satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第316話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわちゃわちゃしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回は雑談パート。つまりは寄り道みたいなもんです。
今回から! ようやく!! 本題に!!!
話的には全然進んでないもの。びっくりよ。


《L side》
ルーメンさんの昔話をいくつか聞きながら、約一時間くらい経った頃だろうか。不意に部屋をノックする音が響いた。
女神祭という一大イベントを終え、ギルドの人達も仕事を終えて休息しているはずだ。それなのに一体、誰が?
「入ってよいぞ~」
「はぁい♪ こんばんは、じいじ♪」
ルーメンさんに促され元気な返事と共に入ってきたのは、ツバサちゃんだった。涼しげな甚平風のパジャマを着て、ニコニコ笑顔でルーメンさんと話している。
「ツルギとしーくん達、ぐっすり寝ちゃったよ♪」
「うむ。そうかそうか~♪」
「うん。……ほえ? ラルさんとティールさん?」
と、ここで私達の存在に気づいたのか、首を傾げながらこちらを見る。
「ツバサ、こんな時間にどうかしたの?」
「報告に来たんですよ~♪ お泊まりで子供達を預かってるので。この時間でまだ寝れない子はじいじにあやしてもらう年も……あ、実はこのお泊まり会、毎年恒例行事? みたいになってるんですっ」
「なるほどね? 今年はルーメンさんの出番はいらないよって報告ってことだ?」
「つまりはそういうことですね♪」
ここに来た理由を問いかけたティールに笑顔で教えてくれるツバサちゃん。この光景はまあ、何でもない日常風景みたいなものだけれど。
……なんだろうな。この違和感。
私はどこに引っ掛かりを覚えているのだろう?
「ところで、お二人はなぜじいじのお部屋に?」
「え? え、と……それは」
ミルティアに呼ばれたからと素直には言えず、ティールは答えを言い淀む。ちらりと私を見て、どう答えるべきかと目で訴えてくる。
それくらい、適当に誤魔化してもいいと思うのだけれど、素直だなぁ。ティールは。
「……あぁ、仕事の話を少し、ね?」
「そうでしたか~♪」
すぐに答えられなかった彼に代わり、適当に答えておく。別に仕事の話なんて一ミリもしていないんだが、この際、どうでもいいというものだ。
「? ラルさん?」
少し思考を巡らせて違和感の正体に気付いた。漠然とした雰囲気の違いもそうだけれど、とある行動が以前の彼女と違ったのだ。
「ねえ、ツバサちゃん?」
「はい。どうかしましたか、ラルさん?」
「いや、あなたを『ツバサ』ちゃんと呼称するのは間違いかもしれません。……『ツバサ』の中にいる、あなたは誰ですか?」
問いかけられた彼女は驚いたように目を見開きつつも、私をじっと見つめてくる。あくまで自分から語るつもりはないらしい。
私は残りの二人の様子を窺う。
ティールは当然だが、戸惑ったように私と彼女を見ている。そして、ルーメンさんはいつもと変わらない笑みを浮かべ、沈黙を貫いている。
彼女もルーメンさんも言わないのなら、私が言おうか。
「私の知るツバサちゃんはノックはしても、返事は待たずに大好きなじいじに会いに来るんですよ」
初日にルーメンさんの部屋へと案内してくれたツバサちゃんがそうだった。ノックしてすぐに扉を開け、ルーメンさんの元へ駆け寄っていた。
「それにツバサちゃんとは違う気配をあなたから感じます。これは漠然としたものなので、根拠としては薄いですけれど」
「……」
「まだ足りないというのなら、私があなたの正体を言い当ててみましょうか?」
「……」
これにも答えるつもりはないらしい。ならば、肯定だと捉えるまでだ。
私が彼女の名前を発するため、口を開きかけた時。ルーメンさんの堪えきれない笑い声が聞こえてきた。そして、それにつられるように彼女もクスクス笑い始めた。
「ふぉふぉふぉ♪ 流石、ラル。こうも早くに見破ってしまうとはの」
「んふふ♪ ほんとだね~♪ そこまで付き合いがあるわけじゃなかったから、もう少し騙せるかなって思ったのに」
「え、えと、どういうこと?」
この場で唯一、理解していないのはティールだけだろう。まあ、仕方ない。ティールは彼女とは初対面だもの。
ティールとは初めましてですが、私とは二度目というべきでしょうか? 癒しの女神、ミルティア様」
私が彼女の名前を告げると、彼女はツバサちゃんらしくもない不敵な笑みを浮かべた。そして、パチンッと指を鳴らすと、彼女を包むような風が吹き始める。その風も一瞬で消え失せると、中から現れたのは変わらずツバサちゃん……ではなかった。
身長がぐんっと伸びて、私より少し低いくらいに変化し、服も甚平から白い狩衣のような和服へと変わっていた。
また、見た目も大きく変化している。髪はツバサちゃんと変わらない白髪の髪だが、長さは腰の辺りまであるロングヘアへと変わり、その長い髪の毛先を鈴の髪留めでまとめている。そして、頬に星の痣のようなもの、瞳は赤と青のオッドアイ
“時空の叫び”や洞窟で出会った、ミルティアそのもののだ。
「うんっ♪ ラルちゃんとは先日ぶり。そして、ティールくんとは初めましてだね♪」
「……へ? あ、はい、そう、ですね??」
先日ぶりと答えるか。
となると、私と洞窟で会ったことを覚えている?
ルーメンさんは改めてミルティアに向き直ると、恭しく頭を下げる。
「ミルティア様、お久し振りでございます」
「うん♪ 一年ぶりだね、ルーメン」
二人の会話から、この対面は初めてではないと窺える。つまり、ルーメンさんはこうなると知っていた。だから、私がミルティアの言葉を告げた時、一人で納得していたのだろう。
「……ねえ、ラル? ちょっと状況が理解できないんだけど。どういうこと、これ?」
あー……うーん?
どう説明したものかと考えていると、ティールは一人で勝手に思考を暴走し始める。
「っていうか、ミルティアって死んだんじゃなかったっけ? それなのに目の前に現れたってどういうこと? そ、それって一般的に言うあれ? 化けて出る的な……っ!?」
一般的に言うかは知らんが??
一人で勝手に思考を巡らせ、その巡らせた先で勝手に怯えているこのアホをどうしたらいいんだろう、私は?
「あ~……とりあえず、ティール。うっせぇわ。黙れ」
と、勝手にあわあわしているティールの背をぶっ叩いておく。そこまで強く叩いたつもりはないのだが、ティールは痛みに小さく呻き声を上げながら、体を小さくさせた。
「ひ、酷い……」
「このまま放っておいても、変な方向に怯えるだけじゃん。馬鹿だな、ティールは」
「うるさいよ……えと、ミルティア……さん、でいいのかな」
「うん。なにかなっ?」
「死んだはずの貴女がツバサの体を使って、ここにいる理由をお聞きしてもいいですか?」
彼の疑問にミルティアはにこやかに答える。
「もちろん。そこは気になるだろうから、答えるよ♪ といっても、難しいことはなーんにもないんだけどね? 私の転生体がこの子……ツバサ・ケアル。そして、そのツバサ・ケアルの中にこの私……つまり、この子の前世であるミルティアの意識が残ってるだけだよ?」
数秒、ミルティアを見つめたティールはどう思ったのか、私の方を見て、首を傾げた。
「……『だけ』ですまされる情報量だった?」
「多分、そんなことはないと思うけど、理由としては単純だとは思う。ミルティアの転生体がツバサちゃんってこととツバサちゃんの中にミルティアが残ってるって話なだけだし」
「いや、言葉は理解できるよ? できるけどさ……?」
ティールが言わんとしてることは分かる。
そんなことがあるのかって話だろう。あり得るのだろうか、という。
元々は神様で、そんな神様が人として生まれ変わるなんて、と。
しかし、ケアルの始祖はミルティアだ。少なからず、ツバサちゃんは神の血を引き継いでいる。だから、縁として残っている以上、あり得ない話ではないのだろう。
第一、目の前にあり得てるんだ。納得するしかないし、受け入れるしかない。
祖先帰りという言葉もある。そういうことなのだ。うん。……本来の意味合いとは違う気もするけど。
話を戻そう。
「私からもお聞きしても?」
「いいよ~♪」
「なぜ、貴女は私達のことをご存知だったのですか?」
私達が名前を名乗る前から、ティールのことを『ティールくん』と呼び、さも知っているのが当然のように振る舞った。
そして、私と初めて会った時もそうだ。あの時はそこまで思考が働かなかったが、別れ際に『ラルさん』も呼ばれた。まあ、それだけなら、精神世界だからなんてご都合主義的理由でも納得はしたのだけれど。
でも、そうではなかった。つまり、何らかの理由、手段でミルティアは私達を知っていたのだ。
「私は普段、ツバサの中で眠っているのだけれど、その間に色んなものを視ているんだよ。だから、二人のことも会う前から知ってたの♪ なんだろ? 例えるなら、夢を見ている……そんな気分かな」
「夢で見て、知った……?」
いや、それはあくまでものの例えで、実際は違う方法で知ったはずだ。
「あぁ……あのおとぎ話が関わるのか。最後の方の一文」
「え?」
ここに来てよく耳にすることになった『癒しの女神の祈り』では、女神は光になったのだ。恐らく、そこが関係している。
……ミルティアは枯渇した魔素を増やそうと奔走していた。そして、最後は子供を……家族を守るために自らも光、即ち、魔素へと姿を変えた。
その魔素が世界に散らばったとなれば、それらを通して、世界の事象を見聞きすることも可能なのかもしれない。
「わー! 凄い! 大正解♪」
ミルティアはぱちぱちと嬉しそうに手を叩き、何度も大きく頷く。
「うんうんっ♪ この子の中で見てたときから思っていたのだけれど、ラルちゃんは聡明な子なのね~♪」
「……あ、りがとうございます?」
なんだろ。ミルティアが現れてから、この人のペースに飲まれているような気がする。
だが、それはそれとして。
結局のところ、ミルティアがここに現れた理由と私に伝言を残して理由が不明のままだ。
なぜ、ミルティアは再び、私の前に現れたのだろうか?



