satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第438話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、敵陣に乗り込んだティール達。しかし、早々にティールが敵の罠にはまってしまい、残されたアラシ君らでどうにかすることに……って感じです。


《A side》
何とも言えないギャグっぽい雰囲気が漂う中、無理矢理、話の方向転換を図るように大きな咳払いが聞こえてくる。
「……うん! じゃあ、ここからは総力戦だねっ☆ スイッチオ~~~~ン☆」
とびきり明るい声が聞こえてきたかと思えば、一瞬で目が眩む程の光に包まれる。その光に思わず目を閉じ、数秒後、恐る恐る目を開いてみる。
どんな仕掛けなのか分からないが、部屋に明かりがつき、周囲を見渡せるようになっていた。つまり、俺達の目の前にいる敵の全体像も見える訳で。
それを視界に捉えた瞬間、目を丸くした。
「ふふっ……ボクこそが悪の大魔王なり!」
「そして、その子分!!!」
悪の大魔王と名乗ったのは、キメ顔で仁王立ちをする青年(?)。ピンクの髪、カジュアルな服装で実年齢がよく分からない男の人だ。……さっきは、青年なんて言ったけど、俺達と同じくらいに見えなくもないし、もっと年上のように見えなくもない。要は年齢が見た目じゃ判断できないってことだ。
そして、彼を俺は知っていた。一方的に、だが。
「……は? 校長先生?」
レイディアント学園の校長先生……プリン校長が目の前にいる。公式の場でしか見たことないし、そういうところではもう少し、きちっとした格好をしているけど。
その校長……いや、悪の大魔王の周りには、子分と思わしき人物もいる。大体、見たことない人達だけど、一人だけ見覚えのある人物がいた。
「なあ、子分って名乗った一人、教頭っぽくないか~?」
……だよなぁ。
こちらも学校とは違う格好をしているものの、レイディアント学園の教頭先生、ノウツ教頭が紛れている。
そして、この二人はフェアリーギルドの関係者だったはず。つまり、周りの子分もギルド関係者だろう。となれば、雫は全員、誰なのか判別できるかもしれない。
そう思って、雫の側に寄り、そっと耳打ちする。
「なあ、雫……あそこの人達、知り合いか?」
雫に問いかけてみると、こくりと頷く。雫も今の状況が不思議で仕方ないのか、しきりに首を傾げているものの、俺の質問にはしっかり答えてくれた。
「みんな、ギルドのひとだよ。……おやかたさま、ノウツおじちゃんでしょ? それに……ドームおじちゃん、ダグおじちゃん、リンお姉ちゃん」
指差しながら、誰が誰なのか教えてくれた。
プリン校長とノウツ教頭はいいとして……
ドームと呼ばれたのは、強面の体格のいいタンクトップの男性だ。
ダグと呼ばれたのは、中年の落ち着いた雰囲気のある男性。
そして、リンと呼ばれたのは、白いロングヘアの女性。
「ねえ、おやかたさま……みんな、なにしてるの?」
「ふっふっふー……今日のボクは校長でも親方様でもなあぁぁぁいっ! 悪の大魔王だよっ♪」
今日のボクはって言っちゃっていいんだろうか……軸、ぶれない?
校長の言葉に大きく頷いたのは子分達だ。そして、教頭は不敵に笑ってみせ、ビシッと雫を指差した。
「ワタシもそんな名前の奴など、知らん! ワタシは悪の大魔王様の子分一号だからなっ!」
「む? これは番号制なのか? なら、二号で」
「なぬ? しかも名乗った順なのか? なら、ワシは三号でいかせてもらうぞ!」
「どうぞどうぞ~♪ それなら、私は四号ですね~♪」
えーっと……一号が教頭、二号がダグさん、三号がドームさんで、四号がリンさん……かな? ややこしい。もう名前が割れてるなら、名前でいいじゃん……! まあ、世界観を大切にしているのかもしれないけれども。
子分一号は全員の名乗りを満足げ(?)に聞いていたが、ふと首を傾げ、辺りを見回し始める。
「? おい、五号はどこへ行った? そもそも、見かけたか? 五号」
「あ、五号は頃合いを見て来るってさ~♪ 心配ないな~い♪」
「だといいけど。なんやかんや、来てくれなかった……なんてことになりそうだがなぁ?」
何? このノリの人、あと一人増えるの?
この様子からして、誰が来ても、正体は雫が見破ってくれるからいいけど……いや、色んな意味でよくはねぇけどもだ。
ずっと相手の雰囲気に飲まれていたツバサが、雑念でも振り払うようにふるふると首を振る。
「え、えと……と、とにかく! ラルさんはどこですか?」
さっきまでの殺気はどこへやら。流石のツバサもこの雰囲気を察してくれたらしい。これ、事件でもなんでもない、と。
「純粋なツバサでも、変だって思い始めてくれて何よりだよ。じゃなかったら、心配になるところだった」
