satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第439話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、敵陣(?)の全容が明らかになりました。そして、最後の子分、五号はフォース(女の子ver.)でした。
アラシ「どういうことなんだよ……」
フォース「あっはは~♪」
アラシ「笑い事じゃないからね!?」


《T side》
突然、上から現れた女の人がフォースさんだとは思えなかった。思えなかったけど、しーくんの様子とあの瞳の色、そして、時々、聞こえてきた話し方や声にフォースさんだって感じる部分があった。
だから……あの女の人はフォースさんなんだろうなって。……今でも信じられないけれど。
気持ちを切り替えて、こっちはこっちで、なんとかしなくっちゃね!
私はダグさんの攻撃を避けて、次の一手のための魔法式を構築する。
「フォースさんが女の人になってたのは驚いたけど、だからって、皆の足手まといにはならない!」
そう。ラルさんを助けるために、ここまで着いてきたんだもん。ちょっと状況はややこしくて、よく分からなくなってきたけど、それでもラルさんの居場所は分からないままだし、安否の確認もできていない。校長先生は無事って言ってたけど……私の目で確認するまでは分からない。
「……“ストーンバレッド”!」
「“アクア・ショット”!」
ダグさんの岩の弾丸と私の水の弾丸はお互いに相殺されていく。これで何度目だろう。
ギルドの人ってことは、ダクさんも探検隊……? の、人なのだと思う。だからって言うのも変だけど、私の攻撃には、冷静に確実に対処していた。純粋な力比べは私の方が上のような気がするけど、ダクさんは今までの経験を最大限に利用して、対応してくる。
つまり、これを何度繰り返しても拮抗状態のまま。……なら、今度は。
「“アトパース”!」
相手の視界を奪うため、“アトパース”で一定範囲に水蒸気を発生させた。もちろん、ただ目眩まししたかった訳じゃない。
「あなた方はしーくんのお知り合いみたいですから、なるべく傷つけないようにします。……“バブル・シュラップ”!」
私はパチンと指を鳴らして、“アトパース”で隠しておいたもう一つの魔法を発動させた。
きっと、今頃、ダクさんの周りを囲わせておいたシャボン玉が弾けている頃。
“バブル・シュラップ”は眠り状態にしてしまう煙を閉じ込めたシャボン玉を作る魔法。その煙を吸い込んだら、相手は一瞬で眠り状態にできる。
“アトパース”の霧が晴れてくれば、私の思った通り、ダグさんは深い眠りについているようだった。なんだか騙し討ちしたみたいで心苦しい気もするけど、戦闘だもん。これでよかったよね。
「ふー……よし」
これで私は自由に動ける。アラシとレオン、どっちかの加勢をしに行こう……けど、どっちに行こうかな?
レオンは残りの子分さんを相手にしてて、アラシはフォースさんの相手をしている。校長先生と教頭先生は……参戦することはなく、様子を見ているだけ。
今のところ、レオンは二人を相手にしていても余裕がありそうかな。なら、私はアラシの方に行こう。あのフォースさんの相手だもんね……
私はアラシとフォースさんの方へ駆け出した……んだけど、その途中で足を止める。たまたま、私の視界の端っこで忙しなくスクリーンとキーボードをいじるしーくんがいたから。
ちらりとアラシの方を見て、まだ大丈夫そうだったから、私はしーくんの方へ方向転換して、そっちに駆け寄った。
「しーくん!」
「……ツバサ、お姉ちゃん」
「! しーくん……」
私を見上げるしーくんは、今にも泣き出しそうな表情を浮かべていた。それでも、何かしなくちゃって必死な顔にも見える。
「あのね……よにんのこぶんたちには、かてる。おやかたさまも……みんなできょーりょくしたら、たぶん……」
しーくんの言葉に少し驚いた。
一ギルドの親方なのに、子供の私達でも勝てちゃうって事実が意外だった。でも、その理由をしーくんが教えてくれた。
「あのね、おやかたさま、ぜったいにほんき、ならないから。ともだち……なかまに、ほんきでたたかうひとじゃないの。そーゆーひと、だから……だから、だいじょーぶなの」
「そうなんだ。えと……手加減、してくれるってこと?」
こくりとしーくんは静かに頷く。
だとすると、しーくんがこんなに悩む理由は一つだけだ。それはきっと……フォースさんの存在。
「でも……でもね、フォースお兄ちゃんはむりなの。なんかい、けーさんしても、シュミレーションしても、まけちゃう。どうしよう、ツバサお姉ちゃん。……こぶんとおやかたさま、たおさないと、ラル、たすけられないのに……たおせない。たすけられないよ……!」
今まで、必死に堪えていたものがぽたりと溢れた。そこから一つ、また一つと溢れ落ちていく。
「どうしよう……ボク、ラル、たすけられない。ティールも……おちちゃったティールも、さがしにいけないよ……ふたり、たすけられない……っ!」
