satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第414話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、精霊組の特訓風景をお届けしました。あっちはあれで終わりです。
今回からようやく、本題に戻れるぜ☆


《Y side》
リランのブレス騒動があったけど、気を取り直して、リリアの特訓を再開させよう。
「……リリア。色々あったけど、ツバサさんの作ってくれた魔法式、頭に入った?」
「うん。理解はできた」
理解は、ね。
リリアは別に、魔法式自体は苦手ではない。組み合わせるのも、それらを暗記するのも、問題なくできる。ただ、それを意識して、魔法を発動できないだけである。
「やってみるね」
「うん。……イツキ、準備して~」
「ういうい! 行くぞ、アラシ」
「うっす」
リリアが魔法式を読み解いている間、休憩─リックさん達が飲み物や軽食も持ってきてくれた─を挟んでいたイツキ達が立ち上がり、持ち場につく。
そして、それを少し離れたところで見守る僕とツバサさん。
「ユーリさん」
「なんでしょう?」
「今更なんですけど、イツキさんやアラシの役割って必要、ですか?」
「そうですね。……リリアが感覚タイプなのはお話ししましたよね? それのせいか、新しい魔法を習得する時、何か的がないとイメージしづらいみたいで。それがないと、変なところに魔法を発動させてしまって……言ってしまえば、危険なんです」
僕らだって、幼馴染みのためとはいえ、好き好んで、的になりに行っているわけではない。しなくていいなら、当然、的になんてならない。
「でも、無機物の的だと……その、数がいるんですよ。壊れない的があればいいんですけど……リリア、感覚の掴めない魔法は、まず全力でやるんで」
「……なるほど。なんとなく、イメージできました」
一日の特訓で何十回、下手したら、何百回もの魔法を行使する。その度に的を壊しまくっていたら、埒が明かない。
「それに、気持ちの問題なんでしょうけど、無機物より、僕らが的になった方がなぜか、リリアのやる気も上がるみたいなんです」
それに、こちらに全く得がないとは言わない。
突然の攻撃を防ぐための瞬発力、判断力が鍛えられるし、どこから魔法が飛んでくるのか警戒するためか、五感も研ぎ澄まされる。
つまり、こちらはこちらで、特訓しているわけだ。
「とりゃー!!」
「うぎゃー!? リリィさぁぁんっ!? 違う違う!! なんか違うの飛んできてる!!」
「うおっ! 意外と殺意高いっすね!? リリアーナ先輩っ!?」
無数の岩の弾丸をイツキとアラシさんに向けて飛ばしまくるリリア。それらを二人は剣や魔法、技を巧みに操って、華麗に凌ぎきる。
……う~ん。今のやつは、せっかくの魔法式を全く応用できてないなぁ。
「はい……なんというか、一ミリも反映されてない気がしますね」
「一応、何度か様子を見ますか」
「そうしましょう。今までとは違う方法で試しているので、慣れるまでに時間がかかるのかも。……その間に別の方法も準備しておきましょう♪」
別の方法? というと、一つ目の方法ですか。
ツバサさんは嬉しそうに頷く。そして、彼女は僕に紙とペンを差し出してくる。
「なので、ユーリさんがノワールを呼び出した時の魔法式を書き出してもらえますか? それを私がリリアーナさん用に改良しますっ」
ノワールのやつか。……あ、でも、あれは僕も自分用に手を加えてしまっているので……元々のやつ、書きますね」
「それで大丈夫です。お願います♪」
これは元々、精霊界とコンタクトを取るから、何かの属性魔法に属するわけではない。だから、リリアが使った際、どのようになるのか、あまり想像がつかないのが怖いところではある。
まあ、どうにでもなれ。的になるのは、イツキとアラシさんだ。何かあっても、ここまで凌いできた武闘派の彼らなら、何とかするだろ。
僕は魔法式を書き出した紙をツバサさんに返す。それを受け取ったツバサさんはささっと式を組み直し、満足げにそれを見つめている。
「これ、リリアーナさんに渡してきます! こっちも試してみてくださいって」
「はい。お願いします」
きりよく、リリアの魔法が発動し終わったタイミングで、ツバサさんは新たな魔法式の書かれた紙を手渡しにいく。
これでどうにかなればいいけど。でも、正直、これでなるんだったら、僕らの夏休みはもっと晴れやかなものにっているんだよなぁ。