~あとがき~
ミルティアさんが子供っぽい件について。
初登場時の方が大人だったし、神様っぽかった気がするのは気のせいか。

次回、ミルティアとお話しします。

この辺、回収していなかった伏線やら事実やらで情報量が凄いことになってきます。頑張ってついてきてねっ!!←
ゆーて、ミルティアに関することばっかだとは思いますが。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第315話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ラルとティールがルーメン親方の部屋へと訪問し、なぜか雑談タイムになってしまったところからです。今回も雑談しかしません。多分。


《L side》
この際だ。伝説の探検家、赤獅子様の武勇伝でも聞いておくか。何かのネタになるかもしれない。いや、どこで活用するんだって話ではあるが。
「ルーメンさんって過去にアルドアーズさんとコンビを組んでたんですよね」
「うむ。そんな時期もあったなぁ」
「では、お二人でダンジョンの攻略や討伐なんかも?」
「それはもう数えん切れんくらいにやってきたかのぉ……? ダンジョンに大量発生したモンスター討伐やら、空き家に住み着いたモンスターを倒したり……そういえば、あやつが勝手にはぐれて勝手に捕まったことがあったな」
あやつ……アルドアーズさんか。
当時を思い出したのかルーメンさんがニヤニヤと笑い始め、私達に説明し始めた。
昔、とあるコレクターが住んでいたらしい屋敷(空き家)に巣くうモンスター討伐の依頼を受けることとなった二人。
その屋敷は主の趣味なのか、とにかく罠だらけ。更に何のアイテム効果なのか、中では魔法が使えない区域になっていた。なんでも、そこの元主さん、色んな呪術アイテムを集めるコレクターだったらしく、その何かの呪術が発動していて、魔法が使えない空間となっているのではないかとギルドの受付嬢に説明を受けた。
「とはいえ、アズは聖剣使い且つ技使用者。ワシも魔法戦闘よりも打撃戦を好む方でな? 大した障害ではないと思い、アズと共に件の屋敷へ赴いたわけさ」
朝練でもご老体とは思えない筋肉を見ましたもん。……ルーメンさん、昔から脳筋プレイがデフォルトなのだろう。
「屋敷に到着してすぐ、手厚い歓迎を受けたんだが……それはもうアズと共にさっさと蹴散らしてやってなぁ♪ 屋敷の探索はワシの特技を活かして順調に進めていった」
ルーメンさんの特技?
「元来、兎族は聴覚に長けておる。それを応用したもので、ワシは周囲の音や空気の流れを聴き、罠や敵の位置を把握できるんじゃよ♪ まあ、雫のような探索能力には負けるし……確か、セイラさんも索敵は得意分野じゃったかな。彼女のそれにも劣るが、何もないよりはましってもんさ」
ほあ~……なるほど。
特技と称していたってことは、兎族の人達皆ができるわけではないのだろう。ルーメンさんのはあくまで、自身の長所を活かすための方法を探り、特技として身につけたってことだ。
「ということで、ワシが探りつつ屋敷内のモンスターを狩っておったんだが……アズの阿呆め、ワシが忠告する前にうっかり罠を発動させてしまってな。ヤツの足元に大穴が空き、まっ逆さまじゃよ」
……うっかり、か。
ちらりと隣の相棒を見る。
見られた相棒も何やら心当たりがあるのだろうか。私と目が合った瞬間、即座に目を逸らしてきた。
ティール君。アルドアーズさんのお孫さんってことですね。そういうところ、引き継いだってことでよい?」
「よくない。引き継いでない。たまたまですっ!」
ふーーーん???
「ほっほっほっ♪ 落ちたアズはその屋敷の地下まで落とされたらしくてな? アズ曰く、落ちた先は牢屋の中。周りには無数のモンスターに取り囲まれておったようじゃ」
地獄かよ。
檻のお陰でモンスターに襲われることはないが、裏を返せばそこから出ることも叶わないのだ。しかし、アルドアーズさんは技使用者。檻の中から攻撃を仕掛けるくらい造作もなさそうだが。
「それなんじゃが、そこでは聖剣の二振りを剣として顕現させることができんかったらしくてな? ヤツは為す術なかったらしい。そこで冷気状態で漂っていた雪花をワシの元へ送り、本人は牢屋で大人しくする道を選んだ」
まあ、できることがないんならそうなるか。
アルドアーズさんの元を離れたセツちゃんは、ルーメンさんの名前を叫びながら屋敷内を飛び回った。その声を聞いたルーメンさんと無事合流し、アルドアーズさんの救出へと向かったわけだ。
「雪花に案内された先には先程説明したような光景が広がっておってなぁ……牢屋に無力なアズが囚われ、それを狙い続けるモンスター達……さながら、アズが囚われの姫に見えて、つい『なんでお前、囚われの姫になってんだ』と問いかけたもんじゃよ」
状況的にはそう見えても仕方はない、か?
まあ、アルドアーズさんが本当に姫になり得るかはさておき。
「アズもまあ、不本意ではあったのだろ。『俺だって好きでやってないけど!? なんなら、ナイトになりたいわ!! お前、俺と場所変われよ!?』と叫んでおったな~♪」
一応、この時、たくさんのモンスターを目の前にしているはずなのだが、こんな余裕のある会話を実際にしていたんだろうか。
いや、そんな余裕があるくらいには二人とも強かったとも言える。
「ま、なんやかんやあったが、アズと合流した後は聖剣を顕現できない原因だった像らしい物体を壊し、ついでにアズの檻も壊して、二人でモンスター討伐。めでたしめでたしじゃよ♪」
囚われの姫になってもアルドアーズさんは強かった……ってことですかね。いや、そうなる原因は自ら産み出してはいるのだが。
「アルドアーズさんってそういう罠を踏みやすいんですか?」
「うむ? そうじゃなぁ……そんな印象はないが……どちらかといえば、ワシの魔法に巻き込まれて吹き飛ばされるイメージが強いかの?」
じゃあ、運が悪いのはそういう星の下にティールだけが生まれたってことか。
いや、待て。
「……アルドアーズさんって強いんですよね?」
「うむ。実力のある男であるぞ」
「それで、吹き飛ばされるんですか」
「面白いくらいにな♪」
アルドアーズさんの反射神経があれなのか、ルーメンさんがわざと吹き飛ばしているのか。謎である。正直、どっちもあり得そう。
「先日、白雪も言ってましたね。お祖父様、よく吹き飛ばされたり、埋まったりしてたって」
……つ、強いんだよね??
私のこの疑問にルーメンさんもティールも頷く。肯定はしてくれるらしい。しかし、聞いている限り、そのような気配は微塵も感じないのだが。
