satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第356話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でだらだらしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、セラフィーヌさんが初参加した朝食会が開かれました。
そんなこんなで、なんことのない日常を送ります! いえい!!


《L side》
とある午前。
私とティールはしーくんと共に王宮内の散歩に来ていた。ここは王宮の正面にある庭園内だった。
しーくんと散歩をしているのは、主に先日の罪滅ぼしのためと、しーくんのご機嫌取りのためである。
「めっさ広いよな~……実は隠されたダンジョンでもあるんじゃ」
「ダンジョンはないよ。迷路はあるけど」
「迷路はあるけど!?」
ティールが指差したのは庭園の一角だ。そこは綺麗に花が植えられ、植木というか、生垣が綺麗に剪定されているところだった。
「あそこ、小さいけど迷路みたいになってるんだ。暇だし、行ってみる?」
「ほえ~……行く? しーくん」
「いくー!」
目をキラキラと輝かせたしーくんが、ばっと走り出した。とても楽しそうで何より。
「この様子だと、昼のツバサちゃんとの仲直りも上手くいきそうだね」
「だといいけど」
あの事件以降、しーくんはツバサちゃんを避けていた。ツバサちゃん自身は仲良くしたそうなのだが、しーくんからは完全にそっぽ向かれている。本当なら、当人同士で解決した方がよさそうな気もするが、如何せん、しーくんにその気はなさそうだし、ツバサちゃんもそれを感じ取ってか、しーくんに近付けないでいる。それがもう不憫で仕方ないので、こちらで場を設けることにしたのだ。
「ほあ! こんちはー!」
「……おや。こんにちは、雫君」
しーくんは迷路から出てきた庭師の方にご挨拶……ではなく、ブライトさんにご挨拶していた。
こちらとして、迷路から出てきたブライトさんに驚いてしまった。なぜ、迷路からブライトさんが……?
「とうっ……!? なんで、ここに?」
「なぜ……? 気分転換?」
なぜ疑問系……? 明確な何かがあって、迷路に入ってたんじゃないのか。
ティール達はなぜ、こんなところへ?」
「王宮内の散歩を。ラルはともかく、雫には、ゆっくり中を案内してあげられてなかったので。……父上、こんなところにいて、仕事は大丈夫ですか?」
「あぁ、問題ない。……これも何かの縁か。ティール」
「? はい?」
「剣を交えないか」
突然の申し込みにティールもぽかんとしている。横で聞いていた私も、話の繋がりが見えなくて、思わず首を傾げてしまった。それに気付いたブライトさんは話を続ける。
「私とお前とで剣を交えたい。ルー爺から、お前の実力を聞いていてな。久々にどうか、と思って。……もちろん、無理にとは言わないが」
「あ、あぁ……なるほど。……ルーメンさんから、何て聞いてるのか気になるけど……分かった。いつやりましょう?」
「む……すまない。提案したのは私だが、明確な日時は伝えられん。こちらから時間を見繕い、声をかけてもいいか?」
多忙なブライトさんだ。実際、この時間が確実に空いているということはないのだろう。そうだとしても、ティールと少しでも、コミュニケーションがしたいと思っての提案なのだ。多分、ブライトさんなりの。
それをティールも理解しているのか、ブライトさんの言葉に素直に頷き、ニコッと笑って見せる。
「ぼくはいつでも大丈夫だから。父上のできる時に教えて」
「……あぁ。楽しみにしている」
「はい」
ティールがいるから、心配ないとは思うが……迷子にならないように気を付けなさい。ここは広いからね」
「うん! ばいばい! おじいちゃん! おしごと、がんばって!」
しーくんの言葉にブライトさんは優しく微笑み、そっと手を上げて応える。
「……ありがとう、頑張るよ」
本当に気分転換で外に出てきたんだろうか。……ブライトさんってそういう人だっけ?
「そりゃ、仕事ばっかりじゃ疲れるだろ。皆から仕事人間だーとか言われるけど、父上だって人間だよ?」
「でも、ブライトさんってさ、仕事中の気分転換は別の仕事をすることだーって人間かと」
「……そこまでワーカホリックじゃないと思いたいけどね」
そこまでのワーカホリックだと思うんだが、あの人は。しかし、気分転換でもなければ、こんな迷路に一人で入るはずもないか。
「っていうか、ブライトさんが出てきたってことは、こっちが出口?」
「いや……どっちがどっちとは聞いたことないけど、ぼくはここから入る」
ふーん? ブライトさんが出てきた方から入るのが普通なのか。じゃあ、ブライトさんは反対から来たってこと? それとも、途中で引き返したのだろうか。
ティール! ラル! いこ!」
「おー? じゃあ、しーくん先頭で迷路攻略するか~♪」
「するぞー!」
元気一杯に決意を固めたところで、庭園の迷路に足を踏み入れた。
……結論から言おう。
ティールの小さいけどってのは、信じないことにする。いや、確かにダンジョンと比べたら、小さいんだけども。
人工的に作られた迷路にしては、全然小さくないし、結構本格的でした。なんなら、途中でしーくんとバトンタッチして、本気になって挑戦してた。
なんでこんなものが王宮内にあるのだろう……テーマパークでもないのに!

