satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第326話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
ラルの答えを明かしたり、ティールの里帰りにツバサちゃん達も行く事になったり、なんか色々ありました。
今回も何かあります。よろしくお願いします。
ラル「……何が?」
本編見れば分かる!!


《L said》
「……それで、私に伝えたいことって?」
そう切り出すと、アルフォースさんはどこか困ったような表情を浮かべるものの、心を決めたのか、じっと私を真剣な眼差しで見つめる。
「あまり驚かないで欲しいのですが……前置きはなしで、単刀直入にお伝えします」
「え、あ、はい。……どうぞ?」
「ラルさん達が海の国に滞在中、うちの娘が原因で一日、ティールくんが雫くんくらいの年齢まで幼児化します。それも、あなたと雫くんを忘れた状態で」
すっと背筋が凍った気がして、一瞬、息をするのを忘れてしまった。それくらい、私にとっては衝撃的だった。
……これを驚かずに聞けるほど、私は大人でもなければ、冷静でもないらしい。
つまり、なんだ?
ツバサちゃんが原因でティールが小さくなり、記憶も当時に逆戻りする? だから、私やしーくんを忘れるってこと? 今まで一緒にいた記憶も、全て?
そうなったら、私は。……私は、私としていられる? 私を認識してくれていたティールがいなくなって、私は私として、ここにいられるの?
「──アル。これを驚かずに聞けと言うのは無理があるぞ?」
「う……やっぱり、そうですよね。……ごめんなさい、ラルさん」
二人の声で思考の底から無理矢理引き揚げられた感覚がする。
……落ち着け。パニックになるな。……大丈夫、大丈夫だ。
「……いえ、確かに驚きはしましたが。……詳しい話を聞いても?」
「はい。今日、ラルさん達が僕を起こしてくれた時、視えてしまったんです」
そう言うと、アルフォースさんは自身の青い目を片手で覆う。
ミルティアが言っていた。かつて、自分の持っていた能力、“夢見”の力はアルフォースさんが受け継いでいると。
「“夢見”で……ですか」
「はい。……実は、僕の家系がケアル家の遠い親戚に当たるらしいのです。親戚と言っても、もう他人レベルのものなのですが」
アルフォースさんは神と関わりのない他人だと思ってたのに……そんなことなかったんかい。けど、元を辿れば、人類皆親戚みたいなもんだ。……多分、そういうことだ。いや、知らんけど。
「ワシもその事を知ったのは、セラとアルが付き合い出してからじゃったな~」
「そういえば、そうでしたね。……僕らはケアル家のように高い魔力はないし、高度な魔法に精通しているわけでもありません。ただ、この力だけは……ミルティア様の“夢見”だけは代々受け継がれていたのです」
直系であるルーメンさんやセラフィーヌさんにその力がなかったのは、遠い昔、どこかで分かれてしまったせい。それが時の流れってやつなのかもしれない。
「話が逸れてしまいましたね。……ティールくんの話に戻しましよう」
こほんっと軽い咳払いの後、アルフォースさんは幼児化事件の詳細を教えてくれた。
滞在何日目かは不明だが、ツバサちゃんが風邪─以前の魔力風邪みたいな特別なものではなく、普通のやつ─で寝込む日が来ると言う。その風邪が原因で起こる魔力暴走にティールが巻き込まれた結果、幼児化してしまうとのこと。
「巻き戻ると言っていいんでしょうか。……ティールくんはちょうど、サフィア様の亡くなった頃の歳まで小さくなるみたいで。記憶もその頃までのものしかないと思います」
というと、五歳のティール……? 本人曰く、親を含めて、他人と関り合いを避けていた頃だったか。
「……原因は分かりました。しかし、それをなぜ私に?」
「そう、ですね……一日だけとはいえ、大切な人が自分を忘れるのは堪えます。現に“夢見”で視たお二人は相当ショックを受けていた様子でした」
