satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第82話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の日常を描いた話です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
トーナメント戦で、ゲストとして呼ばれていたというヒナギクの二人を襲ったらしいタイガ。その人をどうにかしまっしょいってところでしたね。
イグさんがどうにかしてくれますよ。(他人事)


《L side》
しかし、これでユーリ君の言っていた問題とやらも理解した。彼も参加者とは言え、生徒会の一人であり、大会準備中には資料作りをしていたのだ。そこでゲストのヒナギクを知ったのだろう。あるいは、近くにいたリアさんから説明を受けたかもしれない。どちらにせよ、ゲストの二人が怪我してしまった事実は変わらない。この状況を問題と言わず、何と言えばよいのだろうか。
「……こんなん呼ばれても、どうしようもないやつですやん。面倒臭い!」
今は、イグさんが相手しているタイガをどうにかするのが先決だ。ゲストをどうするとかそれは後回しにする。それが普通である。しかし、すぐに考えなくてはいけない問題だ。
あーもう! どうする!? 私一個人でどうにかできるか?……できるわけないだろ!
私の焦りが伝わったのかは知らないが、ヒナギクの片割れ、ピースさんがしゅんとした様子でリアさんを見ていた。
「すんません、姐さん。……その、おれらが不甲斐ないばかりにこんなことに」
「それは気にしなくても大丈夫。……それよりも、周りに被害がいかないようにって思ったのかもしれないけれど、少しは自分の身も守りなさい。ちゃんと受け身を取らないから、二人とも、骨折しちゃってるじゃない」
救護班担当者達による適切な処置で、ある程度の痛み緩和され、手当ても済んだようだ。包帯や骨折した箇所に当てられた添え木なんかが痛々しい。
しゅんとするピースさん同様、スペラさんも同じように小さくなっていた。
「面目ないっす……」
ヒナギクはリアさんとイグさんを慕っているようで、そんな二人の期待を裏切った形になってしまい、申し訳なく思っているのだろう。今回の話も、イグさんから持ちかけられたようだし、尚更だ。
「あ、あの……リアさん? もう一ついいっすか? 喧嘩になったのは分かるんすけど、なんでこう……見世物っていうかお祭り騒ぎに?」
アラシ君の言う通りだ。目の前で喧嘩、暴力沙汰が起きていているのに、パニックになっていない。その理由はリアさんの張った結界があるから。そして、その中にいるイグさんは相手に手加減している状況。……それだけを見てみれば、なんとなく想像できていた。
「あぁ、それはね。イグの機転なの♪ これが公になれば、最悪、大会中止もあり得るわ。そうならないようにって、喧嘩風のバトル勝負に見えるようにしたのよ」
「なるほど? だから、わざとらしく立ち回ってんのね。ま、その体でいくと、さっさと終わらせちまえば、客も興醒めだろう。間違ってはねぇけど……なんつーか、別問題がな」
フォース君の言いたいことも分かる。別の意味で大会に支障が出ていると言いたいんだろう。しかし、それに関しては、結果論だ。もしかしたら、軽傷だったかもしれないのだから、イグさんのバトル勝負に見せかけるという判断は、今できる最善策だと思う。
「タイミングを見計らって取り押さえるみたいだから、イグに任せてもらえる? ラルちゃん」
「それは分かってます。実力で言えば、あの人よりもイグさんが数十倍も上。私達の助太刀なんて必要ないですよ」
「さっすが、アニキと姐さん。一言も会話を交わしてないのに、そこまで通じてるんすから」
「愛っすね! 愛のなせる技っす! 姐さん!」
スペラさん、ピースさんの予想外の言葉に、リアさんは顔を赤くする。学園内だけでなく、外部にもその熱々っぷりをお見せしているようで。
「あ、イグさん、怒ってる」
思わず、「イグさん」呼びになっているティールの呟きに、私はイグさん達へと視線を戻す。
先程から、相手の罵倒にもニコニコと対応していたイグさんだったが、タイガの攻撃をひらりと避けた後、大剣を器用に使って彼を転ばせた。そして、素早く相手の腕を掴み、拘束しているところだった。その一瞬、ちらりと怒りの色が見えた。
「ははっ♪ いっくら俺が寛大だって言っても限度ってものがあるわけよ~♪ 分かる?」
「くっそ……! 離せ!」
まだ優しく語りかけているイグさんの話に聞く耳を持たないタイガ。どうにかして、イグさんの拘束から逃げ出そうと、無様にももがいている。しかし、誰がどう見ても、イグさんの勝ちだ。
全く。イグさんが丁寧に相手してくれていたときにタイガは降参すべきだったのだ。それが賢い選択だったのに、なぜそれに気付かないのだろう。
無駄に抵抗を続ける男を見下ろすイグさん。大きなため息と共に、低く怒りのこもった声が響く。
「……いい加減にしろよ。お前。手加減してやってるのが分からねぇのか? あ? こちとら、お前さんの腕の一つや二つ、貰ったっていいんだ。それだけの被害を出してくれてるからな。……なぁ、タイガ?」
そこで一旦言葉を区切ると、そっとタイガの耳元に顔を近づける。
「────、────」
「ひっ……!?」
私にはイグさんが小声すぎて、何を言っていたか分からない。唇を読もうにも遠すぎて見えないのだ。だから、それをしっかり聞き届けたのはタイガ本人だけだろう。どんな内容だったのか、言った当人か、聞かされた彼に聞くしかないのだが、タイガの反応を見れば、おおよそは推測できる。できるが、私の今後の精神を守るためにもする必要はないので、予想立てはやめておこう。
「ふへー……ひっさしぶりにイグさんのキレるところを見るかと思った~」
「一歩手前だな、あれ。怒ってはいる」
幼い頃からイグさんと触れ合ってきたレオン君と、実の弟であるアラシ君は、若干顔を引きつらせつつも、どこか安堵している様子だ。マジ切れイグさんを見なくてすんだからだろうか。
「……お? ラル達いるじゃん! 丁度よかった。こいつ、警察につき出すから連絡頼めるか? あと、フォース、大丈夫だとは思うんだけど、一応、拘束よろしく~♪」
タイガに向けていたお怒りモードはどこへやら。私達に話しかけてきたときには、いつもの笑顔を浮かべた、イグさんだった。その豹変ぶりに寒気を感じつつも、ある意味日常であると言い聞かせ、ぴっと敬礼ポーズ。
「仰せのままに~!」
「うぃーす」
イグさんの言う通り、警察……あと、応急手当がしてあるとはいえ、怪我をしてしまったヒナギクのために病院にも連絡をティールに任せる。
私は集まってしまった人達に向かって、これを締める必要があった。
これは、あくまでも喧嘩っぽいバトル。こちらで企画したエンターテイメントだった。……よし。
集まってしまった野次馬に向き合う。興奮冷めやらぬ人達に向けて、語りかけた。
「お集まりの皆様、驚かせてしまったかもしれませんが、お楽しみいただけましたでしょうか? 現役探検隊、冒険家による、バトルを間近でご覧いただけたようで何よりです♪ すこぉし熱が入ってしまいましたが、ご心配なく! 問題ありません」
できる限りの声量でなるべく、全員に聞こえるように話していった。そして、大袈裟な動きを取り入れながら、人々の視線を集めていく。
「午後から執り行われる、学園の生徒達のトーナメント戦も負けず劣らず、白熱したバトルを皆様にご覧いれましょう! 今の勝負がその余興となったのなら、幸いです。……これで、探検隊達による勝負を終了とさせていただきます。それでは、このあとの大会もゆるりとお楽しみくださいませ! レイディアント学園高等部、生徒会会長のラル・フェラディーネでした!」
いい感じに締めくくりの言葉を言い終わると、野次馬から拍手を貰ってしまうという事態にはなったものの、どうにかパフォーマンスの一つだったと思わせられたようだ。
いやぁ……何故、私はこんなことしてるんでしょうねぇ……?

