satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第364話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、三人でご飯もぐもぐしてました。
描写はありませんが、三人で楽しく屋台巡りもしてます。
今回はブライトとセイラ。


三人で屋台を堪能しつつ、ギルドを目指していると、ちょうどよい頃合いにギルド前に到着していた。あまりにも、いいタイミングだったため、セイラは先導していたライトに質問してみる。
「ライト、計算してた?」
「まあ、ある程度は」
「……しれっと凄いことしてるなぁ」
「そうか?」
と、本人は何でもないように返答した。彼にとっては造作もないらしい。
ライトはセラフィーヌと目線を合わせ、ニコッと笑う。
「お嬢、神子様としてのお役目、頑張ってください」
「うん。ちゃんと見ててね!」
「はい。言われた通り、ここから見てます」
ライトの言葉に満足したのか、セラフィーヌは大きく頷くと、パッとギルド方面へ駆け出した。しかし、何か思い出したのか、くるりと二人の方を振り返ると、大きく手を振りながら笑顔を向けた。
「あーっ! 後、神子探しに出てね、ライトくーん! じゃ、いってきまーす!」
と、叫び、ギルドへ走って行ってしまった。
セラフィーヌの言葉にキョトンとしているライト。そして、セイラは数日前にセラフィーヌからお願いされていたことを思い出した。
「ライトくんと一緒に神子探しに出て、セラ達を捕まえてね」と。
「あ、わ……そのこと、すっかり忘れてた」
「……神子探し? なんか先輩達も言ってたような……神子探しって何?」
「ライト、知らないの? 文字通り、神子様を探すゲームみたいなもので、神子探しは代替わりの年じゃないとやらないの。今年はちょうど、代替わりの年なんだよ」
「ふーん」
ライトは大して興味もなく、質問した本人だと言うのに、適当に返事をするだけで、それ以上は何も聞かなかった。
対するセイラは、興味の無さそうなライトに、どう参加を促そうか考えていた。セラフィーヌからのお願いもある。祭りが終わってから、できませんでした、なんて言うわけにもいかない。
「ライト」
「ん?」
「神子神楽まで、まだ時間あるし……もう少し、街を見て回ってもいい?」
「ん。いいよ」
ライトとしては神子神楽までの暇潰しとして。
セイラとしては神子探しまでにライトをどう誘うか考えるための時間稼ぎとして。
目的は違えど、二人は共に賑わう縁日の中へ混じっていった。

「──わぁ、美味しい!」
「お、嬉しいこと言ってくれるね、お嬢ちゃん。お嬢ちゃん可愛いし、もう一つ、おまけしちゃう」
「わー! ありがとう、おじさまっ♪」
セイラは手渡されたフルーツ飴を隣に立つライトに渡す。彼は何か考え事をしていたらしく、差し出された飴を数秒、無言で見つめ、小さく首を傾げた。
「……え、何?」
「だって私、今、食べてるもん。持ってて?」
「あぁ、そういう。……はいはい」
セイラは祭りをこれでもかと満喫していた。それはもう、先程までの「どうにかして、ライトを神子探しに参加させなければ」という悩みを忘れるくらいには。
「いくつになってもお祭りって楽しいなぁ……♪ さっきはセラちゃんがいたし、思い切り、はしゃげなかったからね~♪」
セイラの言葉に、ライトは先程までの光景──二人でわいわいしながら遊んでいた光景を思い浮かべる。
輪投げをしたり、型抜きしたり。二人して思う存分遊んでいた……はずである。
「……十分、はしゃいでた気がするけどな」
「まだまだ。あれは序の口ですよ?」
「だとしたら、お嬢の方が大人ってことか」
「だーかーらー、いくつになっても、お祭りは楽しいって話で……っ! ライト、あれやろ!」
セイラが指差したのは、的当て屋らしき出店だった。
複数の矢を投げ、的に当たった場所での点数を競うものらしく、得点が高ければ高い程いい……単純明快なゲームである。
「ライト、こういうの得意だもんね? 見たい見たい! ライトのかっこいいとこ!」
「べっつに得意じゃないけど。俺の専門は剣だし。むしろ、的に当てるんなら、お前の専門分野だろ」
「弓じゃないから無理。ね、お願い」
「……はあ。分かった。つか、何が楽しいんだ、そんなところ見て」
文句を言いつつも、ライトは屋台の店員に代金を支払い、矢を五本受け取る。
矢は、手に収まる程の大きさで、投擲の要領で、的に当てることができそうだった。怪我しないよう、先端部分はプラスチックでできているらしく、万が一当たっても、人に刺さることはなさそうだった。
「真ん中が一番、点数高いんだな。その分、狙える範囲も狭い、と」
ペンでも玩ぶように、一本の矢を手元でくるくると回しながら、辺りを観察する。的の距離、矢の形状、周りの環境。それらの情報を五感で捉え、冷静に分析していく。
「ライト、頑張れ!」
そして、狙いを定めるようにそっと構え、静かに矢を投げる。
すっと的に吸い込まれるように矢が刺さる。それもど真ん中に。
「わあっ! さっすが、ライトー!」
セイラの歓声に耳も傾けず、ライトは続けざまに矢を投げていった。
とん、とん、とん、と、残りの矢も的の中心を射貫く。
店員はもちろん、周りで見守っていた客からも、どよめきが起こる。
「に、兄ちゃんすげぇな……!」
「いえ、そんなことは。実際、最後の矢は狙いよりもずれましたから。……うーん、難しいな」
「さっすがだね、サブ職が暗器使いなだけありますねっ♪」
ライトが幼い頃、母親から面白半分で学んだ戦闘技術だった。今はそれらを扱うことは少なくなったが、相手を一発で仕留める技術に置いては、剣士となった今でも大いに役立つスキルであった。
「いや、それと的当ては違うだろ……?」
「獲物を投げて、的に当てるってところは同じだよ~?」
「そう、か?」
「いやぁ、すげぇもん見せてもらった! 兄ちゃん、これ、賞品だよ。普段はうちで取り扱ってる商品なんだけどよ。よかったら、もらってくれ」
と、店員からもらったのは、綺麗なガラス細工の施されたキーホルダーだった。
街のシンボルでもあるエクラ城と夜空をモチーフにしているらしく、光に当てれば、きらりと光る美しい工芸品だった。
「ありがとうございます」
「おう! また来てくれよ! 今度はうちの店にもな♪」
気さくに二人を送り出してくれ、二人も会釈をしながら店を後にした。
適当に歩く道すがら、ライトは先程の賞品をセイラに差し出した。
「セイラ、あげる」
「うん? え、いいの?」
「俺が持ってても、宝の持ち腐れだろ」
「わあ……ありがと、ライト! 大切にするねっ」
ライトから受け取ったキーホルダーを大切そうにぎゅっと握り、ポーチの中にしまう。
そんなセイラの様子をライトは何を言うでもなく、じっと見つめていた。
「……」
「? どうしたの、ライト?」
「……いや、何でもない」
「そう?……勘違いならいいんだけど、なんかずっと考え事してる? 何か悩みでもあるの?」
祭りを回る最中、時折、ライトは心ここにあらず、といった様子で、ぼうっとしていた。セラフィーヌと三人でいた時はそうでもなかった─セイラが見逃してなければ─のに、だ。
「私、何かしちゃった?」
「あぁ、いや。そうじゃなくて……大丈夫。ちょっと気になることがあるだけで、悩みって程じゃねぇから」
「そう? なら、いいけど」
「そうそう。大したことじゃないから」
ライトにそう言われてしまえば、セイラから何か言える空気ではなくなってしまう。
セイラの勘だと、何かあると言っているのだが、本人が語らうとしないのなら、確かめようがない。
こういう時のライト、絶対、何かあるのになぁ~?──なんて、今度はセイラが悩んでいると、不覚にも、人の流れに足を取られ、そのまま人混みに流されるまま、ライトから離れてしまう。
「ひょあぁぁ!? わ、わわっ! 流される……っ!」
「!? セイラ!」
ライトから伸ばされた手を掴むこともできず、あれよあれよと、流されてしまった。
ライトの焦った声が遠くで聞こえたかと思ったのも束の間。セイラが人混みの波から抜け出した時には、ライトと共にいた場所から随分と離れてしまっていた。
「うーん、うっかりうっかり……でも、セラちゃんといた時は、こんなことなかったのに。神子神楽の時間が迫ってるから……? いや、ライトが人混みを避けてたのかな。セラちゃんのために」
思い返せば、セラフィーヌと回っていた時は、ライトが逐一、道を指示していた場面があった。恐らく、周りの大人と比べ、体の小さいセラフィーヌのため、比較的、人の多い場所を避け、ギルドへと向かうためだったのだ。
「どうしよ。最悪、ギルドに行けば、合流はできるかな……? 私達の最終目的地はそこだし」
とは言ったものの、口約束で、はぐれたらそこへ向かえ、と決めていた訳ではない。仮にライトがそれをせず、セイラを捜して街中を捜索していたら、この場から動かない方が利口である。
「下手に動いて、また流されるくらいなら、ここにいよっかな……? で、神子神楽の時間が近くなったら、ギルドに行く! これだ!」
セイラが空を見上げれば、夏の空はまだ明るい。それでも、少しずつ、日が沈む始めているのは確かである。
街を一人で歩くのは怖くない。なんなら、普段は気ままな旅人生活だ。一人歩く夜道にも慣れているし、野宿だって慣れたものだ。
それなのに、セイラの心には不安が広がる。理由は分からない。
二人で祭りを楽しんでいたから、その反動か。
思ってもいないハプニングに、心に余裕がなくなっているせいなのか。
「……ライト」
無意識に名を呼ぶ。
名前を口にすれば、少しは安心できるかもしれないと思ったからだ。
それに返答は求めてなかった。
──求めてはいなかったのに。
「──セイラ!」
聞き慣れた声に名前を呼ばれ、思わずそちらを向く。
声の主は息を切らしながらも、セイラの目の前に現れ、力強く抱き締められる。
「よっ…………かったぁぁぁ~……っ!」
「あ、えと……ライ、ト?」
ライトはセイラを抱き締めていたが、静かに離れると、両手をセイラの両肩に置き、安堵のため息を漏らした。
「はあぁぁ……! 焦った。いや、本当に。柄にもなく。めっちゃ焦った。……大丈夫か、セイラ」
「う、うん。だいじょぶ……だけど、そんなに焦って捜してたの?」
「まあ、うん。……人、多いからな」
それだけが理由なのだろうか、と不思議に思う。
いつものライトなら、冷静に捜索していただろう。ギルドの人に協力を仰ぐなり、何かしらの策を講じるはずなのだ。それをせず、一人で走って捜していたらしい。
なぜ一人で宛もなく捜したのか。その理由を問おうとしたものの、あまりにもライトがホッとした様子を見せるので、その疑問を口にできなかった。
「ごめんね、ライト。私がぼーっとしてて。えへへ……駄目だね。ライトには何、考え事してるのーなんて、言ったのに」
「いや、いいよ。……つか、ある意味、これも無駄じゃなかったよ。俺としては」
「? どういうこと?」
「何て言うか……気になってたことが吹っ切れたってことかな。……あぁ、もう時間か」
そう言いながら、ライトは手を差し出す。なんてことはない。はぐれないように手を繋ごう、という誘い。今の状況を考えれば、妥当な行動かもしれない。
しかし、いつもなら、ライトからこんなことはしない。するなら、セイラから提案するのが、いつも光景であるはずだ。
セイラは、ライトの微妙な変化に戸惑いを隠せないものの、差し出された手を受け入れた。
ライトははぐれないように、離さないように、それを確かめるようにぎゅっと優しく握ぎった。
「今度は大丈夫。離さねぇから」
「う、うん……私も気を付けるね」
「あぁ。……じゃ、行くか」
「うん」
今度ははぐれないようにと、セイラはライトにぴたりとくっついて歩く。ライトは歩きにくいだろうに、何も言わず、ギルドを目指した。
──どうしたんだろ、ライト。
セイラのその疑問の答えは、そう遠くない未来で明かされるのだった。



