satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第208話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でほのぼのしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、仕事を終えた雫と合流し、観光はじめっか~というところで終わりました。今回から本格的に観光します!


《L side》
「私、ラルさん達にご紹介したいところがあるんです!」
意気揚々と街に繰り出してすぐ、ツバサちゃんが行きたいところがあるようで、そちらに向かうことに。ツバサちゃん先頭にやって来たのは、街の中心に位置する噴水広場である。
大きな噴水に加え、水まきでの冷水も出ているためか、広場では子供達が水遊びをして大いに賑わっていた。
ティールさんが一番気に入ると思うんですけど……あ、あった! こっちですよ~♪」
ティールが一番気に入る……ねぇ?
その言葉だけで、なんなのか分かりそうな気もするが、それを推測する前にツバサちゃんは、ぱたぱたっと一直線に駆け出した。
向かう先には広場の隅っこで何かを露店販売しているおばあちゃんがいた。
何か看板が出ているわけでもなく、本当に簡素な露店だ。というか、露店であっているかも怪しく思えるくらい、表に出ている情報が少ない。
いつもなら近づきもしないのだけれど、ツバサちゃんが行ってしまったので、遠くで見ているわけにもいかない。そもそも、彼女は私達に紹介したいと前置きしているのだ。普通に考えれば、あの露店が目的地なのだろう。
ツバサちゃんに遅れて、おばあちゃんがやっている露店へと近づく。そこでは、満面の笑みを浮かべたツバサちゃんが元気よく挨拶をしているところで……
「こんにちは! イネおばあちゃん!」
「ん? おお! 神子様でねぇべや! こっちさ、いつ来たと?」
鈍り全開だな……このおばあちゃん。
「昨日ですよ~♪ ラルさん、ご紹介しますね。いつもここでアイスを販売しているイネおばあちゃんです!」
アイス?
よくよく露店の近くを見てみると、子供達がアイスを美味しそうに食べている光景がところどころで見られる。そのアイスを売っている主がこのイネお婆さんなのだろう。
お婆さんは私、ティール、しーくんと順番に見て、ツバサちゃんに目線を戻した。
「今日はまた、随分とめんこい人達を連れてきたの?」
えっと……めんこい。はて。誰のことだろう。しーくんだよね? そうだよね? 間違ってもティールのことではないよね? ね!?
……いやぁ、でも、こいつ女装したら案外イケるんだよなぁ……ワンチャン、こいつも……頭数に?
観察するようにじーっとティールを見ていたからか、その視線に彼も気づいたらしい。少し困惑したように首を傾げる。
「ラル、どうかした?」
「君の可能性について考えていた」
「ぼくの? 何、ワケわかんないこと言ってるのさ。……初めまして、イネさん」
「こんにちはー!」
私の意味不明な発言からは早々に切り上げ、ティールは目の前の老婆に優しく微笑みかけた。それに合わせるように、しーくんも元気よく挨拶をした。
「イネおばあちゃんのアイス、美味しいんですよ!」
そこから簡単に、イネお婆さんの作るアイスの説明をしてくれた。
なんでも、毎日、この噴水広場の隅っこで子供達のためにアイスの露店販売をしているらしい。大きな缶に入ったアイスをヘラで掬い取って、コーンに盛り付けるそうな。
お値段なんと百五十G。子供の持つお小遣いでも簡単に買えてしまうアイスクリームである。
そして、ここがミソなのだが、このアイスの種類が二種類あるらしく……
「イチゴとバナナ味のミックスとリンゴ味の二つがあるんですよ!」
ということなのである。
ティールが気に入ると言った意味はここにあったのだ。当然、「リンゴ」の単語を聞き逃すような、リンゴ大好きライトユーザーではないティール君は機敏に反応を見せていた。
「んだら、神子様達の分、準備すっかや?」
「うん♪ 四つお願いしまーす!」
リンゴ味二つ、ミックス二つという注文を聞き、イネお婆さんは手際よく準備していく。
まず、コーンを手に取ると、片手でヘラを使いアイスを掬う。そして、そのまんまコーンの上に乗っけてしまうのかと思ったのだが、ヘラを器用に操り、アイスでバラの形を作り上げていく。
「ほわー! おばあちゃん、すごーい!」
「器用なんですね、イネさん」
素直な男性陣の感想にイネお婆さんも楽しそうに笑った。
「ずっとこの商売さしてきたんだ~♪ 目ぇ瞑ってもできるべな」
「いや、それは流石に危ないので手元見てくださいね……?」
ごもっとも。
お婆さんの冗談(多分)にもティールが律儀に突っ込みを入れている間に、頼んでいたアイス四つが完成した。
「ほれ、おてんとさんが溶かしてしまう前にたんと食べな?」