まあ、前情報もなしにそんなことが目の前で起きたら……ショックに決まっている。大体、そんなことは予測できるものでもない。アルフォースさんみたいに私も“時空の叫び”が発動すれば別だけど、何かを視ようと思ってティールかツバサちゃんに触れないと意味がない。しかし、何も知らない私だったら、そんなことをしようと思わない。結果、私がその事件を事前に知ることはほぼ不可能だ。
「つまり、アルフォースさんはショックを和らげるため……私に……? あれ。未然に事件を防ぐためではない?」
「はい。防いでは駄目なのです。この事件はティールくんと陛下にとって、大きな転機でもありますから」
「転機……ブライトさんとティールの」
アルフォースさんは小さく頷く。
そうか。ティール自身も言っていた。
サフィア様が亡くなった直後から、関係性がおかしくなったと。二人が関わる時間が減り、そのせいで距離感がおかしくなった、と。
原因はサフィア様とアルドアーズさんの失脚による、内部統制強化のためにセイラさんとブライトさんが多忙になってしまったため。もっと簡潔に言うのなら、ティールと一緒にいる時間が極端に減ったから。
……でも、今回はそれがない。それを塗り替えられるかも、と。
「あの頃できなかったことを今回、ブライト様に何かしていただければ……ティールくんの中にある悲しい記憶も、少しは変わるかもしれません」
今のティールにある不信感の原因は、幼児化から元に戻れば思い出すだろう。つまり、完全に塗り替えられるものではない。それでも、悲しいだけの幼い頃の記憶に少しでも優しくされた記憶が残れば……或いは?
「ラルさんには申し訳ないのですが、その手伝いをしていただきたいのです」
「防げるかもしれない事件を見逃し、ブライトさんとティールの仲を取り持て、と?」
「言い方は酷ですが、そうなります」
その言葉に私は頭を抱えてしまう。
……これがただ幼くなるだけなら、喜んで協力してたかもしれない。でも、今回はティールは私を忘れる副産物がある。それだけが気がかりで。たった一日……その一日を私は平静を保ちつつ、親子の仲を取り持って……私の精神は耐えられるのか。
正直、私はそこまでメンタルが強い方ではないし、自我を保ってられるのもティールの存在が大きいのもある。その辺りの依存性は自覚している。
だからこそ、周りに気を配り、しーくんにも気配って、どうにかできる自信がない。だって、今、話を聞いただけで息ができなくなるくらい辛いのに、それを見過ごせって言われているのだ。……本当に、できるか?
『マスター』
……らい、ひめ。
『パートナーの幸せを願う、仲間の幸せを願うために我を必要としたマスターはどこへ行ったのだ? 仲間を守るためならば、自らを犠牲にしてもよいと豪語したマスターはどこへ?』
「……」
こんなの、悪魔の囁きにしか聞こえない。
けれど、つまりはそういうこと。
壊れそうになったら、その前に……って話なのだろう。
『うむ。我はマスターのためならば、なんだってしてやる』
信じよう。その言葉を。
私は閉じていた目を開き、深呼吸をする。そして、そっと顔を上げる。
「分かりました。引き受けます。どうなるか想像できませんけど」
家族は仲がいいに越したことはない。すれ違いに終止符を打てるのなら、私の思いなんて二の次でいい。……そう、思うようにしよう。
「さっきは適当に仲介と言いましたが、具体的にはどんなことを?」
ティールくんの口から本音を聞き出してもいいと思いますし、陛下になんらかのアクションを促し、話す機会を設けるとかでしょうか?」
「その辺りが妥当じゃろうな? なんせ、ライト一人に任せていても、当時の二の舞になるだけじゃろうしなぁ? やつの行動なんてたかが知れておるわい」
なんだろ。信用ないな、ブライトさん。
ルーメンさんの辛口コメントにアルフォースさんも苦笑を浮かべる。
「え、えーっと……とにかく、ラルさんにはひとりぼっちで悲しんでいるティールくんを救って欲しいのです。大袈裟かもしれませんが、ラルさんがティールくんの光になってくれればと」
「……そんな大それた存在にはなれないと思いますけど、やれるだけやってみます」
「ありがとうございます、ラルさん。……辛い役目を背負わせてしまいますが、よろしくお願いします」