「だよな~? 雫も察してるっぽいし?」
まあ、雫に至っては、全員、知り合いだからな。
両者の温度差を感じつつも、あちらはまだ世界観を貫くつもりらしい。悪の大魔王……プリン校長はツバサの言葉にニヤリと笑う。
「ラルは奥の奥の奥の方に閉じ込めてるよ? 大切な人質だからね!」
「無事なんですよね?」
「うん。……うん? ここは一応って言った方がそれっぽいね! じゃあ、一応!」
「じゃあって何すか! 雰囲気だけで答えんなよ!?」
「え~? でも、雰囲気って大切だから! と、言うことで、ラルを返してほしければ、我々を倒してからにしろ~~~♪ 行くぞ、子分達よ~♪」
「「「「おーーー!!!」」」」
プリン校長の号令に子分達は意気揚々と答える。そして、子分全員が一斉に戦闘態勢になり、こちらへと襲いかかってきた。
「なっ!? 全員、構えて迎撃しろ!」
俺の言葉にいち早く反応したのはレオンだ。魔法で取り出した刀を構え、襲いかかってきた子分四号……リンさんの攻撃を軽くいなしていく。
「うっそぉ!? 茶番で終わるかと思ったのに、しっかり戦うじゃん!」
「ふふっ♪ 初めまして。私は……あら、私、何号でしたっけ?」
「え、と……確か、四号さんだったと思いますよ~?」
「あぁ、そうでしたね! では、よろしくお願いしますね~♪ 早速、お眠りくださいな♪」
「うほぉうっ!? 突然!?」
レオンに向かって伸ばされた手が淡い光に包まれる。それを見たツバサが素早く魔法陣を展開させた。
「させませんっ! “クイック・エスリア”!!」
ツバサの魔法でレオンの前に透明の壁が作り出され、リンさんの眠り技がぶつかり合う。やがて、両者は互いに打ち消し合い、光の粒子となって相殺された。
“クイック・エスリア”は一度だけ、どんな状態異常でも無効化してくれるバリアを展開する光魔法。それにより、四号の状態異常攻撃が無効化された。
「ふー……サンキュー、ツバサ! アラシ、突っ込むぞ!」
「おう。そっちは任せた!」
レオンは攻撃してきたリンさんに向かって、刀を振り下ろす。もちろん、相手もそう簡単にやられるはずもなく、難なく回避していた。
あっちは任せても大丈夫だな。
にしても、数はあちらが有利になってしまった。雫の実力が分からない以上、こちらの戦力は俺達三人と見た方がいい。
対する相手は、子分四人に悪の大魔王なるボスが一人、合計五人。そこにもう一人来るらしいので、最終的に六人になる。
初っぱな、ティールが落とされたのが痛い。もちろん、それが相手の策略だったんだけど……ティールもティールだ。何、簡単に落ちてるんだ。俺がこの場を指揮しろって? マジで?
確か、雫って後方支援がメインなんだよな。じゃあ、戦闘は……? ここに降りてくる時、ティールに「何かあればどかんってやる」って言ってはいたけど。
ちらりと雫の様子を窺うと、雫はいつの間にかゴーグルとヘッドセットを装着し、水のスクリーンをいくつも展開させていた。そして、手元の半透明のキーボードのようなものを操りつつ、少し離れたところにいるツバサへと顔を向ける。
『ツバサお姉ちゃん! くじのほーこー! じゅうびょうご、ダグおじちゃんのじめんわざ! まほーでたいおーしてね!』
「ふぇ!? う、うん!!」
『レオンお兄ちゃん、しょうめん! ドームおじちゃんとリンお姉ちゃんのあわせわざ! じゅうごびょうご!』
「お、おうよ!」
「……おやかたさまとノウツおじちゃん、うごくつもりなさそう。……ようすはずっとかくにんして……こっちで、ラルのばしょ、さがして……」
どうやら、雫のヘッドセットは切り替えて拡声器にもなるらしく、必要がなければスイッチを切っているらしい。
……なるほど。あのラルが幼い雫をチームに迎え入れている理由が分かった気がする。この高度な分析力と演算力が雫の強みであり、チームの力になっているのだろう。
俺の視線に気付いた雫がニコッと笑う。
「アラシお兄ちゃん、ボクはだいじょーぶ。いっていーよ!」
「……なら、俺達の背中は任せていいか?」
「ん! まかせて!」
子分の三人はレオンとツバサでどうにかしてくれるだろう。奇襲があったとしても、される前に雫が教えてくれるから、対応できるはず。なら、手の空いた俺は、残った相手をすればいい。
「教頭先生! お相手願います!」
ウィルさんから借りた剣を構えつつ、教頭に向かって走り出す。
「ほう。ワタシは教頭ではないが……いいだろう、かかってきなさい……と、言いたいところだが、君の相手はワタシではなさそうだ」
『アラシお兄ちゃん! うえ! だれかくるよ!』
「は!? まさか、五号ってやつか!?」
雫の警告を聞き、真っ直ぐ走っていた足を無理矢理止め、後方へと飛び退いた。そのお陰で、頭上からの奇襲は回避でき、再度、剣を構え直し、新手の攻撃に備える。
「誰だ、お前!」
