satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

気ままな神様達の日常記録 vol.20

こちらは『学びや! レイディアント学園』の番外編でございます。スピンオフというか、なんというか。全く本編に関係のない皆々様に焦点を当てたお話となっています。
今回は前回に引き続き、図書館にてお掃除をする話。なぜ、アルフさんが鈴流を呼んだのかも明らかになるぞい。



☆さくっと登場人物紹介☆
フォース:制御者の一人。鈴流の生涯パートナーであり、彼女のことを大切に思っている。

鈴流:フォースの持つリボンの付喪神。フォースの生涯のパートナーであり、彼のことを真っ直ぐに思っている。

アルフ:転生の神。転生の神ではあるが、色々と任されている偉い人。

チェル:アルフの従者の一匹。白い兎の姿をしており、素直で優しい性格。



★図書館の大掃除。
神と従者とモフモフと。★
ルリとガーラに教えてもらった読書スペース付近まで行ってみると、二匹の言った通り、チェルとアルフ様が本の修繕をしていた。
チェルがとあるページを開き、それをアルフ様へと見せていた。恐らく、そのページを修繕したのだろう。
『こんな感じでいかがでしょう?』
「うん♪ いいね。それじゃあ、その本はあっちのスペースで乾かしてもらえるかい?」
『かしこまりました!』
と、アルフ様の了承を得た本をチェルは自身の頭の上に乗せ、その場を後にする。
「あ! フォースくんと鈴流ちゃん! 来てくれたんだねー!」
こちらが話しかける前にアルフ様がおれ達に気付き、パッと笑みを見せる。それに合わせ、おれは小さく会釈をし、鈴流もペコッと頭を下げた。
「こんにちは、アルフさんっ!」
「こんにちは~♪ フォースくんもありがとうね?」
「いえ。チェルとフィアから話は伺いました。鈴流に手伝ってほしいであってますか?」
「うん。間違いないよ」
あぁ、間違いないんだ。
アルフ様は作業の手を止め、少しだけ申し訳なさそうな表情をこちらに向ける。
「ごめんね? 急に呼び出して、手伝ってほしいなんてお願いしちゃって」
「いえいえ! 私にできることなら、なんでもしますよ! あと、フォースも手伝ってくれますから! ねー!」
まあ、暇だしね。
鈴流の言葉にアルフ様は予想外だったのか、キョトンとした様子でおれを見つめた。
「本当? ファウスさんの方は大丈夫かい?」
「問題ありません。今日のやることは全てやらせましたから」
「あはは♪ さっすが、フォースくん。なら、お言葉に甘えて、手伝ってもらおっかな? この後、ウィルくんも来てくれる予定ではあるんだけど……人手が多いに越したことはないからね♪」
兄貴も来るのか。確かにここまで大がかりな整理なら、兄貴にヘルプ頼んでても不思議ではない。が、途中参加とは珍しいこともあるのもだ。
兄貴は兄貴で仕事中になのか……
「……それで、我々は何をしたら?」
「そうだね。フォースくんは僕と一緒に本の修繕をお願いしてもいいかな」
アルフ様はちらりと積み上げられた本へと目線を移す。どうやら、まだまだ直さなければならない本は残っているらしい。
「分かりました」
「ありがとう。えっと、鈴流ちゃんはね~……っと……お、あったあった♪」
と言いながら、今度は足元のバッグを漁り始めた。そして、とあるものを取り出し、にこりと微笑む。
そんなアルフ様の様子を見て、おれと鈴流は互いに顔を見合わせた。