~あとがき~
きゃーー!!??
やりたい放題してたら、長くなっちゃった!
いつものことですね! すんません!

次回、神子探し。
結局、ライトを誘えていないセイラは、この後、どうするんでしょうか。お楽しみに。

途中、一人でセイラを捜すブライト視点がないのは、その場面をセラさんもセイラも知らないからです。あくまで、二人の語る過去話なので。その体は守ってるでやんす。
ま、ブライト視点あった方が彼の心境の変化とか見れて、分かりやすいんですが……知らんもんは知らんのでね!(笑)
まあ、明確に何かあったのは、見ての通りですよ。はい。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第363話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、無事にセイラと合流しました。
なんかその時、色々ありましたけど、まあ、それはそれとしてな。うん。


屋台巡りの仲間にセイラが加わったところで、この後、神子としての仕事のあるセラフィーヌを送り届けなければならないため、ギルド方面へ向かいつつ、気になる屋台に寄ることにした三人。
まずはお目当てのたこ焼き屋を見つければ、セラフィーヌの目はキラキラと輝き始める。
「ライトくん! あった! たこ焼き屋さん! ここがいい!」
「はいはい。一つでいいですか」
「うん。ほんとはたくさん食べたいけど、この後、お仕事あるし、ライトくんのおサイフにも優しくしないとだもんね。一つでゆるしたげる」
「……わー、お嬢ってば、やさしー」
「わお。過去にないくらい棒読みだなぁ、ライトってば」
というセイラの突っ込みは無視し、ライトは店でたこ焼きを購入する。
一つ六個入りのそれは、思ったよりも大振りで、セラフィーヌはそれが狙いでここを指定したのでは、と勘繰ってしまう。そもそも、時間は空いているとはいえ、ポテトも一人で平らげ、それ以外にも買い食いしていた。そんなセラフィーヌがこれを完食できるのだろうか。買って手渡した手前、心配になってきてしまう。
「お嬢、食べきれます?」
この質問にセラフィーヌはじっとたこ焼きを見つめる。そう問われてしまうと、自分も不安になってきてしまった。しかし、食べたい気持ちは本物だし、セラフィーヌ自身が選んだ店だ。残すわけにはいかない。
「う、うん。……ほら、たこ焼きは別腹だもん。だいじょぶ」
「いや、聞いたことねぇけど……?」
「あ。なら、私達と分けっこする? それなら、大丈夫じゃない?」
セイラの提案にセラフィーヌはこくこくと頷く。それなら問題なく食べられそうだと思ったからだった。
三人は近くの飲食スペースに移動し、各々腰を下ろす。ついでにと、近くの屋台でセイラは自身のご飯にと焼きそば、ライトは三人の飲み物を買い、二人にも手渡した。
「ライトくん、いいの? セラ、もうお金ないのに」
「これくらいは別に。……けどま、一応、親方には内緒で」
「わ~いっ♪ ライトくん、ありがと!」
「どういたしまして」
セラフィーヌは嬉しそうにカップに入ったジュースを受け取り、たこ焼きを一つ頬張る。外はカリッと、中はトロッとしたたこ焼きには、豪勢にも大きなタコも入っており、満足のいく一品であった。
セラフィーヌの隣で、焼きそばに舌鼓を打っていたセイラは、目の前に置かれたジュースを見て、ニヤッと笑う。
「ライトくーん? 私にも奢りってことですか~♪」
「あ? 別に構わんけど。……敢えて口に出す辺り、卑しいな、お前」
「んなこと言うなら、払いますけどー!! 持ってけ、どろぼー! いくらですか!?」
「だー! いらねぇわ!」
「えへ。ありがと」
「くそ。素直にそう言っとけ」
不毛なやり取りを交えながらも、三人はつかの間の休息を取る。
たこ焼きを夢中で頬張っていたセラフィーヌだったが、ハッとステージで歌うセイラの姿を思い出し、感想を伝えていないことにも気付く。ジュースで喉を潤し、セイラに笑顔で先程のステージの話をし始めた。
「お姉様! さっきの演奏と歌ね、すっごくよかったよ!」
「あら、ありがと~♪ 今回のために練習した甲斐があったなぁ」
「お姉様の音楽はいつもいいけど、今日のは一番よかったの! 一緒に弾いてた人とのギターがきれいで、お姉様の声もきれいでね?」
「えへ~♪ そんなに褒めても何もないよぉ! ライトは? どう思った?」
ふわりと欠伸を漏らしていたライトに問い掛けてみる。ライトもセイラの音楽はよく聴いている。とはいえ、そこまで音楽に精通していないし、そもそも、ライトは音楽が得意ではなかった。セラフィーヌみたいにどこがよかった等々の感想は思い浮かばない。
「んあ~……? いつものだなって思った」
「あはは! ならよかった!」
雑にも聞こえる感想だったが、セイラは気にしておらず、むしろライトらしいと笑い飛ばした。しかし、セラフィーヌは自慢のお姉様の凄さを分かっていないライトが気に入らない。むっとしつつ、ジュースのストローを咥える。
「む~……ライトくんに音楽の授業した方がいいんじゃないかな、お姉様?」
「しても分からないと思うな。ライト、音痴だもん」
「うるっせ。……でもま、お前の声は……なんだろう。その場を支配してるっていうか……存在感はあったと思うよ。普段話すお前とは、また違うっていうか?」
それを聞いた二人は思わず感心してしまった。先程は雑な感想を述べたのに、と。
「お~……それを感じられるんなら、ライトの感性も捨てたもんじゃないかもしれない。今度、一緒に音楽祭にでも行く? 秋くらいに隣街でやるんだ~♪」
「行ってもいいけど、全部同じに聴こえそう」
「わ~! あり得そうっ♪ じゃ、セラちゃん行く?」
「行きたーい! 今度、お父さまにお話ししてみる! あ、お姉様、ライトくん。たこ焼きあげるっ!」
残り三つになったところで、セラフィーヌは二人の間にたこ焼きの入った舟を置く。
「セラちゃん、ありがとう。遠慮なく、いただきます♪」
多少、時間は経っているとは言え、たこ焼きの熱気で、未だに鰹節が踊るそれを余っていた爪楊枝で持ち上げる。後は、口に運ぶだけなのだが、何を思ったのか、セイラは小さく笑い、辺りの賑わいに視線を向けていたライトを呼び掛けた。
「ん。な……にっ!?」
振り返ったライトの口にすかさず、たこ焼きを押し込む。熱々ではないが、まだ暖かいそれに驚きつつも、もぐもぐと口を動かす。
「ふふっ♪ そっぽ向いてるから、お仕置き~♪」
「…………ん」
ライトは口に広がるソースと鰹節の風味、タコの食感。そして、目の前のたこ焼きが一つ減っているのを確認すれば、半ば無理矢理、口に突っ込まれたのだと理解する。
それを理解してしまえば、ライトのやることは一つしかなかった。
「セイラ」
「ん~?」
「その爪楊枝、貸して」
「ん? うん、いいよ」
セイラから手渡された爪楊枝を残っているたこ焼きに刺す。
「次、口開けろ」
「それは嫌ですね」
ストレートな指示に何をされるかピンと来たセイラは、にこりと微笑みながら即答する。それでも、ライトはニヤリと笑い、ひょいっとたこ焼きを持ち上げた。
「……そうそう。お前が探してるっていう『チェリー・ハート』っていう鉱石だけど、ここから南西にあるダンジョンで見つかるらしいぜ?」
「!? ほんと!? え、行く! 行きたい!! いつ行っ──!!」
「隙あり」
セイラがずいっとライトに迫った瞬間、彼はたこ焼きをセイラの口に突っ込んだ。彼女は無言で、もぐもぐと口を動かした。
「あっはは! 単純だな、お前~!」
「むぐっ…………んぐ。……もー! ライトってば、卑怯だよ! はっ! もしかして、鉱石の話も嘘!?」
「鉱石に釣られるお前が悪い。後、そっちは本当。だから、行くとしたら、来週かな。祭りの後始末やら、溜まった仕事も、そのくらいになれば落ち着くだろ」
「なら、許す。来週ね? 約束ね?」
「了解。詳しいことはまた後でな」
「はーい! はぁ~♪ 楽しみだなぁ~!」
「……二人とも、セラのこと、忘れてない?」
十一歳にしては大人なセラフィーヌは空気を読んで、気配を殺していた。
二人の悪ふざけ(?)を眺めながら、セラフィーヌの頭にはなぜ、この二人は恋人がするような行為をいとも容易く行うのだろう。そして、なぜこれで二人して友人関係だと言い張るのだろう。……等、そのような思考がぐるぐる回っていた。
セラフィーヌは不思議で仕方がなかった。
これで、付き合っていないんだもん。なんで。と、思うのも仕方がないと言うやつである。
それと、セラフィーヌは一つ不満に思うことがあった。
「ごめんね、セラちゃん。大丈夫。忘れてはないよ? ただ、つい楽しくなっちゃって♪」
「ライトくん。羨ましい」
「……? 何がです?」
「お姉様にあーんってされてた! 羨ましい!」
「あーんって言うか、無理矢理、突っ込まれてませんでした?」
「でも、お姉様にあーんってされてた!」
「され……てるのか、あれは」
「あらあら♪……じゃ、セラちゃんにもしてあげる。セラちゃんが残してある、最後の一個もあるし」
セイラのこの言葉にセラフィーヌはパッと顔を輝かせた。先程までの不満など、もうどこにもなかった。
「ほんと! やったー! ありがと、お姉様!!」
「……お嬢も大概、単純だよな」
ライトの呟きは幸か不幸か、セラフィーヌの耳には届かなかった。なぜなら、憧れのお姉様のあーんをしてもらっていたからだ。
「ん~♪ おいしいっ!」
「ふふっ♪ よかったね、セラちゃん♪」
腹ごしらえに思ったよりも時間を使ってしまったが、これはこれで、よい思い出というやつになるのだろう。
そう無理矢理、解釈し、ライトは二人を連れ、ギルドへと向かう。
もうじき、神子様による『神子神楽』の時が近付いていた。



