satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第437話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ラル救出メンバーが決まりました。行くぜ!!


《A side》
ウィルさんとヒマワリさんと別れた俺達が雫の案内の下、辿り着いたのは深い森の奥。そして、その奥地にぽっかりと空いた穴を五人で見下ろしていた。
雫によれば、ラルはこの下にいる……らしい。
「……なんっだ、これ」
光が届きにくいのもあって、穴の底が見えない。どこまで続いているのかさっぱりである。
「雫、本当にこの下なんだね?」
「うん。くわしいばしょは、した、おりてからやる」
「なら、早速、降りましょう!」
「は!? いや、待て待て待て!!!」
勢いよく飛び降りようとするツバサを慌てて引っ張る。止められたのが不満なのか、頬を膨らませ、俺を見上げてきた。
「なぁに、アラシ……?」
「いや、不満そうにしてるけど、ここにいる全員がお前みたいに飛ぶ手段があると思うなよ!? 置いてくつもりか?」
ツバサなら、何らかの魔法を使用し、危なげなく降りれるだろう。しかし、俺やレオンはその限りではないのだ。
「じゃあ、どうするの? このままじっと待つの?」
いや、そうは言ってないけど。
「ツバサ? 焦る気持ちは分かるけど、少しは落ち着かないと、助けられるものも助けられないよ。……なんて、ぼくが言えた義理じゃないかもしれないけど」
そう、か? ティールは落ち着いているように見えるけどな……?
ティールは手頃な小石を手に取ると、無造作に穴へと投げ入れる。投げ入れて数秒後、その石が地面に落ちた音が微かに聞こえてきた。
「よし。……やるぞ、スイ、セツ」
水と冷気に包まれた剣を呼び出したかと思うと、一瞬で剣が消え、代わりに螺旋状の長い滑り台が現れた。
多分、ティールの剣の力で作り出したのかな……? 確か、あの剣、聖剣だったはず。
「階段でもよかったけど、滑った方が速いからね」
「……でも、これ、待ち伏せされないか?」
道は一つしかないし、滑り台だと下ってしまえば、地面につくまでは止まれない。そうでなくても、こんな立派な滑り台、敵からすると目立って仕方ない気がするけど。
「スイとセツが作った滑り台だから、いざって時はこの状態でも攻撃できる。まあ、何かするつもりがあるなら、石を投げ込んだ時点でアクションがあってもいいと思うけど、何にもないからね。大丈夫だと思うよ」
へぇ、そういうもんか……
「先陣はぼくが行く。真ん中は任せるけど……最後尾は雫、任せるよ。攻撃されそうになったら、好きにしていい」
「あい! どかんってやる!」
「いい心掛けだ。……あとは……ツバサ、明かり、頼める?」
「はい! 任せてくださいっ」
「……行くか」
ティールの言葉に俺達は頷き、滑り台で順番に下っていく。
ツバサの魔法のお陰で、真っ暗の中、滑り降りることはないが、それでも視界がいいとは言えない。一応、ぼんやりと辺りが見渡せる程度である。
全員が地下へと降り立ち、改めて辺りを見回してみる。どこか巨大洞窟を思わせるような巨大な空間。どことなく隠れ家っぽい雰囲気のあるところで、上を見上げれば、降りてきた大穴が見えるだけで、他には何もない。
この空間全体を照らせている訳ではないので、もしかしたら、どこかに通じる扉や通路があるかもしれないが、今のところ、そんなものは見つからない。
全員が地下に着いたのを確認したティールは、滑り台に変化させていた剣を下の姿へと戻す。
よくよく考えてみると、剣があの長い長い滑り台に変わっていたのも変な感じだな……
なんてことを考えていた次の瞬間、どこから、くつくつと笑う声が辺りに響いた。声の正体は視認できないから、俺達の見渡せる範囲外にいるらしい。
