satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第227話

~attention~
『空と海』のキャラ達の学パロなif世界物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
番外編を挟み、レイ学本編に帰ってきました。そんな本編、前回はルーメンおじいちゃんに諭されるティールでした。その続きっすね!


《Te side》
「……ティールはそのままでよいのかの?」
両者が何も発しない沈黙の時間を破ったのは、言わずもがな、ルーメンさんだった。
その言葉にぼくはゆっくりと顔を上げた。
「王子を辞め、探検隊として生きるのはいい。……じゃが、自分の思いを両親に告げぬままで本当によいのか?」
「ぼくの、思い……? けど、今更、何を言えば」
「ふむ。……ティールや。お主はサフィアさんが亡くなった時、両親に一度でも『寂しい』と伝えたかの?」
その問いにぼくは小さく首を振る。
そんなの言えるわけがない。そんな場合じゃなかったのは、幼いぼくにも分かった。それくらい慌ただしかったし、空気も言い出せるものでもなかった。
「『忙しいのは知っている。でも、寂しかった』……『なんで、あのとき、ぼくを見てくれなかったのか』……なんでもよい。そんな言葉をライト達と交わして……なんなら、泣きわめいてもよいと思うぞ」
「いや、それは……流石に迷惑でしょう?」
「なーに、子が親を気を遣っておる。子は親に迷惑をかけてなんぼじゃろう。儂かて、今でもセラに面倒を押し付けられるくらいじゃぞ?」
それを聞かされたぼくは、どんな反応をするのが正解なんだろう。そもそも、理事長のそんな一面、聞いてよかったんだろうか。
「それに、お主の場合、きちんと言葉にせんとライトにゃ伝わらん」
ぼくの疑問や戸惑いなんてどこ吹く風のルーメンさんは、勝手に話を進めていく。
「儂に話したように、思ったまま……ありのままを話せばよい。あの唐変木のことじゃ。はっきり言わんと、一生、ティールのことなんぞ分かりはせん」
「……」
「ライトは昔から自己主張が低い。しかし、お主から話せば、ライトは向き合ってくれるじゃろう。まごまごしつつ、答えるに決まっておるわ」
……そんな父上、想像できないけど。でも、もしそうなるのなら……そうであるのなら、話してみるべき、なんだろう。逃げずに、向き合わないと。
「そういう男なんじゃよ、ブライトは。……それと、セイラさんじゃがの」
「母上……?」
「先程、ティールは申し訳ないと言っておったが、あまり気にせんでよいと思う。あれは、セイラさんが子離れできとらんだけじゃし」
……思った以上にストレートに言ってくるな。
「子はいつか離れるもの。お主らにとって、それが少し早かっただけに過ぎん。それに、定期的にあちらに帰っておるんじゃろ?」
「い、一応は」
「なら、問題はなかろ。こちらに来て、ただの一度も帰ってないと言うのなら、別問題じゃがの♪」
そういうものなんだろうか。帰るとは言っても、嫌々というか……あれなんだけど。
「……とまあ、色々言ってきたが、今までの話は年寄りの戯れ言。後はティール自身が向き合うべきじゃろうな。何、時間はあるから、ゆっくりで構わんさ」
「は、はい……ありがとう、ございます」
「もし、また自分自身に押し潰されそうになったら、パートナーを頼りなさい。儂とはまた違った助言をくれるじゃろうから」
「あ、はい。……多分、そうだと思います」
ラルのほわっとした暖かな笑顔を思い出しながら頷いた。こちらも自然と、笑みも溢れてしまうくらいだ。
それを見たルーメンさんは、楽しそうに笑った。
「ほっほっ♪ それに、こんな年寄りも大切な相棒の方が気が楽かもしれんからな~♪」
「えっ……? いやいや! ルーメンさんに聞いてもらえて助かってますよ!?」
「それなら嬉しいんじゃが、実際問題、愛しのパートナーの方がよかろうて」
「や、別にそんなこっ……ん? 愛しの? 誰が? 誰と?」
「お主のに決まっておろう。ティールとラルは恋人同士じゃろ?」
「え……ラルと、ぼくが?……んなわけないでしょう!? あり得ませんって!!」