~あとがき~
本当は屋台を堪能する三人をもっと書く予定だったけど、ご飯食べるだけになりました。なんでだ。

次回、ライトとセイラの屋台巡り。
まだまだ私のターンだよ☆
(訳:私のオリジナル展開が続くんだぞ☆)

今回の話、私がやりたいのでやってもいいですか、と相方に告白(?)した話になります。やってよかった。楽しかった。(自己満足)

ではでは。

ポケモンSVのはなし

ネタバレありありのありでお送りします、ポケモンSV感想回~~~!!!
メインストーリーやら、新ポケモンの名前等々、ある程度意識はしますが、そこまで隠さずに話していくので、ネタバレ嫌や! そんな方はブラウザバックでお願いします。





今回のポケモンは学校の課外授業で宝探しをする……というのが今回のポケモンストーリー。
個人的には、その宝とはなんなのか、各ストーリーを通じて、各キャラの宝探しを見守るのがプレイヤーの役割な感じがしました。
課外授業を通じて得ただろう、主人公の宝ってなんだったのか……それもプレイヤーが感じ取るべきものなのかなぁと。
……ポケモンってこんな深いストーリー物だったっけ??←

はい! というわけ(?)で!
ここからは各ストーリーの話、感想をつらつらと綴っていきます!

1.チャンピオンロードの話
こちらは名前の通り、ジム巡りをして、チャンピオンを目指すルートになります。従来のポケモンシリーズでやってきたことですな。
ちなみに、この地方ではジム戦を経て、チャンピオンに勝つと、チャンピオンクラスと呼ばれるトレーナーになります。多分、そのチャンピオンと呼ばれる方々は複数人いる設定なんやろなと思います。
そんなチャンピオンクラスを目指すのがこの『チャンピオンロード』というお話なわけでした。
こちらでは、主人公のライバルというか、同級生ネモちゃんと深く関わり合うルートです。バトル大好き少女、戦闘狂少女です←

ジムに挑戦するためにはジムテストってのをやります。それぞれのジム特有のテストがあるんで、それをクリアしてようやくジムリーダー戦へと進められるってわけですな。
私が一番記憶に残ってるテストは、リップさんのジムテスト、喜怒驚楽ヨガですかね。なんかどんなヨガやねんってだけで印象に残ってます。あと、純粋にリップ戦で苦戦したってのもある。主にレベルが足りなくて。(後々、スムーズに巡れる順番を間違えていたことが判明)

全てのジムを巡った後、チャンピオンクラスになるために最後のテスト面接からの四天王戦があります。
面接があるなんて聞いてねぇ!?……と思いつつ、チャレンジした記憶があります。
この面接テスト。私は1回ミスりまして、不合格なってます。まあ、何度も受けてくださいと言われてたんで、再チャレンジしましたけども!(笑)

四天王&チャンピオン戦は情報解禁されてなかったので、どの人がどのタイプで戦ってくるんやと困惑しました。
見た目じゃどのタイプなのか全く判断できんくて。
いけるやろのノリで挑んでしまったので、若干のレベル差はありつつもクリアした次第です。

そして、このルートのラスボスはもちろん、ネモちゃん。
前回の課外授業でチャンピオンクラスへと登り詰めていたネモちゃん。同年代で同じ強さを持ったトレーナーがおらず、モヤモヤしていたところに主人公が現れた訳ですね。
いやぁ、めちゃくちゃ生き生きしてバトルする姿はとても可愛くて、バトル好きなんだなぁと思います。好きこそものの上手なれという言葉がありますが、その言葉の体現者だったんですよね。
だからって、「バトルバトルバトルー!」と目を輝かせて迫ってくる姿は戦闘狂のそれだけどな!?(笑)

従来通りのシステム、ストーリー性で安定感ありました。ポケモンをレベル上げて、ライバルと切磋琢磨する……これぞ、ポケモンって感じがしてよきよきでした。


2.レジェンドルートの話
こちらは各地のヌシと呼ばれるポケモンを倒し、秘伝のスパイスを手に入れる……そんなルートです。
レジェアルにあったヌシ戦みたいなもんですね。ゆーて、あれはアクションゲームとポケモン戦闘がありましたが、こちらはそんなアクション要素ありませんのでご安心を。
こちらのメインキャラは先輩であり、料理上手なペパー青年。個人的に推してるキャラの1人です。
彼がなぜ、秘伝スパイスを求めるのか……そんな謎もこちらのルートをやってけば、分かるようになってます。

このルートをクリアすることで、主人公のライドポケモンであるコライドン or ミライドンが強化される仕組みになってます。早く走れたり、泳げるようになったり等々。
なので、各地を冒険するなら、このルートを無視して他だけを進めるのは、ちと厳しい感じになります。やりようによっては、できんくはなさそうだけど、できるかは知らないです!(笑)

