satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第433話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、劇の始まる前の休憩時間でウィルとの親睦を深めた(?)ツバサ一行。
そして、遂にラルとフォースが出演する劇の幕が上がります!
二人がどんな形で登場するのか、お楽しみに~!


《A side》
──昔々、ラチュール国とアフィーシャ国と呼ばれた国々がありました。
両国は長き歴史の中で互いに敵対心を持ち、何百年に渡る冷戦状態を保ち続けていました。
そんなとある年、ラチュール国が大規模な飢饉に見舞われてしまいます。
アフィーシャ国はラチュール国へこう提案したのです。

「我々の援助がほしくば、貴国の『叡智の姫』を我が国へ嫁がせろ。さすれば、援助をしてやろう」

ラチュール国の『叡智の姫』は、とある辺境に住まう貴族の娘のことでした。娘の名前はラビア。並外れた才覚溢れる美しい娘でした。娘のもたらす知恵はラチュール国にとって、掛け替えのない財産でもあります。
それを喪うのは、国の衰退を意味していました。しかし、このまま、手をこまねいていても、国が滅びてしまいます。
国は娘を差し出すことにしました。

「すまない、ラビア」
「謝らないで、お父様。お父様は何も悪くないのですから」

ラビアには将来を約束した男性がいました。彼の名をブラット。彼もまた、貴族の男で、武と知性に溢れる聡明な青年でした。
彼の一族が治める地は、ラチュール国でも特に飢饉の被害に遭い、領民らは飢えと病に苦しんでいました。
ラビアはそれを知っていて、国のために……ひいては、愛する人のため、国の要求を飲んだのです。

「ブラット様、ごめんなさい。これからも貴方の隣にいたかったけれど、貴方が愛するこの地を失くしてしまいたくはないのです。……身勝手な私を許してください。ブラット様、お慕いしておりました」
「ラビア、最期の言葉のように言わないでくれ。俺は必ず迎えに行く」
「……ブラット様。私のことはどうか、お忘れください。私は国の苦しむ姿を……貴方の苦しむ姿を見たくありませんの」
「俺は君の苦しむ姿を一番、見たくない。……ラビア。どうか、俺の前では君の心を聞かせてくれ。君は、どうしたい?」
「……ブラット様、いけません」
「ラビア、お願いだ。君が最期と言うのなら、最期の時くらい、君の心を聞かせてほしい」
「…………先程のお言葉と矛盾していますわ」
「君がどうしても、心を語らぬからだ。……俺は君の意思が知りたい。国の意思でも、お父上のご意向でも、俺のためという建前でもなく、君の言葉で君の心を知りたい」
「…………」
「なあ、ラビア。そんなに俺は頼りないかい? 信じられないかな」
「いいえ。……いいえ! そんなことはありません。……私は、私の心はいつでも貴方のものでございます、ブラット様。今も、これからもお慕いしているのは、貴方にだけです! 叶うのなら、貴方と共に添い遂げたい。……けれど、今のままでは叶わないのです」
「未来なら、救えるかな」
「……ブラット様?」
「俺は何年かかっても、必ず、君の元へ行こう」
「ブラット様」
「ラビア。俺の愛しいラビア……忘れくれなんて、残酷なことを言わないでくれ。俺は君なしでは死んでしまうよ。……だから、君へ誓いを立てる。……今まで、俺が君の誓いを破ったことがあったか?」
「……いえ」
「そんな俺の言葉を信じてくれないだろうか?」
「…………しんじても、いいのですか?」
「あぁ、誓おう。ラビア、俺はどんな手段を用いても、君の元へ迎えに行く。だから、忘れる必要も、最期の言葉を紡ぐ必要もない」
「…………私の愛しいお方。貴方の言葉が何より、私の力になります。信じていますわ、ブラット様」

ラビアはブラットの言葉を胸にアフィーシャ国へ渡りました。
その後、約束通り、アフィーシャ国からの援助もあり、ラチュール国は回復の兆しを見せ、時間をかけて復興へと歩みを進めたのです。──

