satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第436話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ティールが女の子達と戯れたり、ツバサちゃん達と屋台行こうとしてたところへラルが拐われたという一報が……というとこで終わってます。
その続きからです。お願いします。
アラシ「唐突……!」


《A side》
……え、ん? んんっ!?
ヒマワリと呼ばれたこの人は確か、ウィルさんの話にも出てきた、ラルとティールの先輩さん……だったか。
そんな先輩さんから飛び出した言葉が「ラルが拐われた」だって? あのラルが? 誰に。……いや、『悪の大魔王』にって言ってたっけ。いや、誰だよ、そいつ。そもそも、だ。
「ラルを拐うって……そんなこと」
そんなこと、できるやつがいるのか。
ラルは現役探検隊で、(俺は探検隊界隈に詳しくないけど)経験も実力もある。純粋な強さに関しては、その辺の高校生より強いのは知っている。
そんなやつを拐うだって? あり得るのか?
困惑しているのは俺だけではないようで、側で聞いていたツバサとレオンも驚きを隠せずにいた。
「ラルさんが……!?」
「それが本当だとして、どんな方法でやったんだろうな?」
レオンの言う通りだ。会場内は誰かしら見回っていたはず。現に先程まで話をしていた子供達の母親だって、ラル達、フェアリーギルドの関係者が警備をしている姿を見ている。そんな中、人を拐う等、可能なのだろうか。
「方法なんてどうでもいいよ! ラルさんを助けるのが先だよ!」
「いや、助けるつったってな……」
スプランドゥールならいざ知らず、ここでは俺は単なる一般人。事件に首を突っ込めるような立場じゃない。
「あ、あれだ! もしかして、ラル、わざと捕まったんじゃね? それなら、理屈通るし、何も心配いらないんじゃないかな~?」
あり得ない話ではないかも。この会場の状況からして、ラルが何らかの事情で人知れず離れたんだとしたら、この状況に納得がいく。……けど、それで拐われたって言われる理由は分からんが。
「そうだとしても、危険な目に遭ってるかもしれないじゃん! そんなのダメだよ!!」
おぉう……いつかの事件でも思ったけど、ラルのことになると、いつになく感情的になるなぁ……
とは言え、ツバサの言うことも一理ある。いなくなったのが本人の意思だろうとなかろうと、現にラル自身の無事は不明確なまま。そんな状況下で、心配するなってのは酷な話ってもんだ。
かといって、俺達に何かできる訳でもないしなぁ……?
「……あら? この子達は?」
感情的になるツバサを俺とレオンで宥めていると、不思議そうな声がこちらに向けられる。
どうやら、ヒマワリさんは俺達のことを今の今まで、視界に入れてなかったようだ。
「ん? あぁ……その子らはラルちゃん達のお友達だよ」
「まあ……そうでしたのね……」
「で、だ。ティールくん、どうする?」
ウィルさんはここまで沈黙し続けているティールに問いかけた。ティールはじっと何かを考えているようで、ウィルさんの質問にもすぐに答えることはなかった。
そんなティールに代わってか、雫がぎゅっと手を握り締めながら真剣な目を向ける。
ティール! ボク、ラルさがす! ボクなら、さがせるよ!」
「…………そう、だな。そうなんだけど」
ティール!! はやくしないと、ラル、けがしちゃうかも! やなこと、されちゃうかもしれないんでしょ!?」
「……」
雫がここまで訴えても、ティールはどこか困ったような表情をするだけだった。何がティールを渋らせているんだろう。雫が危険な目に遭うかもしれない、とか? そんなに『悪の大魔王』ってのは危険な奴なのだろうか?
「……なぁ、ティール? 知ってたらでいいんだけど、そんなに悪の大魔王ってヤバいのか? つか、何者なんだ?」
少なくとも、ティールやヒマワリさん、ウィルさんの三人の中では見知った存在らしいが、俺は全く聞いたことがない。
「え? あぁっと……この時期になると、毎年のように現れる謎の存在……かな。正体不明で名前も分からないから、皆、『悪の大魔王』って呼んでるんだ」
説明してくれたティールによると。
『悪の大魔王』とは、この祭りの最中にのみ現れる大悪党のことらしい。毎年、趣旨は違えど、何かしらの悪行を仕出かし、去っていく傍迷惑な奴のことをギルドの関係者がいつしか『悪の大魔王』と名付け、それ以来、皆がそう呼んでいるとのこと。
「……いつもは大体、食い逃げとか物取り未遂とか……言ってしまえば、そこまで気にならない程度のことしかやらなかったんだけど。……人攫いは初めてなんだよな。今回は何て言うか……大盤振る舞いというか、大胆というか」
「だね~」
「……さて、どう動くべきか」
だから、ティールはずっと思案していたのか。いつもの『悪の大魔王』と様子が違うから。何かあるんじゃないかと懸念していたのだろう。