このヌシ戦、5匹の中でどいつが難しかったかなぁと考えてみると、個人的に(ギミック的なことで言うと)ミミズズ戦ですかね。
ペパー先輩の言葉を無視し(というか、聞き流してた)、自分の足で延々と追いかけてたので、全くミミズズを捉えきれず、鬼ごっこしまくってました。
ライドで追いかけろって言われてたのに、ライドから降りて突っ込んでたから、変に時間かかりました。人の話はちゃんと聞かねば。

そして、そのストーリーを進めていくにつれ、なぜペパーがスパイスを求めるのか。彼の人柄に触れるストーリーになってます。なんつーか、このストーリーがあって、ペパーを好きになったなって。
ここで結末までを語るつもりはありませんが、もう……もう、な!?
あと、このスパイス探しを通じて、主人公と友情を深めるのも好きです。最初はバトル慣れしてる主人公の協力が欲しかっただけだったのに、最終的に親友(ダチ)って言ってくれる先輩に惚れた←

こちらのルート、博士(ペパーのママ or パパ)にエリアゼロと呼ばれるエリアへ来るように言われるのですが、その前に己の実力を試したいとペパーが勝負を挑んできます。
はい! こちらのルートのラスボスはペパーです!
各ルートのラスボス戦を経て、私が一番やられそうになったのはこの人です。理由はレベルが足りてなかったから。これに尽きる。ペパー先輩のポケモン、全員がレベル60越えてたけど、こちらは平均Lv.60くらい。なんなら、50後半が過半数やってん(笑)
なんでこんなにレベル低いって、このルートを最初にクリアしたからですね。最後のヌシ倒して、そのままの足でペパー先輩ととある場所に向かった結果、ノンストップでバトル始まってしまった結果です。ビビったわ。

そんなことがありつつも、ペパーとの友情を深められるいいお話でした。
まじ、ペパー、いいやつで泣ける……うぐうぐ……(泣)


3.スターダストストリートの話
こちらは不良生徒 VS 主人公の話。
スター団と呼ばれる素行の悪い生徒達のアジトを巡る話です。まあ、過去作でいうところの、悪の組織との戦い的な? 最近のポケモン、そういうのありませんけども。
カシオペアと呼ばれる謎の協力者と共にアジト巡りしていき、彼らを解散させるのが今回の目的です。その中で、スター団とはなんなのか、カシオペアとは誰なのかを紐解くお話です。
こちらのメインキャラはカシオペアと補給係ボタン、そして、スター団の各ボス……になるんですかね。あ、ネルケも忘れちゃいかんか。この方は後で説明します!

システムは今作から追加されたレッツゴー機能を使います。おまかせ戦闘ってやつですね。ポケモンを繰り出し、勝手に戦闘をしてくれるってやつです。
基本、こちらのレベルが高ければ、負けることはないです。仮にレベルが少し足りなくとも、タイプ相性で勝っていれば、問題なく勝てるので、カチコミで負けることはまずないかと。
そして、一定数のポケモンを倒せば、ボス戦となるわけです。こちらは普通の戦闘です。ご安心を。

こちらも……なんていうか、奥深いというか、単純なお話ではないんですよね。こちらもストーリーの根幹になるので、多くは語りたくはないのですが……
スター団は本当にただの不良生徒達の集まりなのか。
カシオペアはなぜ、スター団を解散させたいのか。
進めれば進めるほど、考えられされました。

で、最初に出てきたネルケは主人公に協力してくれる謎の人物(?)です。やればわかるけど、謎でもなんでもないんですけど、ここではまあ、謎ってことにしときますね……(笑)

そして、こちらも進めていくうちにボタンちゃんとも交流を深められます。この子もまた……うん、いい子ですよ。本当に友達想いのいい子だなって。
まあ、これはスター団のボス達にも言えることなのかもしれません。仲間意識がとても高くて、一概に悪だと言えないところがね。

こちらのボス戦はボタンです。
対策しやすい面で言えば、一番楽なラスボス戦かもしれない。あと、可愛い。

言っちゃうけど、こちらのルート、大団円で終われるので、ムービー見ていて「よかったー!」とほっこりできました。いや、ほんと、救われてよかった。


4.ザ・ホームウェイの話
上記の3つのルートをクリアすることでプレイできるルートです。『レジェンドルート』のラストで残された、「エリアゼロへ来い」という依頼を主人公と各ルートのキャラ達で挑むお話ですね。
こちらのメインキャラは、主人公、ネモ、ペパー、ボタンとドンの4人と1匹。

今更ですが、私がプレイしたのはスカーレットなので、そちらメインの話になります。バイオレットもほぼ同じ展開だと思うけど、出てくるポケモン、キャラに差違があるのでご注意を。

博士に言われ、主人公達はエリアゼロへ降りていくことに。その道中、キャラ達の会話や博士の会話、残された資料等々……もう、いいよね。何がとは言わないが。
この道中で、古代ポケモンがエリアゼロにいる理由。コライドンのボールがペパーの手元にあった理由。
そして、コライドン2号の存在……
あらゆる謎が出てきては解決していくのは、ラストやなぁと思わされるそれですよ。

古代ポケモンを退けつつ、博士の待つ最新部へ行けば、衝撃的な事実が判明。……そして、ラスボス戦……なんですが。
なんか、ポケモン? これ、ポケモンなの? ってくらい、重い展開が凄い。

ラスボス戦は古代ポケモンオンリーなので、「こいつ、何が弱点なんやー!!??」って興奮しつつも、少し前に明かされた事実で感情ぐっちゃぐちゃになりつつ、戦闘することになります。いやもう、酷い。(褒め言葉)

古代ポケモンオンリー戦闘を経て、ようやく終わりかと思ったのも、つかの間。
今度はもう1匹のドン(2号)との戦闘!
ここの展開はマジで泣ける。何がとは言わんけど!! 言えんけど!!!
でも、コライドン(1号)の勇姿にうるっときてもうたよ。頑張ったな、コライドン……!

終戦闘を終え、博士との約束を果たした主人公達は自分達のいるべき場所へと帰っていく……そんなお話です。
最後のムービー正しく、青春って感じでよきよきのよき。「はわ~……よかったなぁ…」と、心から思った。

この『ザ・ホームウェイ』ってタイトルいいよな。
コライドンもそうだったし、主人公達にも当てはまるしと。
エリアゼロから出て、帰るシーンをきちんとムービーで残してくれたのは本当にいい。よかった……あのシーンはマジでよかった……!


5.まとめ
最高傑作や! めっちゃええ!!
という話を聞きますが、総合的に見たとき、そうやなぁ……分かる。ってなりました。
過去作を見ても、ストーリー面はめちゃくちゃよかったし、ボリュームもそれなりにあったと思います。
おまかせ戦闘でポケモンを自動で倒してくれるし、おこづかいの他にLPという別通貨もあり、そちらでも道具は買えるから、(メインストーリー中は)基本的にお金に困ることはない。クリア後? それは知らない話です←
キャラメイクも細かに設定できるのもいいですよね。自分だけの主人公を1から作り出し、その子と最後まで共にできるのはいいですな。感情移入もできるし、思い入れもできるし、いいこと尽くしです。
もちろん、後から変えることも可能なので、整形もお手軽です。流石、ゲーム←

ここまでいいことしか語ってこなかったけれど、ここからはちょっと残念ですと思ったところを何点か。
前回の感想回でも言いましたが、バグは多いし、動作は重いし、所々不便なのは難点です。
個人的に致命的だと感じたのは、四天王戦のBGMループバグ!
「なんかよくわからんBGMだなぁ。戦闘なのに、こんなに盛り上がりないんか。悲しみ」と思ってたら、バグでイントロしか流れないらしいです。解消する手立てはある(戦闘前に一度、セーブして再起動すると直るらしい)みたいですが、私がそれを見たのは四天王戦終わった後でした。無念。
四天王戦のBGMを聞かずに終わってしまった……うっうっ……(泣)
恐らく、この被害に遭ったプレイヤーは多いのでは。だって、わざわざ四天王戦でセーブして再起動かけなくない!?
うぅ……このバグだけは早急に直すべきです、任天堂さん……いや、ゲーフリさん?
今、直ってるのかな……確かめようがないのが悔やまれる。どこで聞けるの、四天王戦BGM……!

後、個人的な要望としては、着せ替えを増やしておくれ……学校がテーマだから、基本服装が学生服なのは分かるけど、クリアしても服が増えないのは、ちょっとだけ寂しいよ……!?

正直、オープンワールドをきちんとプレイしたのは今回が初めてなので、そちらの面において講評ができないのは申し訳ない。
けど、マップは若干の見辛さを感じるのは気のせいか。慣れればええんか……?
とまあ、所々に「?」と思うところはあっても、それを引っくるめても楽しかった、プレイしてよかったと思います。初見プレイ中、めっちゃ楽しい時間でした! 幸せな時間をありがとうございました!!
まだゲットしていないポケモンや再戦していないキャラもいるので、その辺を楽しみつつ、もう少しパルデア地方を楽しもうかと思います。


最後に!
私にしか需要がない気がするが!
ストーリークリア時点の最終パーティーの公開だー!!

