリとガーラはどこか楽しそうにふっと笑い始める。
『うふふっ♪ カルってば、私達がどうやって本を戻すのか気になるのかしら?』
『あっはは! まあ、そうだよな~? カルマと違って、オレ達には器用で便利な手足なんてないわけだし?』
「え? え?? 今、フォース、何か言ってた?」
「いんや。何も。……もしかして、分かりやすく態度に出てたか?」
「ううん。出てないよ……? 二人は分かったの? フォースの考えてたこと!」
『まあな。これはオレ達の長年の付き合いってやつだ♪』
ガーラは嬉しそうにニヤリと笑う。ルリも楽しそうに頷いている。
む……まあ、ガキの頃からの付き合いだしな。こいつらにしか分からない何かを感じ取られているのかもしれない。不本意ではあるが、こいつらになら、まあ別にいいかと思う自分がいる。
「う~……私だってフォースとは、ながーい付き合いなのに~」
『ふふんっ♪ そこは諦めな、嬢ちゃん。オレらとカルマには切っても切れねぇ縁があんだわ♪』
「むー! それなら、私にだってあるもん! ガーラくんの意地悪ー!」
なんで張り合ってんだ、こいつら……?
このまま放置していると変な方向にヒートアップしそうだし、辱しめを受けるのはおれだけのような気がする。……うん。さっさと止めるべきだな。
「二人とも落ち着けって。おれにとっては、鈴流もガーラもルリも特別だよ。家族みたいなもんなの。ほら、家族に優劣はつけないだろ?」
「そーだけどー!」
『ガーラも大人げないわ。貴方がカルをだぁいすきなのは分かるけれど、そこは奥様に譲るべきなんじゃないかしら?』
『うるせぇ。それはそれ。これはこれだ! こっちはガキの頃からカルマのことを見守ってきたんだぞ!』
「あ~……ありがとな、ガーラ。でも、恥ずかしくなってくるから、そろそろやめてくれな? ルリ、話を戻して」
『ふふ、そうね♪ 私達が本を動かせる理由だったわね。カル、手を出してくれる?』
そうそう。……なんでそれを聞くためだけに、鈴流とガーラが張り合い始めるのかさっぱりだ。
ルリはおれの目の前に飛んでくると、差し出した指先に留まる。そして、さっと片足を持ち上げた。
そこには普段、つけてない紫の足環がつけられている。
『実はね、これのお陰なの。アルフ様が手掛けてくださった道具を使って、ミィちゃんと同じ念力を使っているの。ちなみに、ガーラとフィアちゃんもね』
……本当だ。ガーラの体毛で見えにくくなっているが、前足にアンクレットみたいなやつを身に付けていた。
なるほどねぇ……アルフ様ならそういう道具を簡単に作れるだろうな。
と、アルフ様で思い出した。
「なあ、二人とも。アルフ様の居場所、知らない? おれら一応、アルフ様の頼みでここに来てるから……内容をアルフ様から聞きたくってさ」
『お? それならチェルと一緒にあっちにいるぜ。なんて言うんだっけ?』
『読書スペースね。そこで本の修繕中なの。たくさんの本に囲まれてるからすぐに分かるわ』
「なるほどな。教えてくれてありがと。行ってみる……鈴流、行くぞ」
「はーい!」
おれ達はルリとガーラと別れると、教えてくれた読書スペースへと向かう。
彼らの話の通りなら、マスターが汚してしまった本の修繕をしているのだろう。
「ふんふんふ~ん♪」
「……上機嫌だな、お前」
図書館にやって来た時と今とでは、明らかに雰囲気が違う。特別、何かあったとは思えないけど。
「ふふっ♪ なんかね~……嬉しくなっちゃって」
「? 嬉しい?」
「うんっ♪ フォースが楽しそうだったから!」
……そう、か?
「フォース、ガーラくんとルリちゃんと話してる時、とっても楽しそうにしてるんだよ? 私と話してる時とはまた違う感じで」
「……そうなの?」
全く心当たりはないのだが。
「そうなのっ! あ、そこに妬けちゃうなんてことはないんだけどね? さっき、フォースも言ってたじゃない? 家族みたいなものって。きっとそういうことなんだろな~って!」
ふーむ……そうなのだろうか。
あの場では『家族』なんて表現をしたけれど、実際、家族がどんなものなのかは分からない。おれに血の繋がった血縁者なんて存在しないから。
ウィルにぃだって、兄貴なんて呼んでるけど、実の兄ではないし。
「私も家族のあったかさは分かんないけど……フォースと一緒にいると安心する。きっとそういうことなんだよ、家族って!」
「そういうもんかね」
「そうなのですっ♪」
よく分からんけど、まあ、鈴流が楽しそうにしてるならいいや。



~あとがき~
今回でアルフさんの従者はこれで全員出たな。

次回、お掃除後半戦。

本編では(恐らく)出てこないルリ&ガーラ。生前のフォースの過去を知る数少ない友人なんですが……というのを初登場時にも言ったような気がする。
彼らといるフォースはやっぱり、昔の性格が出てきている気がします。もちろん、今のフォースも嘘偽りない彼なんですけども!

ではでは。