satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第189話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
ティールの過去の話をつらつらやってます。過去っつーか、独白みたいなもんすね。
今回もちろっと残ったやつと、ラルとティール二人でお話をしますぜ。


《Te side》
母上との仲は案外、早くに解消された。母がコミュニケーションの鬼だってのもあるし、しつこいってのもあるけど。なんか、気がついたら、今まで通りに話せるようにはなった。……それでも、時間はかかったと思う。
しかし、前から王としての責務に追われていた父上とは、話す機会もなく、上手く付き合えなくなった。
気紛れに剣の相手をしてくれたり、何かしらのアクションはあったけれど、それも長い会話に繋がらない。元々が無口な人で、多くを語らない人ってのも原因なのだろう。
それもあって、父上の本音が見えないことが怖かった。昔は、父上のちょっとした雰囲気の変化も感じ取れていたはずなのに、分からなくなっていたんだ。
ティール」と呼ばれるだけで、少し会話を交わしただけで、過剰なまでに奥底を探ろうとしてしまうようになった。この人は何を考えているのか、何を感じて、ぼくにどう感じてほしいのか、そんなことばかりを考えてしまう。
それが、積み重なって、父上を信じきれなくなって……不信感に変わって、父上を見ることすら疲れてしまった。
人伝いに父上が「こうだって言ってた」なんて聞いても、本当に聞こえなくなるくらいに、父上を避けていた。ううん。きっと、嫌っていた。ぼくをきちんと見てくれない父上が嫌いだったんだ。
そんなことないはずなのに。母上を見れば分かる。父上はそんな人ではないと。
でも、どうしても、それを信じられなくて。
今でも、見てくれないんじゃないかって。ぼくのことなんて本当はどうでもいいって思ってるんじゃないかって。
そんなことばかり考えていたからだろう。今でも、父上が分からない。向き合うのが、怖い。
きっかけは些細でも、ずぅっと心にあるその思いだけが、絡み付いて離さない。
幼い頃のぼくが、未だに父上を許してない。そして、それは今のぼくでもあるんだ。