庭園の迷路を堪能(?)した後、昼食を食べ、そのまま中庭へと向かった。
中庭ではレオン君とツバサちゃん、リラン(犬ver.)が待っており、私達の姿を見つけると、レオン君はパッと手を上げて手招きしてくれる。
「こっちこっち~♪」
「ほーい。今行くよ~」
しーくんはツバサちゃんの姿を見つけると、脱兎のごとく逃げようとしたものの、ティールががっちり捕まえていた。流石である。
「あうー! ティール! はなしてー!」
「だーめ。こういうの引っ張ったら、絶対に引っ込み着かなくなるから。早い内にすませておきなさい」
「うお~……経験者が言うと違うなぁ?」
「君は黙っててくれ」
本当のことじゃないか。つい最近まで、父親と睨み合ってた癖に。
膨れっ面のしーくんと表情が堅めのツバサちゃんは、互いに向き合うものの、両者の間には気まずい沈黙が流れる。
ツバサちゃんも、どうやって切り出せばいいのか分からないようだし、しーくんから謝るつもりもなさそうだ。
思ったより頑固で根に持つタイプだな、しーくん。意外な一面を発見したかもしれない。やだ、うちの子、可愛いんですけどっ……♪
「ラル。余計なこと考えてないよな?」
「なんで分かるの。余計なこと考えてるって」
「顔が溶けてるから」
どういうこと!? いや、今はどうだっていいだろう、そんなことは!
ツバサちゃんから何も言えないのなら、こちらからアクションを起こすしかない。さてさて……ちょっとだけ手を貸しますか。
私は咳払いを一つして、しーくんと目線を合わせる。
「しーくん、ツバサちゃんはしーくんと仲直りしたいんだって。どうしようか?」
「……ボクはしなくていーもん」
しーくん? 目の前のツバサお姉ちゃんが泣きそうになってます。言葉には気を付けよう?
「じゃあ……これからツバサちゃんと遊んだり、お話ししたり、しなくていいの?」
「……」
しーくんはちらっとツバサちゃんの様子を窺う。どうやら、私の言葉で迷いが出てきたらしい。あと一押しかな?
「私としーくんが喧嘩して、しーくんにずーっと知らんぷりされたら、私は悲しいけどな~……?」
いや、悲しいどころか死んでしまうかもしれない。……まあ、それはそれとして。
「きっと、ツバサちゃんもおんなじ気持ちだよ。……しーくんはどう?」
「……うゆ」
たっぷり考えた後で、しーくんはおずおずとツバサちゃんの前に出て、ぺこっと頭を下げる。
「……ツバサお姉ちゃん、しらんぷりして、ごめんなさい」
「しーくん……! わ、私の方こそ、本当にごめんなさいっ! これからも……仲良くしてくれる……?」
「うん」
しーくんの頷きに、これでもかと顔を輝かせながらも、安堵からか涙目になりながら、「ありがとう~!」と抱きつくツバサちゃん。
「お! 一件落着だな~♪ いやはや、よきかなよきかな~♪」
「あんっ!」
ずっと黙って、行く末を見守っていたレオン君がニッと笑いながら、足元に座っていたリランをわしゃわしゃと撫でる。リランもリランで、嬉しそうに一鳴きしていた。
しーくんに抱きついていたツバサちゃんだったが、程無くして満足したのか、そっと離れると、満面の笑みを見せる。
「しーくん! あっちで一緒に遊ぼ?」
「うんっ」
「あんあんっ!」
「大丈夫。リランも一緒だよ♪ ラルさん、行ってきてもいいですか?」
「どうぞどうぞ。行ってらっしゃい」
「ありがとうございますっ! 行こ、しーくん!」
「ん! いってきます、ラル! ティール!」
そう言うが早いか、二人と一匹はぱーっと中庭の奥の方へと走り出してしまった。
喧嘩する程なんとやらと言うし、今まで以上に仲良くなれるといいんだけどね。
「あら……皆、お揃いですね♪ こんにちは♪」
声が聞こえてきた方を振り返ってみれば、セイラさんとセラフィーヌさん、そして二人の後ろに控えるようにアンジュさんがこちらへと近寄って来ていた。
「今度は母上か」
「あらあら、なんですか~? もしかしてティール、私に会いたかったの?」
「いえ、別に。昼前、庭園で父上にお会いしたので」
「ブライトに? 午前は執務室でお仕事だと思ったけれど……外に何の用でしょうね?」
ブライトさん自身は気分転換だと言ってましたけどね……特に用と言う用はないのでは?
「ブライトの気分転換なんて、仕事する以外ないんですけどね~? まあ、いいでしょう。散歩で気分転換してくれるなら、健康的ですから」
やっぱり、ブライトさんってそういう人だよね。想像通りの人だわ。
しかし……それなら、今日に限って外で気分転換してた理由って何だろう? たまたまなのか、明確な目的があったのか。
……どちらにせよ、どうでもいい話ではあるか。
「そいや、お二人は何しにここへ来たんすか?」
「私達は、お互いの仕事が一段落したから、中庭で休憩がてら、お茶をしに来たの。お部屋でしてもいいけれど、今日は天気もいいでしょう?」
レオン君の質問に、セラフィーヌさんがにこやかに答える。セラフィーヌさんの言う通り、今日は天気がいいから、一日籠りっぱなしってのも、味気がないかもしれない。
「せっかくですし、ラルちゃん達も一緒にどうですか? セラちゃんやラルちゃん達がよければですが」
セイラさんの提案に反対する理由はない。それは他の面々も同じのようで、各々頷いていたり、笑顔を返したりしてた。それを確認したセイラさんは、アンジュさんに準備するよう言い、私達をお茶の席へと案内してくれた。
パラソルが着いているテーブルと、それに合わせたチェアが設置されていて、普段から使っているのだろうと想像できる。暇が出きれば、ここで休憩するのがセイラさんの気分転換なのかもしれない。



~あとがき~
本題手前すらいかないのか……(笑)

次回、二人の母とのお茶会。

なんやかんやありまして、雫とツバサちゃんは仲直りしました。
これはもう裏話というか、裏設定みたいなもんですが、雫は意外と根に持つタイプです。だから、数年経っても、何かと話題にするかもしれません。
雫が成長すると、ラルみたいに強かな美青年になる予定なんで←

ではでは。