satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第62話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で日常生活をはちゃめちゃに楽しむ物語です。本編とは一切関係ありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック。
前回はツバサちゃんの秘められた力が発揮しました。あれは物理法則なんて効かないんです。そういうもんです。餌食になるのはアラシ君です。
アラシ「……」
ツバサ「ふえ……」
アラシ「あぁぁぁ!! 大丈夫! 大丈夫だから! そんな泣きそうな顔になるなって!」
まあ、使わなきゃ平気だから大丈夫! 大丈夫!
でも、球技大会みたいなことするときは大変だね。そんなのあるのか知らないけど。
アラシ「もうそれ以上は言ってやるな」


《A side》
三人の先輩と面識があるらしい、ステラとリーフはぺこりと頭を下げていた。そんな二人にリリアーナ先輩はステラとリーフ、交互にぎゅっと抱き締めている。どういう関係なんだろうか。
「リリアは可愛いもの好きなんですよ。……会長よりはましな方です」
な、なるほど……? よく分からないけど、分かったってことにしておきます……
俺の気持ちを読んだのか、ユーリ先輩が少しの呆れた感じの表情を浮かべて、説明をしてくれた。そして、俺の横に並んだイツキ先輩はツバサの様子を見て、楽しそうに笑った。
「ツバサ、めっちゃ気合い入ってるな~♪」
「あぁ……色々ありまして」
ここまでを説明するのも長くなるため、とても便利な言葉、『色々』を使って、一言で終わらせる。説明にもなってないが、イツキ先輩はこれ以上、追求しなかった。
「ふうん? あ、ユーリもやってみれば?」
「やだよ。お前がやれ」
「なんで!? 俺よりユーリの方が得意でしょ」
「どこを見て判断しているんだ。……似たような会話、前にもしたよ? 僕の得意分野知ってて言ってるなら殴るぞ」
「わあ~……おんなじように返された~」
なんか、部活で先輩に言われているような感じの雰囲気……だな。何て言うか、いじられてるときの先輩って感じ。しかし、違うのは、部活の雰囲気よりも自然な空気感がある。ユーリ先輩とは幼馴染みらしいし、二人の空気ってやつなのかもしれない。
「俺、嫌なんだよね。いちいち詰め込むのダルくない?」
「全部が全部、そうだとは言わないけど、そう言うならイツキは銃は……いや、お前、弓道やってたよな。あれも矢を一つずつ構えて射つし、連射は難しいよ?」
それは初耳だなぁ。この前、部活の練習試合でも思わず足を使って、相手を牽制するような素振りを見せていたし、イツキ先輩、思ったよりも引き出し多いのか。
でも、それはイツキ先輩にとってはよくない話題らしく、うげーっとあからさまに嫌がるような反応を見せた。
「嫌なこと思い出させるなよ! 姉ちゃんの付き合いでちょーっとやったけどさ、あんな時間のかかることやってられるか!」
「マツリさんは全く関係ないよね」
「るっせー! だからって、兄ちゃんみたいのもお断り! くっそ痛いし!」
「ダイさんも関係な……」
「俺は剣一本でやるの!! おだまりー!」
「駄々っ子か?」
今出てきた名前は、推測するにイツキ先輩のお姉さんとお兄さん、なんだろう。
再び、ユーリ先輩が俺に向かって説明をしてくれた。イツキ先輩を挟んでいるため、少しだけこちらに体を傾け、俺と目を合わせる。
「イツキのお姉さん、マツリさんは弓道に、お兄さんのダイジュさんは武道、柔道や空手とかですね。そちらの方に造詣が深い方々なんです」
「へぇ……それでイツキ先輩もやったことあるんすね? 弓とか、体術とか」
「そうだな。嫌な思い出だけどね。ガキの頃、とことん付き合わされて、俺のやりたいのはこれじゃないーって泣きわめいて、剣の道に進んだ」
「僕ん家に逃げ込んだことも数知れずってね」
「お前の魔法で匿ってくれるじゃん」
「あれは粗末なもんだったけど、当時はお前の泣きべそを見てるのは楽しかった」
「鬼か、お前」
「冗談だよ。今思えばって話」
そんな話をしていると、銃を撃つ乾いた音が響いた。忘れていたけど、ツバサがやってたんだった。意味はないけど、咄嗟に額を手で押さえるが、コルクが当たった感じはない。となると、他の誰か……?
「いっつっ!?」
あ、イツキ先輩……!
突然の衝撃にイツキ先輩はぐらりとバランスを崩し、後ろへとよろける。ツバサのびっくりした声と他の人達の戸惑った声が聞こえてきた。このままでは尻餅をついてしまうところだったが、それをユーリ先輩が上手く支えてくれたようだ。イツキ先輩が後ろに倒れてしまう事態は防げたらしい。しかし、突然だったにも関わらず、最適解を判断していた。これはきっと、誰にでもできるものじゃない。ユーリ先輩、凄いな。
「す、すみません!! イツキさん!」
「そんな叫ばなくても大丈夫だよ、ツバサ。……ありがと、ユーリ」
「どういたしまして。お礼は大会終わりにご飯奢ってくれればいいよ」
おお、すっげー笑顔……時折、ラルもそんな楽しげな笑顔浮かべるときあるけど、決まってふざけたことを考えてる。ユーリ先輩もその口なのか……?
イツキ先輩はそれにどう返そうかと数秒考えて、にやっと笑った。恐らく、ふざけるつもりだ。
「何それ、お高い。俺の愛で許して?」
「うわ。気持ち悪い」
「いだぁ!?」
「いっちゃん!?」
ぺいっと無造作に前に投げ出される。当然、受けきれるはずもなく、イツキ先輩は顔面から地面と激突する羽目になった。こうなるなら、後ろから尻餅をついた方がダメージなかったのでは?
「もおー! 単なる悪ふざけに対する突っ込みが過激すぎる!! お前、俺のこと嫌いか!?」
「嫌いなら幼稚園からここまで一緒にいるわけないじゃん」
「はあ!? え、じゃあ、何か? ツンデレってやつか! ユーリ、お前はツンデレ属性なのかっ!」
「いやぁ……なんかやれって言われた気がして」
「誰にだよ!? もう、そいつのこと殴ってくるから位置を教えろ!」
「それは分かりかねます」
「ユーリの得意分野だろ!?」
遊んでる。絶対に遊んでるよ、ユーリ先輩。レオンみたいになってる。滅茶苦茶楽しそうだよ。
はあー……さてっと。最後の一発も駄目だったわけだ。流れ弾はイツキ先輩に当たって、ちょっと助かったなんて、言えないけれど。
「ほら、ツバサ。貸してみ?」
「……うん」
俺はしょんぼりしているツバサに近寄り、銃を受け取る。ここから狙いのマスコットまで、最高得点の的を連続で取るしかないだろう。ツバサの残した弾は二発。これらを全て連続で当てなければならない。まあ、多分、大丈夫……多分。
狙いを定めて、集中する。的は動かない静止した物体だ。きちんと狙えば、問題ない。
引き金を引くと、狙った通りに一番小さい的を撃ち抜いた。周りの歓声は無視し、集中力を維持したまま、次の的を定める。俺の構える位置からだと少し高いが、空気抵抗と距離を考えて、標準を合わせた。
「……この辺……かなっと!」
最後の一発も最高得点の的に当たり、なんとかツバサの欲しがっていた得点に届いた。ほっと胸を撫で下ろしていると、ツバサがいきなり俺に抱きついてきた。そして、パッと明るい笑顔で俺を見上げる。
「ありがとっ!! アラシ!」
「お、おう」
顔が赤くなるのを感じ、慌ててツバサから目を逸らした。その視線の先にたまたま、ステラがいて、にこっと笑う。その笑顔で俺は悟った。
あ、それは駄目なやつ。
「アラシさん、すごい! フォースみたいに撃ち抜いちゃった」
「すっげー! アラシ、銃できるんだな!」
ようやく顔面から落とされたダメージから回復したのか、イツキ先輩が立ち上がる。純粋に感心して、言っているようで、俺は少し照れつつ銃を台に置いた。
「え、あ、まあ……ある程度は。知り合いに得意なやつがいて、手解き受けてるんで……まだまだっすけど」
「いやいや~♪ 謙遜すんなって。アラシ、かっこよかったよなー?」
「ですねっ! ツバサちゃんのためにアラシさん、めちゃめちゃ集中してましたもんね? アラシさん、かっこよかったよね、ツバサちゃん♪」
「うんっ! かっこよかった!」
うわぁ!? これ以上はやめてくれ!!
イツキ先輩は他意がなさそうだが、ステラは明らかに意識して言ってる。わざと言ってるだろ!?
「ツバサちゃん、リーちゃん。景品もらいに行こ」
「うんっ♪」
俺の反応に満足したのか、ステラはツバサとリーフを連れ、お目当ての熊をもらいに行ったらしい。ここにレオンがいなくてよかった。心から思った。本当に。
一応、また何か言われないようにと、ステラ達からほんの少しだけ距離を取る。すると、その近くにユーリ先輩が立っていた。俺が近付いたことに気付いた先輩は柔らかな笑みを浮かべる。
「この前の件もそうですが、アラシさんはツバサさんのためなら頑張る方なんですね」
「はへぇっ!?」
思いがけない相手からの不意打ちに変な声が出る。そんな俺にユーリ先輩は、小さく笑った。
「すみません。男女関係とかそういう話ではなく、ちょっと分かる気がするなって」
「だんっ!? ん?……え、と、分かる……?」
「仲のいい人が困ってたら、何かしてあげたいですからね。力になれるなら」
ま、まあ、そうかもしれないっすけど。ユーリ先輩の場合、その相手って……
ユーリ先輩の視線の先には、イツキ先輩とリリアーナ先輩がいた。俺の目線に、先輩はそっと左手の人差し指を口に当てる。
「リリアはともかく、イツキにこんなこと言ったら調子に乗りやがるので、内緒でお願いします」
「あぁ、はい。分かりました」
それだけを告げると、ユーリ先輩はイツキ先輩達のところへと近付いた。
今、一瞬だけ見えた、左手のブレスレット。イツキ先輩の持っているものと同じものだった。紐の色や装飾だろう石の色は違うけれど。あれは、二人にとって大切なものなんだろう。なんだかんだ言って、仲がいい先輩達だ。
「見てー! もらってきたのっ♪」
ぱたぱたと駆け寄ってきたツバサの手には、手のひらサイズの小さくて真っ白の熊が乗っていた。
「ステラちゃんとリーフちゃんとお揃いっ」
「そっか。よかったな、ツバサ」
「えへへ……アラシ、ほんとにありがとね」
大事そうに熊を持って、満面の笑みを見せた。ステラもリーフも楽しそうにしていたし、何よりこいつのこんな笑顔を見れた。女の子三人のお守りも悪くはなかったんだなって思う。
ツバサはリリアーナ先輩達にも見せていて、和気あいあいと話をしていた。
「わあ♪ このくまさん、ツバサちゃんみたいにもふもふしてるね~♪」
「ラルさんとリリアーナさんのブラッシングのお陰ですよ♪」
「そいや、この二人そんな関係だった! 最近、ブラッシングしたの?」
「大会の準備で私は全然だよ。会長様もおんなじじゃないかなぁ」
「そうですね。……あ、でも、ラルさんに簡単にですけど、してもらってるんですよ。ささっと」
「へぇ……あんなに忙しい中でもツバサさんの毛並み第一なのか、あの人は」
「すーくんも髪の毛とか解くの上手だよ。ブラッシングも得意なんじゃないかなぁ?」
「かもね。たまーに結んでもらうもんね。ステラ」
「ほへー……機会があればお願いしてみるのも楽しそうだね~♪ でも、してくれるのかな?」
「ツバサの頼みなら聞くっしょ。あの先輩も!」
……どこにそんな根拠があるのか分からないけれど、まあ、馴染んでいるようで何より。
俺が生徒会の人じゃないってのもあるが、こうして、先輩と世間話するツバサはなかなか見ない。ツバサが生徒会でどんな風に過ごしているのかなんとなく、見れた気がした。
「……あいつは笑ってる方がいいもんな」
俺は誰にも聞こえないように、そう呟いた。