「…………あれ、本当に予定と違うんだ」
砂ぼこりの中から現れたのは俺と同じ、牙狼族の少女だ。黒く長い前髪で目元は隠れてしまっているが、体格と声で女性だと判断できる。
「おっそぉぉぉいっ! 来ないかと思ったぞ!」
「いや……色々詰め込んだお前が悪いよ? で、私はどうしたらいいの? 倒すの? それとも、足止め? あ、勝手にやられてもいい?」
「おまっ……計画書は読んだのか!? その通りにしろ!」
「え~……いや、あれから結構変わっちゃってるよね……? 変更後のも目は通したけど……あんまり内容は覚えてないなぁ?」
「お前なぁぁぁ!!??」
……え、結局、誰なの。この人もギルドの人?
雫に誰なのか聞こうと、ちらりと後ろの様子を窺う。雫は驚いたように牙狼族の少女を見つめていた。そして、パクパクと口を動かしている。何かを呟いているのかもしれないけど、距離のせいで聞き取れなかった。
「……あぁ、そうか。そうだよね。どこかでバレるとは思っていたけれど……それにしても、雫、もう分かったんだ。早くなったね?」
相手は雫を知っているみたいだ。そして、雫もこの少女を知っている?
『な、んで……?』
雫は震える声でそう呟いた。拡声器のスイッチは入っているみたいで、今度はなんて言っているか、ちゃんと聞こえている。それは俺だけじゃなく、ツバサとレオンにも聞こえているらしく、雫の様子に二人も戦いつつも、こちらを気にかけている。
『……なんで、そっちにいるの! フォースお兄ちゃん!!』
「「「……えぇぇぇっ!?!?」」」
俺達は思わず声を揃えて、少女を見る。
どっからどう見ても、牙狼族の女の子ですけど! え、あれ、フォースさんですか!?!?
困惑する俺達を見て、フォース(?)は肩をすくめる。
「この姿の時にその名前で呼んで欲しくはないけど……まあ、いいや」
そう呟くと、少女はさっと長い前髪を掻き上げる。その先にあったのは、フォースと同じ紅く光る瞳だ。
「……これが証明になるとは思わねぇけど、そういうこったな」
そして、華奢な少女から聞き慣れた低く落ち着いた男性の声も聞こえてくる。
フォースだ……こいつ、フォースだ……
そう言えば、剣技大会の時も姿が変わっていた。あの時は些細な変化だったから、特に気にならなかったけど……もしかて、あれと同じやつ?
「ごめんね、雫。今回はこっち側なの」
フォースは前髪を下ろし、少女の声に戻る。すぐに攻撃してくるかと思ったけど、フォースは優しい声色で雫に語り続けていた。
「さぁて、雫? ラルの居場所を見つけられるのは君だけだよ」
『んうぅぅうっ! そうだけどっ!』
「うん。どうするの? 何もしないなら、私がここにいる全員、倒しちゃうよ?」
『むうぅぅぅっ!! みんなして、ボクのこと、いじめるの!?』
確かに……雫からしてみれば、そう見えるわな。
……そいや、今回はって言ってたな。なんで、そんなことを? 以前にも似たようなこと、あったのか? いや、今は関係ないか。
「……雫、よく聞け」
今度は可愛らしい少女の声色のまま、口調だけ『普段通りのフォース』で語りかけ始める。
「今日のお前の課題は手駒を上手く使いこなすことだ。今回の手駒は三つある。……ちゃあんと上手く使えよ?」
『むー! ツバサお姉ちゃんたちは、こまなんかじゃないっ!』
「ふは……ごめんごめん。……んじゃ、試験、スタートだ」
「……つーことは、俺の相手はお前、なのか? フォース先輩」
「ん? 私はどっちでもいいかな?」
言いたいことは言い終えたのか、口調も少女に戻っていた。そして、一瞬で俺の前に迫り、ぐるんと回し蹴りを繰り出してくる。慌てて体勢を低くし、紙一重で避けた。
「あっぶなぁ!? どっちでもいいんじゃなかったのかよ!」
「うん。相手は誰だっていいって意味。だから、誰が相手でも攻撃はするってこと」
「くっそ……! そっちがその気なら、俺が相手する!」
相変わらず、教頭と校長は動かなそうだし、残りの子分はレオンとツバサが何とかしてくれている。なら、フォースの相手は俺しかいない。
再び、剣を構え直して、フォースを見据える。
「……! その剣はウィルにぃの……?」
「? そう、だけど。……だったら、なんだよ。なんかあるの?」
「……ううん。なんにも」
そう言う割には、さっきみたいな余裕は少しなくなっている気がする。この剣、何かあるのか? つっても、ウィルさんに貸してもらってるってだけで、他は普通のとなんら変わらないけど。



~あとがき~
長くなったけど、きりがいいので。
役者は揃った。

次回、頼れる先輩達がいない中、どうするツバサちゃん達!

今まで、何か事件(?)があった時って、なんやかんやラル達がどうにかする展開が多かったので、最初から先輩組がいないのは珍しいかもしれない。
どうなるのか、お楽しみに。

ではでは。