satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第389話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で話をする物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、サフィアがあれこれ教えてくれました。今回もその続きじゃい!


《L side》
突然の名指しに思わず、ぽかんとしてしまう。
なぜ、ここで私なのだ。
ティールも私の名前が出てくるとは思ってなかったようで、私をちらりと見た後、再び、サフィアさんへ視線を戻すが、小さく首を傾げていた。
「お祖母様、天界でぼくらを見ていたのでしょう? それなら、彼女……ラルがどんな人物なのかは分かるのでは?」
『いいえ? 流石に四六時中、見ているわけではないし、私はあくまで家族を見ていたの。……だから、ラルさんがどんな方なのか、ティールとどんな風に話し、接し、思いを持つのか……それをちゃんと知りたかったの』
あの言葉通りなら、今のサフィアさんには、神様の従者としての仕事もあるはずだ。それに見守りたい対象も、ティール以外にもいるのだろう。それならまあ、分からんでもないが、こちらとしては、品定めされている気分だ。
私の心でも読んだのか、サフィアさんは楽しそうに笑い、小さく頷く。
『そうね。見定めたかったの。だって、ティールは私の可愛い孫だもの。そんな孫のガールフレンドなんて、気になるでしょう?』
「お祖母様!?」
ガールフレンドて……確かに、フレンドではあるけれど。
「じゃあ、貴女から見た私は、彼にとって相応しいガールフレンドだと思えましたか?」
「ラル! その言い方はなんかむず痒いからやめて!?」
いや、その表現を使ってきたのは、サフィアさんやし……? 郷に入れば郷に従えと言うし?
謎に慌てるティールは放置し、私はサフィアさんを見つめる。サフィアさんはふっと目を細めて、何かを試すような笑みを浮かべる。
『あら。仮に私が離れなさいと言えば、素直に離れるのかしら?』
「! お祖母様!」
「いいえ。離れませんよ。彼は私にとって、友人であると同時に唯一無二の相棒です。他人からとやかく言われようと、従うつもりはないです。……まあ、本人から、コンビ解消や友人関係の解消を切り出されたら、それに従いますが」
周りの戯言にいちいち付き合ってられるか。まあ、彼の人生にマイナスしかないのなら、考えるかもしれないけれど。どちらにせよ、他人に口出された程度で、関わり方を変えるつもりはない。
私の答えをサフィアさんは、どう捉えたのだろう。
サフィアさんは私を探るような表情から、柔らかな笑みに変わる。
『……ふふ、そう。それくらいでなければ、王族の男相手など、務まりませんわ。これからもティールと仲良くね?』
「? はい。仲良くさせて貰います……?」
なんだろう。どこか意味合いが違うような気もするが、とりあえず、サフィアさんに認められたということなのだろうか? それならまあ、いいこと、だよな?
「お祖母様、一応、言っておきますが……ラルはぼくの恋人ではないですよ。友人であることは違いないですが、彼女の言う相棒は『仕事上の』ですからね?」
『えぇ、分かっていますよ。……今は、でしょ?』
「いっ……!?」
ティールの指摘にサフィアさんは、さも当然のように返答する。
……あれ、もしかして、サフィアさんの中で、私とティールがそういう関係になると思われてる?
「さっきのやつ、恋人関係になってもいいよ~的な話でした?」
『? まあ、そうとも言えるかもしれないわね』
…………え?
「お祖母様!?」
『ふふ♪ 何にせよ、ティールが王族の血筋である以上、厄介事は避けられない。ラルさんは、それらを知りながらも、受け入れて、付き合ってくれた。……きっと、今までもそうだったのでしょう? だって、こんなくだらないお遊びに真剣に、最後までティールと付き合ってくれたんだもの♪』
恋人云々に多少、動揺してしまったが……話を聞いていると、恋人云々はあまり関係なさそうだ。
言い方はあれだが、ティールが私と関係を続けても不利益にならない相手かどうかを見たかったのだろう。
最初に言っていた、見定めたかったと言う言葉通りだったってことだ。……多分。
『……長々と語ってしまったけれど、要するに、私がラルさんという人物がどんな方なのかをじっくり見てみたかった。それが二つ目の理由よ。なんなら、今回はこちらの意味合いの方が強かったかもしれないわね?』
確かに。一つ目の家族のためという目的が、これを行う前にほぼ解決していたから、こちらが本目的になるのは仕方ないと言えば、仕方ない。
『さて。今回のお遊びを開いた理由はこんなところ。……他に聞きたいことは?』
「こんなことを聞くのは無粋かもしれませんが、よろしいですか?」
『もちろん。なんでも聞いて?』
「では……お祖母様は、お祖父様や父上……おば様とお会いしなくて、よろしいのですか?」
ティールの言葉に、サフィアさんは不思議そうに首を傾げた。そんなサフィアさんに対し、ティールは話を続ける。
「先程、話してくださった理由があるのは分かります。しかし、お祖母様に会いたいと思っている人は他にもいらっしゃるはず。……普段、視えないぼくが視てえるなら」
『いいえ、今回が特別なだけで、私の家族はこの類いを視る目を持ってはいないわ。……それにね、私はあの人や子供達に会いたいと思っていない』
ここまで語り、サフィアさんはぴたりと口を閉ざし、何かを否定するように首を振る。