~あとがき~
なっっっがいな、大会前の探索!!
そして今回の話が長い!(全体で六千字超え)
いや多分、あとがきが長い! 暇なときに読んでください。語ってます。あれなら、読まなくていいです。語ってます。(二回目)

次回、終わります。終わらせます、探索を終わらせますよ。本当に。

茶番を入れまいとしたけど、勝手に喋りましたね。ユーリとイツキ。まあ、いいです。楽しかったので。お互いがお互いを大切な親友、相棒だと思っています。しかし、それをあえて表に出さないユーリと、前に出しまくるイツキコンビです。
機会があれば二人だけの話とかもありかもしれない。ネタがないけど。

ツバサちゃんの残った弾を代わりにやる人選は思った以上に悩みました。せっかく考えて、ある程度の形にはなっているので、没ったパターンをささっとご紹介します。今回、話に書いたアラシ君パターン含めて四つ考えてありました。
初期の私の考えとしては、ユーリがやる予定でした。イツキに「やってやれよ。後輩のためだぞ~!」みたいなことを言われて、「僕でいいなら、別にやるけど」って感じの。休日編で銃に興味を持つシーンもあったので、ありかなぁと。しかしまあ、何分、こいつ滅茶苦茶目立ってたので、そっと降りてもらいました。あと、この場合だと、イツキがぺいっとやられるシーンからの茶番はなかったでしょうね。普通にお礼言ってから離れて、お前やってやれよ感じになると思うんで。
次に考えたのは、イツキがやるパターンですね。こいつに関しては、ぺいっとやられて、地面とこんにちはした後に、ユーリが「こういうときはお前の出番だろ」と急かされ、頭にはてなのイツキに「できたら好きなもの買ってあげる」とかなんとかで乗せられ「やってやんよ。見てろよこんにゃろー!!」とムキになってやる感じでした。で、ここでユーリがイツキを褒めるってシーンがありましたね。今回の最後の方にあった感じのやつです。それで、アラシ君が二人の友情というか、信頼関係を考えるってシーンを入れるつもりでした。
最後には言い出しっぺの法則としてステラがやるってのもありました。責任持って私がやるね! みたいな感じに。まあ、このパターンが一番短く収まるやつでしたね。今考えると、ですが。
とまあ、そこに今回書いたアラシ君パターンを合わせて四パターンですかね。それら考えて、ユーリはそっと外したわけですが、それでも三つ残ってて、どれにするよ、私!! って状況に陥ったわけです。これはもう私の考えたストーリーは言わずに友人に誰がいいかと聞いたところ(相方には、男子三人+ステラの中で誰がいいと思うかという話しかしてない)、今の今まで大したイケメンポイントのないアラシ君でよろしくされたので、アラシ君になりました。
結果、アラシ君で、ステラやイツキ(イツキは意識してないけど)に茶化されるシーンや、ツバサちゃんがアラシ君の見ていないところでも、楽しく学園生活を送っていることを彼自身が再確認したので、よかったのかなーと思います。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第61話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわちゃる物語です。本編とは一切関係ありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック推奨。
前回は色々巡って、射的屋に到着したところまでですね。そこで女の子三人は射的にチャレンジするぞ! ってところで終わりました。
思ったより屋台探索が長いなと思っております。まあ、楽しいんでいいんですけど!
アラシ「やり過ぎると後が辛いぞ」
ステラ「そうですよ。試合の描写とか」
いや! 聞きたくないわ!!
アラシ、ステラ「……」


