satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第346話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ブライトの本心を聞き、ティールの誤解を解きました。わーい。
ってことで、元通り……になるはず!


《L side》
たくさん泣き、胸の内を吐き出してすっきりしたのか、ティールは目を真っ赤にさせながらも嬉そうにブライトさんに抱っこしてもらっていた。
「……こうしてお前を抱き上げるのも久しいな」
「んっ!」
そりゃ、本来なら今では高校生だもの。抱っこする機会なんてほぼないだろう。
いや、それを踏まえたとしても、ティールを抱っこするのが滅茶苦茶久し振りなのか。今の年齢以降、仲がギクシャクするなら、あぁやって触れ合うことすら滅多になかっただろうから。
「ラルさん、見苦しいところを見せてしまってすまなかったね」
「いえいえ。……よかったですね、ティールの本音が聞けて」
「あぁ。……成長したティールがどう思っているかまでは流石に分からないが、幼い頃のこの子の思いはきちんと受け止めたつもりだ。過去にそうしてあげられなかったのは悔やまれるが……それは戒めとして忘れずにいようと思う」
「?」
ティールは不思議そうに首を傾げる。まあ、今のティール君には理解できない話だ。仕方のない反応である。
「さて、セイラ。これからどうするつもりだ? 夕食まで時間はあるし、部屋に戻るのか?」
「そうですねぇ~……ブライトは?」
「仕事がある」
ブライトさんはちらりと机を見る。そこには広げられたままの書類がそのままになっていた。
仕事中にこちらが押し掛けましたもんね。終わってるわけないよな……
「戻るなら、部屋まで付き添う」
「ほあ。とーちゃ、おしごと、いーの?」
「よくはないが、それくらいなら」
「! ありがと、とーちゃ!」
「……あぁ」
「じゃあ、ブライト! 夜! 夜、お時間あります?」
「夜? と言うと?」
「寝るくらいの時間帯だったら、お仕事終わります?」
この問いかけにセイラさんが何を言いたいのか分かったらしく、─ブライトさんにしては珍しく─露骨に呆れた様子を見せる。
そんなブライトさんにはお構いなしにセイラさんは満面の笑みで楽しそうに話を続けた。
「今夜は三人で一緒に寝ましょう! こんな機会、二度と巡り合えないので。どうですか、ティール?」
「? うん! いいよ」
「ふふっ♪ ってことなので、いいですね? ブライト。夜はお仕事厳禁です」
なんか、最初からブライトさんに拒否権はなさそうな感じだ。
「……分かった。ティールがいいのなら、そうしよう」
「よかったですね、ティール♪ 今日の夜はお父さんが一緒にいてくれるみたいですよ~♪」
「うんっ」
ティールが嬉そうならよかった……のかな。ブライトさんはその時間を見繕うのが大変そうだけど。
……さて、と。
もう私がいなくても、ティールはセイラさんやブライトさんと普通に話せるだろう。なら、私はもういらないか。
「セイラさん、ブライトさん。ティールの事はお任せします。もう大丈夫だと思いますから」
「ラルちゃん、今日は本当にありがとうございました。もうなんて言ったらいいか……」
「いえ、私は何もしてませんから。……そろそろ、自分の部屋に戻ります。おやすみなさい」
「うむ」
「ラルねぇ、おやすみっ!」
三人に見送られ、私は一足先に執務室を後にした。

その後、部屋に戻った私は、今日一日しーくんに付きっきりだったメアリーさんとリランにお礼を言い、彼女らを見送る。
それからしばらくして、しーくんがもぞもぞとソファから起きてきた。キョロキョロと部屋を見渡し、しょんぼりした表情を浮かべる。
「ラル。……ティール、いないの?」
「ん。……ティールはね、まだ戻れないみたい」
「……うゆ」
私はしーくんの隣に座って、彼の小さな手をそっと握った。
「しーくん、お話し、しよっか」
「おはなし」
「今日一日、一人にしてごめんね」
「んーん」
「嘘言わなくていい。……寂しかったもんね」
「……ん」
「辛かったね。ティール……パパがいなくなって」
「…………う、ん」
しーくんの頭を撫でる。ゆっくりと、何度も、何度も。
「明日、きっと魔法が解けるから。寝て、起きて、朝になったら……そうしたら、いつものパパがいるから」
「ん。…………ねえ、ラル」
「ん、なぁに?」
「とけなかったら、どうしよう」
「……っ」
とけ、なかったら?
しーくんのごく自然な不安は、疑問は私の中にそっと解けていく。静まっていたはずの私の不安感と混ざり合って、それらが波紋となり、広がっていく。
「まほう、ティールの、まほう! とけなかったら、あのままなの? そしたら、ボクのこと、ずっとわすれちゃう? とける? ティールのまほう、ちゃんと……とける?」
「解けるよ。大丈夫」
そう。大丈夫、解ける。一日だけの魔法だ。問題はない。……そう、聞いている。
だから、大丈夫……大丈夫。
しーくんに言い聞かせる──いや、自分に言い聞かせるために何度も大丈夫と呟く。
そうでなくてはならない。大丈夫でなければ。
「ボク、こわい。……ラル、ラルは、わすれない?」
「……え?」
「ラルもティールみたく、わすれない? ボクのこと、ティールのこと、みんなのこと、わすれないよね? ティールも……まほう、とけても、また……おんなじこと、ないよね。わすれないよね?」
同じこと……?
未来に絶対などない。
確約できない。
私は探検隊だ。毎日、平和な日々を過ごすわけではない。何かはあるかもしれない。
それこそ、忘れる以上に悪いことだって、ないとは言えない。
「だいじょぶだよね」
「……もし、忘れちゃったら、しーくんが思い出させて。いっぱい、いっぱいお話しして、思い出させて。……ね?」
「……わすれ、ちゃうの?」
「未来のことは分からないの。ごめんね……でも、大丈夫でいられるように、大丈夫にするためにたくさんの努力はする。約束」
「やくそく。……うん、わかった。ボクも、たくさん、どりょく、するね」
……あぁ、もう。駄目だ。
私はあの人達みたいな親にはなれない。
笑顔で自信を持って、大丈夫だと断言できない。未来を約束できなかった。
……できないよ。一人じゃ、できない。



~あとがき~
不安はいつだってそこにある。

次回、次の日。

しっかりしているとはいえ、ラルもまだ子供。どんな時でも雫のために優しい嘘をぽんっと吐ける程、今の彼女に余裕はないです。その影はちらちらしてましたが。
きっと、なんでもない日なら、一番に信頼している彼が傍にいるのなら、嘘でも大丈夫だと言えたのでしょうね。

ではでは。