「ふむぅ。アズの名誉を取り戻す必要はない気もするが……ヤツの強さを証明してやろうかの。する必要はない気もするが。……当時、情報が出回っておらんかったブラックドラゴン討伐の話じゃ」
ドラゴン討伐。
モンスター討伐の中でもドラゴンは曲者だ。ドラゴンに分類されるものほとんどがボスクラスであり、驚異的な強さを誇る。個々の特徴はあれど、ドラゴンに共通するのは、固い鱗守られた強靭な体、鋭い爪から繰り出される攻撃。そして、空を制するに相応しい大きな翼。これらに加え、各々の特性を生かした攻撃を持つ。
今では様々な方法で討伐されるものだが、ルーメンさんの時代は攻略法が確立してなかったのだろう。
「旅の途中、普段はいるはずのないダンジョン内でブラックドラゴンが現れたと言う話を聞いてな? まあ、ダンジョン内におるのならともかく、そのドラゴンはダンジョンの外へ出て人々の土地を荒らしておってた」
その付近のギルドは大慌てでそのブラックドラゴンの討伐依頼を出し、腕の立つ探検隊や冒険者達に声をかけていたと言う。
しかし、情報が少なかった当時は進んで依頼を受けようとする人もおらず、見つかったとしてもドラゴンの強さに太刀打ちできず、命からがら脱出……そのような事態が続いていた。
そこにルーメンさん達が現れたということらしい。
「そこの領主らから話を聞いて、同情はしたが……流石のワシも手放しに引き受けようとは思えなくてな。如何せん、攻略方法の分からぬ相手。無茶をするにはちと厳しいと判断をした。……が、アズは『困っている女性達を放ってはおけない』と引き下がるつもりがないようでね。まあ、やるだけやるか、とワシが半ば折れる形で依頼を受けた」
「お祖父様らしいですね。困っている女性、ですか」
「ほっほっ♪ 困っておるのは女性だけではないんだがなぁ? して、依頼を受けたからには情報収集をと手分けして、あちこちからかき集めたもんさ」
ルーメンさんとアルドアーズさんは情報共有をすませ、準備を整えた。そして、次の日、ドラゴンが現れると言う森……だった荒野へと赴くこととなった。
「作戦は単純じゃ。二人で強力な攻撃を同時に叩き込む。それだけじゃよ。まあ、普段なら、アズが適当に敵を引き付け、ワシが強力な一撃をお見舞いするんじゃがな~……ブラックドラゴン相手にそれだけでは足りんと予測した。ドラゴンの鱗は固いからの。ワシの拳だけで届くか確証が持てんかった」
だから、二人で同時攻撃か。
ルーメンさんはゆっくり頷く。
「ワシが土魔法でサポートしつつ、アスが聖剣を巧みに操り積極的に攻撃した。そして、アズはドラゴンの『逆鱗』に攻撃することに成功したのさ」
ドラゴンのそれに触れてしまえば、大暴れしてしまう逆鱗ですか。わざわざそこを攻撃するなんて。
しかし、それを成功と言うからには、元より作戦に組み込まれていたのだろう。
大暴れを始めたドラゴンからルーメンさんのサポートを受けつつ、距離を取ったアルドアーズさんは、体勢を整え、再びドラゴンへと突っ込んだそうだ。
「攻撃するには近づく必要があったからの。ワシが足場を作り、アズがそれを用いて接近……大暴れをし続けた結果、疲れを見せたドラゴンの隙をアズは見逃さなかったんじゃろうな。あやつは上手くドラゴンの背に飛び乗り、それに合わせ、ワシもドラゴンの懐へ飛び込んだ。そして、二人で攻撃を浴びせたんじゃ。上下からの強力な一撃を受けたドラゴンは流石に耐えきれんかったのじゃろう。あっさり消えてしまったわい」
依頼を受けた理由は不純に思えるが、強さは本物。何より、ルーメンさんとの息が合わなければ倒せなかっただろう。
本当にいいコンビだったんだろうな。
「……私だったら、一人で突っ込んでるかもしれない」
自分の実力を過信しているつもりはない。しかし、ルーメンさんが語ってくれたような方法で倒せるのかは分からない。
多分、もう少し慎重に動きながら、且つ相棒であるティールには後方支援してもらうんだろうな。まあ、いつもの手法ではあるけれど。
「ラル、そういうところね。そういうところ」
「えぇ? 未知なる相手とのバトルは基本的にそういうスタイルでやってるじゃん。あわよくば、私一人で倒せたらラッキーくらいのイメージで」
「ラッキーじゃなくて、しれっと倒そうと奮闘するでしょ。だから、危ない目に遭うんだろ」
……ひ、否定はしない。
そりゃ、前衛が最も相手の攻撃を受ける。比例して、危険な目にも遭う。当然である。
結果、前衛である私の危険度が増すわけで。ティールはそれをよしとしなくて。
まあ、私が必ずしも前衛である必要はないけれど。でも……最悪の事態になるんなら、それは私でなければならない。それが私の役目だと思うから。だから、私が前衛でいれるときは前に出る。そうすれば、少なくとも私の想定する最悪は回避できると思うから。
「……ラル。流石に怒るよ」
「うげぇ? エスパーかよ、お前」
「違うけど。でも、ラルならそう考えるって分かるんだよ。……何年、隣にいると思ってるんだよ。全く」
へーへー……そーっすねぇ?
そんなティール君なら分かるだろうに。私の考えが変わらないってことにも。
「……あのなぁ」
「うっさい! うっさい! そうならないための努力を惜しむつもりはないし、惜しんだつもりもない! 大体、私がやべぇなって思うような依頼、意地でも持ってくるもんか! 安心しろ!」
ティールは私をじとっと睨みつつ、わざとらしくため息をつく。
「そういう問題じゃないけど。……馬鹿ラル。なんで分からないかなぁ? そんなんだから、リアさんとかに滅茶苦茶怒られるんだよ」
「うるっせ。この世には優先順位とやらが存在するんだよ」
「その順位、即刻変えてほしいものだね」
「変えない。私がリーダーでティールが相棒で、私の親友で、仲間である限りはね!」
「頑固」
「うるせぇ、過保護が」
「……ぷっ」
……あ。
脳内で話題がスライドしてしまっていたが、元々はルーメンさんの話を聞いていたんだった。
私達の平行線な喧嘩をくつくつと笑いながらルーメンさんは眺めていた。
「いやぁ、すまんすまん♪ ワシからすると、二人とも頑固で過保護じゃと思うがの~♪ いやはや、仲が良くて結構結構♪」
その言葉に私とティールは互いに顔を見合わせると、首を傾げる。
あのやり取りのどこで仲良し認定されているのか分からない。どこ?
「ごめんなさい、ルーメンさん。ぼくら、勝手に熱くなってました……話の途中だったのに」
「おん? いやぁ、話はきりよく終わっとるし、終わってなかったとしてもアズの話なんてどうでもよいぞ?」
……やっぱり、アルドアーズさんに対する扱い、雑だよな。あんなに息ぴったりなコンビ話聞いたのに。
それとも、そういうスタイルが二人にはあっているあのだろうか?