……楽しい祭りの席でやるような内容じゃなくない?
これが劇の序盤を見た俺の素直な感想である。
とはいえ、ヒロインのラビアをラルが演じ、主役のブラットをフォースが演じているのだが、そこは純粋にすげぇなって思う。普通にあの二人の演技力の高さからなのか、劇に引き込まれる感じがする。
……だからって訳じゃないが、あの二人が周りに隠していた理由も分かった。
創作物とは言え、普段の二人とは想像もつかない関係性を演じなきゃいけないのを知り合いに見られるのが嫌なんだろう。なんせ、劇の中じゃ、あの二人は婚約者同士。且つ、ラル……いや、主役が愛するラビアは敵国へ行かなきゃならない……争いに引き裂かれる悲劇の二人なんだし。
時折、挟まれるリムさんのナレーションとラルとフォースを始めとする演者達によって紡がれる世界は、この場にいる全員の心を引き込んでいると思う。
「──ラルさん、かわいそうです! 大好きな人と一緒にいられなくなるなんてっ!」
……俺の隣のやつは引き込まれ過ぎっつーか、リアルと創作物の境目が曖昧になり過ぎてない?
「ツバサ、あれ、ラルじゃないから。ラビアね、ラビア」
「だいじょーぶだよ、ツバサお姉ちゃん! フォースお兄ちゃんなら、ぜーったいに! たすけてくれるから!」
「雫? フォースじゃなくて、ブラットな?」
どうやら、リアルと創作物の境目が曖昧になってるのは、ツバサだけじゃないらしい。……まあ、この二人の場合、ラルが好きすぎるが故……なんだろうけど。
「う~ん……フォースがラルの恋人役か……そこはティールにするべきだろ~?」
「おう。とりあえずお前は黙れ?」
「こうなることは予測できたけど~……せっかくかーくんが主役なら、ハピエンがいいなぁ~……ならないかなぁ~、ハピエン」
「ウィルさん? あんたもなの? あんたもそっち側っすか?」
俺以外の全員が思い思い……というか、勝手な感想を述べる中でも、当然、劇は止まらない。
その後、長い月日を経て、飢餓を乗り越えたラチュール国だったが、その後もアフィーシャ国からの不当な要求を受け続けていた。それに異を唱えた国の武人らは、ブラット主導にアフィーシャ国の進軍を開始する。
一方、アフィーシャ国へ渡ったラビアはアフィーシャ国の王子と婚姻、王太子妃となり、奇しくもブラットと敵対してしまう。
二人の交われない思い、国という大きな隔たりが二人を翻弄する。
これは創作物なのだから、最終的に互いに手を取り合って両国が仲良くなり、ラビアとブラットは幸せに暮らしました~という終わりでもいいと思うけど……どうにも、そうはいかなそうだ。
物語が進むにつれ、雲行きは怪しくなり、ラビアとブラットが再び結ばれるエンド……というのは、遠退いていくばかり。
そしてそれは、物語の人物であるラビアとブラットも理解している……いや、理解してしまった……が、正しいのだろうか。

──ラビアとブラットは戦火の中、互いの未来を信じ、努力を惜しみませんでした。しかし、それを長く争い続けた国が、時が、歴史が許してくれることはなかったのです。
二人が婚約者として、逢瀬を重ねた場所……かつて、聖堂として使われてきたその廃墟でラビアは祈るように膝をつきます。

「ブラット様……私は貴方様を裏切ってしまいました。祖国も戦火に見舞われ、貴方様をも争いに巻き込み……果てに私は、あの国の王子と……私は穢れてしまった。貴方様に愛を誓っていたのに」