《A side》
三人同時ではなく、まずは言い出しっぺのステラが銃を構える。弾はよくあるコルクで、これまた普通の射的によくある銃だ。銃口に弾を込め、引き金を引けば、簡単にコルクが撃ち出される。
的には様々な形があり、大きければ得点が低く、小さくなればなるほど得点が上がる仕組み。これまたよくあるルールだ。景品を撃ち落とす代わりに的を撃ち落とすのだろう。見る限り、的は簡単に撃ち落とせると思うが、それは狙いどころがよければの話だ。ぼったくりする気がないだけましなのかもしれないけれど、レイ学の生徒で銃を専門に扱う人からすれば、楽勝過ぎる気もした。遊ぶのは専門家だけじゃないし、問題ないのか。
ステラは両手でしっかりと構え、銃身を支えている。じっと狙いを定めて、引き金を引く。高く乾いた音が響くと、直径が二十センチくらいの丸い的を撃ち落とした。もう少し大きい的があるから、それよりは得点が高いはずだ。
「お。思ったより撃ち落とせる気がする! 景品はもらったー!」
「ステラはいいよね。これ、得意分野だもん。ワタシの代わりにやってほしいくらいだよ」
「へっへっへー! ま、銃を撃つのは久しぶりだし、すーくん達の足元にも及ばないけどね」
二人の口振りから、フォースやティール─話には出てきてないが、もしかしたら、ラルも─はこういった類いは得意なようだ。ラルは刀を使うけど、残りの二人が銃をメインに扱うのかまでは分からないが。
ステラに続けて、リーフも同じように構える。とりあえず、一番大きな的に狙いを定めて、引き金を引いた。当たるには当たったものの、場所が悪く、倒れるまでには至らなかった。
「うっ……当たったのになぁ」
「んーと。リーちゃん、もう少し上だとバランス崩せると思う」
「了解っ!」
ステラもリーフも楽しそうにしているが、ツバサだけはどこか緊張している面持ちだ。場所がないってのもあるかもしれないが、苦手だって気持ちと例によってあんなことになるのではと、頭の中がぐるぐるしてるのかもしれない。
ステラが狙っていた景品をもらえるくらいには稼ぎ終えた頃、ようやくツバサが銃を構える。
「ごめんね、待たせちゃって。頑張れ、ツバサちゃん!」
場所取りの関係で、一人終わるのを待っていたと考えているらしいステラは、そくささと後ろへと下がった。そんなステラにやんわりと笑うツバサ。
……大丈夫かなぁ。
「……えいっ!」
銃を撃つときのかけ声としては可愛らしいものを発したツバサの渾身の一発は、狙いを定めた大きな的を目掛けて一直線に飛んでいく……のが、普通なのだ。本当なら。
「……ってえ!!」
「ひゃあ!? ご、ごめん! アラシ!!」
後ろで見ていた俺の目の前に、ツバサの撃ち出した弾が額に直撃する。本来ならあり得ないのだが、足元にコルクが一つ落ちているために、嘘ではないことがはっきりと分かる。
ツバサのやる遠距離攻撃……と言っては語弊があるが、銃や弓、道具を使った投げる、『うつ』ことに関しては、天才的な能力を発揮する。今のようにあり得ない軌道で物が飛んでくるのだ。銃なら狙った物以外に……誰かに当たる。ボールも同じように明後日の方向に投げ、誰かに当たる。なんかもう、とりあえず、誰かに当てまくるという謎の迷惑能力なのだ。じゃあ、魔法の遠距離攻撃はと思うかもしれないが、そちらには適応されないらしく、しっかりと狙った的や敵に当てることが可能だ。
「えーっと、これはどんな軌道なんだろ……? 弾って、前には飛ぶけど後ろに……?」
ツバサと俺を交互に見て、ステラはしきりに首を傾げている。分かるよ。俺も当たる度にいっつもそんな気持ちだ。これに関しては理屈ではないので、諦めるしかないんだけれど。
当たった額を撫でつつ、落ちているコルクを拾う。コルクは何の変哲もないただのコルク。射的の弾。まじまじと見たところで、その事実が変化するはずもない。
「ていっ!」
もう一度、ツバサが引き金を引く。そして、結果は変わらない。
「いっったぁぁ!?」
再び、吸い込まれるように俺にヒット。いや、もう、本当に……清々しいくらいキレイに当ててくる。その命中力にはその、あれだ。……アコガレマスワー……
「みゃ、みゃあぁぁっ!! ごめん!!!」
申し訳なさとどう頑張っても俺に当たるという理不尽な状況に涙目のツバサ。
「ツバサちゃん、ちょっと貸して?」
「う、うん……」
後ろで見ていたステラがツバサの銃を持ち、さっと構える。そして、一番小さい的を狙う。さっきは全く狙ってなかったけれど、当たるのか……なんて、心配は無用だったらしい。きっちり撃ち抜き、ツバサに銃を返した。
「ちゃんと前に出てるよね……ってことは、ツバサちゃんが何かしてるの?」
「ううん。……実は、いつもこんな感じ……なの」
「えぇ!?」
「偶然じゃなくて?」
ようやく終わったらしいリーフも困ったような表情を浮かべた。そんなリーフの質問に、ツバサは無言で頷いた。
「も、もう一回、撃ってみて? ちょっとちゃんと見てる!」
どうなっているのか気になるのか、ステラはとんでもないお願いをする。今は俺だけでも、他の人に……なんなら、ステラ自身やリーフにも当たるかもしれない。周りの人にだってあり得るかもしれないのだ。しかし、好奇心の方が強いんだろう。
ステラに言われて、ツバサは三度、銃を構える。狙いは変わらず、一番大きな的。
パンと乾いた音にステラとリーフの視線は俺に向く。見られている俺はというと、額を押さえてしゃがんでいた。ここまでくると、悲鳴をあげる暇もない。
ふっつーに滅茶苦茶、痛いんだけど……理不尽……
「三発全部、アラシさんに当たってますね。ある意味、ツバサはスナイパーの素質があるのかも。狙ってない人に当てるスナイパーさん……」
「百発百中だね! ある意味……だけど」
「ふ、ふえぇぇ……」
ステラとリーフの慰めも苦しく、ツバサの声も震えている。これ以上はやっても無駄だろう。
「ツバサ、あと何発あんの……?」
「あ、あと、三発……かな」
「残りは俺が……」
「あ、あと一回だけ! 最後! やってみる!!」
今日に限って、なんでそこまで気合い入ってんだ。
「くまさん、自分で取りたい……」
ステラと……あと、ギリギリだったみたいだが、ステラのアドバイスの下、リーフもお目当ての熊のマスコットをゲットできる範囲まで点数を取っている。一人だけ、取れていないのが嫌なんだろう。
「この展開はいけるやつだー! ツバサちゃん、いっちゃえー!」
……ステラのやつ、面白がってるな。
ラストチャンスにツバサは変わらず、一番大きな的を狙う。それにステラもリーフも目一杯声援を送る。ただのお遊びなのに、手に汗握る展開じみてきたのはなんでだろう。
「あ、アラシじゃん。こんなところで奇遇だな~」
「え? あ、イツキ先輩。と、ユーリ先輩、でしたっけ……とリリアーナ先輩?」
ひらひらーと軽い挨拶をしてきたのは部活の先輩のイツキ先輩。それに先輩の友達のユーリ先輩とリリアーナ先輩も一緒にいる。
ユーリ先輩は何を食べていたのか竹串を口に咥え、リリアーナ先輩はたい焼きを頬張っていた。イツキ先輩は何も持っていないけれど、多分、食べ終わってごみは捨ててきたって感じだろうか。
「覚えていてくれて光栄です」
「一回だけだったもんね。会ったの!」
二人の先輩はほぼ初対面レベルの俺に対しても、笑顔を向けてくれた。
例のもふもふ事件が初対面で、そこから面と向かって話した記憶はない。……あの件は思い出したくもないけど。