~あとがき~
なげぇなげぇ!!
喧嘩させたくてさせたけど、やらなきゃよかった感! 何とか頑張って入れたアルドアーズのかっこよい戦闘話が霞むが!?←

次回、そろそろ本題に。

アルドアーズの話もあったのに、なんかこう……それはどうでもよくなる感じになってしまった。申し訳ねぇ。
で、ちょいちょい話題に上がり、問題になるラルちゃんの無茶行動について。
正直なところ、ティールも人のこと言えないだろうなとは思うんですけどね? 彼もまた、ラルに危険が及べば、自ら飛び込んでどうにかしようとするので。なんで、人のこと言えないんだわ、お互いに。
だからこそ、お互いに頑固で過保護なんだろうなと思います。ルーメンおじいちゃんの台詞はそういうことよな。←?

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第314話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でだらだらしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
ツバサちゃんの部屋でお泊まり会をする雫を送り届けたところで終わりました。
今回は夜会話。どっきどきだぜ!
ラル「話がどこまで進むのか?」
ど、どっきどきだぁ……(滝汗)


《L side》
ルーメンさんの部屋までは何事もなく、無事に到着した。そして、当然のようにティールが扉をノックする。
「失礼します、ルーメンさん」
と、一言残して、躊躇いもなく扉を開ける。これが約二週間通い詰めたティール君の成長ってこと!? 初日は探検隊連盟のお偉いさんぞ! ってビビってたくせに!
すんなり入っていくティールに着いていく形で私も部屋へと入る。部屋には仕事机に向かうルーメンさんの姿があり、私達を見るとにっこりと微笑んだ。
「おぉ、ティールにラルか♪ すまんが、少しだけ待っていてもらえるかの? 実は仕事が片付いておらんくてな。まあ、すぐ済むから、二人はソファで待っておれ♪」
「えっ!? ごめんなさい! そんなときにお邪魔して」
「よいよい。お主らのせいではないからなぁ」
ティールと会話をしながら、何やら書類を作成していくルーメンさん。ティールのあの驚きようからして、普段は仕事を終わらせている時間なのだろうか。
先程、ルーメンさんに促された通り、ソファへ腰掛け、ルーメンさんの仕事が終わるのを待った。
真剣に仕事している人がいる手前、大声では話せないが……これはこれで沈黙が痛い。目のやり場に困ると言うか、落ち着かないと言うか。いや、そう思うのは私が緊張しているせいか。この親方部屋という空間に慣れていないせいなのか。
「あ、あの! ルーメンさん!」
「む? どうかしたかの、ラル?」
「待っている間、お茶の用意、してもいいですかね。黙って待ってるのあれなので」
どうにも座ってられなくて、ついついこんな申し出を口走ってしまった。ルーメンさんは一瞬、ぽかんとしつつも、嫌な顔を一つせずに「構わんよ」と了承してくれる。
「むしろ、なんだかすまんねぇ? ワシがやるべきだろうに」
「いや、二人のお時間のところ、急に押し掛けたのは私の方なんで! え、えーと、道具、使わせてもらいますね~?」
そう。本来はティールとルーメンさんのための時間なのだ。邪魔なのは私なんだよなぁー!?
くっそ、ミルティアの言葉さえなければ、ここには来ないのに!
お茶の準備─何もしないのもあれだと思ったらしいティールも手伝ってくれた─を終えるのと、ルーメンさんか仕事を終えるのはほぼ同時だった。
ルーメンさんがソファへ座り直し、私が勝手に用意したお茶を一口啜る。
「ふむ? アルフォースの淹れる茶もなかなかだが、ラルも上手いもんじゃなぁ~」
「まあ、普段は学生と家事をやってるもんで……?」
……関係、あるかは分かんないけど。
「あの、ルーメンさん。本当にお仕事の方は大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃよ、ティール。さっきの書類はアズに投げつけるための書類じゃしなぁ」
アルドアーズさん?
ってことは、本来はなかった仕事ってことか?
「あの阿呆のせいで海の国である噂が立っているらしくてなぁ? それのせいでやらねばならない書類仕事が増えたんじゃよ。アズのやつめ、冗談も程々にせよと何度も言うとるんがなぁ?」
「……お祖父様」
「まあ、大したことはないがのぉ。……大したことはないが、やつは明日、はっ倒すかのぉ」
大したことあるのでは?? 主にアルドアーズさんにとっては!
しかし、楽しそうに笑うルーメンさんに何も言えず、アルドアーズさんには素直にはっ倒されてもらうしかなくなった。申し訳ないけれど。
「……して、ラル。今夜はどうしたのかの? お主も祭りの後で疲れておるだろうに、わざわざ話とは?」
そう問いかけるルーメンさんの表情には何かを誤魔化そうとする意思も、隠そうとする意思も……何も感じなかった。本当に何も知らない、不思議に思っているそんな表情だ。
その顔から察するに、あれを聞いたのは、私だけだった……のだろう。
「……実はお祭りの時……厳密には舞を見ている時、声を聞いたんです」
「む。声、とな?」
「はい。『今夜、ルーメンの部屋で』と。……ミルティアの声で」
ルーメンさんはぱちくりと目を瞬かせると、自身の髭を撫で始める。
「……ふむぅ。ミルティア様の声を。……ワシには何も聞こえんかったが」
「はい。さっき、ティールにも言われました」
「そうか。……しかし、合点がいった。舞の途中、ラルが何やら難しい顔をしているなと思うていたんじゃ。先程までは舞について考えておるのだろうと思っていたんだが。……ミルティア様の声を聞いたからだったんじゃな?」
えぇ、まあ。はい。
……舞の仕掛けについて、考えなかったわけではないが、魔法が関わっている以上、深く考えるのをやめた。……とは、言わないでおこう。
「今晩、ワシの部屋に、か。……ふむ。なるほどのぉ?」
どこか納得したように何度も頷くルーメンさん。対して、私達は意味が分からず、困惑するばかりだ。ここは説明を求めたいところだが……なんだろう。凄く嫌な予感がしている。
その予感を裏付けるように、一人で納得し終えた目の前の老人は、物思いに更ける顔からいたずらっ子の顔になった。
「そうじゃな。ラルの聞いた言葉の真意はもう少しすれば、明らかとなるじゃろ♪」
……落ち着け。予感はしていただろう。
してた、けどもっっっ!!!??? まっった、これかよぉぉ!!!!
叫びたい衝動を抑えるのに必死な私を知ってか知らずか、ルーメンさんは楽しそうにお茶を飲みながら、「せっかくじゃし、雑談でも楽しむか」とこれまたとんでもないことを口にする。
「『声の主』が現れるまでにちと時間はある。その間、ただ黙って待つのもつまらんじゃろう?」
その時間とやらはいつ来るんですかねぇぇ!?
「話……なら、ギルドの話聞いてみたいです。うちのギルド、事あるごとに事件しか起こらないので、他ってどうなのかなーって」
ティールくぅぅん!? 何、しれっと始めてるんだい!?
「む? しかしまあ、プリンは何があっても動じぬ男故、事件らしい事件は聞かぬがの?……あぁ、セカイイチが絡むとどうしようもないがなぁ」
「そうですねぇ。セカイイチ絡みの事件は絶えません」
私がおかしいのかな。そういうことか? ここはもうだまーって雑談に耳を傾けるべきなの? そういうことなの!?
あれこれ文句言いたいけれど、場の空気が雑談楽しもうの空気なので、私は何も言えない。
「事件か……まあ、ここもそれなりに人数はいるし、ゴタゴタやちょっとした騒動は日常茶飯事かのぉ? そうじゃな、プリンのセカイイチ絡みに似た話でもしよう」
親方のセカイイチに似たようなことがここでも起きるの? 地獄では?
「名付けるとすれば人参ムース事件じゃ」
ますます、親方のセカイイチ事件簿に似たような話題の予感……っ!
「これはワシがまだ若かった頃……セラも幼かった頃の話じゃ。滅多に手に入らん人参を料理長が手に入れたらしく、それを使って試作品と称し、ワシらにムースを作ってくれたんじゃよ」
ルーメンさんによると。
料理長さんがギルドメンバー分のムースを完成させ、仕上げの飾り付け用のフルーツを用意すべくムースから目を離した。その僅かな時間でムース全てが失くなってしまったと言う。
料理長さんはそれを見て、大激怒。当然である。頑張って用意したムース全てが失くなっているのだから、お怒りになるのも当たり前である。近くを通ったギルドメンバーさんを手当たり次第に問い詰めるものの、犯人は見つからなかったそうな。
「どんな尋問だったのか分からぬが、そこをたまたま通りかかったんじゃ。しおしおに干からびておった弟子から事情を聞いたものの、ワシも犯人に心当たりはなくてなぁ? ……あ、いや、実際には犯人かもしれぬと過ったヤツはおったんじゃが。事件の起こった時間帯、そいつは離れた場所におるはずで、犯人にはなり得ぬと思うてな」
……ふむ? その言い方だと、結果的にその人が犯人だった?
「ほほぉ? ラルは聡いの~♪ 結果を言えば、その通り。しかし、当時はワシらは犯人を見つけられんかった」
「じゃあ、誰が見つけたんですか?」
「セラじゃ。たまたまギルド内を歩いていたセラが犯人を見つけたんじゃよ。これまた、たまたまその辺を散歩しておった犯人を、な?」
事件を知らなかったセラフィーヌさんだったが、いつもと違う見た目のその犯人を不思議に思い、即捕獲。その見た目の変化とは汚れた口許だったという。
それを持っていたハンカチで拭ったセラフィーヌさん。そして、その場に居合わせたギルドメンバー&ルーメンさん。ここで犯人の特定に至るわけか。
……ふと、ここで、一つ思ったことがある。
「幼いセラフィーヌさんでも捕まえられる犯人……それ、人じゃないですよね。多分」
「うむ。人ではない。……しでかしたのがワシの精霊、クルスじゃからな」
『奇跡の洞窟』に現れた、あのやる気なさそうなウサギの精霊か。
「あいつ、人参が好物でな? どこで嗅ぎ付けたのか、人参ムースを狙っていたらしく、誰も見ていない隙を見て、ぺろりと平らげてしまってなぁ。一応、犯人……いや、犯精霊も見つかり、クルスは説教コース。料理長の怒りも収まりはしたが、弟子達はとんだとばっちりを受けてしまったという話じゃ」
そういうところ、フェアリーギルドと大して変わらんな……?



~あとがき~
セカイイチ事件簿、どんだけの事件数を納めているのか気になるところ。

次回、雑談タイム。そのに。

本当はここら辺(雑談パート)、全部丸投げされてたんですけど、「こういうネタがあればぷりーず」という要望に応えてくれました。
私「なんかわちゃっとしたネタくれ!」
相方「わかった!」
みたいな感じ。ありがたや。
相方はネタの書庫ですね。羨ましい。
くれたネタをどう繋げるかは私がやってるんで、普段よりは適当なところもありますがその辺は大目に見てくれ!←

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第313話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、お祭りに区切りを付け、その日の夜にあれこれしよう~……みたいな感じでした!
そのあれこれができるかは謎ですが、入り口には立ちたいと思ってる。思ってるだけ。


