satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第215話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で色々する物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
ツバサちゃんのピンチに颯爽と駆けつけるは、イケメン騎士様(ぷっつん状態)でした。
アラシ「もっと言い方あるだろ!」
何を仰いますか。これ以上ない褒め言葉だぞ。
アラシ「……褒め言葉!?」


《L side》
言いたいことだけ捲し立てると、アラシ君は突きつけていた剣で、犯人を斬らないように吹き飛ばした。犯人は犯人で最後の力を振り絞って~……的なやつだったらしく、そこまで強く飛ばされたわけではないが、がくっと項垂れる。
そして、どこからともなく騎士さん達が路地裏に入り、犯人達を拘束していく。
「……アラシ君がここで出てくるとは思わなかったなぁ」
が、姫のピンチには必ず駆けつける王子様と言ったところだろうか。おとぎ話によくあるかっこいい登場だな。
『またマスターがくだらんことを考えておるの』
「うっせ。別に、意外な人物登場で呆けている訳じゃないんだからね!」
「あうん……?」
駆け込んできた騎士達と一緒に帰ってきたのか、リランが私の足元で首を傾げている。どこか若干呆れたように見えるのは、私の気のせいだと信じたい。
……にしても、だ。朝からルーメンさんの相手をしたり、お昼にティールと模擬戦したり、かと思えば、路地裏で犯罪者とどんぱちしたり……なかなか刺激的な一日である。ついでに言えば、色んな意味で疲れた。
ひっそりと壁際に移動し、体重を預けるようにもたれ掛かる。
一時的とはいえ、護衛対象から目を離したり、危険に晒したりと普段の私とは思えないようなミスばっかしているような。浮かれていたのか、過信していたのか。……なんかもう、自己嫌悪に陥りそうだ。否、すでに飲まれている気もする。
「……はぁ」
私が一人で黙々と考え事をしている頃。アラシ君は何やらギルド方面に向かってハンドサインを送っていたが、それも数秒で終わる。そして、マントから出てきたツバサちゃんと向き合った。彼の表情は、お世辞にも普段のアラシ君とは言えないくらいに怒っているようで。
「こんの……アホたれ!」
「あう」
「何、一人でこんなことしてんだよ! 無事だったからよかったものの……一歩間違えば大怪我だっただろうが!」
「う……ごめんなさい」
わぁお。いつぞやの私とティールを見ているようだ。いつぞやのというか、いつものというか……なんだろう。私が言われているわけではないのだが、どこか心にくるものがある。
「ラルもツバサが迷惑かけて悪かったな。捜索に加わってくれて助かった……と、どうした? まさか、怪我したのか……!?」
こちらを振り返ったアラシ君が隅っこでうずくまる私を見て、ぎょっとしていた。
いえ、違います。君の言葉の刃が飛び火してただけです。何でもないです。あんな雑魚共に怪我なんて負わされてませんです。
……とは、言えないので。
「日頃の自分について考えてたら、ちょっとね……しんどくなったと言いますか」
「……は?」
「とにかく、怪我はしてないので、心配無用です。はい」
「おう? な、なんで敬語?」
このあとを考えると、自然と敬語も出てくるというやつです。はい。
私の言い分にあまり納得はしていないみたいだが、深く聞くつもりもないらしい。小さく首を傾げる程度である。
「そんなことより、ごめんね。ツバサちゃんから目を離して。神子様に近づく不届きものの話は聞いていたはずなのに、気が緩んでた」
「え? いや、ラルが謝ることじゃねぇよ。今回はどっちかってぇと、ツバサが勝手に突っ走っただけだ」
それでも、私の監督不行き届きが原因なのだけれど……これはどこかで折れないと永遠に続くやつだ。この辺でやめておこう。
「それとは別で、アラシ君。さっきの登場はかっこよかったよ。姫様のピンチに駆けつけるナイト様、イケメンでしたよ」
「なっ!? 急に何言い出してんだ、お前ぇぇ!!」
素直な感想を述べたつもりなのだが、アラシ君は思い切り顔を赤くして、照れまくっている。
どうやら、どんな見た目でもアラシ君はアラシ君のようだ。初だねぇ。

路地裏から脱出した後、あれこれ現場検証やら事情聴取やら……色んなことがあったけれども、格別何かあったわけではない。ここで詳しく言う必要もないだろう。
私は近くにあったベンチに腰掛け、ぼんやりと今回の事件の行く末……もとい、後始末を眺めていた。ティールとしーくんには無線で連絡済みで、粗方落ち着いたら戻ると言ってある。ここで少し休憩したところでバチは当たらない。
そんなことより、無線越しにティールが何かを察したのか、こっち戻ってきたら覚えてろ的な宣言していたのはなぜだろう。私、何にもしてないのに。危ないこともしてないはずなのに。え、何もしてないよね? 脳内に過りはしたけど、踏み留まったよね?
「勘づかれたとして、どれだろう」
『さあ? パートナーは時折、こちらも驚くほどの観察眼を見せるからの~』
本当に。それをいつも発揮できればいいのに。惜しいやつ。
「悪いな、疲れてんのに最後まで付き合わせちまって」
「ん? あぁ、アラシ君か。大丈夫だよ。ごたごたには慣れっこだからねぇ……それより、誘拐された子達の保護は済んだ?」
後処理とやらが終わったのか、騎士様姿のアラシ君が近付いて話しかけてきた。彼の傍にツバサちゃんとリランの姿はない。ルナちゃんのところにでも行っているのかもしれない。私もアラシ君もツバサちゃんから目を離してるけど、まあ、たくさんの騎士がうろうろしているし、問題ないはずだ。それに、アラシ君もそんな判断を下したからこそ、私のところへ来たのだろうし。
「おう。ルナを含めて、全員の無事が確認されたよ。皆、親御さんとこ帰れたみたいだしな」
私の質問に素直に答えるアラシ君。
彼の返答を聞く限り、今回の連続誘拐事件は一件落着と見ていいだろう。人質というか、誘拐された子達が皆、無事だったのが何よりだ。
「……そいやぁさ」
「ん? なんだ?」
あれこれ今回のことを考えていたら、ふと、思い出した。
「アラシ君が介入してきたとき、どこからか銃声が聞こえてきたけど……あれはアラシ君……じゃないよね?」
「あぁ、俺じゃない。あれは」
「アラシ」
アラシ君の言葉を遮るように、彼の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。この静かで落ち着いた声に私は聞き覚えがある。
「よう、アリア。さっきは援護ありがとうな」
そう。アリアちゃん。私と同じクラスの人魚族の女の子。学校でよく見るジャージ姿ではなく、動きやすそうな忍者服……みたいな感じのやつだ。みたいなと言ったのは、それっぽいだけだから。
ぽんっと突然現れたアリアちゃんの背には銃を背負っており、それだけで仕事だったのかなって感じさせる。
目を白黒させる私のことはお構い無しで、アラシ君とアリアちゃんは話を進めていく。
「……あった?」
「あったよ。これがお前の探してたやつな。犯人の一人が大事そうに抱えてたらしい」
と、パッと見どこにでもあるような本をアリアちゃんに手渡す。差し出された本をアリアちゃんは受け取ると、小さく頷いた。
「うん……ありがとう」
犯人の一人が大切そうに持っていたとなれば、曰く付きの何かなのだろう。恐らく、それの回収がアリアちゃんの仕事……なんだろうか?
いや、待て。その前にだ。アリアちゃんの背負っている銃……そして、突然聞こえてきた銃声。撃ったのがアラシ君ではないとするなら……
「さっきの質問の答え……もしかして」
「悪い。質問の途中だったな。……答えとしては、アリアが遠距離狙撃してくれたってのが答えだよ」
遠距離……ね。
そういえば、さっき、アラシ君はギルド方面にハンドサインを送っていた。まさかとは思うが、ギルドからここを撃ったわけではない……よね? 流石にそれは……うん、どうなんだろう。
うちにもそれくらいの狙撃をひょいっとやってしまいそうな人がいるし、不可能だとは思わない。それに、剣技大会でアリアちゃんの戦闘能力は目にしている。あと、お仕事も知ってるわけで。
それを総合すると、アリアちゃんは凄腕スナイパーさんってことになる。千メートル級の狙撃を難なくこなしてしまうくらいの。
「……? 何?」
私がじっと見つめていたからだろう。アリアちゃんが不思議そうに首を傾げていた。
彼女に言いたいことはあるけれど、言ったところで反応は目に見えている。となれば、私のとる行動は一つしかない。
「なんでもない」
と、微笑むだけである。



~あとがき~
なんか雑になってますね。なんやろ。まとめられてない感凄いな!?
いつか手直しするかもしんねぇぜ……(笑)

次回、誘拐事件まとめてく。二日目も終わりですな!
本来は単なるお買い物とか観光すっぞが目的だったんですけどね。まあ、しゃーない。

プロットだと、ラルちゃんもっとフランクでいたずらっ子的なポジにいたんですけど、彼女視点にするとそれが綺麗さっぱりなくなるからよくないですね。多分、アラシ君視点にすると、いつものうざったいラルちゃんがいるんですけどねぇ……(笑)
まあ、これもラル視点なのがよくない。彼女の考えが丸見えだもの。おふざけモードが素じゃないので、こうなるんだよな!

