satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第387話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でしみじみしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、最後の場所、約束の場所へと辿り着いたラルとティール。
二人で夏の夜空を見つつ、想いを馳せるのでした。
今回はそんな続きからだぜ。


《L side》
ティールとなんてことない、いつも通りの他愛ない話をしていると、ふと、視界の端に映る空が気になって、顔を上げる。
「お……ほあ~……♪ なんか、天然のプラネタリウムみたいだねぇ」
「ん? あぁ……本当だ。いつの間にか、日が沈んでたんだ。それにここは街の光が届かないから、余計に綺麗に見えるね」
そっか。なるほど。
冬の空の方が空気が澄んでいて、綺麗に見えるけど、これなら、夏の空でも綺麗に見えるってもんだ。
「……これがお祖母様の宝物だと思う」
「……? この星空が?」
「うん。さっき、お祖父様との大切な場所って言ったろ? その時は、星も綺麗に見えたんだとも言ってたから。……だから、多分なんだけど、二人もここのベンチで、ぼくらみたいに空、見てたんじゃないかなぁって」
……なるほどね。
私はそっとベンチを撫でた。そして、ほんの少し、意識を集中させてみる。
すると、くらりと目眩がして、とある光景が脳裏に流れ込んできた。
場所は変わらず、私達のいる丘の上。
しかし、今よりずっと暗くて、ベンチの真ん中に置いてあるランタンの光だけが淡く辺りを照らしていた。
そんな中で一組の男女が空を見上げていた。私も釣られて、そっと見上げてみれば、さっき、私が見た以上の星が綺麗に輝いていた。
『めっちゃ綺麗だろ』
男性の声が聞こえる。男性は隣の女性に向かって話しかけているらしい。女性は話しかけられた方は見ずに、小さく頷く。
『そうね。……そして、とても寒いわ』
私には寒さは分からないが、どうやら季節は冬らしい。
女性の返答に男性は詫び入れる素振りもなく、豪快に笑い飛ばす。
『そりゃ、冬の方が空気が澄んでいて、見やすいだろ? っていうか、お前、ばっちり魔法具で防寒してるだろ。言う程、寒くない癖に寒そうにすんなよな~?』
『ふふ♪ ごめんなさい。あなたの言う通り、言う程、寒くないから安心して?……けれど、そんな文句を言いたくなる冬の日に、私を外へ連れ出したのは、アズ、あなたよ? 嫌味の一つや二つ、受け入れなさい?』
アズと呼ばれた男性は慌てたように首を振り、オーバーに身振り手振りまで付け、あれこれ弁明し始める。
『いやいやいや!? お前がデートの一つや二つ誘ってこいって謎に! 珍しく! この俺に言ったんじゃんか! サフィさんや、事実をねじ曲げちゃいけませんよ』
『あら、そうだったかしら』
サフィと呼ばれた女性はわざとらしく、クスクスと笑い、首を傾げた。そんな彼女に彼は呆れた様子で、再び、空を見上げる。
『うっそやん……サフィ……? 貴女、身重なのよ? 俺、最初は止めた側なんだが?』
『えぇ。そうね。分かっていますよ』
『分かってて、あんな風に言うのね、サフィ』
『アズ』
『今度はなんですか』
『この子、男の子らしいわよ』
空を見上げていた男性は隣の女性……もっと言えば、彼女のお腹をじっと見つめる。
『……今、重要なこと言った? さらっと、ここで。君のお腹の子の性別、明かした?』
『えぇ。言ったわね』
『聞いてない』
『えぇ。今、初めて言ったもの』
『サプライズが過ぎるんじゃないのかね、サフィさん』
『うふふ。私も上手くなった?』
『そりゃあ、もう。ユーモアたっぷりで大変よろしいと思う』
……サフィにアズ。そして、ティールの話を踏まえれば、自ずと目の前の男女が誰なのか見当がつく。
あの二人は、若かりし頃……ブライトさんが産まれる前のサフィアさんとアルドアーズさんだ。そして、今、視ている光景は、二人の思い出の一ページなのだ。
この暗さやランタンの光が淡いこと……そして、二人の背後にいるのも相まって、二人の表情はよく分からない。それでも、声から二人がとても楽しそうなのは伝わってくる。
『──にしても、普段はツンツンしているサフィアさんがどういう風の吹き回しだい? もしかして、これがマタニティーブルー的なやつ? 寂しくなっちゃった?』
楽しげに会話を交わしていたアルドアーズさんが茶化しつつも、どこか真剣、且つ、優しそうな声色で問いかける。
その問いにサフィアさんは少し沈黙するも、首を傾げ、『そう、なのかしら』と呟く。
『いやぁ、俺に聞かんでください? 一応っつーか、割りとがっつり突っ込んだ質問してんなぁと思ってるのよ? まずったかなとも思ってるわけよ?』
『……あら。気を遣わせて、ごめんなさい。でも、そうね。二人には……なりたかった……かもしれない』
『? 二人に?』
『えぇ』
もしかして、真剣な話でも始まるのだろうか。神妙な面持ちで頷いたサフィアさんに、アルドアーズさんは何と答えるのだろう。
しばらく黙って考えていたアルドアーズさんだったが、何か思い付いたのだろう。パッとサフィアさんの方を向き、大きく手を広げるような仕草をした。
『……つまり、サフィアのデレ期がここにってやつか!? もっと甘えたいってやつ!? いいぞ! 俺はいつでもウェルカムだ!』
『いつでもウェルカムな人は、そんな余裕のない雰囲気で迫らないわ』
ばっさり切るな……ルーメンさんみたいだ。
しかし、アルドアーズさんはいつものことなのか、大して気にした様子はなく、あっけらかんとし、平謝りだ。
『……いやぁ、ごめんごめん。流石の俺でも、サフィのめっずらしいデレを余裕のある雰囲気で構えられんのよ。例えるなら……あれだ。予測してなかった敵勢力からの奇襲レベルで動揺してた』
『あらま。それは随分なことで』
『お? 分かる? これまた珍しいな。こんな簡単に理解が得られるとは』
『例えのお陰で、なんとなくだけどね』
『マジ? 今度から、そういう感じで物事を例えよっかねぇ~……? あ、サフィ、あそこ見て! あの星なんだけどさ……』
『あら……なぁに? どこ?』
アルドアーズさんが指差した星をサフィアさんも彼に顔を近づけながら見ようとする。そして、お互い、楽しげに笑い合う。そんな光景はとっても微笑ましくて。
……きっと、サフィアさんにとって、この星空だけが宝物ではないのだ。
ここで過ごした記憶も……アルドアーズさんと過ごした日々も引っ括めて、『宝物』と形容するのだろう。