~あとがき~
長くなりそうなんで次回に続く。
ここまで続けるつもりなんてなかったんや……(汗)

次回、観客が増えてきた射的屋さん。ツバサちゃんは見事当てることはできるのか!!
……まあ、当てはするか。

本編ステラ……イブですね。イブが銃を使うシーンはほぼないに等しいですが、使える設定ではあるんですよね。んでもって、こちらの世界ではメインとまではいかないまでも、ある程度は習得しています。ステラの相方がフォースですし。
私のメインキャラで言うと、銃の腕前は
フォース→ティール→ラル=ステラ→リーフの順ですかね。ラルとステラはどっこいどっこいだと思います。現場慣れしているという面で、ここぞという対応力が抜きん出ているラルに軍配が上がるでしょうが。今回の場合だと、ラルもステラも変わらなそうです。

ではでは!

空と海 第225話

~前回までのあらすじ~
ピカとポチャのおデート風景でした。そこから戻ってきて、基地でのお話です。
前回までの四話は二年前くらいに書いておいたものですね。結構前に書いたから、文章と文章量があれですが、今更直す気にもなれないので、あのまま出しました。すみません! 今回のも前に書いたものですが、いつ書いたのかは覚えてないです。
ピカ「夏祭り編のバトルが書けなさすぎて、現実逃避した作品を出したっていう」
まあ、元々の計画の中にはやるってのがありましたんで……(汗)


とりあえず、山積みになっていた依頼書をなんとか片付け、最後の仕上げとも言える書類整理をやっていた。それももうすぐで終わりそう。毎回、この後始末で苦労するんだよなぁ……この作業は嫌いではないけど、好きにもなれない。そんな感じの仕事。
本来なら、ぼくとピカの二人でやらなくてはいけないけれど、助っ人としてイブ、チコ、フォースが手伝ってくれていた。
「はぁー……ごめんね、三人とも。こんなことに付き合わせちゃって」
「全然問題ないです! こういう仕事も新鮮ですし、楽しいですよ」
そんなことを言ってくれるイブは、にこにこと笑いながら、書類をファイリングしてくれていた。出来た後輩だなぁ……
イブの側で黙々とファイルの整理をしてくれているフォースは特に返答はない。聞こえてはいるんだろうけど、反応はしないみたい。
「というか、ペラップさんに『ピカんとこ行ってこい』って言われたので! ワタシ達のお仕事もありませんでした。あれってピカさんが言っといたのでは?」
チコは首を傾げつつ、ピカに質問をする。そんな質問をされたピカはというと、やる気がなさそうにぐでっとしていた。それでもチコの言葉は届いていたようで、あーっと呟いた。
というか、関係のない三人が来てくれたのにそのやる気の無さはないんじゃないか……?
「それはご想像にお任せするよぉ」
「はぁい♪ じゃあ、想像通りってことにしておきますっ」
「お好きにどぞ~……っと。今までのまとめ終わった?」
「……終わった。そこに積んであるファイルがそう」
フォースが指差すのは、さっきまでまとめてくれていたファイルだった。ピカは、それを目視で確認をすると、目の前のノートパソコン(ちなみにぼくは一度も触ったことがない)を閉じてすくっと立ち上がる。
「ん、ありがとう。……よぅっし! ライブちゃんとこ行くか。ついでにギルドにも行ってこよう。イブちゃん、チコちゃん、私についてこーい♪」
「あ、はーい!」
「了解です。すーくん、あとは頼んだっ」
「へいへい……」
それなりの量があったのだけれど、全てトレジャーバッグに放り込むと、イブとチコを連れて基地を出ていってしまった。二人を連れていくことに何か意味があるのかは分からないけれど、まあ、ピカが動いてくれるなら何でもいいや。
この場に残されたのはぼくとフォースだけになった。まだ全部終わったとは言えないから、手は止められない。フォースも三人を見送った後、再び整理に戻る。
……これはいい機会かもしれない。あのことを相談してみよう、かな。
「……あのさ、フォース?」
「んー」
「その、仕事やりながらでいいから、話を聞いてくれる?」
「おー……いいよ」
お互いに手は動かしたまま、雑談っぽく話を進めていく。簡潔に、かつあまり思い出さないようにしつつ、慎重に言葉を選んでいく。
「ここに帰ってくる前に、ピカと……町に寄ってきたんだよ」
「おう。デートな」
んんっ!! う、うん……ソウ、デスネ。デート……ぼくの頑張りって……
「……そんで?」
急に黙ったぼくを不思議そうに見て、話を促した。理由なんてバレていると思うんだけど、分かっていてわざと知らないふりしてるんだろう。クールで羨ましいが、憧れたところでぼくに素質がないので、気を取り直して話を再開させた。
「で、いつも通りの他愛ない会話しながら、歩いてて……で、そこで」
あー……駄目だ駄目だ! 思い出しちゃうぅ……!
「なんだ。単刀直入に言え。男だろ」
「う。ごめんなさい……」
「まあ、ペンギンが何を言いたいのかは分かるよ。ラルに自覚はない。以上」
一言で片付けられた……
フォースにとってはそれでいいのかもしれないけど、ぼくはそれで終われない。
「そこに本音はあると思う?」
「結婚うんぬんの話の中に?」
なんでその話を知っているんだろう……いや、心を読まれたのかな。顔色一つ変えずにやるものだから、全く気づかない。普段の生活の中でもやられてるんだろうな。きっと。
「結婚に関しては気になったから聞いただけだろ。あいつの性格上、そこに深い意味はないはずだ。……でも」
「でも?」
フォースはそこで言葉を止めると、少しだけ考え込む。何か思い当たる節でもあるのだろうか。続きを待っていると、彼はにこっと笑う。
「まあ、そこら辺は本人に聞けよ。そっちの方が手っ取り早いぞ」
「えぇ!? 聞けたら苦労はないんだけど!」
「おれの予測を聞いたって面白くないだろ。それは、予測であって真実ではないんだから。……この機会に少しは頑張れよ」
「が、頑張るって……」
「ラルはお前のそういうところも理解してるだろうけど、たまには恋人らしいこともしてやれってこと。そういうの、敏感だぞ? 女って奴は」
フォースと恋愛絡みの話をするのはあまりないから、彼自身の経験なんてものも聞かない。少しだけ気になって、首を傾げた。
「……それ、経験談?」
「まあね。おれの相方は積極的だったから、不満に思えば自分から動く奴だったけどな。……ラルはそうじゃないだろ」
「……そう、かな」
「そうだよ。自分のことは二の次のラルが、恋愛で肉食系女子になるわけない。自分勝手に色々やるけどさ、自己中ではないんだよな、あいつ。そう見えても、底には何かを考えて行動してる。……悪ふざけに意味はないだろうがな」
「フォースはよく見てるね、ピカのこと」
ぼくがそう言うと、フォースはきょとんとして、小さく首を振った。
「ラルに限った話じゃねぇよ。暇だから、観察してるだけ。後は……まあ、色んな奴に会ってきたからな。なんとなく、分かるだけだよ。……とにかくだ。あんま放置すんなよ。飽きられることはないだろうが、不安にさせるのは毒だぞ」
……う、うん。そう言われると、何も言い返せないな。
このあとは、他愛ない話を織り混ぜつつも、真面目に作業をすることになった。

