satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第432話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でだらだらしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ツバサ一行はラルとフォースが出演する(らしい)劇を観るため、ウィルと雫と行動を共にすることになりました。
それはそれとして、なぜあの二人が周りに劇の話をしなかったのでしょうね……?


《A side》
ウィルさんと雫に連れてこられたのは、ステージエリア……先程、雫達の仲間がいるって言ってたエリアだった。
恐らく、元々は広場だった場所に簡易的なステージが設置されているようで、ここで様々な団体がパフォーマンスを披露しているみたいだ。
ちょうど、ステージで演奏していた団体が終わったようで、ぞろぞろと人の入れ替りが行われている。
「ウィルお兄ちゃん、これ、まにあった?」
「うん。始まるまで時間もあるし、だいじょーぶそうだよ」
「やったー!」
俺達がここに来たタイミングもよく、背の小さい雫でもステージが観れそうな席に座れそうだ。
早速、良さそうな席を見つけ、俺達が席に着くと、ツバサどこかがしょんぼりした様子で口を開いた。
「……ラルさんとフォースさん、劇に出るなんて、一言も言ってませんでした」
どうやら、生徒会の仕事で毎日顔を会わせていただけに、この件を教えてもらえなかったのが悲しかったらしい。
そんなツバサを見て、ウィルさんは苦笑を浮かべた。
「あ~ね? まあ、気にしなくてもいいんじゃない? あの二人は性格的に言わないから。俺も本人達から仕入れた訳じゃないもん」
「ほ~ん? じゃあ、ウィルさんはどっから知ったんすか?」
「ラルちゃんとティールくんの先輩にひまちゃ……ヒマワリちゃんって子がいるのね? 偶然、その子と街中で会って、世間話をしていた時にこの話を聞いた」
「ボクはティールから! でも、ラルにおしえたこと、ないしょーっていわれた」
あの二人……どんだけバレたくなかったんだ。というか、あのラルが雫に隠し事するのもよっぽどだな。
「お二人はこの劇がどんな内容なのか、ご存知なんですか?」
ツバサの質問に二人は揃って首を振る。
「ひまちゃんに『そこは企業秘密ですわ!』って言われました」
ティールもね、ないよーは、おしえてもらってないっていってた!」
ティールの場合、故意に隠している可能性はあるが……どちらにせよ、二人とも何も知らないようだ。
「ふーん? ってことは、内容は始まってからのお楽しみ……ってことだな♪」
「そうだね。……それはそれで、楽しみかも!」
あの二人がひた隠しにする劇の内容……想像できるような、できないような。
しかしまあ、ツバサ達はこれから行われる劇の予想大会をするつもりはないようで、話題は別の方向へ。
「しーくんはこのお祭り、前にも参加したことあるの?」
「ん! きょねんがはじめてで、ことし、にかいめ! きょねんもね、さっきみたいに、おみせいたんだよー」
今回が初めてじゃなかったんだ。確かに、売り子姿も板についていたし、納得はできるけど。
「あとはね、ラルとティールとまわったりもした! きょうは、たぶん、ない? ふたりとも、いそがし、なので!」
「そっか……それは寂しいね……?」
「う? うーん……? そんなことないよ? だって、このあと、がんばるふたり、みれるから」
「しーくん……っ! 一緒にラルさんの頑張るところ、見ようね!」
「うん! いっぱい、おーえんする!」
劇は応援して観るもんなのか……?
なんて、突っ込むのは野暮か。黙ってよう。

