satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第287話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でのんびりしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ラルとイグさんがおデートしたり、リアさんとほのぼの会話したりしました。
それの続きっすね! お祭り前日譚!


《L side》
あの後、リアさん達とは別れ、私としーくんはティールを迎えに行くことにした。
「ラル、ティールはどこ?」
「ん~……まだ食堂にいると思う。迎えに行くって言ったから」
ヒノさんにスカウトされたティールはリンゴを使った商品(?)開発を手伝うため、食堂に残った。それがまだ終わっていなければ、いると思うのだが。
「あ、おと、とまった!」
「ん? あら、そうだね。練習、終わったのかな」
「きっと、そう! あのね! ラル、あした、ちゃんとみててね? ボク、がんばるから」
「もちろん。しーくんの頑張る姿は一瞬たりとも見逃さないよ」
見逃すわけないじゃないですか。我が子がこの夏、頑張って練習した成果を見れるんだもん。仲間として……いえ、親として、見逃すなんてあり得ない!
「ついたよ! あけよ!」
私としーくんとで、食堂の扉を開ける。
すると、中から数人の話し声が聞こえてくる。どうやら、まだ開発は続いているらしかった。
「……邪魔しないようにはしっこで座ってよっか」
「はーい」
あの様子だと私達の入室にも気づいていなさそうである。まあ、別に構わないのだけれど。
商品開発担当らの中心には私の相棒であり、しーくんの父親、ティールがいる。ティールの前にいくつかの容器が並べられ、その一つを手に取った彼は、小さなスプーンでリンゴデザートらしきものを口に運ぶ。
「う……うぅぅまぁぁぁ~♪」
うっとりとした表情でそれを堪能すると、感想を述べるでもなく、再び食べ始める。
そんなティールを観察していたヒノさんは手元のメモ帳にさらさらっと何かをメモする。
「ふむふむ。先程のゼリーより、反応は良さそうですね。少しだけヨーグルトの酸味が強くなっていると思うのですが、いかがでしょう?」
「ん~……そう、ですね。確かに酸味は強いですが、その分リンゴの甘味も感じられるので、とっても美味しいですよ? あ、でも、この容器だとリンゴの果肉が取りにくいかもしれません」
え、あいつ、リンゴだけじゃなくてそれを入れる容器も気にするの? え、なんで。
「さっすが、ティールさん! カズキ先輩の仰った通り、リンゴ愛に溢れる方ですね! すっごく助かります~♪」
「いえいえ。ぼくなんかでよければいくらでも手伝いますよ。このリンゴヨーグルトゼリー、とっても美味しいので、無限にいけます♪」
リンゴに限って食いしん坊キャラやめろ。恥ずかしい。
「では、こちらのゼリーの感想もお願いできますか!」
「喜んで!」
変な同盟組むな。めっちゃ恥ずかしい!
「ラル、ティール、何してるのー?」
「うーん。多分、お祭りで出す品の最終チェック、かな? リンゴヨーグルトゼリーだってさ」
私と別れてからずっと続けているのだとすると、どれだけのリンゴヨーグルトゼリーとやらを食したのだろう? 恐ろしくて聞きたくもないが。
私の相棒はリンゴが関わるととことんアホになりやがる。なんなんのだ、あのリンゴ王子は。ぐでっと夏バテにやられていただらしないティールはどこに行ったのだ。
「ほあ~……ティール、アリアお姉ちゃんみたいだねー」
「リンゴ限定だけどね」
食材の配分やリンゴ種類等々、差異はあるだろうがベースは同じもののはず。それなのによくもまあ、永遠と食べ続けられるものだ。味が違うなら未だしも、ほぼ味が変わらないゼリーを永遠と食べるなんて考えられない。