結論から言おう。
どちらの方法を何度試しても、リリアお得意な土魔法、そして、たまに謎の回復魔法が発動するばかり。今のところ、精霊召喚のせの字すら辿り着けなかった。
「リ、リリィ……? なんで、全部、土属性の魔法、なの……?」
「わ、わっかんないよぉ~……! 気持ちはちゃんと、精霊さん、来てーって思ってるもんっ!」
「も、もう、気持ちじゃ、どーにもならーん……うげぇ……ちょっと休憩させてぇ~」
イツキがへなへな~っとその場に座り込み、アラシさんもどかっと座ったかと思えば、そのまま大の字になって寝っ転がる。
リリアもリリアでふにゃふにゃ言いつつ、その場にしゃがんでツバサさんからもらった紙とにらめっこし始める。
ぶっ通しで魔法発動して、それらを受けていた三人だ。見ているだけの僕らよりも疲弊するはず。
これは一旦、休憩タイムかな。
「ツバサさん、三人に何か飲む物とお菓子でも持っていきましょう」
「あ、はい。……むー? ここまで成功しないのか~……この後、どうしましょうか?」
うん……いや、本当にどうしましょうね?
個人的に、魔法のエキスパートにここまでしてもらっても、何もできない。なら、これ以上はもうどうにもらないって思っている。まあ、それを受け入れるか否かは、本人次第なのだけれど。
さて。まずは、一番体を動かしているイツキ達に飲み物を持っていってあげないとな。
「イ、イツキせんぱーい……むかっしから、こんなんなんすか……?」
「ガキの頃からこんなんだよぉ~……? ま、ユーリの方が魔法に対しての興味っつーか、姿勢っつーの? それは凄まじいんだけど~……リリィも全くないわけじゃないからさ~?」
と、リリアの魔法特訓に関する姿勢の話をしている二人に飲み物を差し出す。
「お疲れ様。……イツキ、まだいける?」
「俺? 俺はまだいけるけど。……いけるけどさ……ちょい、耳、貸せ」
イツキに手招きされ、僕は耳を傾ける。
彼は言いにくそうな、躊躇うような、そんな様子だったが、ボソッと耳元で「あのさ」と話を始める。
「お前の目から見て、実際、脈はあんの?」
「? 脈があるなら、これが始まる前に諦めなよ、なんて言わないけど?」
「……デスヨネー」
「僕としては、この時間が無駄だと思わないから、付き合うだけ。というか、あのリリアを止める手段を知らないってのも、もちろん、あるけどさ」
「それはそうだな。……つーことで、アラシ、もうちょい付き合ってくれ~?」
イツキに呼び掛けられたアラシさんは、むくっと体を起こすと、こくりと頷いた。
「俺は全然、構わないっすよ。……ですけど、魔法を連発してるリリアーナ先輩は平気なんすか?」
「おう。ちょいちょい、魔力回復効果のある菓子とか飲み物飲んでるから、大丈夫だ。特訓の時のお供だぞ」
「あぁ……なるほど。先輩の執事さん達が時々、持ってくるやつって、そういうことなんすね」
「そゆこと。俺達のもちゃーんと疲労回復の効果のあるやつだから! 安心しろ!」
「いや、だからって安心できないっすけどね……?」
確かに。何が安心できるんだか。
僕らの男三人が話している間、ツバサさんがリリアに飲み物やお菓子を持っていってくれていた。それらを食し、ある程度元気になったらしいリリアがわっと叫び始める。
「だめー!!! どう頑張っても、ウサギさん、でなぁぁあいっ!!」
あの様子だと、本人も全く手応えがないらしい。
リリアが僕を捉えると、素早く立ち上がり、僕の方に駆け寄って、その勢いのまま、飛び付いてきた。そして、涙目でこちらを見上げてくる。
「ゆっちゃあぁぁあんっ! どうやったら、精霊呼べるの!?」
「え、えぇ? そんなことを言われても。僕が使うやつはもう、ツバサさんが君用に改造してるし、僕からは何も言えないよ」
「うみゅみゅ~……! ゆっちゃん、意地悪ぅ~~!!」
「なんでそうなるんだ。……大体、ウサギの形に拘るから、難しいんだよ。いっそ、ゴーレムを使役したら……? そっちの方がいつもみたいな感覚で生み出せるかもよ?」
ゴーレムとは、コアを与えた精霊の総称だ。だから、言ってしまえば、姿形はなんでもいい。土魔法が造形系を得意としてるから、土人形を生み出しやすいだけで。
だから、土属性を得意とする人の精霊はゴーレムが扱いやすいのだが。
「やだっ! ふわふわの、もふもふがいいのっ!!」
「我儘か!?」
今回、過去、稀に見るレベルで諦めが悪いな!?
「う~~~~ん……精霊界とのコンタクトも無理……自我を与える方法も無理……となると……む~~」
リリアに遅れて、ツバサさんが難しい顔をしてこちらへと近付いてくる。そして、ポツリと「ズルいけど、アレしかない……?」と呟いた。
その口振りだと、他にも方法があるように思える。しかもそれは、あまりしたくないような方法で。
しかし、僕はその方法に心当たりがない。あまり、メジャーではない方法なのか。
「ツバサさん。アレ、というと……? まだ何か手があるのですか?」
「ほあっ……! あ、えと……ん~と、ですね……」
僕に聞き返されるとは思ってなかったのか、少しだけ驚いた表情を見せ、言いにくそうに視線を逸らした。しかし、すぐに「実は」と口を開く。
「……二人で精霊召喚を試みる方法があるんです」



~あとがき~
大して描写してなくて申し訳ないけど、一番大変なの、イツキ&アラシの先輩後輩コンビなんだよな。だって、リリアーナの魔法、全部受けきってるんだぜ?

次回、ツバサの提案する第四の方法の詳細とは。

リリアーナがぶっ通しで全力魔法連発できる理由は、影ながらに支えてくれている従者の姿がありましたとさ☆
名前だけ出したリーゼを出す余裕がねぇ。ってことで、ここで出したれ! リーゼは愛称で、本名はエリーゼって言います。出してやれんくてすまんな。

ではでは。