satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第413話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で特訓してる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、リランの大失態(?)を叱ったところで、ようやく精霊組の特訓再開します。
多分、精霊組の話は今回で終わるはず。


Noir side》
「──で? これ以上はねぇんだろうな?」
あいつらの邪魔にならない、且つ、何があってもユリ達に被害が及ばない場所でチビ助を下ろす。
「う? うん! もう使える魔法はないよ!」
つまり、ブレス二種類と氷魔法(氷塊を出すだけ)と変身魔法……これがこいつの使える魔法か。
なんつーか、稀有な白竜様が使う割には、何とも言えない魔法の数々……ドラゴンらしい魔法なんて、ブレスしかねぇじゃねぇか。
「リラちゃんはまだ子供なのです。そんなものでは?」
「そうは言っても、その辺のガキの方がまだ、色々と魔法使うと思うがな」
「ノワ、それ以上は言っちゃ駄目なのです」
へいへい。
「リラちゃん。ツバちゃんも言ってましたけど、もうブレスは駄目ですからね? 使ったら、今度こそ、ノワが愛想尽かしちゃいますから!」
「わ、わかった!」
愛想を尽かすの意味をこいつが知っているのか気になるが……まあ、いい。さっさと本題に入ろう。
「お前、デバフ覚えてぇって言うけど、何を覚えるつもりなんだ」
「ですです。リラちゃん、何を使えるよーになりたいのですか?」
「ぜんぶっ!」
……まあ、はい。アホなこいつなら、絶対に言うと思った。
「リ、リラちゃん……? 私達の使えるデバフ関係、全部を教えてあげれる程、お時間はない……かな?」
「うぅ~……そっかぁ」
そんくらい、考えりゃわかんだろ。やっぱ、こいつの頭、何も詰まってねぇのか。脳内お花畑かよ。
「あと、基礎魔法から選べよ。高難易度の魔法を教えたくねぇから」
「う? 難しいのって何があるの?」
そう言われると、説明が難しい。俺にとっちゃ、デバフ魔法は専門分野。どれも等しく簡単に発動できちまうからなぁ。
「……効果の強いもんとか、ムズいんじゃないか?」
「は~……ノワに難易度の話はよくないですね。……けど、確かに、重度の状態異常系や広範囲に作用する物……他には、相手の精神に干渉するような物とかは難しいと思うな~? だから、簡単な状態異常だったり、単体に向けて発動させるものがいいと思うです♪」
……だ、そうだ。
俺達の説明に、チビ助は一頻り悩むと、パッと顔を上げる。
「あれしたい! 遅くなるやつ!」
「遅くなるやつぅ?」
「ふーむ。初歩的なものだと……“スロウス”でしょうか?」
あぁ、掛けた相手の足を遅くするやつ。見た目、スローモーションになって、実際に動きが鈍くなる。しかし、簡単なやつだと、そこまで有効性はないから、単体だとそこまで実戦向きではない。
「鈍足系ねぇ……? それよりも、攻撃力を下げたり、防御を薄くしたりした方が、戦いでも有利だぞ? いいのか?」
「いいの! リラン、遅くしたいっ」
なんでだよ。いや、いい。聞くだけ長くなりそうだ。
幸い、“スロウス”なら、そこまで難しい魔法じゃない……はず。馬鹿なチビ助でも、今日中に習得できんだろ。多分。
「じゃあ、やるかぁ」
「はいっ! よろしくお願いしますっ!」
……はぁ。やる気があるのはいいことだが、例のブレス事件もある。穏便にすまないって俺の勘が言ってるんだよなぁ。
「チビ助、お前、新しい魔法を習得する時、どうやってるんだ?」
「えぇーいってやる!」
リリアみたいなやり方かよ。ますます、不安になってきた。
「じゃあ……小難しい理屈や式、魔法陣の構造何ざ話したって、お前には無意味だな。……だったら、イメージしろ」
俺は自身の影を使い、数体の狼を模した人形を作り出す。その狼を操り、適当に動かした。
「んで、そのイメージが固まったら、こいつらに魔法をかけてみろ。成功すれば、動きが鈍くなるからよ」
「わかった! やってみる!」
チビ助は真剣な眼差しで、ちょこまかと動く狼を見つめる。そして、しばらく経った後、しょぼんとした顔で俺を見上げてきた。
「なんにも起きないよ~」
「知るかよ。お前の想像力がないだけだろ。つーか、ちゃんと魔力を込めろ」
こいつ、普段はどうやって魔法発動させてんだよ。
「むずかしぃ~……」
「リリちゃんみたいに感覚で発動させるんなら、手順を教えても理解できないんじゃないですかね?」
「そんなやつにどう教えればいいんだよ」
「とりあえず、一回でも成功してからですね。そこから、感覚を忘れない内に成功率を上げないとです」
くそ面倒くさい……その一回の成功までが遠いんだろうが。
「てやあぁっ!」
俺とふわが話している間も、魔法発動のために力を溜めていたチビ助。そんなこいつの体がいきなり、ぽわっと輝き始めた。
「おお! なんか出てきそうなのです!」
「とりゃああっ!」
掛け声と共に現れたのは、氷の塊一つ。そして、俺の出した狼はピンピンしている。
「誰が氷を出せっつったよ」
「……あれれ? リラン、ちゃんと遅くなれーって思いながらやったよ」
「思ってたとしても、実際、できてないんだから、意味ないだろ。やり直し」
「むー! 難しいよ! ノワール、一回、やってみてよー!!」
「あぁ? そんなん見ても、わかんねぇだろ。……別にいいけど」
俺は言われた通りに魔法を掛ける。すると、狼達の動きが極端に遅くなった。
「おぉ~! すごい! リランもやる!」
「……で? 俺のを見て、何か分かったのかよ」
「わかんない!」
こいつ……!!
「まあまあまあ! リラちゃんがやる気一杯なのは、いいことなのですよ! 根気よくいきましょ!」
……チッ。