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第214話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でどんぱちしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
ツバサちゃんが倒したと思われた敵さん(数人)が起床しました。戦闘準備ー!
ってところで終わりました。戦闘準備というか、一人倒したので、戦闘開始かな?
まあ、そんな戦闘の続きっすね~


《L side》
初め、そこに転がっていたのは五人。そのうちの三人が起き上がり、一人はまだ気絶している……或いは、勝てないと分かっていて、狸寝入りしているか。そして、再度気絶&麻痺にさせたのが一人。
とりあえず、起きてきた三人を対処しようか。
一人は銃を所持しているようだが、それを構える様子はないため、残弾が心許ないのかもしれない。
そして、残りの二人は大した武器はない。安っぽい短剣を構える人と、未装備の人。
唯一の武器らしい武器を構えた短剣使いが短剣を両手で握り、私を刺し殺そうと全力で突進してくる。そんな自暴自棄な攻撃にため息が出そうだ。
これが何かの囮で、私が避けたところを後ろの仲間が銃を撃つという作戦であることを祈るばかりだ。……仮にそうだとしても、意味はないが。
「悪く思わないでね」
一応、体を少しずらし、敵の攻撃の射程外にしたところで、素早く雷姫を突き出した。攻撃範囲は刀を扱う私の方が広いし、相手は一直線に走っていた。となると、起きることは一つ。
「くっ……!」
突っ込んできた敵の脇腹を雷姫が掠める。痛みはほぼなければ、血も少し滲む程度である。当然だ。斬り殺すのが目的ではないのどから、これで十分。
それに、まだ十二の子がそこにいるのだ。年齢制限のかかるようなシーンなんて見せられるはずがない。
「死ねぇ!」
「おっと。ちゃんとした囮でしたか」
よかったよかった。自暴自棄に一人で突っ込んだ訳じゃなかったんだね?
突っ込んできた敵に隠れ、しっかりと銃を構える姿を見つけた。耳を突き刺すような発砲音のあと、敵の間抜けな顔を捉える。至近距離とはいえ、この私に当たったとでも思ったのだろうか。そんなお間抜けな考えだと思ったら、自然と笑えてくる。
「予測可能な弾道でくる弾なんて、斬っちゃばよいのだ。当たらなければよかろうなのだ」
「はあ!? んなデタラメな!」
よくあるよくある。覚えておけ。
「雷姫、さっきのやつの自由を奪え!」
『マスターも甘いの~? まあ、よい。奴の自由、我が奪ってやろう』
先程、刀を掠めたとき、雷姫が操る電流を敵の体内に流し込んでおいた。これで、短剣使いは重度の麻痺状態にできる。高度な治癒を施さない限り、この戦闘中に起き上がるのは不可能。
「な、なんで……っ」
遅れてやってきた強い痺れに、短剣使いはその場で倒れた。指一本すら動かせないくらいのやつをプレゼントしたのだ。こいつは放置で構わないだろう。
「さて。残りの二人はどうする。諦めて投降する? それとも、諦めずに私に挑む? その場合、容赦はしないわ」
この問いを投げかけてみるものの、ここまで往生際の悪さを見せつけてきた方々なのだ。すんなり「降参です」なんて言うはずもなく。
銃使いが再び構えるのを見て、私は一気に走り出した。引き金が引かれる前に、構えられた銃を標的にして雷姫を振り下ろした。
恐ろしいほどになんでも斬れてしまうのが雷姫という刀。単なる鉄の塊である銃を斬れないはずもない。
すぱんっと気持ちいいくらいに一刀両断し、呆然とする犯人二号にお構いなしに蹴りを入れる。二号は防御する暇もなく、呆気なく吹き飛ばされてしまった。
歯応えのないやつめ。
「残りは貴方だけ。……それでも降参しない?」
唯一の退路は私が塞いでしまっているし、頼りの仲間はほぼ全員伸びきっている。流石に降参ですと手をあげてしまった方が利口な場面ではある。それでも、捕まりたくない一心なのだろう。負けの二文字を叫ぶことはなかった。
魔法使いなのか、片手を突き出し何やら詠唱を始める。聞き取れないし、聞こえたところで私の乏しい魔術知識の検索にも引っ掛からないのは目に見えている。
しかし、この状況で逃げようと思ったら、一発逆転の大魔法を炸裂させるか、小技を駆使してすり抜けるかの二択である。そして、今回の場合は後者。
一発逆転の大魔法なんてものがあるのなら、最初からそれを使えばいい。そもそも、そんな大魔法を使えるほどの力が目の前の犯人にあるとは思えない。なぜなら、それほどの力を感じないから。
よって、補助系魔法の騙し絵的手法で逃げようとしているという予測になる。
「……ま、どっちにしろ逃がさないけど」
軽く地面を蹴って、未だに詠唱中の犯人三号のお腹めがけて雷姫を叩き込んだ。もちろん、刃の部分ではない方を向けて。
雷姫の能力を使うことも考えなくはなかったが、流石にこんな雑魚戦で連発するものでもない。能力を使わないにしても、こんなところを血の海にしたくはない。後ろには可憐な天使……もとい、少女がいるのだ。平気かもしれないけれど、一応の配慮はしておかねば。
三号の口から空気だけが抜けていくような音が聞こえたと思ったら、ぐったりとその場に崩れ落ちた。
「ラ、ラルさん……? 今度こそ、終わりました……?」
箱の影からそっと顔を覗かせるツバサちゃん。彼女からの質問に答えることなく、私は少しだけ俯きつつ考える。
立ち向かってきた三名は戦闘不能にしたと言ってもいい。が、最初から動かなかった二人はどうなのだろう?
じっと見つめてみても、動きはしない。見てはないが、ツバサちゃんの攻撃でやられてしまった……のだろうか? いや、決め打ちするのはよくないか。
「念のため、拘束した方がいいか……」
「じゃあ、私が拘束しますね!」
「あぁ……うん。……うん!?」
生返事で思わず頷いてしまい、慌てて顔を上げると、すでにツバサちゃんが犯人達に近づいているところだった。
やべ。つい、ティールと一緒にいるときみたいな返事してちゃった。
「待って待って! 今のなしでお願いします! 私がやるから、ツバサちゃん戻って……?」
……今、動いた?
ずっと気絶していたはずの二人の指が微かに動いた気がした。私からは距離があって、確信はないが……もしそれが本当なら。
「ほえ……?」
私の呼び掛けにツバサちゃんがこちらを振り向いた瞬間。
「この……クソガキがぁぁぁ!!」
「っらあぁぁぁぁ!!!」
一人は拳銃、もう一人はその辺に転がっていたと思われる鉄パイプを手に、目の前にいるツバサちゃんに襲いかかってきた。
私が雷姫を握って、どこから銃声が聞こえ、犯人の叫び声が聞こえて──視界の端に炎が走るのが見えたのは、全て同時だった。
また、雷姫から『もう、マスターの出番はなさそうじゃの』と、つまらなそうに呟く。その呟きに私は自然と体の力が抜けていった。出番がないと雷姫が言うなら、多分、そうなのだろう。
……さて、色んなことが一度に起きたが、結論だけ言えば、ツバサちゃんは無事だった。
どこからか聞こえてきた銃声が犯人(拳銃持ち)の手を撃ち抜き、銃が発泡されることはなかった。そして、鉄パイプを振りかぶろうとしていた犯人も、突然、目の前に現れた赤髪の騎士に剣の切っ先を向けられて固まっている。襲われたツバサちゃんは、白を貴重とした制服に赤いマントを身に付けた赤髪の騎士団員に守られていた。どうやら、ツバサちゃんは彼のマントに隠されるように覆われているらしかった。ぶっちゃけ、私からは後ろ姿しか見えていないから、どうなっているのか分からないけれど。
「……禁術使用に、それに伴う幼児誘拐……更には、ここの土地を治めるルーメン様の令孫であり、現神子であるツバサ様の襲撃……か」
聞き覚えのある声。髪型が普段と違うから、すぐには分からなかったが……この騎士様、もしかして。
「随分と、この街で好き勝手やってくれたもんだなぁ……特に今は、祭りの準備でくそ忙しいってのに。……そんな中、ツバサを襲うとは良い度胸してるじゃねぇか。あぁ!?」
「アラシ!」
「……アラシ君!?」
最初は冷静に喋っていたのだが、途中から完全に素に戻っている。華麗にお姫様を助けに来た騎士様だったのになぁ。