「しーくん、だい……っ」
大丈夫だよって言いそうになって、押し留まる。だって、大丈夫じゃないのを一番理解しているのは、しーくん本人だ。しーくんは、私には分からないくらい、いくつもシュミレーションして、結果、突破口がないって分かってしまっている。そんな子に無責任に「大丈夫」だなんて言えない。言えなかった。
「私も……私も考える! 一人じゃ思い付かなかったことも、二人なら何か、思い付くかもしれないから!」
私はしーくんの隣に座って、鞄からペンとメモ帳を取り出す。
「もし必要なら、新しい魔法考える。私、得意なのっ! しーくんが必要だと思う効果を生み出せるような魔法、考えてみせるから……だから、助けられないなんて、言わないで?」
しーくんの頬を伝う涙をそっと拭い、優しく抱き締めた。安心させるために……ラルさんがいつも私にしてくれるように、優しく頭を撫でる。
「しーくんは一人じゃない。私もいるし……今、頑張って戦ってくれてるアラシやレオンもいるよ。だから、ラルさんとティールさん、絶対に助けよう」
「ツバサお姉ちゃん……」
「それに、今、しーくんが諦めちゃったら、本当に助けられなくなっちゃう。そんなの私は……ううん、アラシもレオンも嫌だって思ってる!」
私は改めて、アラシとレオンの方を見る。二人とも今はなんとかなってるように見えるけど……
「しーくん、レオンが相手してる二人はこのままでも大丈夫なのかな?」
「うん……リンお姉ちゃんのデバフにきをつけてたら……レオンお兄ちゃんがかつ。レオンお兄ちゃんのスピードなら、ふたりとも、おいつけないから」
よしよし……問題はやっぱり、アラシの方か。
「私がアラシの加勢をすれば、なんとかなるかな? 倒すまでいかなくても、フォースさんのこと、止めることができそう?」
しーくんは否定するように首を振った。
そうだよね……さっきも勝てないって言ってたもん。私の提案もすでにシュミレーション済みってことか。
「ん~……なら、先にラルさんを助けに行くのは?」
「……へ? さきに?」
「うん。だって、今のところは二人でなんとかなってるし……私は動けるようになったもん。なら、二人で助けにいけるよね!」
そう。何も全員を倒す必要なんてない。私達はあくまで、ラルさんの救出が目的で、目の前の人達……そして、フォースさんを倒すことじゃない。
「それに、こっちがラルさんを助けたら、フォースさんとも戦う理由もなくなるよね?」
「そ、か。……そうだね……そうだけど、アラシお兄ちゃん、ひとりでだいじょぶ? このままだと、アラシお兄ちゃん、やられちゃう。……さんぷんごくらいに」
「さ、三分後……!?」
それにはちょっとびっくりするけど……でも、アラシがやられても、レオンもいる。もしかしたら、レオンが合流できて、時間も延びるかもしれない。
「だ、大丈夫! アラシもレオンも強いから。……二人でフォースさんを抑えてくれるはず!」
「……わかった。お兄ちゃんたち、しんじる。けーさんだけじゃ、せんきょーはわからないもんね。ふたりがどんなふーにさよーするのか、わからないし……たおすんじゃなくて、あしどめ、なら、もっとじかん、かせげるかもだから」
「そ、そうだね!」
うぅ、しーくんの話は少し難しい……けど、方針は決まった!
「行こう、しーくん!」
「うんっ! こっちだよ!」
よくよく考えてみれば、フォースさんはあの時、ヒントをくれていた。
ラルさんを捜せるのはしーくんだけ。そして、手駒を上手く使え……これって、私達を上手く動かして、役割分担させろってことなんだと思う。フォースさんは一度も、「おれ達を倒せ」なんて言ってないから。
私達はその場から立ち上がり、しーくんの示す先へと駆け出した。その先にはティールさんが落ちてしまった落とし穴がある。
「アラシ! レオン! ちょっとの間、二人でお願いっ! 私達でラルさん、助けてくるっ!」
「……了解っ!」
「おうっ! 任された!」
いつもなら止められるところだったかもしれないけど、今はそんなことを言ってられない。それに、しーくんの真剣なところを見て、二人も許してくれたのかもしれない。
大穴に飛び込もうとした時、全員が飛ぶ手段がないと止められてしまった。けど、今は違う。私としーくんだけなら、いける。
「しーくん、しっかり捕まっててね」
「ん!」
私はしーくんをしっかりとだっこすると、落とし穴へと飛び込んだ。
そして、魔法で自身の背に水の翼を出現させて、風魔法を操った。鳥が旋回するように、下へ下へと下降していく。
ラルさん、待っててくださいね……!



~あとがき~
年上組がいないので、ツバサちゃんや雫が頑張るぜよ。

次回、VSフォース。
後輩二人は太刀打ちできるのか……!

ここのシーンを描いていて、ツバサちゃんがめっちゃお姉ちゃんしてるなぁと思いました。
普段のツバサちゃんはしっかりしてるけど、やっぱり末っ子なのもあり、お姉さん感はあまりなかったんですが……
ツバサ&雫はツバサちゃんがお姉さんしてていいですね。新たな発見にもなる。

ではでは。