この声に俺達は武器だったり、魔法をいつでも攻撃できるように構える。そんな中、ティールだけは剣を構えることもなく、ぐるりと辺りを見回している。
「ふっふっふっ……ようやく来たか!」
「……あぁ。お望み通り、来てやったよ。今回は随分と大がかりなことをしてくれたな。できるなら、理由をお聞かせ願えるかな?」
「そんなの決まっているだろう!」
え!? 声が複数ある!? ってことは、『悪の大魔王』は一人じゃない……?
「お祭りなんて楽しいこと、放っておけない!」
「だから、我々も楽しいことがしたい! それだけ!」
ここまでに聞こえてきた声は四種類。女の声が一つ、男の声が三つ。少なくとも、相手は四人はいるのか。
「むー……! なんにもたのしくない! ラルをかえせー!」
「ならば! 我々を倒してみせろ!」
雫の抗議に答えたのは、四人とは別の声だ。聞こえてきたのは、男の声っぽいな。つまり、今のところ、五人……か?
それなら、こっちも一応、五人いる。こちらに数的有利はないけど、無茶苦茶、不利って訳でもなさそうだ。
「……じゃあ、誰から来る? それとも全員でかかってくるか? ぼくはどっちでも構わないけど」
「そうだなぁ……まずは厄介そうなお前から排除させてもらおうか、ティール!」
「……へ? え、あ、そう来るの!?」
がこん。
何かが作動した音がしたかと思えば、ティールのすっとんきょうな声が辺りに響いた。
俺達が慌ててティールがいた場所を見てみれば、あいつが立っていた地面にぽっかりと穴が空いている。
状況から見るに、ティールはこの穴に落ちたのだろう。突然、これが現れたってことは、相手の誰かがスイッチか何かを押して、トラップを起動させたのかもしれない。
「ふふんっ♪ 特製の落とし穴だ! これでヤツはこちらに手出しできまい♪」
「卑怯です! 姿も見せず、こうして私達を分断させるおつもりですか!?」
「そのとお~~~~り……?」
「むっ……もう我慢できない! こうなったら、声のする方に特大“ファイアボール”を投げちゃうんだからっ!」
なっ!? それはまずい!
すでに、ツバサの手の上では巨大な炎の玉が出来上がろうとしていた。それに俺とレオンはぎょっとしつつ、慌てて止めに入った。
「ツバサ、ストップ! ストーーップ!! その大きさの炎は、流石に俺らも巻き込まれるから! 燃えちゃうから、やめとこう! なっ!?」
「う? ボク、ちんかできるよ?」
その気遣いはありがたいけど、鎮火前にこっちが怪我するかな。うん。
「とにかく、今は雫もいるんだから、一旦落ち着け」
俺の言葉にツバサは渋々、手元の魔法を解除する。ホッと胸を撫で下ろしていれば、今度はあちらの方から戸惑ったような声が聞こえてきた。
「おい、知らない奴らの声が滅茶苦茶してるぞ? 気のせいか?」
「いや、気のせいではなさそうだ。それに想定より人数もいるような気がするな……?」
「は? ん? え……なん、なんでだ? 誰か聞いていないのかい」
「あらら? 私は何も聞いて……あ、ごめんなさい。予定変更の連絡、来てましたね♪」
「なぁにぃ!? そういう報告は早めにしないか! 報連相だ! ホウ・レン・ソウ! 大事だろう!?」
……なんていうか。
「すっげぇ方向に傾き始めてる?」
「にしし♪ 面白そうな予感、ビンビンだぜ☆」
やめてくれ~……! このツッコミするの、俺になりそうじゃん!?



~あとがき~
大丈夫です。この休日回、シリアスなんてない。真剣な場面なんてない。

次回、悪の大魔王の正体とは。

ティールが最後までリーダーっぽいことをしてくれると思っていた方々。
ティールがそんなことできるわけないのさ!(笑)
とはいえ、途中までは頼れるお兄ちゃんしてくれてて、私は満足です。

ではでは。