「……うん。ぼくとしては七番が一番美味しかったです♪」
ヒノさんに見えるように空の容器を持ち上げ、満面の笑みを輝かせる。そんなティールを見て、ヒノさんも満足げに頷いて見せた。
「ふむふむ……他のメンバーのアンケートでも、七番が一番票を集めてますし、明日はこれでいきたいと思います! ティールさん、ありがとうございました。助かりましたよー!」
「こちらこそ、貴重な体験をありがとうございました。明日、楽しみにしてますね」
明日も食うんかい! 今、飽きる程食べてませんでした?
「はいっ! ぜひ、来てください! お待ちしてます♪」
と、互いに熱い握手を交わした後、ようやく私達の存在に気づいたらしいティールが、私達に向かって手を振ってきた。
「滅茶苦茶、他人のフリをしたい」
「うゆ? ティール、リンゴのかい、おわった?」
「リンゴの会じゃないよ。一応、試食会だよ。リンゴヨーグルトゼリーってやつの試食会ね。主役はリンゴそのものではないかな~」
ま、スカウトされたティールさんにはあまり関係なさそうですけど。
「ごめんね、二人ともお待たせ!」
「まあ、ヒノさん達の手伝いが無事に終わって何よりだけど。……私と別れる前より元気になってない?」
というか、心なしか肌艶もよさそうである。
「え? そうかな? きっとたくさんのリンゴゼリー食べたからだね」
いや、リンゴにもゼリーにもそんな効果ないだろうが。やめろ、架空のバフ効果があるみたいじゃないか。
……まあ、いい。部屋に帰ろう。
ティール、たくさん、たべたー?」
「うん。どれも美味しかったよ~♪」
しーくんをだっこし、楽しそうに笑うティール。そりゃ、リンゴ大好きな彼にとってはどれも美味しかったのだろうが。
「あの、ティールさん」
「ん? なんで、さん付け……? まあ、いいや。なぁに?」
「とっても満足そうなところ、申し訳ないんですが。無粋な質問よろしいですかね」
「? うん、いいよ」
「試食会って似たようなやつ何度も食べるんですよね? 飽きません?」
私の至極全うな疑問に、ティールは不思議そうに首を傾げる。
「番号によってリンゴとヨーグルトの割合や種類が違うし、それによって味もがらっと変わってくるから、いくら食べても飽きないよ?」
「……さいですか」
……いや、いい。この話の反論はやめる。意味がない。
リンゴの話はここまでにし、別のどうでもいい話をしながら、中庭までやって来た。
「そう、その調子で」
と、中庭から聞き覚えのある声……シエル君の声が聞こえてきて、思わず足を止める。
そこではツバサちゃん、シエル君、ミユルちゃんの三人とリラン一匹が見慣れない訓練(?)のようなものをしていた。
リランがふらふらと飛行しているのだ。
「そう、風に乗って飛ぶ感じだよ。そのまま、もう少しここまで飛んでみて!」
シエル君は、赤ちゃんのあんよを見守るお父さんみたいにリランから少し離れ、手を叩きながらリランを呼んでいる。
呼ばれたリランは元気よく一鳴きすると、ふらふらっと進み始める。ちなみに、その高さ、約一メートルと言ったところか。
危なげに飛ぶリランをツバサちゃんが応援しながら、魔法で補助、ミユルちゃんはその隣で応援していた。
現状を整理すると、リランの飛行練習(?)を三人が手伝っている、でいいのだろうか。
「リラン、飛ぶんだ。めっちゃ低いけど」
「そりゃ、一応、ドラゴンだし……? でも、今にも落ちちゃいそうだね?」
それは言ってやるな。
「リラン、とぶの、はじめてみた!」
「「あぁ……確かに?」」
しーくんの指摘に、思わず私とティールは声を揃えて同意する。
どこまでもドラゴンの威厳なんて感じず、むしろ、犬っぽさが際立つ白竜、それが私達の知るリランだった。そんなリランが─ふらふらながらも─ドラゴンらしく、飛行するところは初めて見た。