三人のお陰で夕方になる前に全部の仕事が終わった。いつもなら夜まで二人……いや、基本ぼくだけでやってるし、人手って大切だなぁ。
「ありがとね、三人とも。お陰で早く終わっちゃったよ。巻き込んでごめんね?」
まあ、終わってなくても夕飯前には帰してたし、終わらなそうならピカも本気出してやってたと思うけど。今回、ピカはほぼ動くことなくだらーっとしてたけど!
「いえいえ! さっきも言いましたけど、こういうお仕事も楽しいですから! ね! チコちゃん」
「うん。いつかワタシ達も卒業したら、あんな風にやらなきゃなって体験ができましたから」
イブとチコは笑って許してくれた。ピカももう少し、彼女達を見習って欲しいけど、きっと無理なんだろうな。
「それでは、また! お手伝いできることがあれば、何でも手伝いますからね~♪」
イブが頼もしいことを言い残し、三人はギルドへと戻っていった。帰るとき、フォースがぼくのことを見て、やれよって目で訴えてきた……気がする。
「大丈夫。……頑張るよ」
「? 何が?」
小さく呟いたつもりだったけれど、ピカに聞こえていたらしく、怪訝な顔でぼくを見てきた。
「あ、えーっと……な、なんでもないよ! ほら、ぼくらも戻ろ!」
「変なポチャ」
あう。



~あとがき~
最近書いてたレイ学ティールと空海ポチャの性格違いすぎて、戸惑ってる。同じ人物のはずなんですけど、これはあれかな。通ってきた経験の差かな……? レイ学の方が肝据わってね?(笑)

次回、そろそろピカとポチャのほわほわ恋人っぽい話を終わらせますよ。

なんかぐでーっとしてるピカを書くのは久し振りで、こいつはこんなんだったなーと思い出しました。どっかでも言いましたが、本編だとぐでぐでーっとしているピカは出てこないんですよね。最近だと、夏祭り編二日目がぐでっとしてましたね。……話の中では最近だけど、私たちからするとかなり前ですね。

ではでは!

お知らせ

夏ですね。まだ学生な私は夏休みです。夏休みなんですけど、今年はやることがな……あってだな……
バイトと学校の課題です。学校の課題で察して! 卒業するためのあれです!!

とまあ、それとはあまり関係ないっちゃないです。
本題を言ってしまうと、現在週1投稿をしている、空と海の定期更新をピカとポチャの話が終わり次第、不定期に戻しますってお話です。理由は単純。続きが書けてないからです!!
ふわふわっとした話の流れで書いてたら完全に詰みましたね。原因これですね。卒業のあれのせいではなくて、いつもの無計画な私が悪い。
ってことで、ある程度話が固まって続きが書けるまでは適当に投稿します。8月はあと2回かな。それを投稿したら、続きは9月以降だと思われ。

今現在、空と海とは別に、メインになってるレイ学は、私ではなく相方が大体の話を組み立ててくれているので、ストックたくさんです。私一人ではあり得ない事態ですね(笑)
なので、しばらくは定期更新のままです。週3には……しないかな。投稿日は多少変更させますが、週2のまま定期更新を続けていくよ!


8月の第3週辺りからそのように投稿していきます! まあ、元々空と海は不定期だったので、それが元に戻るだけです。大層な理由はないです。はい。
今後の私の都合で投稿頻度は変化するかもしれませんが、少なくとも何かしら投稿はします! 1ヶ月何も出さないなんてのはないです。な、ならないようにいい感じに計画立てて頑張っていくよ……!


ではでは、短いですが、閲覧ありがとうございました! 次回は! ふっつーに空と海を投稿しますんで! お楽しみに!

学びや!レイディアント学園 第60話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で楽しく過ごす物語です。本編とは一切関係ございません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバックです。
前回は、アラシ君視点で大会前ののほほんとした女の子達のお出かけを……あ、違う?
じゃあ、屋台巡りを開始しました。はい。
アラシ「この後が殺伐としてるみたいな言い方してない?」
してないよ~?
アラシ「……そうかぁ?」
そうですよ……決して、この後のバトルが~とか考えてませんよ、はい!
アラシ「考えてたな」
……はい。