《L side》
女神祭は無事終了し、お祭りに来ていた参加者らも宿なり自宅なり帰っていく時間帯。
私達も部屋に戻り、各々着替えを済ませる。セラフィーヌさんから貰った和服も過ごしやすいのだけれど、流石にこれをずっと着ているわけにもいかない。可愛いけれど、普段着にはならないよなぁ。少なくとも、私はできない、かな。うん。
それはさておき。
着替えを済ませた私は、しーくんのお泊まりに必要なものをまとめ始める。といっても、ここには泊まりで来ているのだし、そこまで手のかかる準備でもないのだが。
少なくとも、着替えがあれば問題ないだろう。これを小さなバッグに入れて準備は終了だ。
「しーくん、他に何かいる?」
「ペンペン! もってくー!」
あぁ、ぬいぐるみのペンペンね~? いいよ。なくさないようにね?
「うん! ずっといっしょだから、だいじょーぶ!」
マジで寝るとき一緒だもんな。そこまで気に入ったのか、ラーメン食べてるペンペンぬいぐるみ……単なるおまけのぬいぐるみがここまで愛されるとは思わんよな。
しーくんのお供であるペンペンもバッグに入れてやり、ぐっと背伸びをする。
「そろそろ行くかぁ」
「ん! いくー!」
「じゃ、ソファでうたた寝してるパパを起こしてくれ~」
「はーい!」
服の恩恵があったとはいえ、暑い中、一日歩き回って疲れたのか、着替えて早々ソファに座って、うとうとしているティール。普段ならそのまま寝かせてやりたいけれど、そっと寝かしておいて事を進めてしまうのも彼の機嫌を損ねてしまいそうなので、起こしておこう。
「パパー! おきろー!」
「ぐえっ!?」
息子ののしかかり攻撃で起床したティールは、どこか困惑しながらもしーくんを抱っこして、こちらへと近寄ってくる。
「あ、準備、できた……?」
「うん。行くよ」
「はぁい……ん。ふぁあ……ふぅ」
「そこまで眠い? なら、無理に付き会う必要もないけど」
そこまで能力を使って貰ったわけでないけれど、一日活動し、自由なしーくんの相手もずっとしていた。流石にしんどかったかな。
ティールはもう一度大きな欠伸を漏らし、少しだけ考え込む。が、ゆっくりと首を振った。
「……いや、大丈夫。ラルの話、気になるし。急にルーメンさんと話したいなんてさ。絶対、何かあっただろ?」
「まあ、あるよ。ありました」
ティールの言葉に返答しつつ、忘れ物がないか確認して、部屋を出る。
ルーメンさんの部屋へ向かう前にしーくんをツバサちゃんのところへ送り届けよう。通り道だし。
その道中、私がなぜ、ルーメンさんのところへ行きたいと言った理由を話す。
舞を見ているとき、ミルティアの声を聞いたこと。そこでルーメンさんの部屋へ行けと言われたことを話した。
それらを聞いたティールは少し先を歩くしーくんに手を振りつつも、首を傾げる。
「ぼくにはなんにも聞こえなかったけど……ラルは聞いたんだ?」
「聞いてなきゃ、わざわざ約束までして出向こうなんて思わないよ」
「そりゃ、そうか。……ルーメンさんの部屋にねぇ? 原理はよく分からないけれど、そこに行けば全部分かるってこと?」
……恐らく?
理屈は不明だが、そこへ行けば会えるらしい。彼女の言葉を信用するならば、だが。
「血縁者だから、どうにかできる術があるってことなのかもなぁ。ぼくには見当もつかないけど」
私にも見当なんてついてませんけどね。
しかし、ティールの言う通りなのかもしれない。血縁者だからこそ、特別な魔法なり術なり使えたとしてもおかしくはない。
アルフさんだって、あの子なら何かしてても不思議じゃないとかなんとか言ってたし。元来、ミルティアとはそういう人物なのだろう。常に予想の斜め上をいく人というか、そういうやつ。
……そういう人、面倒くさいなぁ。常に斜め上をいくってことは、私の予想を越えてくるってことだもん。やりにくいったらないぞ。
「ラル! ティール! ついたよー!」
しーくんの呼び掛けで私達は顔を前へ向ける。
どうやら、私とティールがきりよく話し終える頃、ツバサちゃんの部屋の前へ到着したらしい。
じゃ、ノックするか。
と、二人の前に立ち、手を伸ばしかけた私だが、とある事に気付いてその手を止める。
ほんの少しだけ扉が開いているのだ。そして、その隙間からツバサちゃんとリランの楽しそうな声も聞こえてきていた。
単純に閉め忘れたのだろう。不用心なって思わなくはないが、まあ、ここはギルド内だ。問題はないだろう。
『マスター』
突然、何の前触れもなく雷姫が話しかけてきた。半透明状態で私に抱きつく様に覆い被さり、苦い顔を浮かべて、扉を指差す。
『即刻、それから離れろ。ついでだ。パートナーらと共に数歩下がるがよい』
な、なんで急に。
『阿呆がしでかすからだ』
……あぁ、うん。なるほど?
詳しく語ろうとしない雷姫だが、何となく察した。ここは彼女の言う通り、離れた方がよさそうだ。
ティール、しーくん。ちょっと扉から離れようか。雷姫様のご指示なので」
「それは離れるべきだな。雫、こっちおいで」
頭にはてなマークを浮かべるしーくんをひょいっと抱っこしたティールは言われた通りに扉から離れる。しかも、滅茶苦茶、真剣な表情で。
まあ、そうなるわな。
「あんあーーーーん!!!」
私達が扉から離れた直後、バーンッと盛大に開かれた扉から白い影が元気よく飛び出してきた。雷姫の忠告がなければ、この影の体当たりに直撃していただろう。
白い影改め、犬姿のリランは本来いるはずの私達を探しているのか辺りをキョロキョロを見回している。
特別離れているわけではないが、猪突猛進リランちゃんには見えていないみたいだ。
「あうん?」
「わー! もうっ! 駄目だよ、リラン! 急にドアに突撃したら危ないでしょ!?」
『ふん。真剣に駄犬の教育をせんか、白狐の小娘め。マスターが怪我をしたらどうするつもりなのだ』
あんなんで怪我なんてしませんけどぉ!? そこまで弱くないんだけど!
リランを追いかけ、ツバサちゃんも部屋の外へと出てきたみたいだ。そして、すぐ横にいた私達にも気が付くと、パッと柔らかな笑みを浮かべる。
「あ、ラルさん! ティールさん! 先程はお疲れ様です♪」
「やぁ、ツバサの方もお疲れ様」
「こんばんは、ツバサちゃん。今夜はしーくんをよろしくね」
「はいっ! もちろんですっ♪ しーくんもいらっしゃーい!」
ツバサちゃんはティールに抱っこされているしーくんを見上げながら挨拶を交わす。しーくんも嬉しそうに笑顔を見せて、大きく頷いた。
「あいっ! よろしくおねがいしますっ!」
「ふふっ♪ うん、よろしくお願いしますっ♪ ところで、よくリランの突進を避けられましたね? これ、不意打ちみたいでしょう? なので、当たっちゃう人、多いんですよね」
あぁ、被害者はすでに存在しているんだな……そういえば、ツバサちゃんのお家にお邪魔した時もアラシ君が餌食になっていたような。
「実は雷姫がリランが体当たりで出迎えるから避けろって教えてくれたの」
「そうだったんですね! 流石です、雷姫さん♪」
『ほ、褒めても何もないぞ、小娘』
照れんな照れんな。
「ありがとう、ツバサちゃん。ツバサちゃんが褒めてくれたから雷姫が喜んでる~」
『な、マスター!?』
「えへへ~♪ それなら、よかったです!」
素直って偉大。可愛い。
私は尊敬の意を込め、ツバサちゃんの頭を撫でる。まあ、満面の笑みを浮かべる天使が天使だったからって理由もなくはないけれど。
撫でられている本人は当然だが、理由が分からず、不思議そうではあったが、撫でられるのは嫌ではないらしい。尻尾と耳をパタパタと動かして、幸せそうにしていた。
「さて、と。じゃあ、明日の朝、迎えに来るね。それまでよろしくお願いします。うちのしーくんはいい子だけど、何かあったら教えてね? 真夜中だろうが迎えに来るし、仮にしーくんを狙う不届き者を成敗するので!」
と、ここでティールにぺしっ頭を叩かれた。呆れ顔で私を見て、盛大なため息を漏らす。
「親馬鹿も大概にしてくれ。恥ずかしい……けどま、ラルじゃないけど、何かあったら部屋に来てね。ツルギやメアリーさんもいるし、大丈夫だろうけど」
「はい♪ 分かりました!」
「おやすみ! ラル、ティール!」
おやすみー! 今晩、いい子にするんだよぉー!
部屋の前で手を振る我が子に手を振って応えながら、私達はツバサちゃんの部屋を後にした。
……さて。
この後はある種、胃が痛い案件のような気がしてきた。一応、心構えはしておくべきだろう。
また、あの女神と会う……かもしれないのだから。



~あとがき~
ルーメンおじいちゃん出てこないんだけどぉ!? なぜ!!

次回、ラルとティールとルーメンの夜会話。再び。
三人は二回目かな?

忘れた頃にやってくるペンペンぬいぐるみ。
最早、雫のパートナーですよ。この旅であと何回出てくるかな、ペンペンぬいぐるみ(笑)
どうでもいいけど、ペンペンぬいぐるみの初登場回はアリアちゃんと雫、ラルの休日回です。よかったら見てみてね☆

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第312話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、狐に化けていた双子をラルとティールがゲット(?)し、『神子探し』は幕を閉じました。お祭りも今回で終わるかな。