ラウド(ラウドボーン/♂) Lv.74
ルナ(ブラッキー/♀) Lv.73
ミィブ(オリーヴァ/♀) Lv.69
カイ(ダイカイデン/♂) Lv.70
カヌレ(デカヌチャン/♀) Lv.72
イダキバ(イダイナキバ/不明) Lv.64

でした。新ポケモン①~③の正体はこの子達でした!
デカヌチャン、可愛くて(図鑑説明が)怖いところがいいよ。えへえへ。


はい! というわけで、ポケモンSVの感想(詳しいやつ)でした!
思ったまま、そのままに書き殴ってしまったので、読みにくい部分や、「??」な部分もありますが、その時の心境をそのまま綴ってるのでお許しを……(汗)

次回は通常投稿で、レイ学を投稿予定です。まあ、こちらも年内は数回の投稿を残すのみですが!

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第362話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界わちゃわちゃしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回から女神祭も始まり、ライトこと、ブライトとセラさんの楽しそうな(?)屋台巡りが始まってます。
今回は新たなメンバー、セイラを迎えに行くところからですな。


全ての曲目が終わり、セイラとパートナーは観客に向かって、ペコリと頭を下げる。
「最後まで聴いてくださり、ありがとうございました! そして、まだまだ続く女神祭をどうぞ、お楽しみください♪」
にこやかに挨拶を終えたセイラ達はステージを後にする。
どうやらステージの演目的にも、ここで一区切りついたようで、観客達もぞろぞろと立ち上がり、移動を始める。もちろん、この場に残って、この後にあるだろうステージを待つ人達もいる。
ライト達の予定だと、この後はセイラと合流し、セラフィーヌの自由時間まで三人で祭りを回るはずだった。
「ライトくん、お姉様を迎えに行こ?」
「そうですね。……とは言ったものの、どこにいるんでしょう?」
「ふっふっふ~♪ そーゆーときはセラにお任せ! ちゃーんと調査してあるんだから♪ こっちこっち♪」
セラフィーヌは、事前にセイラから聞かされていたステージ裏へと歩みを進める。少女の後ろをライトも黙ってついていく。
「あ、いたよ! お姉様!」
ステージ裏は当然ながら、関係者以外いないため、人混みもなく、すんなりセイラの姿を見つけることができた。
彼女はライト達に気付いていないのか、先程まで共にステージへ上がっていた男性と親しげに談笑しているところだった。
感謝でも述べているのか、男性がセイラの手を取り、笑顔で何かを話している。それにセイラも笑いながら応じていた。
共にステージに上がり、そのステージを成功で収めたのだ。演者の二人が終了後にその功績を讃え合うのは普通である。
なんてことない、ありふれた光景だ。
ありふれた光景のはずなのに、ライトの心境は複雑だった。どこかモヤモヤした何かを感じている。
いつもなら、何かを思うことはないはずなのに。
「……? ライトくん?」
ライトの雰囲気に何かを感じたセラフィーヌは彼を見上げる。彼の表情はいつもと変わらないものの、じっとセイラ達を見つめていた。
そして、セラフィーヌの呼び掛けに答えず、彼はセイラ達の方へと歩いていく。セラフィーヌのことも頭にないのか、その場に放置したまま行ってしまった。
「ライトくん!」
『あわわ! いーちゃ、どしたのら!』
水泉自ら、剣の姿から液体になり、セラフィーヌの頭上をふよふよと浮く。これでも、今回のライトの仕事がセラフィーヌの付き人であることは理解していた。付き人ということは、側にいてセラフィーヌを守る人のことだ。それを知っていた水泉は自身の判断でライトから離れたのだ。
『ふぃー、いーちゃ、どしたの?』
「わ、わかんない」
残されたセラフィーヌもライトの行動は理解できなかった。仕方ないので、彼から遅れて水泉と共に後を追いかけることにした。

ライトが二人に多少なりとも近づけば、会話の内容が耳に届くようになった。相変わらず、男性がセイラの手を握り、興奮気味に話しかけているところだった。
「──流石、各地を渡り歩き、演奏をしているだけはありますね。話に聞いていた通り、とてもお上手で、音も合わせやすかったです!」
「いえいえ、そんなことは。……また、機会がありましたら、ご一緒しましょう? お声をかけてくだされば、どこにでも行きますよ? 私♪」
「本当ですか! 是非! いやぁ、それなら今度は、僕とセイラさんだけでなく─」
「談笑中に失礼。彼女をお借りしても?」
二人の会話を遮り、ライトは繋がれていた手を振り払うようにセイラの手を取って、自分の方へと抱き寄せる。
突然の出来事にセイラは呆然とし、男性もまた、目を丸くしていた。
「は、わ……え、ライト? どうして」
「……それとも、彼女とまだ何か?」
セイラの言葉に反応はせず、じっと男性の方を見る。自分にしては感情的になっていると感じつつも、それを抑えることができなかった。
一方、ライトの行動に男性は訝しげに見つめ返すものの、セイラが嫌がる素振りも見せず、身を委ねているのを見たからか、特に追及もせず、首を横に振る。
「いえ。私達の演奏は先程で終わりですから。セイラさんが大丈夫であれば、私は問題ないですよ」
「そうですか」
「ええ。……では、セイラさん。今度は妻を交えて、三人で演奏しましょうね」
「はい。是非♪ ウィスちゃんに元気な赤ちゃん産んでねってお伝えください」
「もちろん。では、僕はこれで」
楽器を携え、男性はこの場から立ち去った。
セイラは思い出したかのようにパッとライトから離れ、先程の行動について問い質した。
「ライト! さっきのは何なの? 急にあんなこと……その、びっくりしちゃったじゃん!」
びっくりして何も言えなかったし、混乱しちゃったんだけど、とセイラは文句を続けた。ライトはばつが悪そうにしつつも、そう言えば、と話を無理矢理変えていく。
「さっきの人は?」
「え? あー……クリフさんだよ。お友達の旦那さんなの。私の友達、ウィスちゃんって言うんだけど……ウィスちゃんも私と同じ音楽家の子で、いつもはクリフさんと二人で活動してるの。でも、ウィスちゃん、今、妊娠してて、仕事を休んでて。その代わりを私が引き受けたの」
「……つまり、あの人は知り合いの音楽家ってことか?」
「そそ。音楽仲間ってやつ? まあ、知り合い程度の仲だけど。それがどうかした?」
「いや。何でもない」
そうは言いつつも、先程まで感じていたモヤモヤが消えていることに関して、内心不思議に思っていた。
いつもと雰囲気が違う彼をセイラも不思議そうに見つめるものの、ふととあることが気になり、こてんと首を傾げる。
「それよりもライト。セラちゃんは? 今の時間、一緒じゃなかったっけ?」
「…………あ、やべ。置いてきた」
「はっ!? なんで置いてきたの!? 大変、探さなきゃ……!」
セイラがどこかへ駆け出そうとした瞬間、物陰からひょこっとセラフィーヌが顔を覗かせた。
「だいじょぶだよ。すっちゃんとここにいるから」
『いるのら』
ほっと胸を撫で下ろすセイラとは対称的に、ライトはセラフィーヌと目線を合わせ、ペコッと平謝りする。
「お嬢。……置いていってすみません。それと、水泉もお嬢の側にいてくれて、ありがとう。助かった」
「うん。この後、たこ焼き買ってくれたらゆるしたげる」
不満げなセラフィーヌはむすっとしたまま、たこ焼きを要求する。ちなみに、ルーメンから預かったお金では足りない。つまり、たこ焼き代をライトが支払えという要求である。
「はい。買います……買わせていただきます」
「よろしい」
とは言うものの、やっぱり置いていかれた件はセラフィーヌにとっては不服だった。未だに不満そうにする少女に、セイラが苦笑しつつ、セラフィーヌの頭を優しく撫でた。
「まあまあ♪ きっと、ライトもわざとじゃないよ。美味しいたこ焼き買ってもらって、許してあげよ?」
「む~……まあ、お姉様がそう言うなら!」
「じゃあ、この後は美味しいたこ焼き屋さん目指そうね♪ その前に荷物まとめてくるね!」
セイラは関係者専用のテントに入り、数分もしないうちに着替えも済ませ、自身の荷物を持って、テントから出てきた。
「よぉし! 行こっか、セラちゃん」
「うん!」
二人が手を繋ぎ、ライトの前を歩いていく。
それを後ろから眺めつつ、再び水泉を剣に戻して装備し直した。その際、水泉が誇らしげに話しかけてきた。
『いーちゃ、つきびとしないから、すっちゃしたの。ほめてー♪』
「あ~……うん。偉い偉い」
『わー! ざつだー!』
「いつもだろ」
『むゆ~……あ! ねー、なんでさっき、きゅーにせいちゃんとこ、いったの?』
この質問にライトは一瞬黙る。そして、首を傾げ、「……なんでだろうな」と呟いた。