『ごめんなさい。誤解を与えてしまうような言い方をしたわ。……私は家族を嫌いになったわけでも、本当に会いたくない、と思っているわけではないの。でもね、私はもう『ここ』にはいないの。……死んでしまった私は、今を生きる家族の中に入っていけないわ。それが自然の理。その理に従うのなら、私が家族と会う時は、家族がこちら側へ来た時よ』
そう語るサフィアさんは凛としていて、この件に関して、割りきっているのだと感じる。
きっと、この言葉に嘘はない。
第一、サフィアさんが死んで十数年は経っているはずだ。それなのにサフィアさんがサフィアさんでいられるのは、神の従者である前に、彼女自身に重く苦しい未練がないからだ。でなければ、サフィアさんはとっくに悪霊化し、神の手により、存在を消されている。
だから、こちらの考えを押し付けるのはお門違いなのだ。
とはいえ、だ。そんな考えを持つサフィアさんが今を生きるティールに会いに来たのは、それ程、彼を気にかけていたからなのか。もしかしたら、サフィアさんの唯一の未練が『ティール』だったのかもしれない。
「……サフィアさん、今回が特別とは?」
『主様にお願いしたの。今回のことを実行するに辺り、ティールに視えるようにしてくださいって。その願いを主様が聞き届けてくださって、こうしてティールにも視えるようになったというわけ。……だから、普段から視認できるラルさんには、よりはっきりと視えているのだと思うわ。……今回だけという約束だから、ティールとこうして会うのは、最初で最後ね』
この言葉にティールは、苦しそうに顔をしかめる。受け入れたくないとでもいいたげな彼に、サフィアさんは儚げに微笑み、そっと自身の口に人差し指を当てる。
『もちろん、私と会ったことは内緒よ。……特に、アズには、ね?』
「! 最後なんて仰るなら、ぼくじゃなく、お祖父様にお会いしてあげてください! お祖父様は……お祖父様は、今でもお祖母様のことを……っ!」
『だからよ。だから、あの人とは絶対に会えないわ。もし、会うようなことがあれば、あの人はまた駄目になってしまうもの。うじうじして、泣き言ばかり言ってしまうわ。……今は前を向いて、国のため……何より、自分のために好き勝手できるようになったの。それを奪うなんて、できないわ』
サフィアさんは哀しそうに笑う。
今まで笑顔を絶やさず、楽しそうに、時に、私達を諭すように話していたサフィアさんが、初めて見せた表情だった。
“時空の叫び”で視た二人は、とても幸せそうだった。軽い言い合いをしていても、相思相愛だったのだと分かるくらいには。
……会わないと決めたのは、最愛の夫のため、今を生きるアルドアーズさんのため。愛する夫の幸せを願うサフィアさんの思いそのものなのだ。
その思いを否定してはいけない。
私は、彼の震える肩をそっと抱く。
ティール。……受け入れよう。二人のために」
「……わかっ、た」
ティールは駄々を捏ねる子供じゃない。
優しくて、人の思いを感じ取れて、自分に何かできないかと悩める人。
だから、大丈夫。サフィアさんの思いを理解していない訳ではないのだ。
『ありがとう、ラルさん。……ごめんなさいね、ティール』
私は無言で首を振る。
そして、ティールも無理矢理、納得するように、悲しそうな表情になるものの、ゆっくり首を振った。
「ぼくの方こそ、ごめんなさい。……お祖父様と話したいと、誰よりも思っているのはお祖母さまのはずなのに、あんなことを」
『あら? ティールが謝ることなんてないわ。……それに……ふふっ♪ 私は話したいなんて、これっぽっちも思っていないのよ? 今更、話したいことなんて、なぁんにもないわぁ♪』
……先程までの悲哀に満ちた笑みはどこへやら。清々しい程、輝かしい笑顔である。
これ、本心なのだろうか?
「…………もしかして、お祖母様、は」
どうやら、ティールは何か思い当たる節があるのか、言いにくそうにしつつも、確かめるように話を続ける。
「今までの……と言いますか、これまでのお祖父様の夜遊び、女遊びを快く思っていない……?」
そう言えば、先日もその件でルーメンさんにお仕置きされていたな。
『……あら、そんなことはなくってよ?』
微妙な間。
そして、あからさまな作り笑い。
…………これはティールの予想的中かな?
「お、お祖母さ……あぁ、いえ。ぼくからはこれ以上、何も言いません。はい」
ティールも何かを察したのか、これ以上、話題を広げることはなかった。
私とティールは互いに顔を見合わせ、思わず苦笑を漏らす。
もしかして、サフィアさんがアルドアーズさんの前に現れたくない理由は、視えない、会えない……だけではないのだろう。そんなの、知りたくなかったけど。



~あとがき~
作中ではアルドアーズのサフィアの溺愛っぷりを見せれてないからあれですが、アルドアーズはかなりサフィア大好きマンで愛妻家です。
まあ、そんなやつでも、女遊び夜遊びは別物らしいですが。矛盾が過ぎる。

次回、質問大会は続く。

サフィアがアルドアーズに会わない理由を語るシーンちょいと補足します。
彼女の台詞の中に「また駄目になる」とありますが、言葉通りです。ティール視点の回想にもありましたが、彼はサフィアの死後、すぐに王宮から姿を消します。理由は簡単で、彼女の死を受け入れられず、彼女との思い出が残る王宮にいれなくなったからです。そりゃあもう、心身ともに消沈してました。
今は全くそんなことないアルドアーズですが、その当時の様子を知っているサフィアは、「また」という言葉を使ったのです。
アルドアーズ&サフィアに関して、語り尽くせないくらいの重々しい設定があるんだけど、本編には一向に活かされないのがウケる。なんなんだ、こいつら……(汗)

ではでは。