適当な出任せのお陰で、大した騒ぎもなく、野次馬達も散っていった。その後で、タイガを警察、ヒナギクをお医者さんに引き渡して、ようやく落ち着きを取り戻した。
また、突然の事態に対応してくれた警備の子達や生徒会の子達、一人一人に礼を言う。彼ら彼女らには持ち場に戻すなり、昼休みに戻るなりして貰い、この場にいるのは計十一人。先生の二人と、その場に居合わせてしまったユーリ君達、そして、後から駆けつけた私達だ。
「とまあ、先生達が何とかしたわけですが……ラル先輩、どーするんすか?」
「私に聞かないで……キーくん」
そう。この騒ぎを収めたところで問題は残っている。ヒナギクの代わりだ。
「腕と足の骨折じゃ、ゲスト参加は辞退せざるを得ないですよね?」
「ですです。それに、プログラム内容的にも難しいですよ。会長様」
ユーリ君とリリちゃんも心配な表情だ。生徒会の一員として、大会を成功させたいという目的がある。それは痛いほど理解しているし、私だって同じだ。しかし、今更、なしで! なんてできっこない。リュウ君の方でゲスト参加の旨を伝えてしまっているから、なかったことになんてできないのだ。
「トーナメント開始まであと三十分くらいですよね……? ゲストさんの参加っていつくらいでしたっけ? 後半?」
「そ。そこに参加者いるから多くは言わないけど……多く見積もっても三時間後にはどうにかしないとまずいな」
不安そうなツバサちゃんの質問に、通常運転のフォース君が答える。内心は慌ててるかもしれないが、表情に全く出ていないので、恐らく、そこまで焦っていないのだろう。
「ぼくらの知り合いに当たる? 都合つくかな」
「えーでも、イグさんがヒナギクをどう選んだかにもよるんじゃない?」
ちらりとリアさんを見る。それに気付いたリアさんは、んと、と少しだけ考えてから、口を開く。
「人柄と知名度と実力……だったと思うわ」
むっずかしいな。それ。
親方に連絡してみるか? いや、そもそもあの人が通信に出るかも微妙だ。なんでこういうときに限っていないんだ、あの人。では、ノウツに取り次ぐか? いやいやいや! こういう非常事態に弱いノウツ巻き込んでどうする。
「あ……それについては、俺に考えって言うか、提案がある♪」
と、イグさんが言うと、私の方を見る。満面の笑みをこちらに向けていた。
「? 兄貴?」
あ、嫌な予感。
「人柄がよくて、知名度も実力も申し分ない探検隊、もしくはそれに見合う部隊の人達を探せばいいんだろ? それなら、俺の目の前にいるよな。……探検隊『スカイ』のリーダーのラル、及びその隊員であるフォースがさ。これなら、来賓も教師陣も全員が納得できる、ぴったりな代わりだと思うんだけど」
「「「は、はあぁぁぁ!!??」」」
突然のご指名に、スカイメンバーのフォース君、ティール、そして、私の三人の叫び声がこだました。



~あとがき~
もう少しやりたかったけど、長くなると思うので切りました。

次回、ヒナギクの代打に指名されたスカイのラルとフォース。いったいどうする?

イグ兄さんのお怒りモード台詞や描写。プロット時よりも盛ってます(笑)
そして、結局、タイガの描写を入れないという……まあ、人でプライド高めのヤな奴だと思っててください。二度と出てこないんで((

ではでは!