──おれ達がアルフ様達と合流して、数十分が経った。
おれは言われた通り、アルフ様の手伝い。アルフ様が粗方、修繕してくれた本の簡単な仕上げ作業をしていた。
対する鈴流はと言うと……
「えっと……りんごの『り』がこれ……だから、これとこれは一緒の本?」
手元の数枚ある紙の一枚を見てから、二つの本を交互に指差した。それを見たチェルがこくりと頷き、嬉しそうに笑う。
『はいっ♪ 正解です! では、お次はこの表紙と同じ形の文字をもう二冊、探してもらってもいいですか?』
「は~いっ!」
元気のいい返事をして、再び手元の紙とにらめっこしながら、並べられた本達を見比べていく。
鈴流がアルフ様に頼まれたのは、チェルの手伝い……修繕の終了した本の選別である。
おれはてっきり、選別の終わっている本の戻し作業(ルリやガーラがしてたやつ)でもさせるのかと思っていたので、あれの手伝いをアルフ様が指定した時は少なからず驚いた。しかし、字が読めない鈴流のためなのか、イラストと文字がセットになっている幼児向けの学習資料まで用意していた。
元々、それをさせようとしていた……のだろうか。
「もしかして、鈴流ちゃんが心配?」
アルフ様が作業の手を止めず、おれに問いかけてきた。
「珍しく、集中できてないみたいだからね。普段の君なら、とっくに終わってても不思議じゃない」
「……申し訳ありません。そんなつもりはなかったのですが」
「いやいや。責めてる訳じゃないよ♪ 君の気持ちも分かるからね。チェルが一緒にいるとはいえ……読み書きのできない鈴流ちゃんがちゃんとできるか、不安なんだろう?」
アルフ様に隠し事はできないな。……最も、隠すつもりもないのだが。
おれは再び、チェルと鈴流の方を見る。
鈴流は首を傾げながら、アルフ様から渡された資料片手にとある本を指差していた。
「チェルちゃん……この文字、なんて読むの~?」
『に、ですね♪ お肉のに!』
「お肉……おにく……お肉の絵はこれだから……この文字だ!」
チェルは笑顔でこくこくと頷く。それを見た鈴流はぐるりと見回し、いくつか指差していった。
「えっと……これとこれ、あと……これも! 同じ仲間だね!」
『はいっ! 大正解です!』
チェルに正解を告げられ、鈴流はパッと顔を輝かせる。
「やったー♪ えへへ、楽しいね! この作業!」
『ふふっ♪ それはよかったです♪ この調子で、残りもやっていきましょ~♪』
「おー!」
勉強している感覚がないからか、あいつもお遊び感覚で手伝っているのだろう。実際、嫌そうにしている素振りもなければ、苦悩している様子もない。だから、おれが口を挟む必要もないか。
「……不安はありますが、問題はないと思ってます。あいつも楽しそうなんで」
「ふふ♪ まあ、遊び感覚でやってもらってるのは間違いないね。……今回、鈴流ちゃんを呼んだのは、あの子に文字に『触れさせたかった』からなんだ」
「? 触れさせる?」
「そそ。……実はさ、ゆくゆくはここの管理を鈴流ちゃんに任せたいんだよね」
……鈴流がここの管理?
今はアルフ様の管轄だったはずだが……それがなぜ、鈴流にお鉢が回ってくるんだろう。
「元々、ここの管理自体、他の神達におしつ……こほん! どうしてもって頼まれたから、僕がやってるんだけど、僕の管轄はあくまで転生。命に関わる神なんだよね!」
あ~……押し付けられたんだ。
「今、ここの管理をしてるのはミィなのも、僕が管理しているからなんだけど。……けど、ほら。昔と違って、今は鈴流ちゃんみたいな子も増えてきてるからさ~」
鈴流みたいな……もとい、付喪神が、か。
様々な条件はあるが、付喪神は長い時を経て、神と成る。単純な話、世界が長く続けば続く程、付喪神は増えていく。
アルフ様はそんな付喪神にも、天界で何かしらの役割を与えようとしているのかもしれない。
「それにここの図書館の利用者は神々というより、その神に仕える従者達だ。なら、位の低い神が管理しても問題はないかな~って? 仮に管理者が僕でなくなったとても、ミィがここの主なのは変わらないからね」
「ミィのお気に入りの場所の一つですもんね」