リラン、ちゃんとドラゴンだったんだなぁ……
「そういえば、さ。前にツバサのお見舞いに行ったとき、リラン、飛んでなかったよね? ほら、ラルを追いかけてたとき」
「……あぁ、木の上に逃げたときか。そう言われると、そうだね。あのときは単にあの高さまで飛べないだけだと思って逃げたんだけど……」
今も一匹の力で飛んでいるのではなく、ツバサちゃんの補助付きで、かなりの低空飛行だ。つまり、現状リランだけの力では飛べないのだろう。
「……あら? 会長さんと副会長さん?」
「ほえ? あ、ラルさん! ティールさん! しーくんも!」
私達に気づいたミユルちゃんの呼び掛けにツバサちゃんも釣られてこちらを見て、パッと笑顔を見せてくれる。
「こんにちは。……こうしてちゃんと話すのは久しぶりだね。ミユルちゃん」
「はい。夏休み入る前の……セカイイチ泥棒対策会議以来です」
はは、嫌なことを思い出させてくれる。
セカイイチ泥棒……あ、ラルが剣技大会以降、園芸部に何度か出向いてたやつ? その後、どうなったか聞いてなかったけど、どうなったの?」
嫌なことを! 思い出させてくれるじゃないの!!
「……まあ、一応は解決した。お互いが妥協する結果に持っていったとも言える」
「ふふ。その節は会長さんにお世話になりました」
結論から言えば、プリン校長に盗るのをやめさせることはできなかった。だから、園芸部にお願いし、一本だけ校長専用の木として置いてもらうことにした。
「もちろん、やめてもらうのが一番だから、それを目指して何度も交渉はしたよ。けど、『アレ』を食らう手前までいった日には交渉自体を諦めたよ」
「あ、あぁ……そうだね。それはもう諦めるしかないな」
ということで、園芸部の方々に妥協していただいたというわけでありました。
事情を知らない部員の方々に納得してもらうには時間がかかったけど、まあ、結果、平和的に終わったのでよかったと思います。
「その代わり、その専用の木以外から収穫しないよう、会長さんには再度、交渉お願いしました♪」
「うわ……そ、そうだったんだ。……いつだったか、校長室から帰ってきたとき、滅茶苦茶疲れて帰ってきて、そのままずーっと寝てたのってそういうこと?」
「その一本以外から収穫しない約束取り付けた日です」
「……お疲れ様」
口約束では安心できないから、何枚か書類作って契約書書かせましたよ! その書類は控えを作り、生徒会、園芸部、校長─に持っててもらうのはかなーり不安なので、ノウツに預けた。流石に─の三者に書類を保管してもらっている。
ここまでしないと駄目な校長ってなんだ。
今思い出しても涙しか出てこん……くそが。こんの駄目校長……お子ちゃま校長のお馬鹿……!
「ラル、よしよし。げんき、だして? ボクのげんきあげるからね」
我が子の優しさが身に染みる!!
……とまあ、セカイイチ泥棒事件に関してはひっそり(?)と幕を下ろしているのである。
「うわぁっ!?」
「わふんっ」
どうでもいい事件の結末を話している間に、リランが飛行に失敗して、シエル君のところに突っ込んだらしい。
慌てて、ツバサちゃんとティールのだっこから降りたしーくんがリランの下へと駆け寄り、助け起こしに行く。
……すっかり、セカイイチ泥棒の話になってしまったが、なぜミユルちゃん達はこんなところでリランの飛行訓練をしているのだろう?



~あとがき~
なっげ……そして、いつかのセカイイチ泥棒事件。しれっと解決してました。

次回、飛行訓練の話。

ラルの知られざる苦労がここで明らかになりました。これ、完全に胃痛枠ですな。ドンマイ。
そして、ラルの言う『アレ』とは、親方の有名な『アレ』でございます。えぇ、もちろん、ご想像にお任せします。

ではでは。