satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第222話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で戦闘する物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回から場所が変わって、森の中を探索中な二人です!
この夏休み中のお仕事話、そこまで長くやるつもりなかったけど、着々と話数を重ねてますね。これは夏休みメインの話ではないので、十話を越えないといいんだが。


《Te side》
ダンジョン内が広いと、同じ場所でも景色ががらっと変わることがある。生い茂る山道だったはずなのに、岩山だらけの場所に出たり、晴れていたのに天候が一転して大荒れになったり。
これもまた、ダンジョンの効果と言うべきなのだろう。もしくは、何者かによる故意的に行われている場合もあるか。
……ぼくが何が言いたいかって、これまた単純なのだけれど。
「なんだこれ。……視界悪すぎ」
木々の障害物で視界が遮られることはあれど、基本、視界は良好だったのに、今は濃い霧に包まれていた。ほんの数メートル先もさっぱりになってしまっている。
そんな状態でもバッジ機能の一つ、マップ表示は優秀で、ぼくの現在位置は問題なく表示されていた。だからって、この霧が邪魔なのには変わりはないけど、迷うことがないのは助かる。
「濃霧ってやつかな。悪天候……」
ラルと歩いていたときはなんでもなかったのに。ぼく一人になった途端、これだ。運がないとはこのことである。
こうも視界が悪いと、自然と動きも慎重になってしまう。進むスピードを落とし、見落としのないよう、うっかり敵の先制を許さないように神経を尖らせる。
そうして探索を続けること、数十分。
遠くの方でモンスターの声を聞いた気がした。もしかしたら、目当ての討伐相手かもしれないと少しの期待を抱きつつも、より慎重に歩を進めた。
「……あれ、は」
ぼくが捉えた敵は確かに、この森に相応しくないやつだ。なのだが──
「ゾンビ的なドラゴン……?」
『ぞんどら』
『ぞんどらぞんどら』
うん。その略称、流行らないと思うよ……?
のっそのっそと歩くそれは、竜特有の強固な鱗も、立派な翼もない。全てがボロボロで、鱗は所々剥がれ落ち、翼も破れてしまっている。それでも、かつての風格を表すように強敵のオーラだけは感じ取れる。
見つかる前に、見失わない程度の距離を保ちつつも、敵との距離を取る。視界が悪いと言っても、気配はあるので、シルエットがぎりぎり見えるくらいは離れておく。それでも、いきなり振り向かれれば、遠心力パワーで威力倍増した尻尾攻撃とか当たりそうだけども。……多分、そんな素早い攻撃はしてこないだろう。
「前回といい、今回といい、なんでお化け関連の依頼をラルは持ってくるのかな」
正確には、今回の相手は、ぼくが嫌いなお化けではないのだけれど。そういうことではなくてだ。
『てぃー! きょーは、ざんげきもきく!』
『よかったねー!』
そ、そうですね……!
なぜか上機嫌なスイとセツは放置して、ぼくはラルに連絡する。もちろん、声は潜めて。
「ラル? 目当てのゾンビドラゴン、見つけたよ」
『お。やっぱ、そっちいくかぁ』
……やっぱり?
『こういうときのティールって何かと引き寄せるじゃないですか。いやはや、運がいいねぇ』
えぇ……嬉しくない。
「討伐相手、ゾンビドラゴンって聞いても大して驚いてないんだね? もしかして、君、討伐相手がゾンビドラゴンって知ってたんじゃあ」
『サプライズってやつだ』
嬉しくない!!
通信機越しに楽しそうに笑うラル。警戒心を感じさせないその声に、安心半分、苛立ち半分と複雑な感情が沸き上がってくる。
「こっち、来れそう?」
『そりゃあ、目当てはそっちにいるからね。今から向か……あ、ごめーん。そこそこ遠いわ。何事もなく急げば十分かかるって感じ』
マップ表示させて、位置情報を見たのだろう。ラルの言葉を聞く限り、思った以上に離れたところにいるらしかった。
くそ、どんだけ広いんだよ。
『私を待っててもいいし、ティール一人でさっさと倒してくれてもいいよ』
「えっ」
いつものラルなら、到着するまで待てって言いそうなのに。いや、別れる前は一人でも問題ないとは言っていたけれども。
『おあ? あー……ごめん。そっちは任せるわ。切るね』
「あ、ちょ、ラル!?」
数秒前はどっちでもいいと言ったくせに、二言目にはそれを撤回し、ぼくに丸投げしてきた。慌てて、ぼくから何度も呼び掛けるものの、ラルがそれに応えることはない。
……何かあったんだろうか。だとしたら、そっちに向かった方がいいかもしれない。
ぼくはちらりと標的の様子を窺う。相変わらず、ぼくに見向きもしないドラゴンは、のっそのっそと歩くだけ。攻撃してくる様子もなければ、暴れる様子もない。しばらく放置していても問題はないようにも見えた。
ラルと連絡取れるようになるまで、見張るだけ見張る? それとも、スイかセツをここに残して、ラルのところへ向かうべき? それとも、さっさとこいつを倒して、ラルと合流すべきなんだろうか?
……いや、こうして、悩んでいる方がもったいないか。リーダーの最初の言葉を思い出せ。ぼく一人でも大丈夫だと言っていたんだ。ならば、ぼくのやるべきことは。