「そういうことっ♪ ミィは本が大好きだし、ここは暖かいから、お昼寝にもちょうどいいみたいだからね~」
……本好きと昼寝は関係ない気もするが、まあ、いいや。アルフ様の言う通り、あいつがここで昼寝する姿はよく見かけるからな。
「もちろん。さっき言った通り、ゆくゆくは、だからね。今すぐにって話じゃないよ?」
「はい。アルフ様のことです。この計画のゴールは数年後ではなく、数百年後……いえ、千年、二千年後の話なのでしょう?」
「あはは♪ 流石、フォース君だね♪ まあ、今は鈴流ちゃんに神としての生に慣れてもらうのが最優先だからね。この話は長期的に見てるんだよ」
鈴流は図書館に来たのも初めてだし、第一、文字は読めなくてもいーもん、なんて言ってたやつが相手だからな。
まあ、それはどうでもよくて、だ。
付喪神を気にかけてるにしても、なぜ鈴流なんですか? 他にも適任者はいるのでは」
「ん? 鈴流ちゃんが僕の管理下にあるからだけど。まあ、一応ね?……って、あれ。もしかて、ファウスさんから聞いてない?」
おれは黙って首を振る。
鈴流に付喪神としての道を示したのは、他でもないおれのマスターだ。力を司る神であるマスターが、人だった彼女に『神』としての力を与えた。その結果、人として、輪廻転生の輪から外れてしまったので、アルフ様にも何かしらのご迷惑をかけていたのだと思う。……だが、アルフ様が何かを言ってくることはなく、おれは勝手に黙認しているものだと認識していた。或いは、マスターとの間に何かしらの取引でもあったのではと勘繰ってもいるけど……そこまでの頭があの人にあるのかは不明である。
「あ、ウィルくんみたいに直属の部下って感じじゃなくて、何て言うか……教育係みたいな? 神としてのあり方を教える先生役だね」
「あぁ……なるほど。でも、それならマスターがやるべきでは? あの人が鈴流を神にさせたんですから」
「理屈で言えば、そうなんだけどね。ファウスさん、やることだけやって、後は僕に丸投げしてきたからさ~♪」
うぅん……マスターらしいと言えばらしいのだが……なんでその辺が雑なんだ。
そう言えば、エレル達を迎え入れた時も力を与えるだけ与えて、残りはおれに丸投げしてたな……そういうところだよ、あの人の悪いとこは。
「申し訳ありません、アルフ様。うちのアホがご迷惑を」
「気にしないで♪ 僕の管理下って言っても形だけだし。それに僕が背後にいるってだけで、大抵の神は鈴流ちゃんに手出しできないから、都合いいでしょ?」
「それは……そうかもしれませんけど」
「そうだよ。それにさっきも言った通り、この関係は形だけだから、今回の図書館の件以外に僕から何かを強要することはないよ」
だから安心してね、と付け加え、アルフ様はにこりと笑う。
「君達は今まで通りに過ごしてくれればいい。……だって、互いに離れ離れは嫌だろう?」
……そうか。アルフ様もミィと長い間、離れ離れになっていた。だから、おれ達を気遣ってくれているのか。
おれは手元の本を撫で、小さく笑う。
「そうですね。……確かに、二度とごめんですよ。あんな体験は」
「ふふ♪ だよねぇ~? 僕もおんなじ気持ちだよ」
アルフ様はぐっと背伸びをして、新たな本に手を伸ばす。そして、いつも通りの笑顔をおれに向けてきた。
「フォースくん! 残った修繕作業をさっさと終わらせて、戻し作業は大遅刻してるウィルくんに丸投げしよう! ね!」
「え!? あ、はい……そう、ですね?」
そういえば、来るはずの兄貴の姿はまだなかったな。……アルフ様、顔には出てないけど、それなりに気にしてるのかも……?
その後、かたり遅れてやって来た兄貴に片付け作業をぶん投げたことは言うまでもないだろう。



~あとがき~
おしまい!

次回、通常運転に戻りますよ!!!
体育祭じゃぁぁぁ!!!

鈴流とアルフさんの関係性については、相方が考えてくれました。ありがたや~!
もちろん、本編(空と海)にはそんな設定ないんですけど、ここはコラボ作品の醍醐味です。本来、関り合いのないキャラ達が関わる世界線で楽しんでくれると幸いです。

ではでは!