satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第409話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でだらだらしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、リリアーナの家にたどり着いたアラシ、ツバサ&リラン。そこでユーリ&イツキと合流もして、早速特訓だぁ!……てな具合でした。


《Y side》
リリアの家に到着するやいなや、彼女の専用の特訓部屋へとやってきた僕らは軽い準備運動─をしていたのは、イツキと僕だけなんだけど─を済ませる。
そんな僕らの様子を見て、アラシさんが不思議そうに首を傾げた。
「あの、先輩方……? 今からやるのって精霊召喚魔法の特訓なんすよね? 準備運動は必要ですか……?」
「おうよ。今から体、動かすからな。お前もやっとけ?」
「う、うす……?」
アラシさんが戸惑うのも分かる。けど、イツキの忠告は最もである。
こればっかりは見てもらって、体験した方が分かりやすいので、僕から説明はしない。
アラシさんはイツキの言葉に素直に従って、準備運動をする。それが終わる頃合いを見て、イツキと軽い打ち合わせもしておく。
「いつも通りでいく?」
「だな。こっちは俺とアラシに任せとけ。そっちはユーリとツバサで頼むわ~」
「了解。……では、ツバサさんは、僕とこちらへ」
「アラシは俺とこっちだな」
「「は、はい……?」」
大した説明もなく、役割分担をしてしまって申し訳ないけど、これが最善なんだよね。
「ツバサさんは僕と離れて、リリアの様子を観察し、分析しましょう。囮はあの二人に任せて」
「はい。わかりま……って、囮?」
「もしくは、的役とも言うかもしれません」
「ま、的役!?」
これ以上、なんて表せばいいのか、分からないんだよな。
「せ、先輩? ユーリ先輩の話は」
「ん? 間違ってないよ?」
「先輩!?」
「だーいじょぶ。死にはしな~い♪」
「そういうことではないのでは!?」
「まあ、やってみれば分かるぞ」
その通り。説明しても信じてもらえないと思うので、体験した方が早いのだ。
簡単な役割分担もできたところで、始めよう。時は金なりってね。
「わふっ! わふっ!」
「? どうしたの、リラン?」
そろそろ始めるかと気合い(?)入れていると、リランが突然、僕の裾を引っ張り、何かを訴えてくる。僕がしゃがむと、今度は地面……正確には、僕の影をペシペシッと叩き始めた。
「? なんだろ」
僕はリランの言葉が分かる程、一緒にいない。でも、何か言いたいのだけは伝わってくる。
「ん~? どしたの、リラン? ユーリさんに用事でもあるの?」
「わふっ! あんあんっ!」
「……え、ノワール?」
ノワール? なんであいつの名前がここで出てくるんだ。
何かを訴えてくるリランの通訳をツバサさんがしてくれた。
それによれば、リランはノワールから新しい魔法を教えてもらいたいらしい。
「なんでも、新しいことを頑張るリリアーナさん見て、リランも何かやりたいって。ノワールってデバフ魔法が得意なんですよね? それをリランが覚えたいってことみたいです」
「むしろ、それが専門ですね。それ使ったエグい戦い方します」
「……がう」
ノワールが僕の影から顔だけ出し、謎に反論してくる。エグい戦い方という言い回しが気に入らなかったようだ。
でも、僕、嘘は言ってないけどな。……って、今はそんなこと、関係ないか。
「……えっと、リランに魔法を教えるのはいいんじゃないかと。僕は構いませんよ」
「があう!」
僕が勝手に了承したのが気に食わなかったようで、キッと僕の方を睨み、不満を露にする。
「うるさいなぁ。どうせ暇だろ、お前」
「がう」
「それに僕らは、これからリリアに付き合うんだぞ。じゃあ、リランの相手は誰がするんだ?」
「がうがう」
俺じゃなくてもいいだろ、か。
全くもってその通り。でもまあ……
「お前以外に適任いないだろ?」
「……」
ノワール。相手してやって?」
「…………ぐぅ」
「そんなに一匹が嫌なら、ふわにも手伝ってもらえばいいだろ? あいつも呼ぶからさ」
ノワールが肉体派なら、ふわは頭脳派だ。何かを教えるのも、ふわの方が何かと得意だろう。
僕がふわの名前を出すと、リランが嬉しそうに尻尾を振り、一鳴きする。
もしかして、リラン、ふわにも会いたいのかな?
「……はい。そうみたいです」
「なら、話が早い。ふわ、おいで」
僕がふわを呼ぶと、ぽふんっと頭上に小さな黒狼が現れる。そして、僕の頭にちょこんと座ると、ニコッと笑う。
「わふ」
「話は聞いてた? 頼める?」
「わふ♪」
こちらは素直に頷いてくれる。従順で何より。
「じゃ、僕とツバサさんはリリアの方にいるから。何かあったら教えて」
「わふ」
「わんっ!」
「……がぁう!?」
確かにノワールに承諾された記憶はないけど、ここまで来て、お前だけ何もしないのはどうかと思うぞ。諦めろよ。
「…………がぁう」
はい。素直でよろしい。じゃ、僕の影から出てってね。
ノワールは渋々と言った様子で、ぬるりと影から這い出ると、心底嫌そうな顔付きで、部屋の隅っこへと歩いていく。そんな彼の後をリランとふわも追いかける。
「ご、ごめんなさい……ユーリさん。リランが我儘を」
「いえ、お気になさらず。どちらにせよ、リランのことはノワールに任せるつもりでしたので」
リリアの特訓に付き合う以上、リランのことは誰かが見てなきゃならない。一番安全なのは、ノワールに任せることなのだ。
「さて、僕らも始めましょう」
「はいっ!」
今度こそ、特訓の前準備は完了だな。