《A side》
それぞれ、お目当ての食べ物を見つけたようで、それをパクつきながら、だらだらと屋台巡りを楽しんでいた。
「そういえば、アラシさん。大会には参加するんですか?」
鈴カステラを頬張るステラが俺の方をちらりと見ながら質問をする。その答えとして、俺は小さく頷く。
「まあな。この大会に参加するっていう憧れはあったんだよな。中等部時代に見学してたからさ」
「ほへー? 私はあの乱戦見て参加したいなんて思いませんけどね~」
そこら辺は価値観の違いだな。毎年が乱戦だらけではないが。
「アラシさん以外にお知り合いは参加しないんですか? ツバサは出ないんだよね? 確か」
リーフの言葉にツバサは肯定する。おばさんに止められたって話は俺もツバサ本人から聞いていたから、把握済みだ。理由が理由なだけに、どうしようもない。
「俺はレオンと同じ部活の人達くらいしか知らないかな。……出そうだなってやつの見当はついてるが」
レオンに関しては、大会の受け付けが始まってすぐに、「勝負しようぜ!」と持ちかけられた。参加人数が不明だったのもあり、試合ルールが明らかになっていない状況で、何を言い出してんだと呆れたが、気がついたら了承してしまっていた。
「レオンのやつには絶対負けねぇ」
「? 何があったんだろう」
俺の反応に不思議そうにしているリーフに、ツバサが笑顔で答えた。
「ん~……いつものことだよ♪ アラシとレオンは何かある度に勝負するから♪ 勝った方が言うこと聞くーとかそんな話してるんじゃないかな?」
よくご存じで……なんて。ガキの頃から似たような光景を見てきたツバサなら予測なんて簡単か。
「今回の試合ルールは、ブロック戦からのトーナメント戦でしたっけ。アラシさん、どこのブロックかは決まってるんですか? すーくん、知らないの一点張りで教えてくれないんですよね~」
フォースの場合、説明するの面倒だから言わないだけって可能性の方が高そうだ。まあ、答えは本人にしか知り得ないだろう。
「ブロックは直前のくじ引きで決めるらしい。……あいつとは被りたくないんだけどな」
俺の脳裏に目をぎらつかせ、片っ端から相手をなぎ倒すアリアの姿が浮かぶ。想像しておいてあれだが、そのイメージに少しの寒気を感じてしまう。俺はそれらを振り払うように頭を横に振った。
事情を知らないステラとリーフはきょとんとしていたが、アリアを知るツバサは何とも言えない表情を浮かべていた。
何も知らない二人に軽く説明してやろうかと考えていると、ステラが何かを見つけたのか、はっとしてあるところを指差す。
「あ、駄菓子屋さん! 私、行ってきまーす!」
「わあ♪ ほんとだ! 待って、ステラちゃん! 私も行くー!」
よく見えたな。って、お前が行くなら俺も行かないとじゃね……?
先に行ってしまったステラとツバサを追いかけようとするが、ふと視界に見知った人を見た気がして、ぐるっと見回してみた。すると、俺達から離れた屋台付近に、話に出てきたレオンとアリアの姿がある。嬉々としてたこ焼きをこれでもかっていうくらいの量を買い占めているにも関わらず、更に買おうとしているらしい。それをレオンは必死に止めている。俺を散々いじり倒す馬鹿でも、アリア相手にはあんな風に振り回されるもんだから、アリアの食欲というものは恐ろしい。
俺としては、ある意味見慣れた光景だ。レオンがアリアの暴飲暴食を見張るため一緒に行動しているのだが、あれで少しは抑えられているのかは怪しい。いやまあ、アリア一人だとこの辺の屋台全部、平らげるかもしれないが。
友人として、仲間としてはあそこでレオンの加勢に行くのが美しき友情なのかもしれないが、生憎、今の俺はツバサのお財布係……もとい、女の子三人のお供として忙しい身だ。……まあ、忙しくなくても、助けには行かないけど。だって、関わりたくないし、俺一人行っても変わらないし、色々怖いし。試合前にアリアのパンチとかチョップとかその他諸々食らいたくない。マジで。
「どうしたんですか、アラシさ~ん? ツバサ達、行っちゃいますよー!」
少し離れたところでリーフが手を振っている。追いかけてこない俺を心配して、呼んでくれているんだろう。アリアのこの一帯を買い占めそうな勢いに焦るレオンと、あいつの心配なんてどこ吹く風といった雰囲気で、美味しい食べ物を目の前に楽しそうなアリア。彼らを見て、そっとリーフに視線を戻した。
「何でもない! 今行く!」
つーことで……レオン、任せた!

この後のレオンとアリアを俺が見届けることはなく、また、レオンとアリアの今を知らない三人は駄菓子屋でお菓子を楽しそうに選んでいる。
別にいいんだけれど、食べてばっかだな。
「アラシ、これにする!」
「……はいはい」
財布を取り出して、店員にお金を渡す。選んだお菓子を袋にまとめてもらい、それを受け取ったツバサは嬉しそうにしていた。
「今度、ツルギと一緒に食べよーっと♪」
「いいんじゃないか? あいつも喜ぶだろ」
「うんっ!」
ステラとリーフも選び終わったらしく、俺と同じように会計して、それぞれ袋を手にしている。
「こういう素朴な味って美味しいですよね。洋菓子甘さとは違ってと言いますか」
ステラはそう言いながら、金平糖をいくつか手のひらに出す。そして、リーフとツバサに分けた後、残った金平糖を俺に差し出してくれた。ありがたく二、三個ほどつまみ上げ、口の中に放り込むと、ほのかな甘味が広がった。ずいぶん、久し振りに食べる金平糖を味わいつつも、苦笑を浮かべる。
「そうかもな。でも、素朴なって聞くと、年寄りみたいだぞ……?」
「そんなことないですよー! あ、でも、すーくんはこういう方が好きです。だから、すーくんのせいですね」
え、あ、そうなのか……? いや、フォースのせいじゃない気が……
「次はどこ行こっか?」
切り替えの早いステラはもう次の目的地の話をしている。うぅん……ま、いいか。
「せっかくだし、何かゲームみたいなのもしたいなぁ……近くには、射的があるけど。フォースとかティールさんに任せた方が確実……」
「あ、でも、あの射的屋さんの景品、一番のマスコットかわいい! くまさんっ!」
そこの射的は景品を打ち落とすのではなく、的当てのような感じらしく、得点毎に景品が選べるようなルールらしい。ツバサが可愛いと言ったマスコットは、三番目に高い得点の中に含まれている。そしてこれは偶然だろうが、熊のカラーはブラウン、エメラルド、ホワイトの三色が揃っている。三人の髪と似たような色だった。
「私、欲しいなぁ……」
「ツバサちゃん、挑戦する? じゃあ、一緒にやろ! 行こ行こー!」
「ふえぇ!? わ、私は……!」
「あーもう。強引だなぁ、ステラは」
「リーちゃんもやるんだよ? 三人でくまさんゲットだー!」
「得意じゃないのにー……まあ、いいけどね~」
ステラに背中を押される感じでツバサが連行される。それを呆れつつも、ついていくリーフ。
……えっ!? ツバサがやるの? それはちょっと……いや、かなりまずいやつなのでは。遠距離系全般、大の苦手なのに。
しかし、止める隙もなく、ステラが手際よく三人分の料金を支払ったらしく、射的屋の人は三つ銃をツバサ達に手渡していた。こうなってしまうと、断るに断れない。かくなる上は俺がやるしかないが……どういうわけか、銃を持ったツバサはやる気満々で、コルクを銃に装填しているところだった。
「……大丈夫か、ツバサ? なんなら変わるけど」
「うん。……せっかくだから、挑戦してみる……!」
えーと、嫌な予感がするのは俺だけか?



~あとがき~
思ったより屋台巡りするな……?

次回、苦手な遠距離系に挑戦するツバサちゃん! 一体どうなる!
部活見学のときに出てきた話を今ここで出します。覚えている方はいらっしゃるのか……(汗)

アラシ君がレオン君を見捨ててますが、別にアラシ君が冷たいからとか、レオン君が嫌いとかではないです。単純に空腹アリアちゃんに関わるのが嫌なだけですね……(笑)
こういうときのアリアちゃんは、レオン君に任せるのが基本なんだと思います。なんかそんな風に習いました。まあ、アラシ君がレオン君に助け船を出さないのは、日頃の仕返しの意味合いもなくはなさそうですけど。……どっちにしろ、レオン君が大変な思いをするのは変わりません。ドンマイ、レオン君。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第59話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわやわやする物語です。本編とは一切関係ありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
今回はあれだ。せっかくのお祭りなので、その風景をね。お見せします。いや、お祭りじゃないんだけど、お祭り騒ぎだから、お祭りなんだよ……
アラシ「つまり何が言いたいんだ?」
ステラ「わいわいした何かをお見せしますって感じですかね?」
アラシ「あー……え? そんな感じ?」
ステラ「多分?」
今回はアラシ君視点です。ステラとも迷いましたが、保護者視点で書きやすいかなっていうだけ。
アラシ「保護者!?」


