satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第390話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でだらだらしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
サフィアとの対話が続いております。
まだまだやるぜよ。


《L side》
サフィアさんは一息つくようにふぅと息を吐くと、私達を交互に見やり、「聞きたいことは聞けたかしら?」と問いかけてきた。
サフィアさんが存在する理由。
謎解きの目的。
一番、気になっていたことはあらかた、聞けたように思うが……あっと、まだあるな。
「サフィアさんが授けてくださった羅針盤……これ、お助けアイテムなんですか? 立ち寄る場所で石をはめましたけど、それは冒険に見立ててたから?」
私が取り出したブローチを見て、サフィアさんは頬に手を当て、気まずそうに笑う。
『あら、やだ。大事なことを忘れていた。二人は冒険を終えたのに、お宝を渡していないわ。……冒険に報酬は付き物なのに。ごめんなさい』
あぁ、いえ。お気になさらず。
報酬、とは。この完成したブローチのことなのだろうか?
『いいえ。それは違うわ。……まあ、欲しいならあげるけれど、二人には不要なものだと思うわ。……ラルさん、冒険の書も出してくださる? 確か、ラルさんが持っているわよね』
冒険の書……? サフィアさんの?」
『いいえ。ティールの方。……絵本を取り出したら、二人でそれぞれ持ってね。どちらがどちらを持っても大丈夫よ』
ティールの……と言うことは、絵本か。……そう言えば、書庫から持ち出して、そのままだったな。
私は絵本をバッグから引っ張り出し、ティールに手渡す。私はブローチを、ティールは絵本をサフィアさんに差し出すように持った。それらを確認したサフィアさんはにこりと笑うと、祈るように手を組んだ。
『……我、サフィアの名の下に告げる。──“リリース”』
サフィアさんがそう告げれば、ブローチが淡く発光し始め、その光は絵本へと吸収される。そして、今度は絵本が発光し、その光が収まったかと思えば、突然、表紙の上に二つの指輪が現れた。
『ふう。……はい、おしまい。その指輪、二人にあげるわ。今回の報酬ってことで♪』
……これも、サフィアさんが用意していた遊びの延長線か?
私は勝手にそう解釈していたのだが、ティールは信じられないものを見たような顔で、指輪とサフィアさんを交互に見ていた。
「い、まのは……魔法、ですよね? もしかして、お祖母様は、この絵本に封印魔法を施していたのですか? 生前に?」
『ふふ♪ 正解♪』
「ふーいん?」
聞いたことあるような、ないような?
私が首を傾げていると、ティールから呆れたような視線を向けられた後、盛大なため息と共に口を開いた。
「言葉の通りだよ。何かを封じる魔法の総称。人だったり、物だったり……古代魔法なら、悪しき魔物すら封じたと聞く。つまり、封じる対象によって、行使難易度が変わるんだ」
ほーう?
フォース君の“チェーン”みたいなもんか。
「彼のあれはまた違うような……? けど、まあ、いいや。そういうもん。……お祖母様はこの指輪を絵本に封じていたのでしょう? それを今、解除した。……基本、封印魔法は封じた本人か、それ以上の魔法使用者でなければ解けないと聞きますが……術者が死して尚、解かれないところを見るに、高度な封印魔法では?」
『あらまあ、そんなに褒めても何も出てこないわよ? けれど、流石、ブライトの子。真面目に勉強しているのね? 正解よ♪』
……つまり、サフィアさんが凄い魔法使いってことですかね?
『うふふっ♪ ラルさんまで、そんな嬉しいこと言ってくれるのね~♪』
「お祖母様、申し訳ありません。ラルはお祖母様の高度な魔法を一ミリも理解していません」
うるせぇ!!! 凄いって思ってるもん!!
「……お祖母様、否定しないということは、こちらは生前に?」
『ふふ。えぇ、そう。まだ元気だった頃、いつかティールにプレゼントしようと……そのついでに、びっくりさせようと思って、あらかじめ施しておいたの。元々、大きくなったティールにプレゼントしようと思って、こうして用意していたのだけれど……できなかったのよね』
ティールをびっくりさせる要素が必要なのかは、さておき、だ。
病気が原因で、自身での解除が困難になったのなら、誰かに解除を頼めばよかったのでは? それこそ、ルーメンさんとか。
「あれ、確かに?……お祖母様、先程、ルーメンさんの名前出していましたし、お知り合いですよね」
『えぇ、ルーメンさんにはよくしていただいたわ。……けれど、ルーメンさんにもこの魔法の解除は不可能だったと思う』
? ルーメンさんよりも、サフィアさんが魔法使いとして、素質があるってことです?
『いいえ? そうではなくて、簡単に解けないよう、この封印魔法には、特殊な条件下で解けるようにしていたの。……紺の魔力を持つ者でないと解けないように、とね』