~あとがき~
なんか、アラシ君のかっこいい登場シーンをさらっとし過ぎた感が……

次回、誘拐事件まとめ回。
一回で収まればいいけど、きっと無理です。

言いたいことはないです。はい。
ないけど、これだけ。
描写しませんでしたが、ばーんってなった敵さんのお手々はまっかっかだと思います。はい。描写しませんでしたが。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第213話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界な物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、いなくなったツバサちゃんとルナちゃんを捜すため、ラルとリランが街中を捜しに出ていきました。
さあ! 私の苦手なあれが待ってるぞ! 大丈夫なのか、私!!


《L side》
しーくんの案内にあった通りの道順で辿り着いたのは路地裏。もう一歩、前に出れば、その路地を覗ける。しかし、今のところ何も気配は感じなかった。やはり、何らかの妨害があるのだろう。
私は雷姫を帯刀させ、いつでも抜刀できるようにしておく。何があっても、反撃できるように。
「……リラン」
静かにという意図を汲み取ってくれたワンコは、じっと私を見つめていた。その瞳からは真剣な思いが伝わってくる。
私は小さく息を吐いて、そのまま路地裏へと突っ込む。
「……っ!? ツバサちゃん!」
勢いよく飛び出した私の目に飛び込んできたのは、白い狐族の女の子。私の声に振り向いた彼女は大層、驚いたご様子で、持っていた小さな石を地面に落とし、足で踏み壊していた。
「ほえ!? ラルさん!」
次に目に入ったのは、奥に倒れる犯人らしき人物達だ。私からはツバサちゃんが手前に立っていることや、距離があって分かりにくいが、恐らく気絶しているのだろうと判断した。五人ほどいる犯人達は全員、ぐったりと動く気配がないからだ。
『あ、ラル! もやもやきえたー! ツバサお姉ちゃんとルナちゃんのはんのーもでてきたよ! ラル、いっしょにいるの?』
という、しーくんからの連絡で、今、ツバサちゃんが壊した石こそがしーくんの探知を阻害していた道具だったのだと悟る。
壊れた今、しーくんの探知の精度が元に戻ったということ。ルナちゃんの反応を捉えたのなら、ここにいるわけで。
「……ツバサちゃん、ルナちゃんは?」
「はわ。ラルおねぇちゃん!」
名前が聞こえたからだろうか。すぐ側に積まれていた木箱からルナちゃんが顔を出した。
ツバサちゃんもルナちゃんも、怪我はなさそうだ。……状況を整理しよう。
倒れる犯人。無傷のツバサちゃんと隠れていたルナちゃん。……そして、先程壊された石。
「……ツバサちゃんが倒したってことなんだろうけど。全く」
なんて無茶苦茶な。
いやまあ、私が言えた義理ではないのだろうけれども。
「わふ!」
「あぁ、リラン。ルナちゃんを頼んでもいいかな。ツバサちゃんは私が連れ出すから」
いつの間にか私の隣にちょこんと座るリランに、そうお願いすると、ルナちゃんの隠れる木箱の近くに近寄る。
「あんっ! あんあんっ!」
「あ! リランだ!」
「リランまで……どうしてここが? 誘拐犯さんが持っていた認識阻害の魔法具で、ここは見つかりにくくなってたはずなのに」
やはり、先程ツバサちゃんが壊した石らしきものは、認識阻害を起こさせるものだったようだ。私は魔法か何かだと思っていたけれど、道具によるものだったらしい。
リランはルナちゃんをエスコートし、表通りへと連れ出す。私達が捜索していた範囲に騎士がいればいいのだが。……まあ、いなくても、リランがルナちゃんを守るだろう。広場の子供達もリランが守っていたのだし、問題はない。
「あ、あの、ラル……さん?」
何も言わない私を見て、どこかおどおどするツバサちゃん。一応、危ないことをした認識、よくないと自覚はしていると思ってよさそうだ。「無茶やっちゃった」と思ってくれているのなら、まだ利口な方だ。
私くらいになると、無茶を無茶だと思わなくなる。そして、相方に叱られると。……私みたいにはなってほしくはないところである。
「……私とリランが来たのは、ツバサちゃん達を捜すため。ここが分かった理由は、しーくん……雫でも探知できない箇所がここだったから。あの子の探知を掻い潜れるのなら、何らかの人為的な妨害があると思って、私が踏み込んだの」
ま、この踏み込みはいらん気合い入れでしたけれど。
「あう……そうだったんですね」
「怪我なくてよかったけど、犯罪者絡みのごたごたに首突っ込むのは、あまりよくないなぁ~……ツバサちゃん、街の人達に愛されてるんだからさ。悲しませるようなことがあっちゃ駄目だよ?」
あのルーメンさんのお孫さんの力を最大限に発揮し、事件解決に一役買ってはいるのだが。……結果論で言えば、よくやったと褒めてあげたいけど、その過程はよろしくないというやつである。
「ごめんなさい……ルナちゃんが誘拐されたとき、相手の使った魔法の魔力残滓が微量ですが感じたので……すぐに追わないと分かんなくなるって思ったら……」
あ、気持ち分かる……あぁ! 駄目だ。私、お叱りできない。思い当たる節が多すぎる! よし! 他の人に任せよう。私はもうだんまりしよう。この件に関して、何も言わない!
「そっか。でも、もう危険なことはなし、だよ?」
「はいっ」
よしよし。いいお返事だ。
「さて。気絶させたとはいえ、いつ起き上がるとも分からないし、何かで拘束しておかないと……っ!」
ほんの一瞬、ピリッと空気が張り詰めた。原因は考えなくても、経験から察した。気絶したはずの犯人からの敵意を感じたのだ。
私はツバサちゃんの前に出て、雷姫を抜刀する。犯人から背を向けていたツバサちゃんは、私の行動が理解できないようで、不思議そうにしていた。
「ほえ……ラルさん?」
「雷姫! 弾き飛ばせ!」
『承知』
雷姫を横に振って電撃波を飛ばし、敵からの飛び道具を弾き飛ばした。恐らく、投げナイフのような軽い刃物。そして、それは牽制であり、本命ではない。
「っだぁぁぁ!!」
大きな雄叫びをあげ、犯人が振り下ろしてきたのはサバイバルナイフ。スキル的には短剣の一種だと判断していいのかな。
「はわ!? 起きてきちゃった!」
「あっはは! んなので、やられる私じゃないわ。舐めないで!」
犯人の起床に驚くツバサちゃんを横目に、私は雷姫を使って、上から降ってきたナイフの刃を滑らせる。そして、敵と至近距離に迫った瞬間、電撃を放つ。もちろん、麻痺と気絶させるくらいの威力で。
「はい。おやすみなさ~い……なんて、街で刀振り回す私の方が不審者なのでは? これ、正当防衛で許されるかな」
『ふふん♪ 許されるじゃろ。相手は下手人。気遣いなど無用じゃ♪』
一人は気絶させたものの、一人、また一人とよろよろと立ち上がってくる。なんとも往生際の悪い誘拐犯達だこと。こちらが女の子だから、力ずくでなんとかなると思われているのだろうか。そうだとするなら、なんとも腹立たしい。
雷姫の言葉に私はにっこりと微笑む。気遣いは無用。一応、相手の方が攻撃は先である。私の刀に斬られても文句は言えまい。
「ふふ。そうだよね? だって、私、探検隊だし。悪いことしてないし。……ツバサちゃん、私より前に出ないでね。そこの影にいてくれると助かる」
「で、でも、私にもお手伝い……」
「さっき、危険なことはなしって言ったでしょ? そういうのは、探検隊やるとか堂々と戦える立場になってから言うこと! あと、私、一緒に戦った経験のない人とは、絶対に組まない主義なので、無理! ほら、行った!」
「は、はい!」
ついさっきまでルナちゃんが隠れていた箱の影にツバサちゃんが身を隠す。そこにいるのは見られているが、私が近づけさせなければいいだけのこと。問題ない。
さて。お世辞にも広いとは言えない空間。得意とは言えない状況だけれど、一度、ツバサちゃんにやられている。つまり、こちらの方が有利にあるのだ。なんせ、一度はノックアウトしているのだから。
そんなやつらに負ける私ではない。
「探検隊スカイ所属のラルでっす。大人しく投降してくれると嬉しいなって思うんだけど~? なんてね。するわけないか」
よろめきつつも、武器を構えるその姿勢は褒めてあげたい。利口とは言えないが。
「んじゃまあ、さくっと終わらせてあげる」