《Te side》
ツルギ達に招かれたステージの上で花火を観賞した後、二人は祭りに来てくれた人々に向けてメッセージを残すのか、その場に残るらしい。そのため、ぼくらは一足先にステージを後にする。
ラルは先程の花火を思い浮かべているのか、目をきらきらさせながら満面の笑みを見せる。
「知ってはいたけど、花火凄かったね! 綺麗だった~♪」
「そうだね。女神祭自体が大きなお祭りだし、花火も派手なのかも」
「私も花火、作ってみよっかな。火薬の配合するの、楽しそうだよね……♪ どんな色になるのか、どんな形に見せられるのかって考えるだけでも楽しいんだもん」
さっきから目を輝かせているのはそれのせい!? 嘘だろ!?
「い、家を吹き飛ばす気なの……?」
「んもう! 流石に冗談だよ~♪ あぁいうの、きちっと指導受けなきゃ成功しないって」
いや、爆発物やら薬品やら何かと危険物を生み出す君なら、花火を作るくらい簡単なんじゃ……とは言わず。だって、言ってしまったら、我が家がどうなるか分かったもんじゃない。
「よかったわねぇ、あなた達~♪ 神子様の祝福受けられてねぇ♪」
「二人仲良くするんだよ~」
「え、あ、はい……?」
本部へ戻る途中、ご老人からそんな風に声をかけられた。初めは『神子探し』を勝ち抜いた─という表現が正しいかは分からない─ために、そんな言葉を送られてるのかな、と思ったのだけれど。それが一回や二回じゃなく、色んな人─多分、現地の人達が主─から似たような言葉をかけられたのだ。
ざっくりまとめてしまうと、「羨ましい」「仲良くしてね」「お幸せに」等々の言葉がぼくらに向けられていた。……羨ましいってのは理解できるが、仲良くとか、お幸せにって言われるのはなぜなのだろう?
ラルもそれらの言葉の意味を知らないようで、不思議そうにしながらも、適当に相槌を打っていた。
「おかえり! ラル! ティール! いちばん、おめでとー!」
本部へ戻ると、開口一番に雫がまるで自分のことのように喜んでくれていた。ぴょんぴょん跳び跳ねる雫をラルは嬉しそうにお礼を返し、彼と目線を合わせながら頭を撫でた。
「舞でのしーくんの活躍、見てたよー? 凄かったね! 頑張ったね~♪」
「!! そなの! ボクね、い~っぱい! がんばったのー!」
興奮気味に鼻を鳴らす雫に内心苦笑しながらも、ぼくもラルに倣ってその場にしゃがんで目線を合わせた。
「雫、上手になったね。力の使い方」
「んっ!! れんしゅーしたの! まだ、ティールみたいにしゅしゅしゅっはできないけど……でもね、できるようになるからね! できるようになったらね、またみせるからね!」
「そっか。それは楽しみだな」
厳密に言えば、ぼくと雫の能力は違う。それでも、似たような力があるのは確かだ。
それでなくても、我が子の成長が嬉しくない親なんていない……ってことだと思う。
誇らしげに話す雫の姿がとっても嬉しくて、つい構い倒したくなるけど、それをするのはぼくじゃなくて、ラルの役目だろう。
予想通り、ラルは雫をぎゅーっと抱き締め、言葉にならない何かを口にする。
多分、うちの子天使だ~……とか。そんなのだろう。
ひとしきり楽しんだ後、ラルはようやくルーメンさんの方を見上げた。存在忘れてたのではレベルで無視してた気もするが、きっと気のせいである。
「……これで、今回の依頼は終わりですか?」
「うむっ♪ ワシからスカイへの依頼はこれにて完了じゃよ。三人とも、ご苦労じゃったな~♪」
「そうですか。……半分くらいはいいように使われている気もしますが」
「ほっほっほ♪ それはお主の気のせいじゃよ」
というルーメンさんの言葉にラルは滅茶苦茶、文句言いたそうにするものの、ぐっと我慢。そして、再び雫を抱き締め、我が子を甘やかす時間へ戻っていった。
ティール」
「ん、お祖父様?」
少し離れたところでずっと黙ってこちらを見ていたお祖父様がちょいちょいっと手招きをする。ぼくは首を傾げつつも、そちらへ近寄る。
「どうかしたんですか?」
「……そうさねぇ、まずは称賛を。おめでとう、ティール。神子探しと言うやつはこうして神子を見つけること自体、あまりないことでね。それは誇るべきだ」
確かに、こんな広い街中から正解を探すのは至難の技だ。今回はラルの大胆な作戦とツルギ達と信頼関係(?)を事前に築いていたからこその勝利と言える。
「はい。ありがとうございます」
「で、だ。ルゥはもう最後まで話す気がなさそうだから、私から話しておこうと思う」
「え、あ……何、を?」
お祖父様はちらりとラル達を見て、ぼくに視線を移す。再び、ちょいちょいっと手招き。もう少し近付け、ということなのだろう。
ぼくがもう少しお祖父様に近付くと、ひっそりと話し始める。
「神子探しには『ジンクス』が存在するのさ」
「ジンクス?」
「うむ。……そもそも、神子は代々一人が担う。が、数十年に数年、二人になる年があり、その年に行われるのが神子探しという催し物であると説明をしたな」
ですね。本来、代替わり時のみ、複数人になるから、数十年に数回だけってことになる。でも、今回の神子は二人いるから、毎年開催されてるって。
「うむ。つまり、元々の神子探しとは希少性のある催し物なのさ。そういうものには大抵、噂が付き物でね」
「それがジンクス?」
お祖父様は静かに頷く。
「内容としては単純だ。神子を捕まえたペアが同姓なら永遠の絆を。異性なら生涯、幸せな生活を送れる……そのようなジンクスがある。誰が言い始めたのか分からんが、長年続く伝統のあるものだ。自然と言われてきたのやも知れん」
……え? え、つまり?
ティールとラルさんは生涯、幸せな生活を送れるだろうって話だ。よかったな~♪」
「ちょ、ちょっと待って!! ぼくとラルはそういうんじゃなくて……そ、そもそも! 幸せな生活って何!?」
「異性同士が幸せな生活を送るんだぞ。その意味合いなぞ、一つしかあるまい?」
にやにやとどこか楽しそうなお祖父様。
初めの口ぶりから、お祖父様は……いや、ルーメンさんとお祖父様はこれを知っていたのか。だ、だから、参加した方がいいとかなんとか言ってたとか!?
「もちろん、夫婦として幸せな生活を送れるという意味合いが強いんだが……安心せい。カップルとしても幸せになれるという噂じゃからなぁ」
「な、な、な……な、何を!」
「おや? 察しの悪い孫よなぁ? つまりだ。ラルさんとティールで末長く幸せになるとよいぞ♪ このジンクス通り、二人が結婚し─」
「わーー!!?? な、何を言ってるの、お祖父様!! ない! ないです!!」
「ふむぅ? 私としてはひ孫大歓迎なのだがなぁ?」
「だぁから! そういうんじゃ! ないっ! ですっ!!」
ひそひそ話をしていたつもりが、いつの間にか普通の声──いや、いつも以上の声量で話していて、ラル達もぼくらの方の様子を窺っていた。
「ほあ? どしたの、ティール?」
「え、また喧嘩……? いや、にしては、ティール、顔が赤くなって……?」
「なってない! なんでもないっ!!」
「うそー! ティール、おかお、まっかっかだよー?」
「気のせいだっ!! そっとしておいてくれ!」
あぁ、もう!! お祖父様のせいだ!
ジンクスの内容を教えるとしても、あそこまで言わなくたっていいじゃないか。あんなはっきりと言われたら、誤魔化せなくなる……っ!
「よ、よく分かんないけど、ティールは触れてほしくないみたい。しーってしてよっか?」
「わかった! しーっ!」
空気の読めるぼくの相棒はこれ以上触れてこず、雫にもやんわりと話しちゃ駄目っと諭してくれていた。
さ、流石、ラル……助かる。
ご老人二名はこの現状を予想していたのか、特に何かを言うことはなく、ただにこにこと眺めるだけだった。
……く、くそ。今だけはラルの気持ちが嫌という程に分かる。ルーメンさんめっ……!
「メインイベントも終わったし、私らの仕事もまあ、終わったみたいだし、そろそろ部屋に戻ろうか」
女神祭も落ち着きを見せ始めた頃、ラルがぼくらに提案する。ぼくとしては反対する理由もないので「はーい」と返事をする。そんな横で、雫が何かを思い出したのかパッと顔を上げた。
「あのね! おとまりかい、するの! ボク、いってもいい?」
「お泊まり会? しーくんと……他は誰?」
「んとね? ツバサお姉ちゃんとツルギお兄ちゃんのところでね、せいれいやったみんなと、いっしょなの!」
要約すると、今回一緒に舞を踊った人達とお泊まり会をツバサのところでやるから、参加したい……ってことかな。
「そーなの! ツバサお姉ちゃんのおへやであそびながらねるの!!」
あ、遊びながら寝るのか~……それはとても凄そうな会だ。ちびっこ達が集まって遊ぶって……パワフルな会になりそう。
ぼくとしては、同じ建物内にはいるし、問題はないように思うけど。
ラルも似たような答えに行き着いたのか、雫の話ににこっと笑って頷く。
「いいんじゃない? しーくんもお友達ともーっと仲良くなるいい機会だから、楽しんできて。……でも、ツバサお姉ちゃんやツルギお兄ちゃんを困らせるようなことはしちゃ駄目だよ?」
「うんっ! わかった!」
「よぉし! それなら、部屋に戻ってお泊まり会の準備しよっか?」
「はーい!」
話もまとまったところで、今度こそ部屋に戻る……かと思ったのだが、次はラルが何やら難しそうな顔で考え始める。
「ルーメンさん」
「む? なんじゃ、ラルよ」
「急なお願いなんですけど……今晩また、私もご一緒しても? ティールと貴方のお話し会に」
ど、どうしたんだろう。急に。
この提案はルーメンさんも予測してなかったようで、不思議そうに彼女を見つめていた。が、それを口にすることもなく、ルーメンさんはラルの申し出を了承する。
「ありがとうございます。……ティールもごめん、いきなり飛び入り参加みたいになっちゃって。……嫌だった?」
「ううん。ぼくは構わないけれど。……でも、なんで?」
「ちょっと、ね。……詳しいことは後で言うよ」
何か気になることでもあったんだろうか。それなら、今ここで聞いてしまえばいいのに、なんでわざわざ夜に話す機会を貰ったんだろう。……ここでは言えないような話ってことなら、説明はつくけれど。例えそうだったとして、それって一体……?
「……ねぇ、ラル? 大切な話なんだろなってのは予想できるけど、お祖父様も一緒かもしれないのに、大丈夫そう?」
お祖父様はルーメンさんに会いにここへ来たみたいだし、元々、ルーメンさんと約束とか合ったかもしれない。
……なんて、心配をしたのだけれど、ルーメンさんは大笑いで否定した。
「問題あるまい! アズはこの後、祭りの余韻に浸りながらふらふらと遊びに行くに決まっておる。今更、ワシと染々話すこともないしの~? それにワシと話すより、若い娘と話したいだろう?」
「それは当然だなぁ♪ ってことだから、私のことは気にせず、三人で話すがよい♪」
「お祖父様、せめてぼくらの前でそういうことは言わないでください。……今度、父上に会ったらお伝えしておきますね」
「それはそれは……しばらくあちらには帰れんな」
大して気にしてなさそう……本当に言うぞ、ぼく。
「……それではこの後改めて、お部屋にお伺いします。失礼します」
と、ラルは軽く一礼すると、ギルド方面へと歩き出した。雫もラルの真似をした後、彼女の背を追いかけていく。
……真面目な話、なのかな。それが何かぼくには分からないけれど。
「まあ、考えても分かんないものは分かんないよね。……それじゃあ、お祖父様。またね……でいいのか分かりませんけど、また。あまり、派手に遊ばないでくださいね」
「ははっ! それは保証しかねるな♪」
してくれ、頼むから。



~あとがき~
無理矢理納めたせいで、若干長い。

次回、祭り後の夜。
夜会話まで行けるかは謎。

ジンクス通りに生涯幸せに、仲良くなれるかは、二人次第ですね。楽しみ楽しみ。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第311話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわちゃっとしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回はティールが突然ワープした理由だったり、双子捕獲作戦の話をしたりしました。そんなラルの目の前に一匹の狐ちゃんが!
ということで、今回で『神子探し』は終わると思います。
ラル「……神子探しは?」
そう。神子探しは。