その後も他愛ない話をしていると、不意に袋を持ったウィルさんが俺達の前に現れる。
「やっほい! 若者達、何か飲むか~い? 食べ物もあるぞ!」
「うお!? い、いつの間にそんなものを……?」
そういえば、俺らが適当に話してる時、ウィルさんの姿が見えなくなってた。もしかして、飯の調達していた……?
俺の疑問にウィルさんは楽しそうに笑い、俺に屋台で調達してきた食べ物(たこ焼き)を渡してくる。
「うっしし♪ 俺はこれでも歴戦の猛者なのじゃ。若人に気取られず、ふらりと姿をくらますなんて、造作もないんじゃよ~?」
「いきなりじーさんみたいな謎口調にならないでくださいよ! つーか、ウィルさんっていくつなんすか?」
「うん? それはまあ……内緒かな」
な、内緒かぁ……
ニコニコ笑顔のウィルさんを見つつ、レオンが腕を組む。
「俺が見た感じ、フォースと大差なさそうに見えるんすけどね~……?」
「ん? かーくんと比べるなら、俺の方が上だよ~ん♪」
フォースの兄を名乗っているし、それはそうだよな……まあ、俺はフォースの歳も知らねぇんだけど。
つーか、ウィルさんの歳はいくつか、という問いの答えになっているようで、答えになっていないような。
ウィルさんはもう俺の質問に答える気はないのか、今度はツバサに向かって、話しかけていた。
「あ。ケアルちゃん、何か食べる?」
「えと、じゃあ……ベビーカステラをいただきます。……あの、ウィルさん?」
「ん、にゃにかな~?」
「ウィルさんはどうして、私達のこと、ファミリーネームで呼ぶんですか? しーくんやラルさん達のことはニックネームやお名前なのに」
そういえば……そうだな。
雫のことは『しずちゃん』、フォースのことは『かーくん』。ラルやティールはそのまま名前呼びだ。
けど、俺達はファミリーネーム。いまいち、癖っつーか、法則性(?)が掴めない。
大体、俺達はウィルさんのことをほとんど知らない。名前もラル達から聞いたから知ってるだけで、互いに自己紹介らしいこともしていない気がする。
「俺の他人の呼び方……まあ、俺の中に基準があるだけだよ。深い意味はなーんにもない」
基準……ねぇ?
ウィルさんは少しだけ考える素振りを見せるが、すぐにツバサに向かって笑顔を見せた。
「もし、ケアルちゃんが名前で呼んでほしいならそうする。けど、たま~に『ケアル』ちゃんって呼んじゃうかもだけど……そこは許してくれると嬉しいな?」
「んと……それなら、私は名前で呼んでほしいです」
「OK♪ じゃあ、ケアルちゃんは……ツバサだから~……つっちーだね!」
……なぜ?
あ、いや、『ツバサ』だから、『つっちー』になるのは分かるけど……なんでそんな呼び方になるんだ?
「だって、すっちーとりっちー……ステラちゃんとリーフちゃんと仲良しじゃん? だから、お揃いにしてみました~♪」
どういう気遣いなの……いや、気遣いなのか、これ?
しかし、ツバサ本人はステラとリーフとお揃い─という言葉が適切なのかは不明─なのが嬉しいのか、パッと顔を輝かせた。
「ありがとうございます! 嬉しいですっ!」
「……!」
さっきまでニコニコしていたウィルさんが少し驚いたように目を見開き、口を閉じてしまう。そんなウィルさんにツバサも不思議に思ったのか、首を傾げた。
「ほえ? ウィルさん、どうかしましたか?」
「……あぁ、いや、ごめん。なんでもないよ」
そうは言っても、なんでもないって反応じゃない気がするけど。
ウィルさんも誤魔化せないと思ったのか、ばつの悪そうな表情を浮かべ、「実は」と口を開いた。
「……今のケアルちゃんの顔、昔馴染みに少し似てて、思わずびっくりしちゃった。ごめんね?」
「いえ! 謝ることなんて……その、昔馴染みさん、そんなに私と似てたんですか?」
「うーん、まあ、そうね。……ちょーっと似てるかな? その子も可愛かったけど、つっちーも十分、可愛いからさ。だから、つい見惚れちゃって。ごめんね~?」
み、見惚れちゃって!?
それって、ウィルさんはその昔馴染みさんとツバサを重ねて……つまり、それって……え、あ、はあ!?!?
混乱する俺をよそに、ツバサは「可愛い」と褒められたこと。素直に喜んでいた。照れながらも、ニコッと微笑んだ。
「えへへ……ありがとうございますっ♪」
「ほ~う? ウィルさん、ツバサみたいな子がタイプが好みなんすか?」
「う? ウィルお兄ちゃん、ツバサお姉ちゃん好きなの?」
レオンに雫は、なんてこと聞いてんだよ!?
あの馬鹿がいつもの好奇心でくだらねぇ質問をする。ウィルさんはさらっと「好きだよ」と答える。
「もちろん、ラルちゃんやしずちゃん……みーんな、好きだよぉ~? でも、一番はかーくんだけどね!?」
と、付け加えるように話を続けた。
……どうやら、レオンの好物である、恋愛的な好きとは違うらしい。
この答えにレオンは落胆するかと思ったが、全くそんなことはなかった。なんなら、謎にこちらをニヤニヤと見てくる始末だ。
「……だとさ。よかったな、アラシ」
「な、なんでそこで俺に振ってくるんだよ」
「いや、どーせお前あれだろ? 内心、慌ててたろ?」
あ、慌ててませんけど!?
俺とレオンの短いやり取りで何をどう捉えたのか、ウィルさんまでがレオンと同じようにニヤッと笑ってきた。
「おやおや? フェルドくん、君ってばもしかして……?」
「なんもねぇっす! こいつの言うことなんて、気にしないでくださいっ!!」
俺達のやり取りを雫とツバサは、不思議そうに首を傾げて見ていた。二人が話の内容を理解していないってのは、唯一の救いだったかもしれない。
『大変お待たせいたしました。まもなく、次のプログラムの開始時刻となります』
……よかった。時間も俺の味方してくれたっぽい。
「……お? この声は」
「リムお姉ちゃんだ!」
リムお姉ちゃん?
「うん。ギルドにいるお姉ちゃんで、ラルとティールのこうはいさんなの!」
ほうほう。つまり、あいつらの同業者……兼、ギルドメンバーって訳か。
「なるほど。……二人が劇に出ること、頑なに言わなかった理由がはっきりとしたな」
……? リムさんとやらが話さなかった理由になるとは、どういう意味なんだ?
苦笑気味のウィルさんをよそに、リムさんのアナウンスはやがて、劇のナレーションへと変わった。
『ただいまより、皆様に語らせていただくお話は、遠い異国の地……ここより遥か遠く、どこかにある国で起こった、淡く切ない恋の物語。どうぞ、心行くまでお楽しみくださいませ──』


~あとがき~
ツバサ一行とウィルのちゃんとした絡み。実はここが初めてだったり。

次回、劇が始まる。

ようやく、ツバサちゃんを『ケアル』呼びから、『つっちー』呼びに変更できました。タイミングなくてなぁ(笑)
ウィルがツバサちゃん達をファミリーネームで呼ぶ理由は、察してる方もいらっしゃるとは思いますが……まあ、そういうことです。
ツバサちゃん達が神の子孫であり、それをウィルは知ってるから、なんですよね。だから、ついついそっちで呼びがちなんです。ウィルも彼らから訂正がない限り、ファミリーネームで呼び続けるんでしょうね。

ではでは。