「ありがとうございます」
手渡してくれたアイス─私はイチゴとバナナのミックス─をちろりと舐めてみた。
舌触りはアイスというよりは、ジェラートに近いだろうか。しかし、アイスクリーム特有のミルクの濃厚な味わいも感じる。
これがアイスクリームに分類されるのか、ジェラートにされるのかは謎だけれど……多分、ジェラートだろうか。氷の粒も感じるし。
「気に入っていただけました?」
「うん! つめたくて、おいしーね! おばあちゃん、おいしーよ!」
ツバサちゃんの言葉に大きく頷いたしーくんは、作ってくれたイネさんにも弾けるような笑顔を見せた。どうやら、うちの愛する天使様のお気に召したようだ。
露店から少し離れ、私達は腰を落ち着けてアイスを堪能する。お互い、違う味を食べているしーくんとツバサちゃんで食べ比べをする中、リンゴ大好きティール君も大満足の笑みを浮かべていた。
「この世には、まだまだぼくの知らないリンゴの食べ方があるんだな~♪」
ちょっと何言ってるか分からないので、無視させてもらうとして。
リンゴそのものを食しているわけではないのだけれど、ティールはそれでも問題ないらしい。そもそも、リンゴ味の何かでも飛び付くような人だ。リンゴの果実でなくても、大して気にならないのだろうか。
こうなってくると、作り物のリンゴ味でも納得するのかな?
ティール」
「ん? なぁに?」
「それ、リンゴ使われてないとしても、ティールは美味しいと言える……?」
「美味しいって言うと思うよ。別にリンゴだけが美味しいと思っている訳じゃないからね」
そりゃそうだ。
「でも、これはリンゴ使ってるからもっと美味しいけどね!」
……さいですか。
私の反応が気に食わなかったのか、少しだけ不満そうにしていた。そして、ティールは持っていた小さなスプーンでアイスを掬い、私の口に突っ込んだ。前触れもなく。
「君もちゃあんと味わえばよさが分かるよ!」
そこは疑ってねぇ!!
しかしまあ、イチゴとバナナのミックスとは違う、さっぱりとしている甘さである。もちろん、こちらもアイスクリームに似たミルク感はあるのだが。どちらかと言えば、リンゴ味の方が自然の甘さと言うか、リンゴそのものの甘さを感じる。
「お、おいしいです……でも、いきなりこんなことしなくても」
「あはは。つい。ラルがリンゴの美味しさを疑うもんだから」
疑ってもないし、ついだと!? 『つい』でお前は、世の女の子が憧れるイケメン男子からのあーんを! してしまうというのか!?
「? 君はそれに憧れていたのかい?」
「……一般論だよ。一般論」
「ラル自身の話をしてるつもりなんだけどな」
「私? 興味ないですけど」
これが、付き合ってる体で行われていたとしたら、もう少し考えが変わるかもしれない。好きな男子からのあーんだと思えば……
いや、だからといって、有無を言わさずにアイス食べさせられるのはどうかと思う。トキメキもあったもんじゃない。
一応、目の前のイケメンは王子様ではあるけれど、夢見る乙女の思い描く王子ではないんだよな。こいつの普段の行動が。
「? ラル~? どーしたの?」
私とティールの会話が気になったのか、ツバサちゃんに分けてもらったアイスを食べていたしーくんが首を傾げる。
説明したところで理解はされないし、する必要もない。どうでもいい話の内容である。なので、私が返す言葉は一つだ。
「なぁんでもないよ。しーくんは気にしなくていーんだよ~」
「そーなの?」
「そーなの。……あと、ティールさん。二つ目はなしだよ。なし」
バレないように立ち上がったつもりだろうが、この私を誤魔化そうなんて百年早いというものだ。
こっそりおかわりしようとする、リンゴ王子を呼び止める。無視するような性格ではないティールは、先程と同じような不満そうな顔で振り返る。
「ラルのケチ~」
「アイス二つとか、お腹壊すわ!」
「そんなに気に入ってくれるなんて、嬉しいですっ!」
多分、リンゴだからだよ。ツバサちゃん。
まあ、彼女もリンゴ味があるから気に入るだろうと言っていた。分かっているとは思うんだけれど。
アイスを堪能した私達は再び、街に繰り出すのだった。もちろん、ティールのアイス二つ目の要求は無視して。



~あとがき~
夏の時期、アイスは必須アイテムだと思ってる私です。

次回、まだまだ観光やるで~

特に何とも思ってなかったのですが、こう話が進んでいくにつれ、この夏休み編、ラル&ティールの話が結構目立ちますね。これからのスケジュール見てても思います。多いです。予告しときます。多いです(笑)
というか、ここ最近、ラルとティールコンビの話が多いだけかな。フォース君がでしゃばってこないから、特に。そもそも、視点がラルなので必然的に隣にいるティールとの会話が増えるだけかもしれない。すまんな……
双子ちゃんやアラシ君、雫が近くにいるんだけどな。おかしいな~?(汗)

ではでは!