satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第415話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、リリアーナの特訓風景に戻り、どうにもならなくなった面々。
そんな中、ツバサちゃんの提案する、新たな方法……!
そんな感じでやってくよ~~~!!


《Y side》
「二人? そんな方法、初めて聞きました」
本来、精霊召喚は一人で行うものだ。当然である。なんせ、召喚した後は呼び出し手と精霊で主従関係を結ぶのだ。そこにもう一人が加わってしまうと、精霊はどちらに忠義を誓い、契約を結ぶのか謎すぎる。
「はい、その通りです。精霊召喚はどんな方法であれ、最終的には呼び出した人……術者と契約を結びます。だから、基本的に一人で行うものです。だから、二人で行う召喚方法は、一般的に知られていないかと」
「しかし、ここで『アレしかない』と言うのなら、違法的なものではないのでしょう?」
「はい。禁止された魔法ではありませんので、使用しても問題ありません。……ない、んですけど……う~~~ん」
ツバサさんは腕を組み、再び、難しい顔をして、唸り始める。
その様子に黙って話を聞いていたイツキ達も首を傾げる。
「ゆっちゃんとツバサちゃんの話、難しいよ。結局、どゆこと……?」
「お~? なんだ~? 何か別のこと始めるの?」
「にしては、ツバサのやつ、かなり苦い顔してますけどね。……どうした? お前がそんな顔するなんて珍しいな」
「う~ん……うん……そうかも。……まあ、とりあえず、方法について、説明しますね?」
気持ちの切り替えのためか、ツバサさんはこほんと軽く咳払いをし、僕達に向き直る。
「この方法が生み出された経緯は、精霊召喚魔法に適正のない人や魔力の少ない人でも、精霊と契約できるように生み出されました。……要するに、精霊と契約したいけど、何かしらの理由で、精霊と契約できない人のための方法、ですね」
なるほど。今のリリアみたいな人のための方法ってことか。
「方法自体は、二つ目に近いんですけど……まず、一人目が精霊召喚のための式を組み、魔法陣を展開する。そこで精霊に自我を与えるぎりぎりまで、魔力を注ぎます。そして、二人目……もっと言えば、契約したい魔法使用者、本人がありったけの魔力を魔法陣に注ぐことで、精霊に自我が芽生えてくれて、晴れて、新たな精霊の誕生……って流れになりますね。その後は、普通に召喚した時と変わらず、精霊と契約を交わせば終了です」
ふむ。つまり、精霊召喚ができる人がゴール手前まで引っ張ってあげて、最後の仕上げだけ、精霊と契約したい人へバトンを渡すのか。
「すっげー! そんな方法あんの!?」
「すごいすごい! それなら、私でも、ふわふわ、もふもふのウサギさん精霊と契約できる!?」
確かに、今のリリアにぴったりの方法ではある。しかし、あのツバサさんがあそこまで渋った末に教えてくれた方法だ。
それには何かしらの理由があるはずで、今も尚、ツバサさんを悩ませる理由でもある気がする。
「なあ、ツバサ? 得意属性の違う人達で行う場合、精霊ってどうなるんだ? 複合? それとも、どっちかに依存すんの?」
「それは僕も気になってました。……それに、この方法で生み出された精霊は、どちらに懐くのでしょう? 魔法式を組み、魔法陣を展開した人? それとも、最後に自我を与え、契約を交わした人? あるいは、その両者、ですか?」
僕らの質問にイツキとリリアは不思議そうにこちらを見る。イツキはともかく、リリアは知っているはずなのだが、単に忘れているだけであることを祈るばかりだ。
僕はため息混じりに二人に対して、説明してやる。
「あのねぇ……? 魔力パターンってのは、同じものがないの。つまり、指紋や遺伝子みたいなもので、クローンでなければ、『同じ』なんてことはないわけ。そこまではいい?」
「「さーいえっさー!」」
どこの軍隊だ。まあ、いい。
「で、精霊召喚ってのは、どんな方法でも、自身の魔力を使うだろ? 精霊界にいる精霊でも、一から生み出す精霊でもそこは変わらない。……つまり、術者と似ている、もしくは、全く同じ魔力で呼び出した精霊は、術者の魔力に応えてやって来てくれる。その時点で、ある程度、使役できてる状態だ。……そうでなきゃ、ノワールを初めて呼び出した瞬間、即やられてたよ?」
「た、確かに。……あん時のせんせ、めちゃ怖かったもんなぁ」
そゆこと。