~あとがき~
ここら辺、によによしながら書いてます。我ながら、キモオタクすぎるムーブで笑う。

次回、三人で祭り回る。
次回からは好き勝手タイム(訳:私のオリジナル展開)スタートです。

作中で年齢明かしてないですが、セラさんは十一歳。(唯一、年齢明かしてる人)
ライトとセイラは十代後半くらい。
多分、現在のラルやティールとほぼ同じ年。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第361話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、最後の仕上げ(?)みたいな場面をお見せしました。いや、仕上げなのか……?
とりあえず、祭り前の仕上げだと思ってくだされば!
今回からはそんな種蒔きが功を奏すのか!?
という女神祭でのお話です。お楽しみに。


女神祭当日。
普段から観光地としても名高いスプランドゥールだが、今日は祭りもあるためか、いつも以上に賑わっていた。
そんな中、ライトはセラフィーヌの付き人として大通りを歩いていた。目指す先はセイラが出演するという演奏家達の集まるエリアだった。
上機嫌なセラフィーヌは鼻歌混じりに辺りを見回し、街の雰囲気を楽しんでいるようだった。この後、神子としての役目もあるのだが、そんなことはお構いなしにはしゃいでいる。
一方のライトはと言うと、どこか眠そうにふわりと欠伸を噛み殺していた。祭りがつまらないから……という訳ではなく、ここ数日、祭りの準備と平行して、通常業務も適当にこなしていたため、寝不足気味であるためだ。まあ、こちらはこちらで通常運転でもある。
「ねえねえ、ライトくん! すごいでしょ、これがうちの夏祭りなんだよー!」
まるで自分事のように誇らしげに語るセラフィーヌ。一応、関係者ではあるため、あながち間違ってはいない。
セラフィーヌの言葉にライトも辺りを見回す。どこの店も活気が出ていて、街行く人々も楽しそうにしている。そんな光景を眺めつつ、少女の言葉に同意した。
「そうですね。話には聞いていましたが、ここまでの賑わいを見せるとは」
「ふふ~ん♪ でしょでしょ! あ、ライトくん! ポテト食べたーい!」
「ポテトでいいんですか。もうお金はあまり残ってないですよ」
と言うのも、ライトがルーメンから「セラのご飯とか遊びで使う金はここから使え」と
セラフィーヌ専用のお財布を受け取っていた。その財布から、ゲームの屋台で使ったり、駄菓子屋で買い物したりとちょこちょこ使っているため、残り金額も少なかった。
それを分かっているのか、いないのか、欲望に忠実な少女は「いいよ!」と満面の笑みで答えた。
いいと言われた手前、否定するのもおかしな話。ライトは黙ってセラフィーヌの言われた通りにポテトを購入し、彼女に手渡した。
「ありがと、ライトくん♪」
「どういたしまして。それにしても、お嬢」
「ふぁ~に~?」
「なぜ、俺がお嬢の付き人に? 自分で言うのもなんですが、俺と祭り回ってて楽しいですか?」
ポテトを頬張りつつ、セラフィーヌはライトを見上げる。
付き人なら、ギルドメンバーなら誰でもいい。別にライトでなくたって問題はない。……その通りだった。ライトの認識は間違っていない。彼の疑問も最もだ。
セラフィーヌの本心を言えば、確実にライトを祭りへと引っ張り出すための口実が欲しかったにすぎない。それがなければ、ライトと祭りを回る必要はなかったかもしれない。
しかし、一つ言えるとすれば。
「ライトくん、女神祭、初めてなんだもん」
「……?」
「初めのライトくんをセラが案内しなきゃって思ったの」
この言葉も本心からだった。
普段、あれこれ口出してはいたが、セラフィーヌはライトが嫌いではない。なんなら、セラフィーヌが何を言っても、やろうとしても、側にいて付き合ってくれるライトを慕っている。きっと、普通の大人なら注意なり、静止なりし、無理矢理やめさせようとすらするはずなのに、ライトはそれをしない。
そんな彼の優しさがセラフィーヌには心地よかったのも事実であった。
「……もしかして、やだった?」
「いいえ。お心遣い、感謝します」
「えへへっ♪ あ、こっちだよ、ライトくん。お姉様のいる所!」
セラフィーヌはライトの手を引き、道を曲がる。ライトはそれに黙って従っていた。
「今年もたくさんの人が来てくれてよかった! ってことは、お姉様の演奏もたくさんの人が聴いてくれるね!」
「そうですね。……まあ、あいつはそういうの慣れてそうですから、緊張しなさそうですが」
「お姉様の演奏、楽しみ~♪ あと、お歌! 歌うかな?」
「どうでしょう? 俺は出ることしか聞いてないから……詳しいことまでは。着くまでのお楽しみってやつですね」
「確かに。お楽しみは取っとかなきゃね♪」
他愛ない話をしながら、目的地を目指す二人の前に突然、不満そうな声が聞こえてきた。
『いーちゃ! もーやだ!』
『まわり、たのしーのに、すっちゃたち、きゅーくつ!』
と、ライトのバッグから飛び出したキラキラと液体……もとい、ライトの相棒の二振り、聖剣の雪花と水泉だった。
雪花と水泉の言い分としては、周りは楽しそうなのに、自分達だけバッグに詰められ、つまらない。こちらも一緒に楽しみたい。……そういうことらしかった。
わーわー叫ぶ聖剣にライトはため息をつきながら、冷めた目でじっと見上げる。
「あー……うるさ。つか、仰々しくお前ら装備したくないから、そこに突っ込んでたのに。家に置いてきてもよかったんだぞ、こっちは」
『なーんだとー!? いーちゃのおに!』
『そーだそーだ! いーちゃのあくま!』
「置いてくなんてだめだよ! ライトくん、いじわる!」
「……なんでお嬢まで?」
言い合っていたのはライトと聖剣だけだったはずだが、そこになぜかセラフィーヌが頬を膨らませ、聖剣の味方をしていた。
「だって、ライトくんが二人を戻そうとするから!」
「戻したい理由、言いましたよね? 俺」
「でも、みんなといる方が楽しいもん。ね、すっちゃん、せっちゃん!」
『ねー! ふぃー、わかってるー!』
『ねー! ふぃー、やさしいのらー』
「俺が悪いのか、これ。俺が間違ってんの?」
多数決なら、一対三でライトの負けである。そうでなくても、このお転婆トリオを納得させられるだけの理由をライトは思い付かなかった。
仕方ないので、聖剣を剣に戻し、装備することで妥協した。二人はこのまま、ふよふよと浮いていたかったらしいが、それはそれで人の目につく。二人が剣に戻らなければ、即刻引き返すとライトが言えば、二人は─セラフィーヌを入れると三人─しょぼしょぼしつつ、聖剣はライトに帯剣された。
そんなやり取りもありつつも、ようやく目指していた演奏家達のエリアへと辿り着いた。
ここでは、一つのステージを音楽家達が歌や楽器、パフォーマンスを披露しており、ライトとセラフィーヌが来た時には、ちょうど、セイラのステージが始まるところだった。
「お姉様だ!」
「タイミングよかったみたいですね。……お嬢、空いている席に座りましょう」
「うんっ!」
セイラは男性とデュエットで演奏を披露するらしい。二人ともギターを持ち、セイラはギターを弾きながら、歌も歌っている。
「はわ~……お姉様きれい~♪」
『せいちゃのおうた、ひびくのら!』
『となりのひともおじょーずなの! せいちゃのおともらちかなー?』
セイラはパートナーと目配せをしつつ、息を合わせて演奏をする。その光景はとても楽しげである。
普段のセイラはソロで音楽をしているため、誰かとする姿は珍しい。だから、彼女自身も楽しんでいるのかもしれない。実際、演奏者の二人は楽しそうだし、二人の奏でる音は調和の取れた完成度の高いものである。
そんな二人の作り出す音楽をセラフィーヌとライトは心行くまで堪能したのだった。



~あとがき~
続きまでぶわっと書きたかったけど、長くなりそうな予感しかしなかったので、終わり。
なんか中途半端やけど、許せ……!