紺の魔力……サフィアさんと同じ系統の魔法使いでなければ、解けない封印魔法ってことか。
『そうそう。そうなの。……第一、この封印魔法のことは生前、誰にも教えなかったのよね。なんなら、死ぬ間際に伝え教えることも忘れていたし……ふふ♪ 変に凝ったことはすべきではないわね?』
……サフィアさんって、実はお茶目さんなの?
流石のティールも、サフィアさんの言葉に若干の呆れを感じているらしく、苦笑を漏らしている。
『……まあ、こうして渡したい相手に渡せたのだし、よしとしましょ♪』
よし、なのか。確かに、終わりよければなんとやらと言いますが!
無理矢理、軌道修正を計るように、パチンッと手を打ち鳴らしたサフィアさんは、白く細い指で指輪を指し示す。
『その指輪に大それた加護なんてないのだけれど……細やかな魔法が付与してある魔道具なの。一つには幻惑の魔法を。もう一つには水系統のデバフ魔法を』
どちらの魔法も紺の魔力を持つ、サフィアさんの得意分野の魔法だな。
『指輪の使用方法は、普通の魔力石を使う時と変わらないわ。念じれば、付与された魔法が発動するようになっているから。……戦闘に慣れている二人なら、問題ないわね?』
まあ、大抵の魔道具の使い方は問題ないですけども。
指輪のデザインはシンプルなもので、少し太めのリングの中心に淡い水色のラインがぐるっと施されている。幻惑魔法の指輪には紺色、水系統のデバフ魔法の指輪には灰色ががった紺色の石がはめ込まれている。
『どちらを持つかは二人で決めなさい。……ティール、水系統の技を得意としていたけれど、デバフまではなかったわよね?』
「はい。……まあ、似たようなことは能力使ってできますが、技ではこれといって覚えてないですね。……ラル、どっちにする? ぼくはどっちでもいいよ」
と、サフィアさんの質問に答えつつも、二つの指輪を見せてくる。
ティールは特に気にしてなさそうだけれど、私が気になるので、一応。
「え、えーと……そもそも、ティールのために作ったんですよね? それを関係のない私もいただいて、いいんですか?」
『私は構わないわ。この指輪が二人の役に立てるといいんだけれど』
サフィアさんがそう言うなら、ありがたく貰うか。
私は少し迷いつつも、デバフ魔法が付与されている指輪を手に取った。
いい使い道を思い付いたから……ではなく、純粋に私がこちらを持っていた方が、どこかで使うだろうと思ったのだ。
ティールがこっち持ってても、宝の持ち腐れっしょ。道具を頼る前に能力を頼る気がする」
「うぐ、否定できない……!」
『あらあら♪ もしかして、ティールは私が思っている以上に、能力を使えるのかしら? だとしたら、指輪なんて必要なかったかもしれないわね』
「! そんなことはないです! だって、お祖母様からの贈り物ですから。大切にします」
『ふふ、ありがとう。そう言ってくれて嬉しいわ。……そうそう、その魔道具、耐久性や性能の高さは保証するわ。それと、指輪のサイズも自動調整してくれるから、安心してね?』
なんだ、その無駄に高性能な指輪は。
まさかとは思うが。
「…………サフィアさん、これって」
『ご想像にお任せするわ』
絶対に明けの明星絡みだ。絶対に。ルーメンさんが関わってるよ、絶対に!
……まあ、それはそれとして。
私達がそれぞれ指輪を受け取る。そして、物は試しに、適当に指にはめてみた。すると、サフィアさんの言う通り、指輪は丁度よいサイズに変更された。
古いお宝の中にも、こんな風な術が施されているものがたまーに混じっている。それと似たような仕組みなのかもしれない。
「ありがとうございます、サフィアさん。大切にします」
『いいのよ。過去の忘れ物を渡したにすぎないから』
「お祖母様、ブローチは魔法解除に必要な道具なのですか?」
『いいえ。本来はなくても解除は可能よ。それはね、魔力を貯めておける器みたいなものなの』
つまり、サフィアさんの魔力が込められたブローチだったってことか。
『そう。昔、アズが見つけてきたものでね。あらかじめ、魔力を注ぎ入れ、吸収された魔力を使って魔法を使用できる……そんな道具なの』
どんな使い道があるのは不明だけど、パッと一度にたくさんの魔力を消費する時とか、有効なのかもしれない。どんな時なのかは分からないけども。
『今の私は、全盛期ほどの魔力を持ち合わせていない。だから、暇なときに注いでたのよ』
へー……? あれ? 石は手紙に同封されていたが、この石は元々、生前のサフィアさんの持ち物で……つまり、死んだ後もこの王宮内にあったものでは……?
『そうよ。だから、今回のために、ここで保管されていたものを持ち出したのよ』
「お祖母様!?」
『うふふっ♪ 幽霊って便利よねぇ?』
「お祖母様!?!?」
ま、まあ、自分の持ち物を取り出しただけだと思えば、別に悪いことではないんじゃないかな。うん。
「宝物庫にあったのなら、定期的に物品の確認くらいするべきだろ……? 今の今まで、なくなってたなんて大事だからね!?」