あれから数十回、繰り返して分かったことがある。
チビ助は知能の高い─ぶっちゃけ、チビ助の知能が高いとは思えんが─稀有な白竜だとしても、魔法の達人ではないってことだ。
「とりゃあぁっ…………わ、わあぁっ!?」
「なんで地面を凍らせたんだよ」
ある時は、床を凍らせる。
凍らせるんなら、せめて、的に向かって凍らせろ。なんで、お前の足元なんだよ。
「次こそ……! そりゃあぁっ!」
「う。ぱちぱちするのです~」
ある時は、パチッと弱い電撃を放つ。たまたま静電気でも発生したのかと疑ったが、どうやら、こいつのせいらしい。
こいつがめっちゃ弱い電撃を発生させる度、俺達の毛並みが逆立つので、止めて欲しい。
「そおぉぉぉいっ!!…………ひゃあぁぁっ! つめたいよー!!」
「よかったな。一度、頭を冷やせてってことだ」
ある時は大量のシャボンを作り出し、大量の水を被る。
また、ある時は気合いの入れすぎなのか、こいつの口の周りで炎がチラ見えするので、それだけは全力で阻止をして、叱り飛ばしたり。
……とまあ、お目当ての魔法は一切出ず、別の魔法、属性の魔法が発動してしまう始末だ。
無意識だからか、こいつが習得していないはずの属性の魔法も漏れている。これはこれで、適正があるってことなんだろうが、今は全く関係ないから、触れないでおく。そちらは、俺達の専門外だ。
ぐぬぬ……こ、今度こそ!」
「はあ。……なかなか成功せんな」
「ここまでとは……リリちゃん以上に手強いかもしれないです」
ユリとイツキの気持ちがちったぁ分かった気がする。今度からは、あいつらの手伝いを断らず、きちんと付き合ってやろう。
「むむむむ~っ……む? むゆ……ふえ……」
? 今までとは反応が違うな。
「は! 成功するんでしょうか!」
「いやぁ、これはこれで嫌な予感が」
「……ふえっくしゅんっ!!!」
どかん。
奴のくしゃみと共に、魔力の暴発が起こる。幸い、小規模なので、被害はチビ助と俺の作った狼の消滅だけですんだ。
俺は咄嗟にその辺の影に隠れ、俺の頭の上にいたふわも、ついでに連れてったので、俺達にダメージはない。
「あ、危ないのです……ノワの頭の上にいてよかったです」
「くしゃみで爆発するってなんだ。……魔法を発動させたいんじゃなかったのか」
爆心地(?)になったチビ助は、何が起こったのか分かっていないのか、ぽかーんと間抜けな顔をしている。
「……習得、諦めねぇ? 俺の手には負えない気がしてきた」
「で、でも、リラちゃんのやる気は失せてないのですよ?」
やる気でどうこうできるんなら、世の中、全員、凄腕魔術師だ。
ノワール、狼、消えちゃったよ~?」
「不思議そうにしてんじゃねぇ。てめぇが消したんだろうよ……ったく。ほれ」
尻尾で軽く地面を叩くと、俺の影から数体の狼が生み出される。先程と同じように適当に動かせば、爆発前へ元通りだ。