「──ラル、ラル!」
「……ティール」
ふと顔を上げると、ティールが心配そうにこちらを見つめていた。
「大丈夫? 急に黙るからびっくりしたんだよ?」
「ごめん、大丈夫。“時空の叫び”でちょっとね」
「? 何を視たの?」
私は先程、視た光景をかいつまんで説明した。
とある冬の日、サフィアさんとアルドアーズさんがここで、天体観測をしていたこと。
その光景がとても楽しそうで、幸せそうだったこと。
そして、サフィアさんの宝物について、私が思ったこと。
それらを黙って聞いていたティールは、少しだけ驚きつつも、嬉しそうに微笑んだ。
「そっか。……そっか、そうだったのか。……うん、きっと、ラルの言う通りだね。星もそうだけど、お祖母様にとっては、思い出も大切な宝物だったんだ。……そりゃ、そんな大事な場所、誰にも教えないわけだよ。……そんな場所をお祖母様は教えてくれたんだ」
「……多分、サフィアさんにとって、宝物はティールもなんだよ」
もちろん、大切な孫ってのもあるかもしれないけど。……いや、だからこそ、かもしれない。
「ここから見える星や思い出が宝なら、この場所は、サフィアさんにとっての宝箱ってことだもん。……大切なティールのと思い出も、ここに置いておきたかったのかもしれないよ」
アルドアーズさんとの思い出詰まった場所。忘れないようにしておける場所。だから、大切なティールに教えたのだろう。
「……そう、なのかな。そうなら、嬉しいな」
きっと、そうだよ。
潤んだ目をこれ以上、見られたくなかったのか、ティールは空を見上げる。私も何も言わず、彼に倣う。
空は変わらず、星で輝いていた。
“時空の叫び”で視た光景よりは劣るかもしれない。それでも、あの二人が見た空を私達も見ている。それは揺るがない事実だ。
「サフィアさん……二人も見た、星空だね」
「うん。……季節とか、見える星や星座は違うけど……でも、同じだ。こうして見れて、よかったかも」
『あら、嬉しいことを言ってくれるのね?』
「!?」
どこからともなく聞こえてきた声。
私はそれに聞き覚えがあった。
明朝、私の耳元で囁いたあの声だ。落ち着いていて、凛とした声。
「くそ、どこだ。どこから聞こえた……っ!?」
慌てて辺りを見回しても、人の姿はないし、ましてや、人ならざる影すらもない。なんなら、気配すらも感じ取れない。
くいっと服の裾を引っ張られる。
そちらを見れば、ティールが困惑した表情を浮かべている。そこに恐怖の色はなく、ただただ、驚いているようにも見えるし、現状を受け入れられないようにも見える。
「ねえ……いま、の、は?」
「! ティール……?」
「ラル。今のって、今の声って……!」
普段、その類いを視ない聞かないはずのティールにも、聞こえている……?
「……私が朝に聞いた声と同じだった。それに……これは」
“時空の叫び”でも聴いた声でもある。
「ぼくも知ってる。思い出した。……昔、ずっと聞いてた声、こんな声だったよ」
『……よかった』
また、同じ声だ。
『今回はティールにも聞こえているみたい。ふふ♪ お待たせしました。……でも、その分、私の宝物、堪能できたでしょう?』
声の主は私達に語りかけるように、優しい声で話ながら、木の影から姿を現す。
凛とした顔立ちにロングで紺色の髪。シックな色合いのマーメイドドレスに身を包む女性。
私はその姿に思わず、息を飲む。
一瞬、ブライトさんかと思ったのだ。しかし、身長、体格、声、目の前の人物が纏う雰囲気……それらがブライトさんではないと言っている。しかし、彼女はブライトさんによく似ていた。……いや、この場合は、ブライトさんが似ている、と言うべきか。
「ほんとに……サフィア、おばあ、さ、ま……なの、ですか?」
ティールの問いかけに、目の前の女性は小さく微笑み、そっと頷く。
『えぇ。正真正銘、貴方のおばあちゃまですよ。ティール♪』



~あとがき~
ほ、ほほほんものだぁぁぁ!!!!

次回、サフィアと二人。

サフィアとアルドアーズの関係性って、ルーメンさんが語った程度のことしか本編で言ってない気がしたので……若い頃とはいえ、サフィア&アルドアーズがどんな夫婦だったのか、見せられてよかったです。まあ、順風満帆、仲睦まじいおしどり夫婦……なのかは、さておきな。
ブライト&セイラと比べると、何とも言えないのがまた悲しいですねぇ……(笑)

ではでは。