涙ながらに語る彼女の言葉は夜空へと消えていきます。真に伝えたい相手に届かぬまま、それでもラビアは言葉を続けました。

「今でも、ブラット様をお慕いしております。……だからこそ、私は私を許せなくなったのです。こんな私ではブラット様に逢うこと等、許されるはずもない。ブラット様……私は……
……私はもう今の世界に希望が見出だせないのです。貴方様のお側にいたい、そんな未来を待ち遠しく思っていましたが、それはもう、叶わぬ夢と成り果てようとしている……私はもう、それに耐えられそうにないのです」

ラビアは懐から自害用の毒が入った小瓶そっと取り取り出しました。その小瓶は月の光を受け、きらりと光ります。まるで、彼女の手に残る最期の光のように。

「……弱い私をお許しください」

二度と会えない最愛の人を思いながら、ラビアは小瓶を煽りました。すると、その場に力なく倒れてしまいます。

……これは何の因果でしょう。
ラビアが懺悔をしたその数刻後、ブラットもまた、その場へと訪れたのです。
そこで彼が見たのは最愛の人の最期の姿。眠るようにその場に伏せる美しい彼女でした。

「……ラビア?」

優しく抱き上げ、何度呼び掛けようと、彼女の閉ざされた瞳は彼を見つめることはありません。
夢にまで見た愛する人との再会は、彼にとって最も残酷な結果となりました。ラビアの存在はブラットにとって、かけがえのない存在であり、代わりなどいないのです。ラビアは彼を突き動かしていた力、そのものだったのですから。

「……そうか、そうだな。
ラビア、君との約束を……誓いを今、ここで果たそう。言ったろう? どんな手段を用いても、君を迎えに行くと」

ブラットはラビアに優しく口付けを交わすと、その場にそっと寝かせました。そして、彼は持っていた短剣を自らの心の臓へ突き立てました。

「ラビアのいない世界など……最早、生きる意味はない……
ラビア、君が……天にいるというなら……俺もそちらへいくまで……」

遠退く意識の中で、ブラットはラビアの手を取り、小さく微笑みながら目を閉じました。
二人が果てない空で、本当の再会を果たせたのか……それは神のみぞ知るのです。──

あ~……まあ、そうなるよな。
どう転んでも二人が幸せになる未来が見えない以上、簡単に想像できるラストだったな。
「ぐすっ……! ラルさん……!」
「ラルー!!」
……こちらの反応も簡単に想像できるやつだったな。
ツバサと雫は物語のラストに涙……というよりは、ラルの最期─実際にはラルじゃなくてラビアだから、表現としては違うんだけど─が心にきたようで、ぽろぽろと涙を溢していた。
こいつら、最後の最後まで、ラビアではなくラルとして見てたな。だから、ここまで泣いてるのかもしんないけども。
変に突っ込んでも、被害が拡大しそうなので、そっとしておくとして……
「かーくん……! 大丈夫! 俺が幸せにしてあげるから、安心して……!」
ウィルさんはウィルさんで、ブラットをフォースそのものとして捉えているんだよな。あと、なんでウィルさんがフォースを幸せにするんだろう。よく分からん。
「ぽくない二人が見れて、面白かったな~♪」
……この悲劇を見て、面白かったなんて言えるお前は凄いよ。見習いたくないけど、関心はする。とは言え、一番、コンテンツとして楽しんでたのはレオンなのかもしれない。
「……あ、せっかくだし、二人に会いに行こ~♪ 皆も行くっしょ?」
「いきます……っ!」
「いぐー!!」
ツバサと雫が行くんなら、俺らも行かないわけにはいかないな。
……迷惑じゃないといいけど。



~あとがき~
最後の場面、さらっと終わらせてもよかったけど、まあ、せっかく(?)なんで。

次回、劇の主役だったラルとフォースに会いに行くぞー!

劇のそれは創作です。
なんかこう……ふわっとした道筋はありましたが、それを文章に起こすのはそれなりに難産だったです。
いやぁ、ふわっとやるもんじゃないね……(笑)
変なところもありますが、それはそれとしてお楽しみくださいませ(汗)

ではでは。