次回、セイラと合流。
祭りはまだまだこれからだぞい☆

セラさんと聖剣らはなんか仲良しです。
ルーメンさんとも仲良しだったので、その延長線ですかね? 理由は知らん←

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第360話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界わいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回はセラちゃんがお姉様の幸せのために奔走してました。
今回も似たようなものです。のほほーんとお楽しみください。


女神祭の準備の傍ら、セラフィーヌはセイラのためにと、あらゆる根回しをしていく。
まずは今回の件を実行すると決めた日、真っ先にルーメンの元へ赴いたにも関わらず、事情の一つも話してなかったことを思い出す。そのため、カズキとハルの協力を得たその日の夜に再び、ルーメンの元を訪れ、事のあらましを話した。
ルーメンはセラフィーヌから事情を聞けば、彼女が何をしたいのか、何を狙っているのか、全て理解したらしく、面白そうに笑い、協力を快く受け入れた。
次に、ライトやセイラと関り合いの深いギルドメンバーそれぞれに、祭り当日の作戦について簡単に話し、セラフィーヌが─厳密に言えば、セラフィーヌだけではないのだが─裏で動いていることは、二人に秘密にして欲しいと頼んだ。
元々、『そういった』ことが好きなメンバーは多い。話を聞いたメンバー達は楽しそうにしながら、セラフィーヌからの要請を聞き入れた。
また、当の本人達……特にライトに関しては、セラフィーヌがいつも以上に問い詰めていた。それに加え、祭りの参加にも耳にタコができるほど、よく言い聞かせていた。
「いーい? ライトくん。今年の夏祭りはぜーーったいに参加してね!」
「はいはい。……親方からもそのように聞いてますよ。現に、当日はお嬢と回るよう言われてますし」
「それはセラも知ってる。だから、セラと離れた後も参加してよ?」
「……? ってことは、最後まで?」
「もちろん! お祭りの後の花火、すっごいんだから! ちゃーんと見てよね!」
「はあ……? 分かりました」
聞いているのか、いないのか、はっきりしない返事しか寄越さないものの、これだけ聞かせれば、忘れてました等と言うこともないだろう。いや、あってはならないのだ。
セラフィーヌが「そんな言い訳をしてきたら、絶対許さない! もし、そんなこと言ったら、とことんお説教だもん!!」と心の中で決心するくらいには再三、彼に伝えている。
──そのような日々を送りながら、女神祭まであと数日という今日。セラフィーヌは舞の練習の合間を縫って、セイラの元を訪れていた。
彼女もまた、限られた時間のみではあるものの、祭りで演奏を披露する演者。ここの所、練習や打ち合わせ等々で忙しそうにしていた。今も当日に使用する楽器の調整をしている最中にセラフィーヌが宿へやって来た次第である。
そのような状況にも関わらず、セラフィーヌの訪問に嫌な顔一つ見せないのは、彼女の優しさに他ならない。
二人はいつも通り他愛ない話をしていると、不意にセラフィーヌが甘えるようにセイラに抱きつく。
「? セラちゃん?」
「あのね、お姉様。……セラね、お姉様にお願いがあるの」
突然の申し出にセイラは首を傾げる。彼女にとって、セラフィーヌのお願い事を聞くのは珍しくはない。しかし、あまりにも突然だったから、多少なりとも驚きはした。
「お願い?」
「うん。……お祭りの最後にやる神子探し……セラ、お姉様に捕まりたいの。……ライトくんと一緒に」
「え……と、神子探し?」
セイラは神子探しのジンクスを知っていた。ジンクスはそれなりに有名で、その手の話に興味のあったセイラは、誰かに聞くまでもなく、内容を把握していたのだ。
つまり、捕まえた二人はより絆を深められるジンクスがある……という大雑把なものではなく、同姓なら永遠の絆、異性なら永遠の幸せな暮らしを……というものであることを知っていた。
セラフィーヌの言う通り、ライトと参加し、今年の神子、ケアル親子を捕まえたとしたら、得られるであろうジンクスが後者のものになる。それはセイラとって、不都合でしかない。例え、単なるジンクスだとしても。
セイラからの返答がないのはセラフィーヌがわざと捕まりたいのでは、と勘繰られたと思った彼女は慌てて、訂正した。
「あ! セラ、手加減しないから、だいじょぶだよ!? 手加減はしないけど……捕まるなら、お姉様がいいなって」
「え、えと、そこは疑ってないよ。セラちゃん、お利口さんだもの。……そうじゃなくて、ライトと一緒に神子探しに参加してほしいってことなのかなーって思ってて」
「そうだったの? なら、よかった!……そうだよ、お姉様とライトくんとで参加してほしいの!」
「そ、そっか……でも、ライトの都合もあると思うんだよね。ほら、ライトはギルドの人だから、当日は街の警備とかお仕事あるんじゃ」
「ううん。ライトくん、午前中はセラの付き人のお仕事あるけど、それだけだよ。……あのね、セラとお祭り回る約束してるの。お姉様も一緒に回ろうね?」
「あ、うん……そっか、ライト、今年は仕事、あんまりないのか」
去年の経緯は本人からも聞いていたし、セラフィーヌからも聞かされていた。だからこそ、今年も何らかの仕事を振られているだろうと、勝手に解釈していたのだった。
「その後のライトくん、暇になるの。だから、セラがライトくんを神子探しにも参加させるから、安心して?」
セイラとしては、どこにも安心できる部分はなかった。しかし、セイラはセラフィーヌのお願いに弱かった。
「……お願い、お姉様。だめ、かな?」
特に上目遣いによるうるうる攻撃には弱かった。まさしく、今、行われているそれに弱いのである。
「わ、分かった。……頑張ってみるけど、期待しないでね?」
「わあ~っ! ありがと、お姉様! 大好きっ!」
再び、むぎゅっとセイラに抱きつくセラフィーヌ。とても嬉しそうにしている彼女に、セイラも何も言えなくなってしまう。
「……神子探し、か。今から何か対策考えなくっちゃだなぁ」
セラフィーヌの頭を撫でつつ、半ば勢いに負けて参加を決めた神子探しについて、思考を廻らせるセイラだった。

一方その頃。
ギルドメンバーは祭りの準備に駆り出されて、街中やギルド内をあちこち駆け回っていた。
ライトもまたその一人であり、彼の先輩であるカズキとハルと共に、屋台で使われるだろう機材を運んでいる最中だった。
その道中、隣を歩くライトに視線を向けつつ、「暇だし、一つ、聞いてもいいか?」と話しかけた。
「暇ではないですが……何でしょう?」
「お前さぁ、セイラさんとは友達のまんまなのか? ほれ、ここ最近、ずーっとお嬢に聞かれてたろ? お姉様とはどーなんだーってさ」
セラフィーヌからのお願い。……ライトにセイラの思いを気づかせること、そのお願いを達成するべく、今まで何度か似たような問いかけをしてきた。しかし、あまり成果は上げられていないのが現状だった。
女神祭まで日もないとはいえ、元より、最初から過度な期待もしていない。だからと言うわけではないが、そこまで焦っているわけではなかった。しかし、焦りはなくとも、やり場のないモヤモヤ感は抱え込んだままだった。
どこまでも鈍感な後輩に、これ以上、なす術も見当たらないまま、今日も適当に質問を投げ掛けている。
「あぁ、はい。……言われていましたが、友達のまま、と言うと?」
「なんつーの? ライトはセイラさんを嫁に迎えたりしないのかなーって。……お前の場合は王妃か」
最後の部分だけは声を潜め、ライト本人にしか聞こえないようにした。否、側にいるのはライトだけではない。ハルもいる。彼にも話は聞こえていたため、カズキの話を補足するように話しかけた。
「ほら、ライトってギルドの人以外とは、セイラさんくらいとしか仲良くしてないからさ。だから、そういう考えがライトにもあるのかな~って僕らも思ってたんだよ?」
「確かに、セイラ程仲のよい女性はこの街だと彼女しかいません。……しかし、彼女を嫁に迎えたり……ですか。今まで考えたことないですね。セイラとは単なる友人関係ですし」
ライトの場合、言葉通りの意味の告白なのか、そういった目で見ていないという否定の表れなのか、二人は判断できなかった。
まあ、恐らく前者だよな、ライトだし……という思いはなくはないが。
今回も駄目か、と思いつつ、カズキは話を切り上げるため、適当に話をまとめていく。
「ふーん? じゃあ、セイラさんが他の男と仲良くしてたり、結婚したって聞いても、ライトはセイラさんと友達として接していくんだ? 確かに、お前は気にしなさそうだもんなぁ」
「いいこと言ってるのに……そういうところですよ、カズキさん」
「あ? 何が」
仮にライトの中でセイラが特別な存在だとしたら、『他の男』という言葉は刺さるかもしれない。しかし、発言したカズキは意識して言ったわけでない。彼はそういう男である。
「いや、ほんと。そういうところっす。そういうところ」
「だから、何が?」
カズキの言葉にライトはぴたりと動きが止まった。しかし、二人はそれに気付かないまま、持っていた荷物を所定の位置に下ろしていく。
「ライト、お前の持ってる荷物はこっちに……? ライト、どうかした?」
ライトの異変に気付いたのは、ハルが荷物を持ってこいと指示しようと振り返った時だった。
彼は足元に荷物を下ろし、胸に手を当てながら、何か考えているように見えた。
「ライト? 大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です。……カズキ先輩との話が途中でしたね。俺は彼女が幸せになるのなら、友人としてその道を応援しますよ」
「はーん? そっか~……お。ライト、そっちに入ってるはずのコード、こっちにくれ」
「今、持っていきます」
下ろした荷物を再び抱え直したライトはカズキの側に近寄り、コードを手渡した。
そんな光景を眺めつつ、ハルの心には、もしかしたら、お嬢のお願い、達成してるかも?……という淡い期待が生まれる。
でなければ、先程のライトの反応に説明がつかないからだ。とはいえ、確信があるわけではない。あくまで、そうだったらいいなという希望でしかない。
それでも、今の変化が何かに繋がればよいと思いながら、ハルは作業に戻った。



~あとがき~
次から祭りだわっしょい。

次回、女神祭!