「……ありがと。話してくれて」
聞いていて、いい気分になる話じゃないのに、ラルは優しく笑って、そう言ってくれた。そして、ゆっくり言葉を選ぶかのように口を開いた。
「私には家族関係のことは分からない。親なんていないし。そもそもそんな記憶もないしね。……でも、ティールの感じたその気持ちは紛れもなく、本当なんだと思う。だから、自分を追い詰める必要はないかなって」
……追い詰めてる?
ぼくが不思議そうにしていたのか、ラルは小さく笑う。
「だって、ブライトさんだけが悪くないって知ってるのに、信じられない自分がいてさ。それが嫌なんじゃない?」
「……あ」
「それはティールが優しいからだと思う」
そう言って、ぼくの手を握る。手のひらから彼女の温度を感じる。それは、優しい体温で。冷たかった体を溶かしてくれるような気がした。
「……あのさ。今日、ルーメンさんに誘われたあれも、どうしたらいいか分かんないんだ」
家族のことを、父上を知りたかったらって言われると……正直、気分が進まない。けれど、ルーメンさんは何かしらの意図があって、あの提案をしたんだと思う。それを知りたいとも思うけれど。
「うーん。まあ、しんどいなら行く必要はない。だって、仕事じゃないし。お願いだし。……でも、すこーしでも敵を知るにはいい機会だと思わない?」
「敵?」
敵って誰だろ……え、まさか、父上?
「知らない相手に挑むとき! ダンジョン攻略をするとき! 私は情報を集める。あの敵はどういう見た目? 攻撃手段は? 弱点は? ダンジョンなら、形状は? 地形は? 出現するモンスターは? 集められるだけの情報を集めるんだよね」
あ、あれ。なんの話だ……?
戸惑いを隠せないぼくに、ラルはお構い無しに話していく。
「全く知らない相手と戦うのはリスキーだよ。もちろん、戦いの中で知ることもあるけどさ……つまり、だよ。ブライトさんとちゃんと向き合うためには、まずは情報を集めるのだ」
「父上と、向き合うため?」
「そそ。それは本人以外からも得られる。今回はちょうどいい情報源があるじゃない?」
ルーメンさん、か。
ラルは力強く頷く。そして、パッと明るい笑顔でこう付け加える。
「まあ、何度も言うけど、嫌なら無理に行かなくてもいい。けど、時間は待ってくれないことだけは頭に入れておくのだよ、相棒?」
……今回は逃げてばかりじゃいられない。なら、今は、立ち向かうべき、なんだろう。
「あと、これだけは言っておこっかな」
「……うん?」
「昔の……小さなティール君の居場所はなかったかもしれないけれど、今のティールの居場所は一つじゃない。『スカイ』が……チームがティールの居場所だよ」
ラルは繋いでいた手を離し、ぼくの目の前に立つ。そして、パッと両手を広げた。
「それに、私がいる」
「……ラル」
ティールがどんなにしんどくなっても、私が受け止めてあげる。だから、ルーメンさんと話をする気があるなら、どーんとぶつかってこい! 大丈夫。私はちゃんとティールを見てるよ。いなくなったりしない。……そう言ったでしょ?」
あぁ……そうだね。そうだ。
君はいつでも、ぼくがほしい言葉をくれる。味方でいてくれて、対等でいてくれる。
正面に立って、先導してみたり、隣で歩いてくれたり。かと思えば、後ろで見守ってくれていたり。不思議な女の子だけど……それが、ぼくの親友で、相棒で。
彼女の言葉が柔らかく、優しくぼくの心を包むかのように広がって、じんわりと暖かくなっていく。それは心だけじゃなくて。
「……っうぅ」
「な、泣くほどでした!? え!? な、なん……どれ!? 本当は話すの辛かった……?」
流石のラルもぼくが泣くなんて思ってなかったらしく、かなり驚いている。ぼくも君に泣かされるなんて思ってなかった。どんだけ弱ってるんだ、ぼくは。
止めようとして手で拭うけれど、そんなんで止まるのなら苦労はしない。それどころか、止めどなく溢れてくる涙を抑えられなくなっていた。
「べ、別に……話は、だいじょぶ、だった。……泣きたくはないけど……なんか、うぅ……ラルに泣かされたぁぁ……!」
「うぇぇぇ!? ごめん!? いや、おかしい! 私が謝るのはおかしい!」
「い、今更だけど……けっこう、せい、しん……うぐ……やられてたんだなぁ……って。うぅー! ラルの言葉に落とされたぁ!!」
「そこまでして私のせいにしたいか!」
君のせいだよ……責任とって……
結構な無茶振りしたつもりだったけれど、ラルは少しだけ考えて、むぎゅっとぼくを抱き締めた。ここが中庭で誰か見てるかもしれないなんて状況を忘れ、ぼくも反射的にラルのことを抱き締める。
「ほら、もう泣くなってば」
「優しくされると、さらに決壊する……ラルの馬鹿」
「へいへい。私は大馬鹿ですよーだ」
数分の間……厳密に言えば、涙が止まるまで、ずっとこのままだった。夏の暑さも人の目もお構い無しに。
止まったと思って、そっとラルから離れる。
「……ごめん。ありがと」
……滅茶苦茶、酷い顔してる気がする。このあと、ツバサ達と会うのに。どしよ。部屋に籠ろっかな。
「冷やせばええんでーの? ほれ」
ポケットから取り出してきたのは淡い桜色のハンカチだった。ハンカチだけ渡されても、別に濡れてもいないのだが。……あ、自分でやれと。
ぼくは無言で受け取り、片手に懐中時計、もう片方にハンカチを持つ。そして、技を使ってハンカチを濡らした。その濡れたハンカチを目元に当てて、ぼうっとしておく。
何この一連の流れ。空しい……別の意味でも涙出てくるぞ。
「……ねえ。君が身に付けてる魔力石でやってくれてもよかったよね」
「これ、飾りなんで。術なんて使えないんで」
嘘をつくな。嘘を。それ、ぼくが昔あげたやつだから! きちんと術、発動するだろ! 大会でも使ってるの見ましたけどぉ!?
「……はあ。なんでぼく、ラルに泣かされてんだ」
んでも、よくよく考えると、君には泣かされてばっかりな気もするなぁ。今回のこれもそうだし、この前のなんちゃってお化け退治もそうだし……あとは……
「待て待て。百歩譲って今回は認める。とどめ指したのは私かもしれない。けど、この前の屋敷は違うんじゃないかなぁ!?」
「黙ってつれてった。有罪」
「ぐぅ……ん? あれ、泣いてたん?」
心で号泣してた。
「……せっこいな。その基準」
「君の飛び降りから始まって、今だから。反省してよ」
飛び降りとは、ラルが中学編入してすぐにあった事件だ。詳しい説明は省くけれど、とある女子生徒からの言動がきっかけで、ラルが最終的にとった行動が女子生徒の前で『飛び降りる』だった。もちろん、ラルに死ぬ気はなく、事前に対策をしていたらしいので、完全に仕込みありのドッキリ企画みたいなもんだ。まあ、ぼくは全く知らなかったので、大慌てで助けに入りましたけれど。何も知らなかったから、あれこれ捲し立てた結果、泣いた記憶がある。
考えてみてほしい。成り行きで探検隊組んで、色々あって一緒に住んでる女の子が、教室のベランダの手すり乗り越え、無表情で躊躇いもなく飛んだんだよ? そんなん泣くわ。
「あの件言われると心苦しいですが……なーんで怒られてんだろ。……けどま、いつものティールになったようで」
「おかげさまで!」
「食いぎみぃ……」
余計なことまで思い出したけれど、そのおかげで、かなり気分は軽くなった。ルーメンさんとの話を前向きに検討できるくらいには。
これも、隣の相棒のおかげだ。
「……いつもありがとう、ラル」
「どういたしまして。ま、私がしんどいときティールが助けてくれるしね~……お互い様よ。気にすんな」
ん。分かった。



~あとがき~
最後の最後でいつもの空気になってよかった。楽しい。

次回、ご飯食べるぞい!!
その前に集合だな!

前回今回とティールの本音と言うか、家族との関係についてつらつら述べました。
あれこれごっちゃごちゃに書きましたが、要するに小さい頃の経験が、今でも影響してるってことですね。母親のセイラはティールの壁を壊してしまいましたが、父親のブライトはできてない。そんな感じですね。
それをどうにかするのは……また、近いうちにね!

ラルの飛び降り事件について。
かなーり前(ツルギ君初登場編)にティールが言っていた、あの件についてってやつです。「無茶ばかりしやがって、あれは忘れてないぞ( ^ω^ )」みたいなところのやつですね。あとは、ちょっと前に出てきてた、ラルの人間不信の原因ですね。これは。

ではでは。