しかしまあ、過去にしてきた行為を思い返してみれば、存外、大したことはしていない。そして、今回はラルが拐われたときた。……これ、レオンが言っていた「ラルはわざと捕まった」って線が濃厚なのでは。
俺はそう思うけど、ツバサはそうではないようで、未だにラルを早く助けねばと鼻息を荒くしていた。また、雫も同じ様子を見せている。
まあ、わざと捕まった説はあくまで可能性の話である。否定できるような事実も証拠もない今、本当に拐われた説もなくはない。
ツバサの様子を見たレオンはやれやれといった様子で首を振り、俺の肩に腕を回す。そして、俺に耳打ちするように声を潜めた。
「これは~……今のツバサを説得できるもんないからな……となると、これはもう、乗りかかった船ってやつ?」
「まあ、そうかもな。……ところで、レオン」
「お?」
「……とんでもないことに巻き込まれてる気がすんの、俺だけか? その、なんつーか、別の意味で?」
「大丈夫だ。俺もそんな気がしてる」
うん……なんも大丈夫じゃねぇけど、よかったよ。そう思ってたのが俺だけじゃなくて。
俺は思わずため息をつくものの、すぐに気持ちを切り替える。そして、沈黙し続けているティールに再度、話しかけた。
ティール」
「……ん?」
「もし、ラルを助けに行くってんなら、俺達も行くよ。……本来なら、俺らの出る幕じゃないのは分かるんだが……その、うちのツバサが行く気満々なので……」
「たはは……ごめんな~?」
俺とレオンの言葉にティールはちらりとツバサに目線を向けた。ツバサはやる気満々……行く気満々の表情で、「もちろんです!」と意思表明している。
「…………あ~、うん。そうだよね。そうなるよなぁ。個人的には待ってて欲しいけど」
「安心してください! 足手まといになるつもりはありません。皆さんのことサポートできますから! バフ付与とか、回復だって……必要なら、戦闘も任せてくださいっ!」
いや、そこは俺らでやるから前に出て欲しくないけど……
「つか、足手まといになりそうなのはむしろ、アラシの方だろ? 剣とか持ってないし?」
うぐ。確かに、こんなかで一番、魔力ない。……が、その辺の高校生よりは戦える自信はある。俺だって、一人の騎士なんだから。
「うっせ。必要なら取り出すし、問題ない」
「あ~……ティールくん、これはもう腹括った方がいいね」
すでに救出する方向で話を進める俺達を見て、ウィルさんはティールの肩を優しく叩いた。
「かーくんがいない今、しずちゃんがいなきゃ、ラルちゃんの居場所は分からない。で、つっちー達のやる気も十分……皆、連れてくしかないんじゃないかな?」
「……やっぱり、そう思いますか?」
「そだね~♪」
にこにこ笑顔のウィルさんとは対照的に、渋い顔のティールは長い間、唸っていた。しかし、ふっと息を吐くと、ティールの纏う雰囲気が変わった。
「……仕方ない。ウィルさんとヒマワリで各所に連絡を。ウィルさんはうちのメンバーに、ヒマワリはギルドの皆にお願い」
「りょ~かい♪」
「分かりましたわ!」
「あと、ウィルさん。アラシに剣、渡せそうですか?」
「おけおけ! お任せあれ~!」
ティールの指示を受け、ウィルさんはパチッと指を鳴らす。すると、何もない所から剣が二振り現れた。どこにでもある普通の剣みたいに見えるそれをウィルさんは俺に差し出してきた。
「はい、フェルドくん。確か、双剣使いだったよね? こんなんで大丈夫そ?」
渡された剣を試しに何度か振るってみた。初めて使うはずなのに、不思議と手に馴染む感覚がする。
「大丈夫……だと思います。ありがとうございます、ウィルさん」
「いーえ♪ 俺、あんま剣、創んないからよく分かんないけどね~♪ 大丈夫ならよかった」
……ん? つくる?
「ん~……ほら、かーくんも色々“創る”でしょ? それとおんなじ感じかな?」
それって……えっと、つまり、フォースと同じ力をウィルさんも使えるってこと?
ウィルさんはにこっと笑うだけで肯定も否定もしなかった。つくづく、よく分からない人だ。
「最後に雫はラルの捜索してくれる?」
「ん! もうやってる!」
「流石、早いね。……雫の探知が終わり次第、ラルの救出に向かおうと思う。ツバサ達にはできる限り、フォローするつもりではいるけど……絶対の約束はできないから、自分の身は自分で守るようにしてね」
「はいっ!」
「らじゃ~♪」
「あぁ。……なんか、ごめんな。ティール」
「ううん。……二人はともかく、ツバサはね……そうなるかなって」
いや本当に頑固ですんません……!



~あとがき~
雰囲気が変わってきました。

次回、助けに行くぜ。

ツバサちゃんと雫の共通点はラルが大好きってところっすね。雫はともかく、ツバサちゃんは相方のキャラなので、これで問題ないか、ちゃんと確認してもらってます。なので、私の妄想ではないことはお伝えしたい。

ではでは。