後半の話、セラさんいないんですけど、ここは三人称視点のいいところと言いますか。後日、こんなことあったと聞きまして~の体で、語り聞かせているみたいな状況だと思ってくだされば。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第359話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で奮闘してる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回からセイラとブライトの馴れ初め話が始まってます。いやはや、書ききれるんでしょうかね?(笑)
頑張るぞいっ☆


ギルド前でセイラと別れたセラフィーヌは足早に真っ直ぐとある部屋へと向かった。
目的の部屋の前に来れば、堂々と扉を開け放ち、部屋の中へと入っていく。
「お父さまーーーー!」
「うおっ! セ、セラ!?」
セラフィーヌが入室した部屋、それは明けの明星の長─ルーメン親方の仕事部屋だった。そして、ルーメンはセラフィーヌにとっては実の父でもある。
ルーメンは突然現れたセラフィーヌに呆れつつ、お決まりの台詞で注意を促した。
「お父さんが仕事中の時は、必ずノックをしなさいと、いつも言っているだろう?」
「お父さま! あのねあのね!」
父の注意には耳を傾けず、セラフィーヌは無邪気に目を輝かせ、話をしたそうに見つめてくる。こうなってしまったセラフィーヌは相手の話を聞いてはくれない。
ルーメンは仕方なしにセラフィーヌに話をするように促してやる。
「……なんだい、セラ?」
「あのね! 今年の夏祭りには絶対、ライトくんをスプランドゥールにいさせてね!」
「? ライト?」
「うん! 去年みたく、どこかお仕事に行かせちゃダメだよ!?」
その言葉にルーメンは、去年の今頃を思い出す。
あの頃、急に舞い込んできたダンジョン調査の依頼。その調査のため、手の空いていたライトが受けることとなり、街を離れていた。結果、彼は一度も女神祭に参加していない。
そんな事情もあり、今年こそは参加させてやろうとルーメンは考えていた。第一、去年のダンジョン調査もライトではなく、別の人に行かせられないかと考えていたが、本人に言いくるめられてしまった結果でもあるのだが。
「今年はそんな予定はないよ。仮に似たようなことがあっても、ライト以外を人選するぞ、流石に。……しかし、なんでいきなり、そんなことを言い出して─」
「お姉様のためなの! 絶対だからね!? ライトくんにはお祭りのお仕事をさせるの! 約束!」
「お、おう……? 分かった……分かったが、なんで─」
「ありがとう、お父さま! じゃあ、セラ、今度はカズキさんとハルさんのところに行かなきゃなの! お邪魔しました!」
ルーメンの話を聞かず、また、説明もしないまま、セラフィーヌは部屋を出ていった。まさしく、嵐のようにやりたい放題した挙げ句、こちらの事情など考慮してはくれなかった。
「な、なんだったんだ……?」
「……またいつものお嬢様の暴走、でございましょうか?」
と、今までの経緯を黙って見守っていた執事、カルタムが答える。
執事の言葉にルーメンは肩をすくめ、どこか釈然としないまま、仕事を再開させる。
──ルーメンがセラフィーヌに事情を説明されるのは、もう少し後の話である。

「ただいまー!」
ルーメンの元を後にしたセラフィーヌが次に訪れたのは先程、ライト達が作業をしていた資料室だった。
三人とも、まだ仕事をしていたのだろう。それぞれが机に向かい、書類作成に勤しんでいた。
ハルがにこりと笑いながら、セラフィーヌを出迎える。
「お帰りなさい、お嬢。ご機嫌はすっかり直ったみたいですね?」
「お姉様とデートしたからね!」
「流石、セイラさん。お嬢のご機嫌を直す天才だな~♪」
「そうですね。それに関して言えば、セイラの右に出る者はいません」
「ちげぇねぇわ~♪」
なんて雑談をするカズキとライトの方にセラフィーヌが近づき、ライトの隣に立つ。
「ライトくん」
「はい。……って、また俺?」
「うん。お父さまが呼んでたよ」
「親方が? 今日の親方補佐はカルタムさんのはずですが。……俺、何かしたっけ?」
「わかんない。でも、早くーって言ってた」
全く思い当たる節のないライトはしばらく考え込むものの、やはり、心当たりはないらしい。
「ん~……? まあ、いいか。行けば分かるだろ。……すみません、先輩。行ってきます」
「おう。行ってらっしゃい」
「こっちは気にしないで大丈夫だから。何したか知らないけど、気を付けなよ?」
「は、はい。……いや、気を付けようにも、本当に心当たりがないんですけど。……お嬢も伝言、ありがとうございました」
「うん!」
ライトが部屋を出ていくのを見守ったセラフィーヌは、先程まで彼の座っていた席に座る。そして、開口一番、「二人に話があるの!」と真剣な眼差しを向ける。
「は、話? 俺らにですか?」
「うん! というか、お願い? ライトくんには内緒のお願いがしたくて!」
この言葉に二人は、先程の話が全て嘘であると悟る。ライトを部屋から追い出すための口実だったのだ。それならば、ライトに心当たりがないに決まっていた。
「お願いってなんですか?」
「あのね、ライトくんにお姉様の気持ちを気づかせてほしいの!」
「「…………えぇっ!!??」」
「ライトくんに自覚してほしいの! ライトくんにとって、お姉様がどんな存在なのか分からせたいの。……お願い、協力して!」
「……とは、言いますけどね、お嬢。ヤツにそれをさせるのは、至難の技といいますか……難易度高すぎやしませんかねぇ?」
「カズキ先輩の言う通りです。それができてるなら、お嬢は毎度のようにライトに詰め寄ってないし、とっくにあの二人の仲は進展しているのでは?」
「そ、そうなんだけど……でも、完全に気づかせるまではしなくても、ちょっとでもできないかな?」
ハルとカズキは唸りながらも黙ってしまう。
それができれば、苦労はない。まさにこの言葉通りであった。
「そもそも、なんでいきなり、そんなことを言い出したんです? いや、いきなりではねぇけど……お嬢がここまでお願いするってことは、何かあったんですか?」
「お姉様が悲しそうだったんだもん。ライトくんのお友達でいれるだけで幸せなんてウソ。……セラ、お姉様にはずっと笑っててほしいし、幸せになってほしいんだもん!」
「あ~……なるほど。お嬢はほんと、セイラさんが好きっすねぇ?」
カズキの言葉にセラフィーヌはふんっと鼻を鳴らし、誇らしげに胸を張る。
「当然! だから、夏祭りまでに何とかしたいの!」
セラフィーヌが夏祭り、ことに女神祭に拘る理由は少し考えれば一つだけ思い当たった。
「もしかして、お嬢、女神祭の神子探しのジンクス、使おうとしてます?」
カズキがそう告げれば、セラフィーヌは満面の笑みで頷いてみせた。
そして、彼の隣で話を聞いていたハルは少し首を傾げ、ジンクスの内容について、思い出しながら話していく。
「ジンクス……って言うと、神子を捕まえた人には幸運が訪れるってやつっすか?」
「うんにゃ? それは捕まえた人に与えられる、ご褒美的なやつだろ。ジンクスっつーのは~……あれだ。簡単に言えば、捕まえた二人の絆が深まる的なやつ」
本来はもう少し、事細かく語り継がれているのだが。今はそこを話す必要はないと判断した。
カズキの語るジンクスで合っていたのを示すため、セラフィーヌは嬉しそうに何度も頷く。
「それってつまり、お姉様とライトくんが、セラとお父さまを捕まえたら、ずっと仲良くなるんでしょ!」
純粋無垢な笑顔を二人に向ける。
セラフィーヌは言葉通り、二人に仲良くなってもらいたいのだ。そのきっかけとして、神子探しのジンクスを利用したい。その思いで二人に協力を仰いでいた。
そんな意図を読み解いたハルは一人静かに納得し、同じくカズキも何度か頷く。
「あ~……そういうことかぁ」
「こうなったお嬢は、誰にも止められねぇかんな。なるべく頑張ってみますわ」
「そうっすね。……あまり期待しないでくださいね、お嬢? 相手は、あのライトなので」
「うん! 大丈夫! よぉし、セラも頑張るぞー! 全てはお姉様のためっ!」
二人の協力者を得たセラは気合い入れのため、これ見ようがしにガッツポーズをした。それを見た二人は苦笑を漏らす。
「……お嬢、セイラさん信者過ぎじゃね?」
「否定できないっすね。あの二人が出会った当初、こうなるとは思ってませんでした」
「俺も~」



~あとがき~
セラフィーヌちゃん、やりたい放題(?)してます。

次回、祭り前日の仕上げ。
セイラとブライト、それぞれの仕上げ行程(笑)をお見せします。

現状、語らなければならないことはないので、さっさと終わります。
今後の展開に期待じゃい!

ではでは。