~あとがき~
ふえ~……戦闘シーン……そこまでなかった。

次回、ラルVS誘拐犯!
まあ、さくっと終わらせます。ラルが終わらせる宣言したし。

ツバサちゃんに無茶しちゃアカン!……というのは、ラルにとって、盛大なブーメランですね。彼女、無茶大好き人間なので。無茶を無茶だと思わない行動しかしないので……(笑)
まあ、これは本人も自覚しているんですがね。してるっていうか、言われて「そうなんだな」って感じなので、してると言えるのかは微妙。

ラルの一人戦闘……は、あれだな。ここに来て、そこそこやってますね?
うちのメインでいうと、一番戦闘シーンあるのでは? 剣技大会から始まり、過去編、VSルーメン戦、VSティール戦……そして、今回の誘拐犯戦。多いな、こいつ。流石、主人公。
まあ、さくっと終わらせる予定なんですけどねー!

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第212話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
街観光が終わったと思ったら、ツバサちゃんもルナちゃんがいなくなりました。大変だ~
ラル「大変さが伝わらない」
あはは。まあ! シナリオ作ってるのは私じゃないんで! 大丈夫大丈夫!
ラル「何が!? 何が大丈夫なの!?」


《L side》
私が一人で考えを巡らせていると、とんとんっと肩を叩かれる。顔を上げると私を足元を指差すティールがいた。
「……ラル、リランが」
「ん?」
ティールに促されるまま下を見ると、何か言いたそうに私を見上げていた。ちょいちょいっと前足を上げている辺り、何か伝えたいのだろうが……
「ん~……何が言いたいんだろう?」
とりあえず、なるべくリランと同じ目線になるためにその場にしゃがみ、リランを撫でる。……こんなことで、言葉が分かってたまるかって話ではあるのだが。
「あんあんっ!」
「私、フォース君じゃないからなぁ。リランの言葉は全く分からん」
何か言いたいのは分かる。しかし、詳細までは分からない。ツバサちゃんの居場所なのか、事件の重要な何かに気がついたのか……はたまた、どうでもいい話なのか。
まあ、この様子を見るに、事件に関係のある話ではあるのだろうけれど。予測できるのはせいぜい、その程度である。
『……仕方ないな。貸し一つだ』
は?
ふわりと私の隣に降り立ったのは、雷姫だ。もちろん、姿は半透明で、実体化はしていない。しかし、リランはそんな雷姫にも気がついた。もしかしたら、雷姫自身がリランにも見えるようにしたのかもしれないけれど。
「わふ! あん! あんあん!」
『ふむ。それは真か? 偽りをマスターに伝えるわけにはいかんのだが』
「わふっ!」
『……そうか。ならば、そのように伝えてやる』
「雷姫、リランはなんて?」
雷姫は少しだけ考える素振りを見せるも、静かに口を開いた。
『あの白狐の娘、ここに残っていた魔力の残骸を追いかけたらしい。その魔力は犯人が残したものらしくてな』
それは、そうだろうなとは思っていたけれど。
『その犯人、禁忌とされる魔法に手を出しているらしいぞ? その可能性に気がついた娘は駆け出したそうだ』
「禁術に分類される魔法……ツバサちゃんだから気がついたのかと見るべきか」
魔法知識の豊富なツバサちゃんだ。もしかしたら、その禁術が何なのかも検討がついているのかもしれない。
『ふふん♪ 愉快だ。まさか、こんな時代に禁術の類いと合間見えるとはな』
「……そりゃ、よかったね」
くつくつと楽しそうに笑う雷姫は置いておき、私は近くにいた騎士さんを呼び止め、雷姫から聞いた話を伝える。もちろん、リランから教えてもらったとか、雷姫が言ってましたなんて言えないから、その辺はぼかしたけれど。
「なっ!? 禁忌の魔法!? おい、誰か団長かアラシ様に連絡しろ!」
「はい!」
禁忌の魔法という単語を出した途端、がらりの現場の空気が変わった。そりゃ、禁じられた魔法を使われたとなれば、街中大騒ぎだ。
「ね、きんきってなあに?」
「……使っちゃいけないってことだよ。禁忌の魔法は人が使うことを許されていない魔法ってことさ」
大きなくくりとしては禁術と呼ばれるものだ。これには技や術も含まれるため、区別するなら禁忌の魔法って言ってしまった方がいいだろう。
さて、話を戻そう。
ツバサちゃんが、どんな魔法を使われたのか知っていたと仮定するならば、一人で対処するしかなかったのかもしれない。だから、リランを置いて、この場から離れた。
「……消息を経ってから、まだ、時間はあまり経ってはいない。まだ、この街にいる?」
騒ぎにもなっていない辺り、例の妨害魔法が展開されていると考えて方がいいか。ふむ……少し、賭けにはなるが、何もしないよりはましか。
「騎士さん、私も……いえ、スカイもツバサ様の捜索、並びに誘拐犯の確保に参加させてください」
「えっ……」
「一時的とはいえ、彼女達から目を離した私にも責任はありますので。それに、我が隊の隊員が狙われていたかもしれないなんて、許せません。手伝わせてください」
「ご協力、感謝します!」
騎士らしい敬礼を決め、騎士さんはどこかへ行ってしまう。禁術が絡んでいると判明し、やることが明確になったからだろうか。
……やりますかね。
「ラル、どうするの?」
「ボクも! ボクもてつだう!」
「あんあんっ!」
騎士さんとの話を終え、私はティール達の元へ戻る。二人と一匹も、状況はなんとなく把握しているようで、気持ちはすでに切り替わっていた。
「もちろん。というか、しーくんにかかってるし♪」
「ほあ……?」
「その前に……雷姫、探知は可能?」
『無理だ。個人を特定できる能力ではないからの。……しかし、小僧ならば、魂の色を言うなれば、人のオーラを視る力を持つ。その力と我の力と合わせれば、可能だったろうな』
ここに来てフォース君のありがたみがひしひしと伝わるようだよ。……いない人のことを羨んでも仕方がない。
「じゃ、やっぱりしーくんしかいないね。……雫、この街全体の把握は可能?」
「うりゅ! マップ、あたまにはいってる! できるよ!」
流石、チーム一のサポーターだ。
「よし。なら、雫は街全体をスキャンして、犯人とツバサちゃん、ルナちゃんの居場所を捜せ。ティールは雫の傍で待機」
「……待って。君一人で街中を捜すの?」
そら、きた。言うと思ったわ。
「無闇に走るつもりはないよ。雫の指示で動くつもりだから」
「でも……」
「騎士団も動いている。私一人だけじゃないよ。……それに、本調子じゃないティールを現場に出すわけには行かない。それこそ、何かあったら危険だ」
水まきもあって、きっと普段よりは過ごしやすい環境だ。とはいえ、街中を走るとなると、暑さに弱いティールはすぐにバテてしまうだろう。そんな状態で戦闘にでもなったら、どうなるのか。それはティール自身がよく分かっているはずなのだ。
「……ごめん。無理言ってるのは、分かってるんだ」
「ううん。……大丈夫、私がその辺の犯罪者に負けるわけないでしょ?」
「そうだね。でも、無茶はしないで」
「……それは保証しかねる」
「そこは頷いてくれよ……仕方ないリーダーだなぁ」
あはは。まあ、私ですから。いつものようにやるだけよ。
「あんっ!」
「頼むね、リラン。ラルが無茶しないように見張っててよ」
なんでやねん。
なぜかやる気満々なリランは、見なかったことにして、私はバッグから小型通信機を三つ取り出し、それぞれに手渡した。
「連絡はこれで。じゃ、ぼちぼちやりますかねぇ……スカイ、出撃!」
「出撃するの、君だけだよ」
「ラル、しゅつげきー!」
……自分から言い出してなんですが、緊張感なんてどこにもないな。