『大丈夫よ。これにそこまでの価値はないと思うわよ……?』
「だとしてもです!」
真面目だなぁ~……?
家の警備体制……というか、物品管理体制に危機感を抱くティールだが、そんな彼の様子にサフィアさんは、どこか楽しそうに笑う。
『ふふ♪ ごめんなさい、ティール。これは私の部屋にあったものだから、管理体制は問題ないわ。私の部屋は今、限られた人しか入らないし、あそこに高価なものは何一つとして置いていないから』
そういえば、サフィアさんの部屋の鍵は王様のブライトさん、旦那さんのアルドアーズさん、或いはメイド執事を取り纏めるハロルドさんって人が持ってるんだっけ?
『そう。……ティールには話してなかったのだけれど、私の病気は魔力欠乏症って病気だったの。文字通り、体内の魔力が少しずつ失われ、自身の体も衰弱していく病気』
魔法使用者にとって、魔力とは生命線だ。魔力がなくなれば、魔力切れを起こし、身体に悪影響を及ぼす。本来なら、魔力は時間経過で回復し、それに伴い、体の不調も改善される。それができなくなるのなら、魔力を失い続ける体は弱っていく一方……そんな病気ってことか。
『回復薬で一時的によくすることはできるから、その石も活用していたのよ。……まあ、症状が進行すると、それすらも、ままならないのだけれど』
「そう、だったのですね」
『あの時のものが、こうして役立ったのなら、あの日々も無駄ではなかったのかもれないわね?』
サフィアさんはクスクスと小さく笑い、一呼吸置いた後、『さて』と呟く。
『今度こそ、これで話は終わりかしらね? 質問とかあるかしら?』
サフィアさんのこの言葉に私達は黙る。
このやり取りが終わりなら、サフィアさんとの対話の終わりを意味する。恐らく、次は二度とない。
それを私は……いや、ティールも理解しているからこそ、すぐに頷くことができなかった。
私個人としては、サフィアさんと何の接点もない。これで終わりというなら、素直に受け入れられる。しかし、ティールはそうもいかない。それが分かるからこそ、私だけで肯定できない。
……しかし、何事も、始まりがあれば、終わりがある。永遠なんてない。
しばらくの沈黙の後、私は顔を上げて、そっと笑う。
「お話、ありがとうございました。最初は色々と疑いましたが……こうして、ティールのおばあちゃんと交流できたこと、楽しかったし、幸運に思います。……ただ、私から最後に一つだけよろしいですか?」
『えぇ、もちろん。何かしら?』
ここまで、ずっと触れてこなかったこと。……いや、触れはしたが、それでは説明ができないことが一つだけあった。
「協力者がいますよね? 手紙を特定の場所に置いたり、何かしらの準備を手伝ってもらったり……流石に、これら全てをサフィアさん一人で行ったとは、思えなくて。けれど、協力者になり得そうな人はサフィアさんを視覚できないのに、どうやってコンタクトを?」
『……そうね。さっきの言葉は少し語弊があったわ。あの子はね、視ることはなくても、感じることができるの。詳しくは本人に聞いてみるといいわ。……ラルさんのことだもの、『あの子』が誰を示しているのか、分かるのでしょう?』
サフィアさんの言葉に私は小さく頷く。
状況証拠だけで言えば、これらを手伝えるのはブライトさんだけだ。
つまり、ブライトさんはサフィアさんの存在を感知していた、ということになる。しかし、ブライトさんは幽霊の類いは信じないとも話していたのに……?
まあ、この辺りは本人を問い詰める他、知るよしもない。サフィアさんは知らないみたいだし、この話はここで終わりだな。
私は未だ、黙ったままのティールを見る。
ティールの話によれば、サフィアさんが亡くなったのは、彼が五歳の頃。恐らく、当時は理解もできぬまま、死に別れたはずだ。だからこそ、話したいことも多いはず。成長した今だからこそ、思いを伝えるための言葉を模索しているのかもしれない。
だとしたら、部外者の私は邪魔者でしかない。
ティール、私は一旦、ここを離れるよ。頃合いを見て戻るから」
「……ラル」
「サフィアさん、私は失礼します。……さようなら」
『ラルさん。……ありがとうね』
黙って会釈し、私はその場を立ち去る。
どうか、後悔のない時間を過ごせるといいのだけれど……まあ、ティール次第だな。頑張れ。



~あとがき~
安定しない本文の長さよ。

次回、サフィアとティール。

ブローチの石をばらして集めさせてたのは、何かしらの目的があった方が楽しいやろ、というサフィアの粋な計らいです。

そして、新しい語録(?)……魔力欠乏症。当然ながら、オリジナルの病気です。病名から察せるように、魔法使用者特有の病気ですね。ちなみに、不治の病です。生命の神であるウィルなら、ほいっと治せるんしょうけど、それを言ってはおしまいなんで……!
症状としては、衰弱死なので、緩やかな死を待つみたいなイメージです。眠るように死んでくみたいな。なので、サフィアの最期は穏やかなものだったかと。

ではでは。