《L side》
私は白狐と目線を合わせ、ふっと笑って見せる。そして、ゆっくり両手を広げ、こちらに来るように促す。
それを見た狐は私の突然の行動に戸惑い、辺りをキョロキョロを見回す。これが自分に向けられたものなのか判断しきれないと言ったところだろうか。
大丈夫。これはあなただけに向けたもの。安心して飛び込んできていい。
「だから、こっちにおいで?」
この言葉が聞こえていたか定かではない。それなりに距離があるし、本当は聞こえていなかったかもしれない。それでも、狐はその言葉に返事をするように一鳴きすると、突起物から飛び降りた。そして、一直線にこちらへと駆け寄ってくる。
と、ここまでは予想通り。後はこの場に片割れがいるかどうかだが。
「コンッ!!」
──いた。
どこから飛び出したのか、もう一匹が強めに一鳴きする。駆け寄ろうとする相方を止めようと慌てて出てきたのかもしれないし、手を広げ誘い出したように見えた私を威嚇したかったのかもしれない。
けれど、君が姿を見せた時点でチェックメイトだ。
「これで捕らえた!」
「!?」
噴水から絶え間なく流れる水を操り、ティールは水の檻を作り出すと、そこに狐を閉じ込めた。閉じ込められた狐は驚きのあまり、体を強張らせ、逃げる素振りすら見せない。その隙にティールは狐を掴み、能力を解除するのと同時にそっと抱き上げた。
「捕獲完了、と」
「流石、ティール。こっちもOKだよ」
ティールの捕獲劇に目もくれず、一目散に私のところへ駆け寄ってくれた狐ちゃんはしっかりと私の腕の中に収まっていた。私に甘えるように顔をすりすりと寄せてくる辺り、大変可愛らしい。
「あーん! このまま堪能したーーい!」
「やめろ。時間切れになる。……君、ツルギだろ?」
「むぅ。ティールのけち。……さて、あなたはツバサちゃんだよね」
うぐぅ……っ!」
「ほえ?」
私達の呼び掛けが変化が解けるトリガーだったようだ。先程まで可愛らしい白狐達が見慣れた狐族の姿になる。
ティールに抱っこされるツルギ君はどこか悔しそうにし、私に抱っこされているツバサちゃんは未だ現状を理解していないようだけれど。
「……とにかく、これで依頼は無事完了ね」
「ここまで色々あったけどな」
「まあねん♪ ふっふっふー……見たか、ドSジジィめー! こちとら、やってやったぞぉぉ!!??」
「……それをここで誇るのは微妙じゃない?」
うるせぇ!
ツバサちゃん達が姿を明かしたところで、観客達は─丁度、噴水広場付近にいただけかもしれないけれど─歓声を上げ、割れんばかりの拍手を私達に送る。
「……?」
疲労からなのか、はたまた素なのか。現状把握ができていないらしいツバサちゃんはこてんと首を傾げたままだ。そんな姿も大変愛らしいのだけれど。
「……! ズルいぞ、ラル!!」
ほわわんっとしている妹とは対称的にいち早く状況整理を終えたらしいツルギ君。彼は目を吊り上げながら、私をビシッと指差した。
「疲れてるツバサを油断させて、誘い出したんだろ!! 最低だぞ、この誘惑魔!!」
まだ言うか、それ。そして、その文句の付け方はどうなんだろう。論破してくれって言ってる? しちゃうよ、論破。
「心外だなぁ。この催し物って君達を捕獲することが目的よね。それなら、ルールの範囲内であれば、どんな方法でも問題ないんじゃないかな?」
「う……そ、それは……っ!」
「現に私はツバサちゃんに攻撃なんてしてないし、洗脳の類いを使ってすらいない。ただこっちに来てくれたらいいな~って思いながら手を広げただけですけど? それの何が狡いんでしょう? なぁにが最低だってぇ~?」
「むうぅぅっ!!!」
ツルギ君は頬を膨らませ不機嫌そうにするだけで、これ以上の反論はしてこなかった。
ふふん、この程度で私に勝とうなんて百年早いわ! 出直してきなさい!
膨れっ面のツルギ君をあやすようにティールがぽんぽんっと頭を撫でる。そして、呆れた様子でこちらをちらりを見た。
「ったく。ラル、もう少し言い方ってもんがあるよね? 何が楽しくて年下言い負かしてるのさ」
「仕掛けてきたの、そっちですが? 私は被害者だよね?」
「そこに関しては何も言えないけど、言い方は変えられるでしょ? ツルギだって疲れてるんだし、余計なことさせないで」
お前はツルギ君の保護者か何かですか。私よりツルギ君が大事なのかっ!?
そして、ツルギ君はティールに抱っこされている状況が嬉しいのか、耳と尻尾を控えめながらも揺らしている。これでは、私のところへ駆け寄ってきたツバサちゃんを悪く言うのも違うだろう。
「分かった。百歩譲って、言い方が悪かったとするよ。でも、ツルギ君もツバサちゃんのことは言えないよね? 尻尾、揺れてるし。つまり、ティールに捕まえてもらって嬉しいってことだろ」
「んなっ!? そ、そんなことないやいっ! め、滅茶苦茶、悔しいし!?」
言葉と態度が合ってないのですが、それは。
「……あっ!! ラルさん達も『神子探し』の参加者でした!」
ありゃあ? それ、今更気づいたのか。まあ、気づいたところでこちらの勝ちなんだけれどね。
時間ギリギリとはいえ、双子を捕まえたことで『神子探し』もここで終了だ。
二人を地面に下ろすと、ツバサちゃんは「こちらへ」と笑顔で手招きしてくる。
「始まる前にお伝えした通り、お二人に祝福を授けますので、ステージに上がってください♪」
……あ、そういえばそんなこと言ってたかも。とは言え、舞を披露したときのそれとは別物なのだろうか。
周りの観客……もとい、参加者達も噴水広場に戻りつつある中、私達はステージへ向かう。その移動の際、そんな質問してみると、ツバサちゃんはにこっと笑う。
「そうですねぇ~……それよりもほんの少し強めなやつだと思ってくれれば!」
強めのやつ。
「強めって言ったって、大層なもんじゃないよ。効果は一年間続くんだけど……なんだろ……? 道でよく小銭拾うとか」
そ、それは運気上がっているのでしょうか……?
「あとは……ティール達で言うと、ダンジョン内のレアドロップ率がちょっと上がるとか、そんなもんだよ」
ツルギ君は平然と言っているが、それだけを聞くとそこそこよいのでは!?
「あの、ツルギ君」
「な、なんだよ」
「その祝福でティールの方向音痴、解消されますか。不運体質、どうにかなりますか!?」
「ラル!?」
「え! えっと……方向音痴は分かんないけど、不運なことからなら、少しは遭遇しにくくなる、と思う?」
アバウトな質問をしてしまったために、ツルギ君も首を傾げながら答えた。それでも、少し位は希望を持ってもいいというお話を聞けただけでも満足です、私!
「……でも、あれだぞ。一年間だけだぞ?」
あぁ!? 一年間だけかぁぁ!!
「ラル! なんか恥ずかしいからやめて!?」
何が! ティールに関することですが!?
……という、どうでもいい会話をしながら、私達はステージの中央へと移動してきた。『神子探し』のスタート宣言したときに出ていた水柱はいつの間にか姿を消し、最初のステージの状態に戻っている。
「では、これから『神子の祝福』の祈祷をしますので、こちらに立っててもらえますか?」
と、ツバサちゃんは自分達の正面に立つように促してきた。私とティールはそれに素直に従い、他の観客から背を向ける形でツバサちゃん達の正面に立つ。
「それでは……今年、『神子探し』を達成したお二人に」
「『神子の祝福』を授けましょう」
双子は再び取り出した神楽鈴をチリンと鳴らす。そして、声を揃え、唄を紡ぐ。
それは舞の時よりも短いものの、私達に聴かせるため、丁寧にゆったりと神楽鈴を鳴らしながら奏でられていく。
すると、鈴の音色に合わせ、どこからか淡い光がふわりと現れ、私とティールの体を優しく包み込んでいった。その光は長く続くものではなく、二人の唄が終わりを迎えると共に光も消えてしまった。
「これで、一年間『神子の祝福』がお二人をお守りするでしょう」
「どうか、今後のお二人に幸あらんことを」
ツルギ君とツバサちゃんの締めの言葉に辺りから拍手の音が響いてきた。二人に対する尊敬の念なのか、私達に対する称賛の念なのか……判断はつけられなかった。が、これだけは分かる。
「な、なんかこの空気は気恥ずかしいな……」
「同意。……ま、すぐになくなるよ、多分」
私達はこのなんとも言えない気まずさを抱えていたものの、それを吹き飛ばしたのは空に咲く花だった。
耳を塞ぎたくなる程の破裂音と共に、煌びやかな花火が打ち上がったのだ。それも一回ではなく、何度も、それも様々な花を空に咲かせていく。観客達もそちらに目を奪われ、歓声を上げていた。
私とティールは互いに顔を見合わせ、思わず、吹き出してしまった。
「あははっ♪ ほんとに一瞬だったね?」
「ん。けど、助かった」
だね。言えてるわ。



~あとがき~
終わった! 無理やり終わらせた感なくはないが、終わった!!

次回、女神祭終幕!
終幕って書き方で合ってるかな。まあ、終わりってことが伝わればよき!