プランとしては、騎士団とは別行動で捜索をする。しーくんの探知が終わるまではそれとなく、近くを捜してみる……だけである。
しかし、人通りの多いところや探検隊や冒険者の多い通りは避けるだろう……という予測で、住宅街が並ぶエリア、南方面を目指して走っていた。
「妨害されているとして、私の目じゃ無理だよなぁ」
というか、私は勝手に犯人側が妨害魔法を展開していると思っていたが、誰も巻き込みたくないという考えから、ツバサちゃんの可能性もあるな。
まあ、どちらにせよ、認識できない場所にあることに代わりはないか。
『スキャン、おわったー!』
「おー……流石。早い」
『うーみゅ……ない。ない……ないよー! ツバサお姉ちゃんもルナちゃんもみつからないー!』
しーくんの探知でも無理か。
『え、雫。いつもこんなスピードでこれ、見てるの……?』
『そだよー!』
私達は基本、しーくんから離れて実働部隊として動いている。そのため、実際、しーくんがどんな感じでサポートしてくれているのか見る機会は少ない。
あっちは和気あいあいとしてない? いや、まあ、しーくんが泣きながらやるよりはましか。
『……みゅ? ぼやってしてるとこがある』
「! どの辺!?」
『んとね~……ラルのいるちてんから、にひゃくめーとるさきのかどまがって……そこからさらに、ひゃくめーとるさきかなー?』
「了解。そこ行ってみる」
しーくんの探知が効かないとなると、その先の情報はないと思った方がいい。犯人の人数も、どんな攻撃をするのかという情報も得られないわけで。
「……雷姫」
『分かっておる』
「くぅん……」
私がしーくん達と連絡を取り合っている間、リランが匂いを辿ろうとしていたのか、地面をしきりに嗅いでいた。
「大丈夫だよ、ツバサちゃんはそのこら辺の魔法使いさんより強いし……あのルーメンさんのお孫様だよ……っ!」
「わふっ!」
風に乗って火薬臭が漂う。音はない。これの原因が銃だとして、サイレンサーでもつけているのだろうか。
しかし、敵は近いようだ。
「……あは。久しぶりに危ない臭いがするわ。さぁ、行こうか、リラン」
「あんあんっ!」



~あとがき~
時々、ふざけたくなる。

次回、ラルとリランは、ツバサとルナを発見できるのだろうか!?

補足したいことはないです!(笑)
なんだろ。禁術なんて読んで字のごとくですからね。モノが出てきてないので、説明もできませんしね~……今後に期待! ということで!

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第211話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でシリアスしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ラルとティールのお買い物風景をお見せしました。もっと続けてもいいけど、話が進まないので! 切り上げましょうね!
ベタベタにラルがナンパされるとか、変なやつに絡まれるとかさせてもよかったけどね。また今度な!
ラル「……は? 今度?」
ティール「作者からの不幸あるよって予告?」
ラル「最低かよ」


《L side》
可愛い雑貨屋に立ち寄ったり、探検に必要な道具屋に行って、物価高いことを痛感したり……有意義な時間を過ごした私とティール。
当初の目的通り、お店にも行けたし、道具もいくつか買えたし、満足である。
「ラル、最後に買ったそれ……何に使うの?」
ツバサちゃん達と別れた水遊び場まで戻る途中、ティールから質問が飛んできた。声の様子から、用途は分かっているけれど、一応確認したいなぁ~……という感じだろう。
「うん。モンスター呼び寄せ。罠用のアイテム~……これで討伐依頼も楽々だぜ☆」
「なんだろう。かなり嫌な予感しかしない。……他にも怪しいもの買ってたよね?」
うっへへ~♪ いやぁ! 使うの楽しみだなぁ!!
「それ、フォースと一緒のときに使ってね? というか、二人のときにやめてね? 一人のときも駄目だけど」
あはは。使いどころについては、未定かな。時の場合によるってやつだ。
ティールに貰った簪と買った品物達は、皆大好き異次元収納機能つきバッグに納められている。部屋に戻ったら、荷物整理しないといけないけれど、今回の買い物は楽しかったな~♪
「……君が楽しそうならよかったよ」
他にも色々突っ込みたかったみたいだが、それらは全て諦めたようだ。ティールは困ったように笑う。
「うんっ! 付き合ってくれてありがとうね。簪も買ってくれて……あ。私からのお礼どうしよう」
「え!? いらないよ! ぼくが好きでやっただけだもん。気にしないで」
……ほう? 言ったな?
「遅くなっちゃうけど、家に帰ったらアップルパイ焼いてあげよっか。他のがいいなら、それでもい─」
「えっ!? アップルパイがいいです! ありがとうございます、ラルさまー!」
お礼はいらないという言葉はなんだったのだろう。アップルパイの一言で覆ったのだけれど……まあ、喜んでいるみたいだし、いっか。