全く。いつになったら、一回目の成功するんだか。
「お前、変身魔法を覚えた時、どうやったんだよ? この調子じゃ、日が暮れるぞ」
「んとね……エデン様が教えてくれた!」
エデン様?
俺が聞き返すと、チビ助は嬉しそうに教えてくれた。
なんでも、白いのの専属の護衛らしく、滅茶苦茶、強いんだとか。
そのエデン様がチビ助のために、特訓内容を試行錯誤して、習得まで根気よく手伝ってくれたらしい。
「会うと不思議な感じになるんだけどね、優しい先生なの!」
「あぁ、そうかい。……エデン様ってのも、随分と苦労したんだなってのだけ、よぉく分かった」
「ですね……」
今、こいつが扱える魔法も、そのエデン様が付き合って教えたのかと思うと、その人には同情の念しか浮かばねぇ。
「……俺らも偉大な先輩に倣って、付き合うしかなさそうだな」
「はい。エデン様なる方と同じよう、我々もリラちゃんにお付き合いしましょう」
「……! ノワール! ふわ! 見て見て! 狼の動き、遅くなったよー!」
あん?
チビ助に言われるがまま、そちらに目を向ければ、確かに、若干ではあるが遅くなっている……ような気がする。
「……うん、確かに。弱いですけど、きちんと掛けられてるみたいですね! やりました、リラちゃん!」
「ほんとに! やった! やったー!」
あれくらいの効果だと、マジで実戦向きじゃないけどな。……まあ、それを口にするのは野暮ってもんか。
「その感覚を忘れない内に何度も繰り返せ。……だが、くしゃみだけは止めろ。爆発だけは勘弁だ」
「う、うん。……でも、どうしても、ムズムズしちゃうんだよ……」
我慢しろ。さっきは小規模だったからよかったものの、あれがもう少し威力のあるもんだったら、リリアの家に何かしらの被害が出る。
「さっき、ユリ達に迷惑掛けたら、許さねぇっつったろ。何かあったら、二度とお前の特訓には付き合わないし、話もしない」
「それはやだ!!」
「じゃあ、死ぬ気で我慢しやがれ」
「は、はいっ!」
……こんな調子で習得まで漕ぎ着けるのか、不安になってきた。いや、始めから不安だったけども。
けどまあ、スタート地点からはようやく一歩、踏み出せたんだし……いつかはゴールにも辿り着けんだろ。多分。

──その後、どうにかこうにか、自分の意思で魔法を発動できるようになったのは、ユリ達の特訓が終わって、数分後のことだった。
一応、今日中に習得するという目標は達せられたが、俺にとって、散々な一日だったことは言うまでもない。



~あとがき~
初回より、ノワールがリランに優しい気がする。……気がするだけ。

次回、リリアーナの特訓に戻るぜ!

とりあえず、これで精霊組視点の特訓回は終わり。
今後、ノワール&リランコンビの絡みがあるかは分かりません。体育祭では、ツバサちゃんとユーリが別なので、無理だし、いや、分からん。相方の裁量次第です。

ではでは。