長かったですね、女神祭。
でも、終始シリアスしてるわけでもなかったし、バトルしてるわけでもなかったので、楽しく書けました。よきかなよきかな。
さて、スプランドゥールの夏もそろそろ終わりですかね~……ラストスパート、頑張ります。
ゆーて、ラル達の夏はまだまだこれからだけどなぁ!?

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第310話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で説明する物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、アリアちゃんが展開していた泡だらけ通路を突破し、なぜかいちゃいちゃしてるラルとティールでした! なぜだ!?
さて、今回では前回の種明かしと双子捕獲作戦の話をすると思われ!


《L side》
ティールの力を使い、アリアちゃんの妨害(?)である泡攻撃を突破した私達。その後、多少の事故はあったものの、概ね予定通りだ。
謎にティールが真っ赤になって大慌てしてたけど……それもまあ、予想の範囲内と言えよう。きっと、私の上に意図せず乗ってしまって、思考がショートしたのだ。……だって、あんなの日常なのだから。
「で、さっきのやつ、説明してくれるんだよね?」
噴水広場へ向かうため、私の隣を歩くティールが訝しげに問いかけてくる。
「うん。なんで私のところにワープしたのかの説明だよね?」
「そう。君のところに……ワープ……しちゃった理由」
おいおい。なんで今、赤くなるんだ。何を思い出してるんだよ、こいつは。本当に男子高校生みたいな思春期爆発させとんのか? 嘘だろ。紳士が泣くぞ、ティールさんや。
「一応、言っておくけど。別に変なところ、触られてないから。安心していいよ」
「そ、そう……なら、よかった」
そんなこと気にしてたのか。今更かよ。
……こほん。
気を取り直して、なぜ“テレポート”なんて使えないはずのティールが私のところへワープしてこれたのか。
理由は簡単だ。ティールに装備品だと言ってつけた、ピアスが作用している。
「それ本当は二つで一つの魔法具なの。もう一方を身に付けている相手のところに移動できるってやつ」
「ってことは、ラルもピアスを……? 穴、空けてたっけ?」
「うんにゃ? 私のはネックレスにしてある」
私は胸元からネックレスを引っ張り出すと、ティールに見せる。そこには小さな石が嵌め込まれた鍵モチーフのチャームがついている。本来はピアスにしようと思っていたのだが、私が普段しないので、急遽ネックレスのチャームに変更したのである。
ティールのも鍵モチーフのピアスにしてあるよ」
「そ、そうなんだ……これ、具体的にはどういう条件でワープするの? 見境なくするわけじゃないよね?」
んなことになったら、呪いの道具になりかねんわ。
「まあ、簡単に言えば、互いに相手を強く念じる。以上」
「……それだけ?」
私は頷く。
もっと言えば、互いのことを信頼し、且つ、同時に強く念じる必要がある。
「『奇跡の洞窟』の探検したとき、ティールがいなくなったでしょ」
「いや、あれは君がいなくなったんじゃない?」
「どっちでもええわ! そうでなくても、ティールはふらっといなくなるじゃん。そのとき、パッと合流できたらいいなって思ってさ。なんとなく作ってみた」
「すぐにふらっといなくなるの、君だけど……けどまあ、意図は理解したよ。そっか。あのとき、ラルに助けてって思ったから。……でも、お互いのところを行き来できちゃうんなら、ラルがぼくのところに行っちゃう可能性もあるんじゃ?」
「それはない。ワープ先の指定をするためにはチャームに触れる必要があるから」
手順として。
一、ペアのチャームを互いに身に付ける。
二、転送先にいる一人が自身のチャームに触れ、相手を強く念じる。
三、転送される側も同様に相手を念じる。
四、思いが重なった場合、転送先にいる相手のところへワープ可能。
こんな感じである。発動条件をこうも複雑かつ、限定的にした理由としては、悪用されないようにするためってのが一番である。仮に片方を誰かに拾われたとしても、事故ってワープされない、しないようにするためなのだ。
「互いを強く思い合う、か……ねぇ、ラル?」
「うん?」
「ぼく、さっきまでその条件を知らなかったよね。それでも発動するって信じてたってこと?」
「信じてたって言うか……確信してたよ。あの場の状況を考えれば、ティールは私を思わないわけないってね」
あそこには少なからず野次馬……もとい、参加者がいた。誰もがあそこを通りたいと思う人達の集まりで、アリアちゃんの泡攻撃を受けてしまった被害者も含まれていた。
そんなところに突然、泡攻撃を受けずに通過した者が現れ、手助けしたと思われる人物も目の前にいるのだ。そりゃ、怒涛の質問責めしたくもなるだろう。あの子はどうして切り抜けられたのかと、問い質したくもなると思う。
そうなれば、ティールはどう考えるか。ご丁寧に説明して、その場を切り抜けようなんて考えない。まず、私に助けを求めるはずだ、と。だから、何も言わずに私はあちら側へと渡ったのだ。
もちろん、伝えて渡ってもよかった。むしろ、そちらの方が確実ですらあった。それでも、ティールなら問題ないと思ったのだ。
だって、私とティールは相棒だから。そんな根拠のない自信もあって、問題ないと確信していた。
「あの状況下でティールが私に助けを求めないわけないでしょ。心で強く思ったんじゃないの? ラル、助けてって♪」
「う……ま、まあ、その通りだよ。なんか、見透かされてて凄い恥ずかしいけど」
ふふん♪ 当然でしょ。
「それで? これの実験結果としては成功ってこと?」
「そだね。概ね、成功と言えると思うよ。きちんと完成したらまた付き合って貰う」
「……今度は空中にワープしないことを祈るよ」
流石にそれはもうないと思うけど。
ワープの原理の種明かしをし終える頃には、噴水広場まで戻ってきた。
舞のステージは残ったままだが、演者は誰一人いない。当然、参加者もまだ街中を探し回っているのか、私達の辺りには見当たらない。
ティール、残り時間は?」
「ん~と、あと十五分くらい」
うん。ショートカットしたお陰で、予定より早く到着できてる。迂回していたら、ギリギリだったもん。
なんやかんや色々あったものの、普段の仕事より体力も気持ち的にも余裕はある。そうなるように二人で行動していたのだから、当然の結果と言えよう。
「よし、作戦について簡潔に伝える」
「了解。何をしたらいい?」
「それなんだけど、ティールはこれと言った何かする必要はない。強いて言うなら、この後姿を見せるだろう双子の片割れを捕まえて欲しい。確実に、ね」
ティールはぽかんとした表情のまま首を傾げる。あれこれ言いたいことがあるのは分かる。でも、今は何も言わずに信じていただきたい。
「捕まえるのはいいけど、そう言うってことはここに現れるって思ってるんだよね。ツバサ達が」
「うん。少なくとも、ツバサちゃんは来ると思う。で、彼女を捕まえれば自然とツルギ君も現れるよ。彼はお兄ちゃんだから」
「……その根拠は?」
実のところ、確実に現れるという証拠も根拠もない。それは初めから予想していた部分だ。それでも、もしここに姿を見せてくれたのなら、捕まえる自信はある。それだけは確信しているのだ。
「ん~……そうだね。ツバサちゃんは私のことが大好きだから、かな?」
「……それだけの理由で上手くいくって思えるわけ?」
「いく。ツバサちゃんは私が大好きで、ツルギ君はティールが大好きだからね」
「何度聞いても意味分かんない……けど、君がそう言うなら、信じるよ。というか、それしかやれることもないからね」
そゆこと。
腹を括ったらしいティールは私と背中合わせになると、辺りを警戒し始める。どこから飛び出してきてもいいようにと周囲を見回し始める。
それは私も同じで、眼鏡を装備して、ティールとは反対方向に目を向ける。双子を見逃さないようにじっと観察していく。
気になることが一つだけある。
これが始まってすぐ、私を見ていた精霊がいた。その精霊はこちらを気にかけるようなそんな視線を向けていた。もちろん、この催し物中、ずっとそれを感じていたわけではないから、絶対なんて言えないけれど。
「……みっけ」
私の視線の先には民家だろうか。シンプルな建物がある。そこの白い壁の突起物─今回のために取り付けられたものだと思われる─に壁の色と同化するように狐が一匹鎮座していた。その狐は遠目から見てもかなり疲労しているのが窺えるものの、こちらから目は離さないようで、じっと見つめてきていた。
時折、感じていた視線と同じものだ。
「……ティール、五秒後に」
「分かった。任せる」
この作戦が成功するか否か。私にしては珍しく、ある種、出たとこ勝負なところはある。
さあ……運試しといこう。



~あとがき~
え、終わらん……(汗)

次回、ラルを見つめる狐は……?
『神子探し』完結! お楽しみに!

今回はラルとティールのあれこれに突っ込む必要はないと思うので、ラルが作ったワープ道具の話の補足をします。
あれは分類的に魔法道具。詳しく書きませんでしたが、使われてる石が魔力石でして。人の思い(考え)を読み取る精神系の魔法と転移系の魔法を組み込んでると思ってくれれば。
そもそも、この世界の道具っていくつか種類があって、ややこしい。って私は思ってます!←え
その中でも多分、魔法道具(もしかしたら、『魔法具』表記してるかもしれん)と魔道具(別称:魔具)が一番ややこしいなと。名前似とるし。
魔法道具は魔法を組み込んだ道具のこと。
魔具は魔法を使えない人々が代わりとなる技を出すための媒体の総称。
一言で表すなら、こんな感じかなと。
……って、私は解釈してまぁぁす!!
合ってるかは相方に聞いてください。きっと、Twitterで答え合わせしてくれるんで←

ではでは。