どうでもいいような話をしながら、元の場所まで帰ってきた。帰ってきたのはいいのだが、先程よりも人が多く、人だかりができてしまっている。単に賑わっているだけではなさそうだ。
そして、場の雰囲気もどこかざわついて、不安感を覚えさせる。
……これは私の経験則だが、こういうときは大抵、よくないことが起こっている証拠だ。
「……ラル、街の騎士達がやけに多い気がする。見回り……では、ないだろうね」
だろうな。
まさか、ルーメンさんの治める土地で事件に巻き込まれるなんて思ってもなかった。できるなら、何事もありませんでしたというのが、一番なのだが……
「これ、嫌な予感がするなぁ。とにかく、雫達を探そう」
「君の予感はよく当たるからな……りょうか……い、だけど、必要なさそう。あそこ」
こんな人混みの中でもティールはしーくんの姿を捉えたようで、さっと指差した。
しーくんは一緒に遊んでいたはずの子供達と共に人だかりの中心にいて、そこには騎士達の姿もある。しかし、そこにツバサちゃんとルナちゃんの姿はない。
……嫌な予感ほど、的中してほしくないものはない。
とりあえず、この騒ぎの中心へと近づくと、今度はしーくんの方が私達に気がついたらしく、こちらをぱっと見た。
「パパー! ママー!」
「あんっ!」
「……えっと。なんで、リランが雫と?」
さあ。なんでだろう。……しかし、厄介なことになっているのは確かだ。
子供達の影になっていて見えなかったけれど、しーくんの側には犬姿のリランがいた。
しーくんは私達の姿を見つけると、一目散に駆け寄ってきて、私に抱きつく。ずっと堪えていたのか、大きな涙をぽろぽろと溢し、肩を震わせながら泣いていた。
今の彼に状況を説明しろというのは酷だろう。……今、分かることはツバサちゃんとルナちゃんの不在。その二人に何かあったかもしれない、ということだけ。
「くぅん」
しーくんについてきたリランも心配そうにしていた。心配そうというよりは、どうにかして慰めようとしているようにも見える。
リランはなぜ、ここにいるのだろう。ツバサちゃんの武器……ツバサちゃんを主として慕っているはずのリランが。
「あの……もしかして、『スカイ』のお二人ですか?」
「え……はい。そうですが」
近づいてきた一人の騎士の言葉にティールが頷くと、「こちらで事情をご説明します」と、促してきた。
言われるがまま、私達は人だかりから離れ、騎士達が集まる輪の中へと案内される。恐らく、市民の人に聞かれたくない話なのだろう。例えば、今起こっている事件の詳細……とかね。
「突然の無礼、申し訳ありません。あなた方のことはルーメン様から伺っておりました」
なるほど。だから、この街をホームにしていない私達のことを知っていたのか。どんな内容で騎士さん達に伝わっているのか、気にならないわけではなかったが、今は関係ない話だ。
「あの……何があったのか、お聞きしてもいいですか?」
「もちろんです。今から数十分前にここで遊んでいた子供の一人が姿を消したのです。それに気づいたツバサ様もどこかへ行ってしまわれたようで」
子供の一人、ルナちゃんのことだろう。
消えたのはルナちゃん。ツバサちゃんは自らの意思でここを離れた……ということか。
普通に考えれば、いつの間にかいなくなった少女を探しに行っただけ、だ。
しかし、ツバサちゃんはリランを残し、しーくんや他の子供達すらもここに残している。意味もなく、そんなことをするような子ではない。それに、ルナちゃんがいなくなって数十分経っている。ツバサちゃんも同じくらいここから離れているということ。……そんな状況を『普通に』考えていいはずがない。
「これ、単なる迷子探しですむ話ではないですよね?」
「……それは」
「あのね、ママ」
言い淀む騎士さんの代わりに口を開いたのは、しーくんだった。ゆっくりと顔を上げ、目を真っ赤にさせながらも、はっきり話してくれた。
「ツバサお姉ちゃん、ルナちゃんをたすけにいくって、いなくなったの。……ボク、ついていくっていったけど、ここにいてって。『何かあってもリランが守ってくれるから』っていってた」
助け……?
「つまり、ツバサはルナちゃんを探すというよりは、助けに行ったってこと?」
そうなるね。助けなんて言葉が出てくるのなら、面倒事に違いない。分かっていたが。
「実は……ここ最近、子供達の誘拐事件が数件発生しているのです」
「マジか……あれか? 神子様の力独り占め的なやつの劣化版?」
「ちょ、ラル。言い方!
ティールが慌てて止めに入るものの、すでに口から出た言葉は取り消せない。とはいえ、騎士さんは怒るでもなく、困ったように笑った。
「似たようなものですよ。毎年、祭りの時期になると悪さを企む輩は多くなりますので。例年、ルーメン様や団長のお力があり、大きな被害はありませんでした」
でも、今回は防げてない、と。
「……悔しいですが、その通りです。今回は不可解な点が多く、捜査も難航しているために、被害が出てしまっていて」
騎士さんの言う、不可解な点は大きく四点あるらしい。
突然、子供が消えること。
いなくなった子供は、白色に近い髪色、或いは高い魔力持ちか、能力持ちであること。
消えたことに周りは一切気づけないこと。
微量の魔力の探知はできるものの、詳しい詳細は不明であること。
他にも細々と不明点はあるようだが、要するにこれだけしか判明していない。複数被害があるにも関わらず、だ。
ここまで聞いてふと、そんな事件の詳細を話してしまっていいのだろうかと疑問が浮かぶ。私達は探検隊だ。必要があれば、事件にも首を突っ込むが、今は頼まれたわけでも、依頼されたわけでもない。言うなれば、部外者なのだ。
「今更ですが、そんな話を私達にしてしまってよろしいのですか? 部外者ですよ。一応」
「それはお気になさらず! ルーメン様が信頼している探検隊ですし……それに、何かあれば話してもよいと言われてます」
……信頼を得るようなこと、したっけか。いや、まあ、いい。信頼を得るのは大変なのだ。思い当たらないけれど、日々の努力の結果ということにしておこう。うん!
「それに、あなた方の仲間である雫君にも、被害が及ぶ可能性もありましたから。部外者とは言えません。……今回はツバサ様の精霊のおかげで、被害はなかったようですが」
「わふんっ!」
んーと……リランは何をしたんだろう。めっちゃ誇らしげなんだけど。ドヤ顔してるけど、君の活躍、私は見てないよ?
……こほん。それはさておき。
「連れ去られたルナちゃんの居場所はともかく、ツバサちゃんの行方も分からないんですよね?」
「はい。ツバサ様は何かに気がついて、ここを離れたようなのですが、それが何なのかまでは……我々も街中を探してはいるのですが、目ぼしい成果はないのです」
ふむ。なるほどね。
誰にも気づかれない。ここが効いて、騎士達は成果をあげられないのだ。そこのカラクリを暴かない限りは、手も足も出ないというやつだ。
「万が一、ツバサ様に何かあれば、色々とヤバイからな。……アラシ様がヤバイ」
「そこだよな。アラシ様がキレる前にツバサ様を見つけなければ」
……心中お察しします。
誰にもバレない。そして、微弱の魔力反応。
魔力反応があると言うことは、何らかの魔法が使われている。例えば、私達の認識を阻害するような妨害魔法。そんなのがあるとしたら? この、掴み所のない状況にぴったりだ。まあ、それだけの理由で、ツバサちゃんが後を追いかけるとは思えないが……子供を拐うからくりに何かヒントが?
しかし、この妨害魔法で認識できない場所こそが、敵の居場所になりうるのではないだろうか。つまり、そこがルナちゃんやツバサちゃんの居場所……?
しかし、認識できないからこそ、困っているのだ。そこをどうやって見つければいいのだろう。……何か、手はないのだろうか。



~あとがき~
きゃいきゃい楽しくしてたのに、一気にシリアスに突き落とされました。

次回、誘拐事件にスカイ、首突っ込みます。
いやもう、片足突っ込んでるよね。これ。

序盤は楽しくしてたのに、後半は事件の話になってて温度差で風邪引いてませんか!?
まあ、次回からは最初から最後まで真面目回の予定なのでね。風邪は引かなくて言いと思います。はい。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第210話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界できゃっきゃっしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
はい。観光してます。今回もメンバーは減りましたが、ラルとティールの二人で、続けてやってきます。観光と書いて、デートと読みます。本人達はそんなこと思ってませんがね。


《L side》
何度も言うけれど、観光地としても有名なスプランドゥールでは、その観光客向けのお店もたくさんある。私が入りたいと思う可愛い雑貨屋なんて、そこら辺にごろごろしているわけで。
「なにこれ……!」
「仕掛け細工を施した小物入れです。可愛いでしょう?」
「はい! これ、いいですね!」
ふらりと立ち寄ったお店では、工芸品なんかを扱うのか、どことなく歴史を感じるお店だった。取り扱っている商品も雑貨からアクセサリーまで幅広い。私達の他にも何人かお客さんはいて、若いグループからご年配まで。こちらもなかなかに幅広い。
私が見ていたのは、手品で使うような仕掛けのある小物入れだ。手順通りに、飾りやネジや箱の向きやらを変えないと開けられない、みたいなやつである。一種の宝箱みたいだ。謎を解かないと開けられない。知ってる当人でなければ開けられない……なんだか、ロマンを感じる一品だ。
今時、魔法の魔力パターンで本人確認だとか、科学の力で指紋とか網膜認証とかあるけど、こういうのも面白いと思う。まあ、本人でなくても、手順さえ覚えていれば、誰にでも開けられるのだけれど。
「解除手順が少ないものもございますよ。お値段もその分、リーズナブルになります。……ごゆっくりご覧ください♪」
簡単な案内をしてくれた店員さんは、一通りの紹介をしてくれ、さっと別のところへと行ってしまった。別の仕事があるのか、私がびしっと決めないと悟ったのか。どちらにせよ、私は様々な仕掛け細工の虜になっていた。
「うわぁ……めっちゃいい。めっちゃ欲しい!」
「ラル、語彙力なさすぎじゃない?」
私と店員さんの話を、後ろで黙って聞いていたティールだったのだが、私の表現力の乏しさに呆れたのだろう。ため息混じりに話しかけてきた。
「だって、お前! これの凄さが分からないとか本当に人間か!?」
「人間だよ。……ラルほど、興奮はしてないけど、凄いとは思ってるよ?」
「声に興奮が感じられない!!」
「ラルほどしてないって言ったよね!?」
そうだね。ティールはリンゴに興奮する人種だったな。ごめんね。リンゴ関係ないところに付き合わせて。
「勘違いしないで!? リンゴしか興味ないわけじゃないから!……で? 気に入ったから買うの?」
う……んと。
確かに滅茶苦茶欲しいと思う。思っているのだけれど、学生が観光のお土産として買うには少々……いえ、かなり値の張る代物。リーズナブルですよ、と言われたとて、それもなかなかのお値段。大きな声でいくらです、とは言えないけれど、イネお婆さんのところのアイス、一生食べられるのだろうってくらいのお値段である。
「学生には厳しいよ。この値段は」
「まあ、工芸品だからね~……でも、ここに来た記念品だって思ったら、それくらい出してもよくない?」
それくらい、ねぇ。私には「それくらい」ですまない値段なのだけれど。
「……たまにティールの金銭感覚を疑う」
「え。そ、そう? クラウよりはましだと思うけど」
そのお方は比べたら駄目な人なので。
せっかく、観光地に来たのだから、何か形に残るようなものは欲しい。いやまあ、この地に来た理由は仕事なんだけれども。なんだけれども、夏休みだし? 高校生最後の夏休みだし? 浮かれたっていいじゃんかよ~……という不純な気持ちは大いに存在する。
だからこそ、スプランドゥール観光をしているわけでして。
ぐぬぬ……」
たくさん並べられた仕掛け細工の小物入れ達をじぃっと見ていく。簡単にこれくださいとは言えないけれど、すんなり諦められるほど、私は大人でもないらしい。
「ラルにしては滅茶苦茶に悩むね」
「うっさーい! 安い買い物じゃないもん。そりゃ悩むよ。普通はな!?」
「ふーん。……じゃ、ぼく、あっち見てるから。決まったら教えてね」
好きにしろ!
淡白な相棒は無視して、私はにらめっこを再開。自分のお財布と目の前の喉から手が出るくらい欲しい物と数分間、会議を重ねた。
結論から言えば、財布の紐はきつく閉めとけというどこからか聞こえてきたお告げに従い、今回は諦めた。
きっぱり諦められたかと言えば、そうでもなく、結構、未練がましくではあったのだが。