「始める前に、リリアーナさんがどんな風に特訓していたか、お聞きしてもいいですか?」
やる気満々なリリアに対し、ツバサさんは至極当然な質問を問いかける。
その問いにリリアは少しだけ考える素振りを見せ、ニコッと笑った。
「んとね~……えいってやって、ばーんってやってた!」
「え、えーっと?」
分かってはいたけど、擬音しかねぇ……!
仕方ないので、僕が説明するか。
「リリアって、感覚タイプの魔法使いなんです。僕みたいに、理屈や公式、魔法陣を意識しながら、魔法を使用することはありません」
「む、そんなことないもん! たまにやるもん!」
「嘘をつくな。大体が感覚でしか、発動させないくせに」
「そうだぞ。それをリリィがやってたら、俺らが毎度、悲惨な目に遭ってないから!」
「そ、そんなに凄いんすか?」
ぼくとイツキは無言で頷く。
きっと、イツキも過去のあれこれを思い出しながら、同意していることだろう。
「ほえ~……リリアーナさん、レオンタイプなのかぁ」
「だって、回復魔法はそっちの方が上手くいくんだもん」
「あ、確かに。回復魔法はそうですね♪」
ツバサさんの言葉にイツキが不思議そうに「そうなんか?」と問いかけてくる。それに僕は小さく頷いた。
「回復魔法は他者を癒す魔法だから。どれだけ魔力を込めるかによって、回復スピードや精度が変わってくる」
「それに、回復魔法の魔法式自体も、そこまで複雑じゃないっすからね。それも相まって、込めたら込めただけ威力が上がるっていう感じらしいっす。俺とユーリ先輩は適性がないんで、その感覚とやらは、いまいち分かりませんけど」
「ほーん?」
とはいえ、回復魔法以外の光魔法は魔法式が複雑化しているので、単純に発動できるものではない。リリアのように、考えなしに念じて、できるものではないのだ。
「まあ、百聞は一見に如かず! とりあえずやってみようぜ~? リリィ、準備は大丈夫か?」
「もっち!」
と、謎にシャドーボクシングしてみせる。やる気に満ち溢れているという意思の現れだろうか。ないよりはいいけども。
僕とツバサさんは、離れたところで三人を見守ることに。
やる気満々なリリアの対面には、剣を構えるイツキと、未だ戸惑い気味のアラシさんがいる。
「おっしゃあ! いつでもこぉぉい!!」
「な、なんでそんな気合い入ってるんすか?」
戸惑いはあるものの、アラシさんは言われた通りに武器を持ってきているようで、きっちり双剣を構える。
……リリアのあの気合いの入りよう……もう少し離れるか。
「ツバサさん、もう少し下がりましょう」
「う? はい……?」
ツバサさんが数歩下がったところで、リリアがカッと目を見開く。
「せやあぁぁぁあっ!!!」
彼女の足元に現れた魔法陣見て、アラシさんがぎょっとしたのが分かる。そして、僕の隣にいるツバサさんも同様に驚いている様子。
「え、え!? あ、あれ、精霊召喚の魔法陣じゃないですよっ!?」
そうです。違うんです。
リリアが使った魔法は相手の頭上に落石を発生させる攻撃魔法だ。
その相手っていうのが、イツキとアラシさんの二人。つまり、彼らの頭上に岩が落ちてくるってわけで。
アラシさんはリリアの魔法陣を見て、すぐに上を見上げ、落下する岩を見事な剣捌きで、危機を回避する。
そして、イツキもアラシさんと同様にお得意の剣を使い、次々と岩を斬り伏せていく。
全ての岩を捌ききった二人は、安心したように、ほっと息を吐く。そして、イツキはリリィに向かって、剣先を向ける。
「リリィ!! いっつも落石ばっか発生させんなよぉぉ!!! なんだ!? これから始まりますって、俺達に対するご挨拶ってか!?」
「うりゅ~~!! ごめんなんだよ、いっちゃあぁぁんっ! 可愛いウサギさんを想像してるんだけど、なんでか岩が出てきちゃうの!」
「知るかぁぁー! もう、ウサギ=岩なんじゃないの!? なら、岩を想像しよ!」
なんつーアドバイスだよ。
リリアとイツキが言い合いする中、なぜ武器が必要なのか、身をもって体験したアラシさんはその意味をようやく理解したようだ。どこか腑に落ちた様子で、苦笑を浮かべる。
「な、なるほど……こりゃ、武器が必要になる訳だ……」
「ほえ~……も、もしかして、いつも新しい魔法を習得する時はこんな感じで?」
「大体、そうですね。でも、普段はやっていくうちに、コツを掴んでって、習得できてるんですけど。……今回ばかりは、どうにもこれ以上、前に進まなくて」
「そうだったんですね」
こうも失敗続きなのに、どうしても諦めきれないリリアの頑固さもあり、何度もトライしている。いつもなら、何度やっても、習得できないと分かれば、「諦めるしかないか~」と納得してくれるのに。
恐らく、彼女の中で、折り合いがつかないのだろう。どうしても、精霊召喚を取得し、ウサギ精霊と仲良くしたい願望があるようだ。
……とはいえ、それに付き合わされる、僕らの身にもなって欲しいものだ。



~あとがき~
苦労してるな、イツキさんとユーリさん。

次回、お勉強会。

懐かしきユーリの精霊、ふわちゃん。
ちゃんと確認をしてませんが、剣技大会以降、出てなかったかもしれない。いやはや、お久しぶりです。
まあ、ユーリ自体、久々の出番なんで、仕方ないんやけどな!
それはさておき。
リランとふわ、本編では語ってませんが、両者共に面識ありです。特別な経緯もないんですが、リランが学園へ一緒に行くようになってから、一度もふわと対面していないことはないやろ、という私と相方との見解です。

ではでは。