闘争本能が高く、戦闘馬鹿なノワールが開口一番、暴れなかったのは、少なからず、僕の魔力に共鳴し、姿を表したからだ。
っと……少し話が逸れた。
とにかく、魔力を与えられた精霊は、その魔力の持ち主に忠実になるってことだ。
「……そこに更に魔力を注いで自我を与えたり、名前を新たに与えることで、より強固な関係……主従関係になるんです。そうして契約した精霊は術者……主に忠義を示すようになるんです。だから、生まれたばかりの子でも、反抗せず、主の言葉に従うんです」
僕の説明をツバサさんが引き継いで、終わりまで説明してくれた。
僕が懸念しているのはまさしく、そこにある。
本来、一人でやる作業を分断してしまうため、完璧な主従関係を結べない。それによって、反抗的な精霊が生み出されても不思議ではない。
そもそも、アラシさんも疑問として投げ掛けてくれているが、得意属性が異なる術者同士で精霊が呼び出せるのか……そこも不明である。
「……さっき、アラシやユーリさんが言ってくれた通り、その点こそが、この方法がマイナーである理由なんです。お二人の疑問にお答えしますね? まずは、アラシが言ってくれたことから」
属性の違う者で行う場合、精霊がどうなるのか、か。
「そう、だな。……召喚できると仮定した時……両者とも魔力を注ぐし、ぐちゃぐちゃに混ざりそうだけど。どうなんだ?」
「うん、その通りだよ。……高確率で属性が混同した子が生まれるんですが、特徴として、体や毛並みに斑模様の子が多いですかね。そうでなくても、何らかの形で二つの色を持って生まれてきます。そうですね……どちらがどのように魔力を込める比率にもよりますが……大体……八対二の割合ですかね? 魔法陣を組む人が八割、最後に魔力を注ぐ人が二割の影響を与えると言われています」
そりゃ、ゴール手前まで走ってる人の影響が強いに決まってるよな。
「んと……例えば、私とゆっちゃんがやったら、黒にオレンジが混ざった狼さんが出てくるの……?」
リリアの言葉にツバサさんは小さく頷く。
「そして、精霊が得意とする魔法も、その割合に依存します。なので、ユーリさんの得意とするデバフ魔法がそのまま精霊に影響します。……あ、精霊の姿に関しては、魔法式である程度、制御できるので、そこは気にしないでください」
デバフをメインに使えて、土魔法も少し使える精霊が生まれるってことか。……へぇ、それはそれで興味が湧くな。
「やべ。ユーリが楽しそうにし始めたぞ。……で、ツバサ。ユーリが気にしてたとこは?」
おい、イツキ。やべってなんだ。なんもやばくないけど?
「えぇっと……二人分の魔力で呼び出した精霊は、必ず忠順になるとは限りません。この方法で呼び出した子は、純粋な魔力に惹かれてやってきたわけではないので」
「必要なら、一から関係を築く必要があるわけですね?」
「はい。なんなら、その可能性が高いと思います。……精霊として、これは大きなデメリットです」
「確かに。精霊召喚は、こちらのお願いや手伝いをして欲しいから、呼び出します。なのに、それらをしてくれないなんて、本末転倒ですからね。……なるほど。ここまでデメリットばかりだと、この方法が世に伝わらない理由も納得だな」
複合属性を操る精霊を簡単に生み出せるのは面白くはあるけど、呼び出してみないとどうなるのか分からないのは……それなりに度胸のいる博打だ。しかも、言うことを聞くかも分からないときた。メリットより、デメリットが目立つのはなぁ。
「そうなんですよね。……なので、この方法は、あまりオススメできないです。でも、私はリリアーナさんの意思を尊重します」
ツバサさんは真剣な眼差しでリリアを見つめる。
リリアがやると言えば、成功させるための協力を惜しまない……そう言うことなのだろう。
「う、うゆ……う~~~っ!」
リリアはリリアで心が揺れているようだ。頭を抱えて、唸り始めてしまう。
ウサギの精霊と契約はしたいが、どんな子が出てくるか分からない。最悪の場合、狂暴な精霊を呼び出し、契約したはいいものの、迂闊に呼び出せない……なんてことになる可能性がある。
「ま、やってみればいいんじゃね? 俺は難しいこと分からんけど。……こっちには、暴れん坊な先生を手懐けたユーリがいるんだぞ? なんとかなんべ~」
「いや、なんとかなったのは、正式に契約したからだけど。……でもまあ、リリアにやる気があるなら、僕は協力はするよ。ここまで付き合ったんだ。最後まで付き合う」
「いっちゃん……! ゆっちゃん……!」
「んで、リリィはどーしたい?」