「なんだ。結局、買わなかったんだね」
何も買わなかった私とは違い、小さな袋を持って出てきたティール。彼がこういうところで、何を買ったのか気になるところではある。しかし、どうせ石がどうのという話になりそうなので、聞くのをやめた。きっと、セイラさんへのお土産とかだろう。この仕事のあとに帰るのだから。
「欲しかったさ。けど、あーゆーの、作れるかもですし……?」
多分、できっこないけど。時間をかければ、できそうではあるが……いや、そもそもの仕組みを知らない。その研究から始めなければ。……待て待て。何年かけるんだ。私は。それなら、買った方が早いわ。
「それはそれで負け惜しみに聞こえる」
「うっさいわ」
「じゃあ、これあげる。君の求める物じゃないけど」
と、手渡してきたのは、先程のお店で買ったであろう小袋だ。
「……これ、セイラさんへのお土産なんじゃ?」
「母上に? ないない。ただでさえ、鉱石コレクションで埋まってるんだよ? 残るようなお土産は持ち込まないって決めてるの」
なるほど。しかし、仮にこれが鉱石でなくとも、愛する息子からの手土産なんて捨てられないだろうな。セイラさんだもん。
「……なんで私に」
「このあとも自分へのお土産、買わなそうだから」
……そ、そんなことは。……うん。ないとは、言い切れないかもしれない。
「あと、いつもお世話になってるお礼みたいなもんだよ。……それに昨日……結構心配、かけちゃったし」
最後の方は言いにくそうに、そして、消えそうなくらい小さな声だった。それでも私の耳にはきちんと届いてきた。
「そんなこと気にしてたの?」
「ラル、あんまり言ってくれないけど、きっと、今までにも、色々考えてくれたんだろうなって。ラルには関係ないはずなのに、自分のことみたいにさ」
言うもんでもないだろう。そんなのは。
「そんなところが、ぼくは嬉しかったんだ。……ありがとう、ラル」
「なっ……! 急に何よ。怖いなぁ」
「あはは♪ それ、気に入らなかったら捨ててもいいよ」
いや、流石に捨てねぇわ。
袋を開いてみると、小さな紙の包みに入ったものが入っていた。大きさは手のひらに乗るくらいで、そこまで大きなものではないから、アクセサリーとか、だろうか。
「ここで開けていい?」
「うん。構わないよ」
包みから出てきたのは簪だった。和風テイストなスプランドゥールっぽいアクセサリーである。
太陽の光に当てられ、きらきらと輝くビーズや花のチャームがとても可愛い。
「そういうの、好きだろ?」
「ん。好き……だけど」
こういうこと、ほいほいやるプレイボーイにはならないでほしいんだが。イメージ的に。
と、言いたかったけれど、言うのをやめた。しかし、顔にそれとなく出ていたのだろう。ティールが少しの呆れ顔を見せる。
「あのねぇ……相手が君だからなんだけど? 変に疑わないでよね」
「おっと……それは、君のこと愛してるからこそ、とっておきのプレゼントなんだぜ☆……的な、キザな男の台詞の前フリかぁ!? どこの王子様だよ!」
「なわけないでしょ! というか、そんな王子様見たことないけど!?」
私も見たことはない。そんなんいても、ウザいだけっしょ。
……あれ? 相手が私だから、というのは、どういう意味なんだろう。ここで、「なんで私にならこんなプレゼントをするって言い切るの?」なんて聞いたところで、「なんでだろうね?」とか言って、楽しそうに笑うだけなのだ。こいつは。
ティールは、女の子にプレゼントをするという行為が、どういう意味合いのあるものなのか、分かっているのか。受け取った女の子がどれほど、それに期待してしまうのか。それらを理解しているんだろうか? 完全に恋愛感情を抱かないと確信があるわけでもあるまいに。
……まあ、分かってないんだろうなぁ。困った王子様だこと。
「ラル?」
「なんでもない。……ありがとう、ティール。これ、大切にするね?」
「……っ! あ、うん!」
なんだ。その間は。
「ご、ごめん。変な意味はないよ! ただ、その……いきなり、あんな風に笑うから、びっくりしただけで」
はあ!? いつも笑わない無表情だと言いたいのか!? 失礼な!! その時代は私の中でとっくに過ぎたわ!
「そうじゃなくて……可愛かったってこと」
……本当に、こいつは。無自覚だろうが、よく言ってくれるじゃないの。
「……ティール、自覚しろ。その辺の男よりもいい男なんだということを自覚してくれ」
「え、あ、ありがとう……?」
そういうことじゃないんですけどぉぉ!? 褒めてねえし!
……あぁ、もう。ここで、一から説明したらどうなるんだろう。この純粋で素直で、真っ直ぐなティールに……私の気持ち全部、言ってしまったら、どうなるんだろうか。私は貴方に恋してます、なんて一言を。今、ここで言ってしまえたら。
なんてね。……できるはずがない。
私は名もなき村人Aで、ティールは一国の王子様。そんな二人が結ばれる……王道かつ、素敵な夢物語が叶うほど、世界は優しくないのだ。
もしかしたら、簡単に壊れて、今の関係が失くなるかもしれない。それなら、私は……
「っていうか、私はいつでも可愛いし!? 笑顔弾ける美少女様なの! 今更、動揺してんじゃねぇ!」
「えぇ!? なんで怒られるんだろ、ぼく。というか、自分で自分を美少女って言うの、虚しくない?」
「事実だもんね! 虚しくなんかないもんね!」
この気持ちは、私だけの秘密にする。ティールにも、教えてあげない。
「ほら、次行くよ。時間は有限! 待ってくれない! どんどん行こうー!」
「ちょ、感情の起伏、激しくない!? あー! 待ってよ、ラルー!」
ティールがいつか、王子様の役目を果たすために、この関係をやめたとしても、私はティールが一番。それだけで、充分なのだから。



~あとがき~
ティールに翻弄されるラル、貴重です。
まあ、ラルはラルでしてますけどね。お互い、自覚はしていません。

次回、ラブコメっぽい雰囲気から一転します。なんか起きます。(適当)

ラルは自分のことになると奥手というか、結構慎重です……あれ、いつもかな?
まあ、なんでしょうね。根底にティールと仲良くいたい、どんな形でもいいから、一緒にいたいという気持ちがあるので、それが壊れるかもしれないことに踏み込みたくないのです。友達や相棒関係でも、仲良くする、一緒にいる、という目的が果たせるので、それ以上は望まないようにしている。そんな感じです。あとは身分高いティールとそれ以上は望めないという謙虚?もありますが。

そいや、ラルの気持ちばかり描写してますが、ティールもラルのことは大切に思ってます。どういう意味で大切にしてるのかは、私から言わないけど(笑)
まあ、ところどころに行動に出ててるので分かるかな。というか、今回の反応とかでも分かるよね。
はよ、結婚すればいいのにね、こいつら←

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第209話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回から本格的に観光スタートしてます。
リンゴなら無限に食べちゃいそうなティールを制御しつつ、まだまだ続きます。スプランドゥール観光。
ラル「スプランドゥール=リンゴの産地ではないと思うのよ。なんかやたらリンゴ出てくるけどさ」
ティール「ぼくがリンゴにしか興味ないみたいな言い方しないでほしいなぁ~」
ラル「そこは間違ってないと思う」
ティール「ぼくをなんだと思ってるの!?」
リンゴ大好き王子かなぁ~?