《A side》
今日は待ちに待った剣技大会……なんて言うと、楽しみで仕方ないと思われるかもしれない。が、俺的には、楽しみ半分、面倒になりそうだなってのが半分。
剣技大会は高等部の生徒だけで行われる行事の一つで、中等部の頃から憧れがなかったわけではない。自分よりも強い人に会えるかもしれないし、先輩と剣を交える─メイン武器が剣ではない人もいるけれど─のは、早々ない機会でもある。それもあって、高等部に進学して、参加してやろうと決めてあった。ちょっとした期待で、ラルとかあの生徒会三人組とも出来るのかなーとかも考えていた。……まあ、実際のところ、三人とも出る気全くないみたいで、エントリーもしてないって言っていたから、そこは残念なところではある。しかし、ラル達以外にも強い人達はいるから、そこは楽しみしている点ではある。
面倒だなって思っている理由として大きなものは一つ。幼い頃からの知り合いのアリアだ。普段、こういう行事には興味無さそうにしているのだが、今回に限ってはそうも言ってられないのだ。本人に参加意思を聞いたわけではないから、憶測に過ぎないけれど、恐らく……いやもう、これは絶対に参加してくる。なんせ、賞品の一つの学食タダ券なんて言葉を耳にすれば、大食いという言葉では収まらないあいつの胃袋センサーが反応するに決まっている。昔から、そういうところは悪いところだと思う。本当に。
できれば、アリアとは戦いたくない。昔のよしみだからとかではなく。そんな優しい理由ではなく、心の底からお願いします……
「……はぁ」
「アラシー! ごめんね! 待った?」
この先に待ち受けている面倒事を考えてしまい、思わず溜め息を漏らしていると、待ち合わせ相手がぱたぱたと駆け寄ってきた。生徒会の仕事で遅れてきたものの、いつもの制服姿のツバサだ。
「待ってないよ。お前は仕事だろ?」
「うん。事前に打ち合わせするって言うから。来なくてもいいって言われたけど、ラルさんとお話ししたくて♪」
ラル好きにも拍車かかってきたなぁ……これ、ラルが卒業するなんてなったら、どうなることやら。ま、まだまだ先の話だけどさ。
「……って、行かなくてもよかったのか?」
「最終ミーティングは大会開始直前に全員集めて、軽くお話しするんだって。それだけに出てくれればいいよーって言ってくれてたんだけどね。でも、それじゃあ、お話の時間ないから」
なるほど……?
ラル的にはツバサに屋台なりを大会前に楽しめるようにって配慮だったんだろうが、ツバサには必要なかったらしい。一応、その事前打ち合わせ後でも間に合うだろうっていうツバサの考えなんだろうけれど。
「……で? そのラル達は?」
「ん~……なんか、まだやらなきゃいけないことがあるって、ティールさんとフォースさんと残るんだって。お手伝いしましょうかって聞いたけど、流石に追い出されちゃった。『アラシ君達が待ってるよ!』って、ラルさんが」
大会に選手として参加しなくても、生徒会として大忙しだな、あの人達は。
「早くステラちゃんとリーフちゃんとの集合場所に行こ!」
あーはいはい……
大会が始まる数日前、ついこの間、仲良くなったステラとリーフと屋台巡りの約束をしていたらしい。俺はその場にいなかったものの、「行ってもいいでしょ……?」と上目遣いでお願いされれば、駄目ですなんて、とてもじゃないが言えなかった。ぶっちゃけ、試合が始まる前なら暇だから、断る理由なんてないんだけれど。
学園内だし、ツバサ達だけでもいいような気もするが、一般人もいるし、何があるか分からない。それに女の子三人だけだと不安ではあった。あと、ツバサのお財布係のためにもついていけと……後者が本日の主なお仕事である。
待ち合わせ場所である正門近くにある噴水広場まで行くと、そこには俺達と同じように待ち合わせをしている人達で賑わっていた。そんな中でも、ツバサは二人を見つけたようで、ぴょこっと耳が動いた。
「ステラちゃーん! リーフちゃーん!!」
「あ、こら。走るなって」
俺の注意なんて全く聞かずに、ステラ達のところまで駆け足で向かう。仕方なく、俺もその後ろをついていく。
「おはよう、二人とも! ごめんね? 待たせちゃったよね」
「おはよ、ツバサちゃん。全然待ってないから気にしなくていいよ♪」
「そうそう。こっちは二人でのんびり待つだけだからね。……おはようございます、アラシさん!」
「おう。おはよ、ステラ、リーフ」
ステラもリーフも中等部の制服姿だ。ふわっとしたブラウンの髪を揺らすステラと黄緑色の髪を赤いリボンでまとめているリーフは、楽しそうにツバサと話していた。
「見て見て! こんなにたくさんお店あるんだって! 毎年、ほんとすごいんだよ?」
「ほわ~♪ ほんとだ! どこ行こっか?」
「甘いものは外せないよね! ツバサは何食べたい?」
「んーとね……」
……うん。散財しないように見張ろう。
「そいや、ステラ達はお金あるのか?」
「はい。すーくんからお願いしていつもより多めにもらえました。『お前らの今月の小遣いとして渡すから、使いすぎても知らん』って言われてますけどね。まあ、最悪、呼び出しますよ」
ちらっと見えたその笑顔の意味は考えない方がよさそうだな。見なかったことにしよう。
すーくんってのは、フォースのことで、ステラとリーフはフォースと一緒に住んでいるらしい。ツバサからの又聞きだけど、三人で家計をやりくりしてるってなると、フォースの財力というか、やりくりどうしているのか聞きたくなる。少なくとも、ステラにもリーフにも親はいるだろうから、二人の学費はともかくとして……フォース自身はいまいち、分からない。確実に俺達よりは年上だろうが、ラルやティールよりも年上な気がする。
「フォースて、不思議だよな」
「え? すーくんはすーくんですよ?」
「いや、そういうことじゃ……いや、いいや。機会あれば本人に聞くわ……」
のらりくらりとやり過ごしそうだが、そのときはそのときだ。
「フォースさんで思い出した。ステラちゃん、歩きながらでいいんだけど、制御者ってなあに? ずっと聞きたかったんだけど、タイミング逃してて」
リーフとツバサで行きたいところをピックアップしたんだろう。そちらへと向かいつつ、ステラに質問をした。制御者って言葉は初めて聞いたが、ツバサは何度か聞いたフレーズらしい。ステラは少しだけ考える素振りを見せつつ、にこっと笑って答えた。
「制御者は継承者を守る人のことだよ。継承者は私。ちょっとした能力を持ってるんだけど、それを完璧に使えるようになるまで、私を守る……ボディーガード? 執事みたいな人? あ、執事ではないか。かしこまりました~なんて言わないもん。命令は基本無視だもん! でも、あれだけは逆らえないや」
継承者は能力者で、制御者はその能力者を守る人? いや、守る必要があるってどういうこと。
ちょっと専門用語みたいなもんが出てきたけど、ステラは構わず話を続けた。
「私の呼び掛けには必ず応じるよ。来てって言えば来る。……ほら、この前、資料を持っていったときにも見せたやつ」
「あ、あれはたまたま聞こえただけじゃなかったの?」
「それもありそうだけど、ここで呼んでも来てくれるよ。まあ、今やれば睨まれるし、文句言われるからやらないけど。……機会があれば見せてあげるね」
そんな魔法みたいなこと、あり得んのかな。ステラは魔法使わないって聞いてたけど。
「私の説明よりもすーくんから聞いた方がいいと思うよ? 機嫌のいいすーくんに聞いてみて」
機嫌よくないと駄目なのか?
「駄目じゃないですけど、適当なことしか言わないので。それ以前に九割、めんどくさいからやだって断ります」
あ、なるほどね。
「要するに、すーくんは普通の人じゃないってこと。私と一心同体の……なんだろ。制御者っていう役を与えられた人……? なのかな」
普通じゃないらしいってのは理解したわ。ピンとは来てねぇけど。
質問者のツバサはしきりに首を傾げていたものの、結局、どう納得したのかパッと顔を明るくさせる。
「あんずあめ屋さん見つけた~!」
……お目当ての店見つけただけかよ!?