親方部屋を後にした私はその足でティール達と合流した。預かってくれたツバサちゃんにもお礼を言い、今は三人で自分達の部屋へと戻る最中だ。
しーくんはティールに抱っこされ、彼を見上げ、こてんと首を傾げる。
「ねー! おはなし、ルーメンおじいちゃんとしたの?」
「ん? したよ~? さっき、皆に話した通りの感じになりそうだよ」
「ほあ~♪ よかったね!」
「うん。そうだねぇ」
二人で他愛ない話を楽しそうにしている。そんな二人を見て、改めて思う。
ティールに幼児化事件は話せない。それを知って、素直に巻き込まれてくれるのか……んな訳ない。難色を示すに決まっているし、嫌がるに決まっている。
かと言って、しーくんにもできない。しーくんはティールとブライトさんの不仲を知らないってのもあるけど、そもそも隠し事に不向きだ。しーくん経由でティールにバレたら意味がない。
現状、私一人でどうにかするしかない。
「ラル? 難しい顔して、どうかした?」
ずっと黙ったままだったからか、ティールが不思議そうにこちらを見ていた。
「……え? あぁ、いや。なんでもないよ」
「本当に? 何か隠してない?」
なんでこういう時だけ鋭いんだよ、こいつ。
胸の内で悪態をつきつつも、それを実際に口にはできない。作り笑いで「なんでもない」ともう一度告げる。ティールはあまり納得してなさそうだったが、腕の中のしーくんがパッと笑顔を覗かせた。
「ラルー! おへや、おかたづけするんだよね?」
「片付け?」
「ん! だって、もーすぐ、ここいなくなるでしょ? だからね、おかたづけするってティールがね、はなしてたんだよ?」
なるほど。その返答がなかったから、不信感を抱かれたのか。それは私の不注意だわ。
「ごめん、二人とも。考え事してて話聞いてなかった。……あと二、三日くらいでここを出て、ティールのお家行かなきゃだから、この後片付けよっか」
「あいっ! ボク、ティールのいえ、たのしみー! ティールのパパとママにあうの、たのしみなの!」
「えっ……あー……? おー……んー? 暴走しないか心配だ」
無理では?
「……だよなぁ。ラル、頼むから雫から目を離さないで? 母上が何するか分からないから」
善処する。けど、私ごときでどうにかなるような御仁ではない気もしますが。
ティールと会話しながらも、私は別のことを考える。
……今のところ、アルフォースさんの話してくれた未来がどうなるのか予想がつかない。事件は教えてくれたけど、その先は話さなかったからだ。視えなかったのかもしれないし、あえて話さなかったのかもしれない。
とりあえず、今はいつも通りに過ごすしかない。その時が来るまでは。



~あとがき~
終わりが見えてきました。

次回、あの二人の対決!
がっつり描写は二回目になるのかな? お楽しみに。

ここまでラルが思い詰める理由。多分、本編で語らなそうなので、ここで補足しておきます。
ラルにとってティールは精神安定剤みたいなものです。レイ学世界線では大して目立たない記憶喪失設定(笑)なのですが、これのせい(?)でラルは自分の存在する理由をティールに委ねているというか、求めている節があります。どっかで言った気がしますが、ラルはティールに依存してるんです。
(関係ないけど、逆もまた然り。理由も深刻度も違いますが。)
ティールがラルを認めてくれる(認識している)から自分でもここに存在している、できていると思えるとも言えます。なので、そんな存在のティールに忘れ去られたらと思うだけでSANチェックすっ飛ばして、SAN値減少案件なのです。
とまあ、いっちばん最初に幼児化事件ネタを持ち出されたとき、相方の中ではきゃっきゃっするだけのネタだったと思うんですが、この設定があるせいできゃっきゃっとできんかった。すまん。
はい。ほのぼのわいわいメインなレイ学世界線には全く必要のないはずの闇設定の話でした。
まあ、これは空海ピカちゃんにも言えることなので、しゃーなし。

ではでは。