「リリアが決めな。どっち選んでも、僕もイツキも反対なんてしないよ」
「うん。ありがと、二人とも。……私、やるよ! どんな子がきても、頑張って仲良くなってみせるっ!」
うん。それでこそ、リリア。
「このチャンスを逃したら、契約なんてできない。……ツバサちゃんが組んでくれた魔法式、何度チャレンジしても発動してくれないから……多分、私、正規な方法じゃ、駄目なんだと思うの」
「……いいんですね。どうなるか、私も予測できませんよ?」
「うんっ! 大丈夫! だから、ツバサちゃん、お願いしますっ!」
リリアは深々と頭を下げる。そんなリリアにツバサさんはこくりと大きく頷き、ふわりと柔らかな笑みを見せる。
「はいっ! リリアーナさんがそう決めたのなら、私は全力で協力します♪」
「ふにゅ~! ありがとうっ! 私、しつけ、頑張るー!!」
「……たはは。それだけ聞くと、リリィが愛玩動物を飼うだけに聞こえるなぁ?」
「まあ、それと大して変わらないと思いますよ」
アラシさんの言う通りだ。この方法で呼び出した精霊は、普通の動物を飼うのと感覚は変わらない。
「……リリア。誰と呼び出してみる?」
「ほ……? あ、そっか。魔法陣を展開してもらわないとだもんね?」
君ができないからね。
イツキは魔法を使えないから除外するとして……この場で魔法を使うのは、僕、ツバサさん、アラシさんの三人だ。
「あ、すんません。……俺、精霊召喚できる程、魔力に自信ないです」
「アラシ、魔力ないもんね~」
ツバサさんって身内には遠慮ないのかな。レオンさん然り、アラシさん然り。
ツバサさんの言葉は大して気にしてないのか、ひらひらと手を適当に振る。
「はいはい。俺なんて、化物級のお前と比べたら、雀の涙ですよーだ。……ってことなんで、俺は力になれそうにないんです。申し訳ないっす」
「気にしなくていいんだよっ! いっちゃんも力になれないから!」
「リリィ!? 俺ら、いっちばん頑張ってるけど!?」
それはそう。
となると、僕かツバサさんか。……その二択なら。
「ごめん。付き合うって言ったけど、僕も辞退しようかな」
「ゆっちゃんの裏切り者!! なんで!」
何? 僕らのことは罵倒しないと気が済まないのか? 何かしたっけ?
……まあ、それはそれとして。
「理由はちゃんとあるよ。『黒』の僕より、『白』のツバサさんの方がリリアとの相性もよさそうだから。リリアの持つ属性は『オレンジ』と『白』の混合でしょ?」
「……そ、そうだけど」
「それとも、リリアは黒のウサギがいいの? それなら手伝うけど、そこに拘りがないなら、少しでも成功率を上げられそうなツバサさんとやった方がいい」
「むゆ。……そだね、ゆっちゃんの言う通りかも。……ツバサちゃん、いい、かな?」
「はい。私は構いませんよ♪ 一緒に頑張りましょう、リリアーナさんっ!」
「うんっ! 足引っ張らないよーに、頑張る!」
ツバサさんは魔法の知識も豊富だし、失敗することはなさそうだ。リリアが何かしない限りは。
「どうやら、俺らはお役御免っぽいぜ?」
「そうみたいですね。なんとかなりそうですし。……お疲れ様でした、先輩」
「お前もな、アラシ~♪ ユーリも適当に理由付けてたけど、ツバサとの相性だけの問題か?」
「……うるさいな」
リリアの得意な回復魔法、精霊も使える方がいいかなって思ったところはあるのは、確かだ。そして、その属性を与えられるのは、白のツバサさんにしかできない。
あと、経験則として、自身と同じ魔法を得意とする精霊と契約した方が意志疎通もしやすいし、命令も与えやすいと思うから。
これから、どんな精霊が現れるか分からない以上、少しでも共通項はあった方がいいだろう。
僕の説明を聞いて、アラシさんはふっと笑い、イツキと僕を交互に見る。
「イツキ先輩もそうですけど……ユーリ先輩もリリアーナ先輩のこと、大事なんすね。じゃなきゃ、こんなこと、子供の頃から付き合えないっす」
「……まあ、大切な友人の一人なので」
「だなっ! アラシだって、ツバサやレオンになんかあったら、助けてやりたいだろ~?」
「……レオンはどーでもいいっす。けど、そうですね。俺にできることなら、助けになりたいです」
じゃ、そんな幼馴染み達のために、もう少し付き合おうか。



~あとがき~
奇しくも両組み、幼馴染みなんよね。

次回、ツバサ&リリアーナによる精霊召喚に挑戦!

アラシ君はツバサちゃんが好きですけど、イツキやユーリにその気はないです。
三者共に、気兼ねなく話せる仲良しな友達の感覚です。将来的にも、それ以上になる予定はない。

ではでは。