《L side》
ツバサちゃんの案内で様々な名所……というか、美味しいお菓子の食べられるお店だったり、比較的安く物品が買えるお土産屋さんだったりを教えてもらった。
「とものおみやげ、これでいーね!」
律儀にとものお土産を忘れていなかったしーくんは、ツバサちゃんに教えてもらったお菓子を買えて満足している。もちろん、日持ちするやつなので、今買っても大丈夫なんだけれど、お土産って最終日に買いません?
「いいじゃないか。雫は満足してるみたいだし」
「そうだけど……ま、部屋には冷蔵庫なんてのもあるし、そこに突っ込んでてもいいけどさ?」
今買うと、かさ張るやん? いやまあ、いいんだけどね!? 天使の笑顔は宝だもの! 私はいいことしてるんですけどね!!
「しずくくんっ!」
おっと?
街の風景として、子供達の水遊びはよく見かけていたのだけれど、その水遊びしていた子供達の中から、しーくんの名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「りゅ? あ、ルナちゃん!」
銀色の髪にぴんっと立った耳にふんわりとした尻尾。恐らく、狐族の少女なのだろう。
見た目はしーくんと大差ない年齢に思うが……そして、しーくんの名前を知っているということは、彼女もしーくんと同じ、精霊役の子……なのだろうか?
「知り合いかい? 雫」
「ん! そーなの! きょうのおしごとでいっしょだった、ルナちゃん!」
どうやら、精霊役の子で間違いないらしい。
ルナちゃんはしーくんに目が行っていたようだけれど、私達に気付いて顔をあげる。そこで、ツバサちゃんを捉えたのか、ハッとなり、ぺこっと頭を下げる。
「ほわ! みこさまもいたんだ! こんにちは!」
「こんにちは、ルナちゃん。皆で水遊びしてたの?」
「うん! おそと、あついけど、いまはおみずでてるから!」
水まきの水で友達と涼んでいたらしい。よく見た光景だから、然程、珍しくもないか。
「しずくくんは、なにしてるの?」
「んとね、ラルとティールとツバサお姉ちゃんとまち、みてたの! ぼく、ここにくるの、はじめてだから! あ! ラルとティールだよ! ぼくのなかまでね、ママとパパなのー!」
んんっ!?
「し、雫!? その紹介の仕方は外でやらなくていいやつ!」
「そうだっけ?」
「ほわ~? しずくくんのママとパパ、わかいね!」
小さい子特有な素直な眼差しに私とティールは何も言えない。違うんです、とは言えないし、かといって、複雑な事情を説明するのもおかしな話である。
「あ、あの、ラルです。ママとパパってのは、あれよ? みたいなってやつだからね? 若くて当たり前なのよ……私達」
「? そうなの?」
この年齢の子にどう説明すれば通じるのだろう。私、そんな方法、知らない……!
「えぇっと、ルナちゃんは雫と仲良しになってくれたんだね?」
「うん! さっき、たくさんあそんだの! ねー!」
「んっ! あそんだ!」
「そっか。ありがとうね~」
ティールパパの見事なすり替えにより、ルナちゃんの頭から疑問は遠くの方へと飛んでいってくれたようだ。あれ以上、追及されていたら、私と言えど、無言を貫くところだった。危ない。
私とティールの紹介を終えたしーくんは、ルナちゃんと仲良く話し始める。なんだかとっても楽しそうで、じゃあ行こっかとは、言えない雰囲気で。
「……しーくん、ここでルナちゃん達と遊ぶ?」
「いいの?」
「うん。……ツバサちゃんも、しーくん達と遊んでる? 私個人としては、もう少しこの辺見て回りたいから、別行動ってことになるけど」
「わあっ! いいんですか!?」
この辺は人通りもあるし、何よりルーメンさんが管理する街。危険なことはないだろう。あったとしても、天才的な魔法の使い手だ。滅多なことでやられることはないだろうし、しーくんも、幼いながらに戦闘経験もある。その辺の草食男子よりは頼りになるだろう。
「ま、危ないことはなしだよ? 二人とも、変な人についてったり、怪我するようなことはなし! いいね?」
「あいっ! だいじょーぶ!」
「はーい!」
二人の元気な返事を聞き、私はティールに視線を移した。
「で、ティールはどうする? ここで涼んでる?」
「うん? ぼくはラルについていこうかな」
「あら、暑いからここでじっとしているのかと」
「これからのこともあるしね……少しは暑さに慣れておかないと、仕事当日にバテる」
なんだ。一応、これからのことを考えていたのか。目の前の暑さに挫折しているのかと。
「さ、流石にそこは仕事だって割りきるさ」
そう? 観光前は暑くて日陰から出たくないとか言っていた気がするけれど……まあ、いいだろう。
私とティールは観光の続き、しーくんとツバサちゃんはルナちゃん達と水遊びで小休止……かな。
「じゃ、一時間後くらいにまたここに戻ってくるから、ツバサちゃん、しーくん、ここにいるんだよ?」
「あいっ!」
「分かりました!」
「いい返事だ。しーくんをよろしくね、ツバサお姉さん」
「はいっ! お任せください、ラルさん♪」
お姉さんやる気満々なツバサちゃんに任せてしまっても大丈夫そうだ。
よし。それなら、もう少しだけ、夏休み気分を味わうかな?

子供達とは一時的に別れ、私とティールは再び街中観光へと舞い戻ってきた。
ツバサちゃんの案内はないけれど、これはこれでじっくりと街の雰囲気を味わえるというもので。
「歩いていて思ったけれど、本当に和と洋が混じっているよね。何て言うのかなぁ……古風な空気もまた味を感じる……みたいな」
「ちょっとティールが何を言いたいのか分からんけど、まあ、あれだよね。古きよき時代?」
「なんか違う」
違うのか。
冒険者の街。その名に相応しく、見るからに探検隊ですと言わんばかりの装備のまま、歩いている人が多い。駄目とは言わないが、そこに観光客も混じっているものだから、変な感じはする。
「ラル、何か欲しいものでもあるの?」
「ん? いやぁ……探検に必要なアイテム類は持ってきたんだけどね。一応、買い足そうかなぁと思ってる」
「ふぅん? ラルにしては慎重だね」
私にしてはとはなんだ。私にしてはとは。
「いや、ごめん。アイテムなんて、いつも買わないじゃないか。家から自作のやつ使うだろ? 買うのだって、長期間の仕事中になくなりそうだからって理由が多いでしょ?」
「まあ、ねぇ……細々とした仕事を軽くやるなら、それ用のやつが欲しいかなって」
「あぁ、なるほど」
ギルドの施設を使わせてもらって、私が量産してもいい。いいんだけれど、それをするにしても、材料がないので何もできない。
どちらにせよ、補充しておいて損はない。使わなくても、いつかは使う。アイテムは多くて困ることはないのだ。場所だって、どうせ四次元収納のバッグにインだ。多くて持てないなんてのも滅多にないのだから、ここでじっくりと吟味するのも、また楽しいってものである。
「じゃ、探検用のアイテムを取り扱うお店、探してみようか?」
「そだね。ぶらぶらしつつ、なんかいいお店あったら入ってみたいな♪ 雑貨とか可愛いお店!」
「了解。……そういうところは女の子だね」
悪かったな! 普段は女の子じゃなくて!



~あとがき~
ちょっと短いですが、きりがいいからね。

次回、ラルとティールの観光(デート)です。本人達はそんな風に思ってないんだろうけどな。

四人で観光するシーンを入れたかったのですが、如何せん大して話も浮かばないので、皆様のご想像にお任せします。まあ、スプランドゥールがどんな街なのかってのは、初日に書いてますからね。それで十分っちゃ十分なのです。
じゃあ、なんでラルとティールの話をするかって? やりたいからが一番で、こいつらの関係性をどうにかしたいのが二番だからですね。

ではでは!