何を! どこを! どう見たらそうなった!? あぁ、いや、学校でもたまに言われるけども! 断じて違うからね!?
「ぼくとラルは仕事上ではパートナー同士ですけど、基本は友達です。友達というか、親友なだけで、それ以上はないですから」
「……ほう?」
あれ? あ、あまり納得してない……?
そりゃあ、ラルとは普通の女友達よりも距離感は近いとは思う。でもそれは、普段から一緒にいるからだし、仕事の付き合いもあるからだし、パートナーだからであって……特別な関係はない。
それに、ぼくからすれば、ラルを世話してる感覚だ。ふらふらっといなくならないように見張っているというか……くそ。なんて言えば納得してもらえるんだ。
「流石、ライトとセイラさんの子じゃの。足して二で割った感じだの」
「……え? 何が……?」
いきなり褒められたのか、呆れられたのか分からない。何の話なのかも見えてこない。
「いやいや。何でもないぞ。まあ、今はティールの言う通りにしておこうかの」
「え、いや、どういうことです?」
「年寄りの独り言ということさ。……しかし、ティールは、もう少し自分の感情を理解すべきだの」
……どういうことだろ。さっきの思った通りの気持ちを言葉にしろってやつか?
「まぁ、その辺りは若いもん同士で何とかなるじゃろ!」
この言い方は……違うやつだな。え、これは何の話だ?
深く聞き出そうとした瞬間、ルーメンさんはぼくからふっと目線を外して、部屋に飾ってある時計に目をやる。
「そろそろ時間かの?」
「え。あ、もうそんな時間か」
今晩は話に集中し過ぎて、チェスなんて忘れていた。今日はステイルメイトしたわけじゃないけど、また、勝敗はお預けか。
「今晩も話し相手になってくれてありがとの~♪ 気を付けて部屋に戻るんじゃぞ?」
「はい。こちらこそ、ありがとうございました」
いつになったら、チェスの勝敗がつくのか。そもそも、つける気はあるのだろうか。……疑問に思えてきたぞ。
別の意味でモヤモヤしながら、ルーメンさんの部屋を後にした。昼の賑やかさとは対照的に、しんと静まり返った廊下を歩いていく。
一人で考えるのは、やはりさっきの話の内容。
ぼくはそう簡単に、自分の立場から逃げられるものではないと思っていた。王の直系の子孫はぼくだけだから、いつかは、嫌でも王子としての役目を果たさねばと。王族の下に生まれた者として、それが当然で、当たり前だと思っていた。今の探検隊としてのぼくは、その『いつか』のための途中経過でしかないのだと。だって、ぼくと同じように修行に出ていたお祖父様も父上だってそうだったから。
だから、あんなあっさりと「王子を辞めて、探検隊を続ければいい」なんて言われるとは思ってなかった。
……そういえば、ラルはどう思っているんだろう。
ラルはぼくが王子だってとっくの昔から知っている。彼女は賢い人だ。探検隊をやり始めてすぐにでも、ぼくとの探検隊に終わりがあると考えていてもおかしくはない。
ラルは今後をどう考えているんだろう。もっと言ってしまえば、学園を卒業した後のことを。お互い、その辺りの話はしたことがないから、どうなるのかよく分かっていない。
「進路かぁ」
彼女なら何だってできるんだろうな。
だからこそ、これからもぼくと一緒にやってくれる保証なんてないのかもしれない。
それならそれで、素直に受け入れるしかないか。ぼくは修行を終えて、国に帰って、ラルは好きなことをする。それが彼女の幸せになるのなら、優先されるべき……だけど。
「それは、少し……いや、かなり……」
寂しいというか、モヤモヤするというか……釈然としないというか。よく分からない感情が心を満たしていく。
これは、なんて表現するものなんだろう?



~あとがき~
とりあえず、ルーメンおじいちゃんとの会話はこれにて終了。

次回、部屋に帰る途中の悩めるティール君の前に怪しい(?)影が……!
お楽しみに。

ラルの卒業後の考えは昔にご紹介した通りです。探検やる気満々です。けどこれは、ティールに言っているわけじゃないんでね。どうでもいい会話はこれでもかとやる二人ですが、肝心な部分は触れていかない二人。お互い、手探りですね。
ま、ラルの場合、突っ込むのを遠慮しているだけで、ティールはあまり先のことを考えず、現実逃避してるだけですが。

ではでは!