satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第379話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ブライトから過去、ティールが聞いた鈴の音の話を聞いたり、なぜかラルとティールがイチャイチャしたりしてました。
そんな続きからです。どうぞ。
ラル「誤解を招く! イチャイチャの続きとかないからね!? というか、イチャイチャしてませんが!?」


《L side》
なんかよく分からない茶番劇をした気がしつつ、お互い、姿勢を正したところで、ようやく本題に入ろう。
私の能力が効かないこの封筒から何かの情報を得たければ、中身を見てみるしかなくなった。まあ、普通は中身を開封しなければ、それが何なのか分かるはずもないので、スタート地点に立っただけとも言える。
私は丁寧に封を開け、中身を取り出してみた。
封筒には二つ入っていた。
一つは手紙。宛名は「ティールへ」となっているので、彼宛の手紙なのだろう。
もう一つはアクセサリーの一部と思われる金具だ。もっと言えば、ブローチの土台となる部分である。何かをはめるための空洞がいくつか空けられ、その周りは細やかな装飾が施されている。
とりあえず、ブローチは現状どうすることもできないので、放置するとして。
「手紙……だけど、なんも書いてないね。ティール宛だけど」
「う~ん。ほんとだ。真っ白」
見た目はごく普通の白い便箋なのだが、そこに綴られている本文はなく、宛名が記されている以外はただの白紙だ。一応、裏返してみるものの、そこに何か書いてあるはずもなく、本当に何もない。
「……ここからどうしろと。まさかの炙り出し法で読めって?」
「そんな密談するような相手、全く思い当たらないけどね」
ぐぬぬ。……まあ、やるだけやってみっか?
私はティールに手紙を渡して、火がつけられる物を物色することにした。とはいえ、ティールの部屋にあるわけがないので、私の部屋から探検用の鞄から見繕うのが手っ取り早いだろうか。
なんて思っていたら、ティールが慌てたような声を出し、私の腕をぐいっと引っ張ってきた。
「ね、ねえ、ラル! 見て!」
「うん? どうし……た?」
目の前に突き出されたそれを見てみれば、本文白紙の便箋から少しずつ文字が浮き出てくるところだった。
驚く私達をよそに、便箋は全ての文章を発現させ、本文が読めるようになった。
ティールへ
これを読んでいるということは、本人の手に渡ったのだと思います。無事に行き着いてよかった。