~あとがき~
ツバサちゃんが前に制御者とはってなっていたので、出したけど、一言とか難しい。
いつか……やる。かも、しれない……?

次回、続けて屋台巡りします。

ほわほわしてるステラとツバサちゃんに前向きで明るいリーフ……そして、その三人の保護者をするアラシ君。少し面白いので、頑張って書いていきます。多分、試合前の癒し……(書く側の最後の晩餐的なそれ)
別に最後じゃねぇけどな!? バトル挟まるのを分かってたらこう、だらっとした日常が楽しいじゃない!?←

別案として、ステラがフォースを呼び出すってのがあったんですけど、流石に話が違う方向へと行くので止めました。一応、そのパターン書いたんですけどね。消しました。没ってやつです。
いつか、アラシ君やツバサちゃんの前で呼び出すっていうシーンがあればいいけどね。なさそうですね。なくていいんだけども(笑)

ではでは!

空と海 第224話

~前回のあらすじ~
面白くなってきた。
ピカ「適当か! 前回は結婚制度の話をしたって言え! ちゃんと!」
ポチャ「……」
あ、ポチャだ! なんだか久しぶりな感じがするね! やっほっほーい!
ポチャ「なんでこんなにテンション高いの、作者」
ピカ「さあねぇ~」
こういう日常的な話って言うの? 書いてて楽しいわけよ。バトルなんて書きたくない。文章思いつかないんだもん!
では、始めますよ!


あ、あの……? え?
戸惑うぼくには気にもせず、ピカは前に向き直しつつ、話を続けた。
「住む方に従うつっても、ポチャは王族だから、試練はするでしょ? んでもって、王宮に届けられるわけでしょ? でも、同じデータが重複しちゃうわけで、ややこしいよなぁって。まあ、そういうのを集計するコンピュータがあって、そんなの気にしないって言うなら話は別だけど、そんなの出来るのは陸だけだしさー……あ、でも、中央の島で全部集まるならいいのか……?」
ぼくの驚きは無視されて、ピカのマシンガントークは終わらない。けれど、ピカの結婚疑問はどうでもよくなるくらいに、衝撃は大きかった。
ぼくが、陸か空の国の女の子と結婚したらって話……? 飛躍しすぎだよね!? ピカの頭の中でどうなってその疑問になったの!? というか、あの、待って……それって……それって!! 遠回しに、あれ、えっと……えっとぉぉ!?
「根本的なところから言えば、王族の人って、他の国の子と結婚なんて出来るのかってのも疑問なんだけどね? 身分違い恋とか、物語じゃあるあるだけど、実際のところ……って、ポチャ?」
ぼくがどんな顔をしていたのかは分からないけど、大方予想は出来る。きっと、顔を真っ赤にして見るに耐えない顔になっているんだ。そんなことを気にしていられる心理状況にないけどね!!
「おーい……? どしたん?」
ぼくの目の前でふりふりっと手を振って、反応を確かめているらしい。見えてるし、反応してあげたいんだけど、やっぱりそれどころではない。
お、落ち着け……ピカのことだ。こういうときのピカは何も考えてないんだから……単純に疑問に思っただけなんだ。きっとそうだ。変に勘違いするな。勘違いすると、恥ずかしいやつだ……落ち着け落ち着け……
「……ふぅー」
「え、何? 急に深呼吸なんてしちゃって」
「ううん。なんでもないよ……んと、ピカの話なんだけどさ。多分、今までに事例がないから、ぼくからはなんとも言えない、かな」
平静を保って、いつも通りに答えればいいんだから。大丈夫大丈夫……出来てる、よね?
「事例ないの? 一つや二つはありそうだけど」
「まあ、海の国に住んでて、わざわざ住みにくい陸の国に行く理由がないからさ。出会いもないわけだよ」
「あ、なるほど。確かにそうだわ。陸に住んでる人達は海の国に移り住むことなんて滅多にないもんね。その逆も然り、か」
ふむふむ、とようやく納得がいく答えに辿り着いたようで、すっきりしたみたいだ。よかった。ぼくの態度に関しても突っ込みもないから、大丈夫だったってことだよね。
「でも、仮にそんなことがあったとして、試練はやると思う。仕来たりだから、やめることはないだろうし」
「ふーん……住む世界が違うと色々大変だなぁ」
そ、そうだね……
あぁ、こういうことは考えたことなかったけど、大変なんだな。ピカとぼくが結婚なんてことになったとしても、色々……って、何考えてるんだ!?
「ど、どうした、ポチャ? 挙動不審で怖いんだけど。隣歩きたくないレベル」
「いえ、なんでもないです……」
ピカの目にぼくはどう映っていたのかわからないけれど、とりあえず挙動不審になっていたらしい。
「……そう? まあ、いいけどね。さて。もうちょい歩いたら、そろそろ帰ろうか」
「ん。満足したの?」
「うん。したした♪ ポチャとデート出来て私は満足だよぉ~♪」
ピカはにっと笑うと前を向いた。満足したのなら、よかったけれど、振り回される身にもなってほしいよ。ま、楽しいけどね……ん?
「デート出来てって…………えっ? デートだったの? えっ!?」
「お祭りは二人で回れなかったからね。その代わりだったんだよ。というか、私達、付き合ってるんだし、十分雰囲気あったと思うけど?」
え、いや、雰囲気はあった……けど、え?
「こういう場面は探検隊のチームだとか親友としてじゃなくて、ティールの彼女として、私のことを見てよね~♪」
……えっ!?
困惑ばかりしているぼくを見て、ピカは楽しそうに笑った。なんだか、手のひらで遊ばれている気分。
「帰ろっか、ポチャ」
君って人は、ほんと、本性を見せてくれない。
君は、ぼくにどうしてほしいのさ。ねぇ、ラル?



~あとがき~
はい。ポチャはいつも通りの日常として過ごしていたみたいですけど、ピカはデートしてたみたいです。認識が違ってる二人でした。

次回、ポチャとフォースの男同士で話すだけです。……多分ね!
ポチャとフォースって言ってるけど、もうちょっとだけ、ピカとポチャの話は続くよ!

今回短いんですけど、許してくださいな。きりがよかったんです!
後半、どうしめようか悩んでたんですけど、そういえば、ポチャはデートだって意識してなかったなと思い、そこを突っ込ませてもらいました。ピカの質問に戸惑いは見せてたけどね!
ほんま進展しない二人ですね(笑)

ではでは!