「目の前の仕事を終わらせて、ラルのところに行く、だ」
そもそもの話、せっかく見つけたのに、こそこそ隠れていたり、尻尾巻いて逃げるのは男として駄目だよね。うん。
「やろうか。スイ、セツ」
『ほいさ!』
『ほあほあー!』
ぼくはスイとセツを抜き、中段で構える。偶然とは言え、敵の背後について回れているのだ。ここで不意打ちしない手はない。
ラル程のスピードは出せなくとも、攻撃回数や基本攻撃の威力はぼくの方が上だ。
この一撃で半分くらいの体力持っていくくらいの気持ちで!
「……せやっ!」
ぼくが出せるトップスピードで突っ込み、スイには水属性、セツには氷属性の力を込めた属性攻撃を繰り出した。鱗のない部分を狙い、何度かの連擊を打ち込んでおく。
突然の痛みにドラゴンは苦しそうな声をあげ、翼を大きく羽ばたかせた。飛ぶつもりというよりは、痛みを逃がしたいためにやっているだけらしい。もしかしたら、人が痛みにのたうち回る感覚に近いのかもしれない。
「休ませない……!」
斬擊も有効であると分かった以上、間髪入れずに攻撃するに限る。考える隙を与えない。反撃の暇なんて与えない!
どたばた暴れるドラゴンに何度も何度も斬りかかる。単純な斬擊よりも、属性乗っけた方がダメージは多そうなので、スイとセツに力は込めっぱなしである。
『てぃー! しっぽぶんぶんくるー!』
「了解!」
動きが鈍かった割に、ぐるんっと勢いよく体を捻り、鞭のような尻尾による薙ぎ払い攻撃を繰り出してくる。ぼくは後ろに大きく後退し、尻尾の攻撃範囲から逃げつつも、スイを握る手に力を込めた。
「飛ばすぞ! スイ!」
『あいっ!』
スイを振るい、水の刃をドラゴンに向けて放つ。水の刃と尻尾がぶつかり合い、形を持たない水が押し負けてしまう。ぼくが放った刃は呆気なく無数の水滴となって、地面に降り注ぐ。……普通なら、ね。
「そうなると思ってた。……“水針”」
液体を自在に操る能力で、重力に倣って落ちるのみであった水滴達に別の力を乗せる。一つの刃だったそれらは、無数の小さな針となってドラゴンに向けられる。
「水に形はないし、これだけ少ないと一粒の威力なんてたいしたことない。けど、蓄積すれば岩を砕く力はある」
ゾンビとはいえ、一応の見た目はドラゴン。体力だってその辺の敵よりは多いだろうし、防御力もあるだろう。それでも。
「それに、ぼくのスイが作り出した水だ。……たんと味わえよ?」
普段、ウザったくても、聖剣の名前は伊達じゃないのだ。
針の一つ一つは小さくても、スイの力が込められている。それをいくつも打ち込まれるのだ。これでノーダメージでした、なんてのはあり得ない。
ぼくは無数の“水針”を操り、ドラゴンの全身、鱗と鱗の間を縫って直接体に打ち込んでやる。そして、間髪入れずにスイとセツで連擊。抵抗する時間もなく、ゾンビドラゴンは光の粒となって消えていった。
『てぃー、よーしゃない』
『ひとりのてぃー、るーよりおっかないのー』
……鞘に納めた二人の言葉は聞こえなかったふりをして、ゾンビドラゴンからドロップした品を黙って回収する。失くさないようにバッグにしまい、再びラルに連絡してみる。さっきはガン無視されたけれど、今はどうだろうか。
「これ無視されたら、流石に愛想尽かすよ……?」
『……んと、何の話?』
あ、出た。
「ぼくの独り言だよ。……じゃなくて、君の言う通りに標的は倒した」
『おー……さっすが、我が相棒。仕事が早くて助かるよ~』
彼女ののんびり口調とは裏腹に、背後が何やら騒がしい。具体的に何て言い表せばいいのか分からないけれど、戦闘中……みたいな感じで。
「……ラル? 今、何してるの?」
『モンスターちゃん達とお戯れ』
戯れねぇ……ラルらしいと言えば、らしいか。……ん? 達?
もっと詳しく聞き出そうと口を開きかけたとき、通信機から驚いたような声と、空を切るような音が聞こえてきた。
声はラルの声。空を切る音は敵の攻撃……!
「ラル!?」
『当たってない当たってない。んでもまあ、話してる余裕なくなってきたから、切るわ。ティールはティールで適当によろしく~』
「いや、よろしくじゃない! 場所は!? 今どこ……って、あぁぁ!? もう切ってる! 人の話は最後まで聞け!!」
こういうときのラルさんは行動が素早いようで……本日二度目の音信不通状態。学校とかで、ふらっといなくなるラルの行方を追えないのが普通だけれど、今回はダンジョン内。バッジの機能で探せるのは幸いである。
「えぇっと? ぼくの現在地がここで……ラルは……うわ。めっちゃ遠い……って、めっちゃ敵に囲まれてるのは何!?」
ラルの位置を示す印と、それを囲むように複数の反応。そして、二つ、見知らぬ反応がある。
「この二つは……フラグ回収したって認識でいいのかな。ぼくのいないところで何してるんだ」
嘆いたところでどうしようもないんだけれどね。とりあえず、ラルのところに向かうとしますか……



~あとがき~
展開がめちゃ雑なのは、いい感じの流れが思いつかなかっただけです。あと、相方主導の話じゃないからです。はい。

次回、お仕事編、終わればいいな……!

ラルと一緒にいるティールの戦闘スタイルと、ティールソロのときのスタイルは雰囲気変わります。ソロのときの方がこう……勇ましいというか、冷静と言うか、することがエグいというか。
ま、これは空海ポチャ君も似たようなところありますからね。そういうことだよ!←?

ではでは。