早速ですが、私と遊びましょう。
鍵の在りかは貴方のパートナーさんに伝えてあります。

これは内緒の冒険の続き。
誰にも言っちゃ駄目よ?』
手紙の全文はこれで終わりのようだ。
そして、差出人の名前はない。
手紙には誰にも言っちゃ駄目、とあるが、私はノーカンってことなのだろうか? 大丈夫なのか。まずそうなら、今からでも知らんぷりしますけど。
「……大丈夫じゃない? 手紙をラルに手渡したのが、これを書いた人なんだとしたら、君が参加するのは想定内なんだと思う。手紙にも『貴方のパートナー』ってあるし、鍵の在りかも伝えてるってあるし」
判定がガバガバな気がしないでもないが、その辺は突っ込まない方が吉だろう。黙っていよう。
「この文章からも、相手はティールを知ってるみたいだけど、心当たりは?」
「心当たりって言われてもなぁ」
ティール宛の手紙や内緒の冒険の続きとやらの文言から、何かしら、ティールと関係のある人物による物だと考えるのが妥当だ。
私も手紙には出てくるけど、名前はないし、何より私自身、他の文章に心当たりがない。鍵の在りからしい『ぼうけんのしょ』を聞いても、ピンと来るものはないし、冒険の続きとやらにも、見当が付かない。
だから、私はたまたま巻き込まれただけなのだ。そんな私が差出人と接点なんて、ありはしない。そうなると、ティール繋がりで差出人を探し出すしかないのだ。
「……内緒の冒険。『ぼうけんのしょ』……ぼくを知る人……いや、でも、そんなことって」
「? ティール?」
ティールは困惑したように何かを呟き始める。そして、手紙を見つめ、「あり得ない」と何度も繰り返す。
「どうしたの?」
「……もう、いない」
「いない?」
「差出人かもしれない人、もういない。この世にいないんだ。……内緒の冒険、『ぼうけんのしょ』……この言葉を知ってるのは、ぼくのお祖母様……亡くなったサフィアお祖母様だけなんだ」
「サフィアさん……ティールのお祖母さんってことは、アルドアーズさんの奥様で元王妃様……?」
「そう。……お祖母様がご健在だった頃、時々、ぼくはお祖母様と一緒に王宮内を探検してたんだ。その度、お祖母様はたくさんの秘密を教えてくれた」
ティールは当時を思い返し、懐かしむように教えてくれた。
サフィアさんは幼いティールの手を引き、王宮内の秘密の部屋や隠し通路等々を教え、時には秘密の仕掛けを二人で解いて過ごしていたのだという。
そんな王宮の秘密を解き明かす冒険を二人は内緒の冒険と呼んでいた。なぜなら、周りにそれらの遊びを隠していたから。使用人らにはもちろんのこと、家族……身内にすら黙って、行っていたそうだ。
そして、『ぼうけんのしょ』というものが、その冒険の際、ティールが常に持ち歩いていた本のことだという。
「本当は、ただの絵本なんだけどね。さっきは書庫にあるって言ったけど、元々はお祖母様の部屋にあったものなんだ。でも、お祖母様は亡くなって、絵本は書庫に仕舞われた」
手紙にある鍵ってのは、その絵本か。
しかし、亡くなった人からの手紙とはまた随分とメルヘンチックになってきたものだ。
なりすましの犯行だと思う方がまだ現実的である。
しかし、ティールはそれを否定するようにゆっくりと首を振る。
「あり得ない。お祖母様がぼくとの内緒の冒険を誰かにバラしたとは思えない。お祖母様は約束を守る方だった。……けど、そうなると、ラルが聞いた声って」
声=差出人とするなら、あれはサフィアさんの声?
「それを認めるなら、サフィアさんが幽霊になって、この手紙を届け、今から遊びに誘ってきてるってことになる」
生前、残していた可能性も否定できないが、可能性は限りなく低いと言える。本文の中に今現在を示唆する言葉……つまり、私のことが含まれているからだ。
よって、差出人をサフィアさんだとするなら、幽霊からの手紙だと認めざるを得ないことになる。なるのだが……
「だとしても、こんな仕掛けじみたこと、できるものなのかね?」
普通の手紙なら未だしも(?)、特定の人物に触れられたら文字が現れる手紙なんて魔法みたいな……魔法?
私は手紙をじっと見つめ、雷姫の力も使い、感覚を研ぎ澄ませる。すると、微かに手紙から魔力を感じることができた。
「……この手紙に魔法がかけられていたのか。なら、勝手に現れた文字の謎も魔法でしたって納得はできるか。ティール、サフィアさんって」
「あぁ……魔法使用者だった」
「幽霊って魔法使えるのかな」
「……どう、なんだろうね。っていうか、幽霊だって認めたくもないんだけどね、ぼくは」
怖がりなティール君はそうでしょうねぇ……しかし、状況証拠的には、もう確定している気もするが、あくまで状況証拠。仮説の一つでしかない。
「幽霊を否定するってことは、本人説を否定するってことだ。ティールは誰かがサフィアさんの名前を騙って、これを書いたって思うってこと?」
「幽霊より、現実的だからな。……でも、お祖母様が秘密を漏らしたなんて考えたくもないし、他人がお祖母様を騙るなんてムカつく」
「あ~はいはい。ティールがおばあちゃんっ子ってのがよぉく分かりました」
人の感情とは、時に矛盾を孕むものだ。現実的に考えれば、サフィアさんを疑うことになるし、非現実的に考えれば、自分の信じたくないものを信じなければならない。
今のところ、どちらもあり得ると思うし、私達が辿り着いていないだけで、他の説もあるかもしれない。
とりあえず、今はこの手紙の指示通りに動くしか確かめる方法はないだろう。
ティール、『ぼうけんのしょ』とやらを見に行かない? 秘密の冒険の鍵ってのを見つけてみようよ」
「う、うん……そうだね。仮に誰かがお祖母様に成り済ましてるんなら、やめさせたいし……ゆ、幽霊のお祖母様だとしたら、なんでこんなことしてるのか、分かるかも、しれないし」
身内の幽霊だとしても、怖いものは怖いらしい。身内なんだけどねぇ……?
幽霊の存在に震えるティールと共に、私は王宮にある書庫へと向かうことにした。



~あとがき~
ようやく○○編を明かすことができます!
今回はずーっと名前だけ出ていた、ティールの祖母、サフィアの話。サフィアと謎解き編です。……なんかもうちょいいい名前をつけたいけど、思い付かぬ。

次回、鍵の在りか。
お楽しみに!

しばらく、またラルとティールの話です。夏休み全体を通して、この二人の話が多いですね。すんません。我々の中で、ピックアップ中なんです。
夏休み明けたら、他キャラにスポットが当たると思うので……しばしお待ちを!

ではでは。