satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第372話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、パーティー会場にゴーしました。
駆け足感否めないですが、許してくれ。この辺、トントン拍子で進むんや……!


《L side》
快適な馬車移動の末、目的地である貴族様所有の古城へとやってきた。
辺りは広々とした草原に囲まれ、メルヘンチックというか、同じ海の国なのだが、異国の雰囲気を感じる。海辺が近くにないせいだろうか。
私達の他にも多くの貴族らがお呼ばれしているようで、多くの馬車が城の近くに停められていた。
王族であるティール達は私達より先に会場へ入ったため、私達とは別行動の予定だ。とはいえ、途中で合流する瞬間はあるだろうけど。
……よくよく考えたら、王様も呼ばれるくらいのパーティーだもんな。お偉いさんもたくさんいらっしゃるのだろう。……まあ、見分けつかんけど。何か粗相したら、どしよ。こえぇ~……!
「あんま緊張しなくていいぞ、ラル」
「そうですよ、ラルさん♪」
「……そうは言うけど、こういうの初めてだし、するなって言われる方が無理だよ」
「つっても、パーティーに呼ばれてんのはツバサだし? 俺らはオマケだぜ。そこまで身構える必要ないって~♪」
「ですです。気楽にいきましょ~う♪」
レオン君はともかく、ツバサちゃんは気楽にいったらアカンのでは?
「……あ、レオン、ラルさん。私達もそろそろ行きましょう♪」
ひえっ!? もう行くんですか!?
「だーいじょぶだって! 堂々としてろ~?」
レオン君が慣れた様子で馬車を降り、次に降りるツバサちゃんをエスコートする。
私もそんな二人に続き、馬車を降りた。
手続きもスムーズに済ませた後、私達がパーティー会場へと足を踏み入れれば、パーティーの参加者の視線はこちらに──ツバサちゃんに注がれた。
噂のせいなのか、ケアル家という家名のせいなのか。はたまた、白の魔法使いという珍しい見た目のせいなのか。
その視線の意味は様々だ。興味の目、奇異の目、好意の目、畏怖の目……様々な視線が一度にツバサちゃんへと向けられる。
これが貴族社会なのか……単なる偏見の目なのか。
「……ラル。大丈夫だよ、ツバサは」
私が周りの雰囲気に、体を僅かながら硬直させたのを気付いてか、ボソッとレオン君が呟き、小さく笑った。
私を安心させるためだけの言葉かとも思ったが、それは間違いだとすぐに気付いた。
なぜなら、目の前のツバサちゃんの雰囲気が一気に変わったのが分かったから。
普段、見せてくれる天真爛漫な笑顔でも、ふわっとした優しい笑顔でもない。
普段よりずっと大人びていて、堂々していていた。控えめな笑みを見せ、周りの雰囲気に押されることもなく、前へと歩み出る。
「ツバサってさ、小さい頃からおばさんやルー爺から礼儀作法とか、色々学んでんだよな。ツバサ本人も学ぶことに対して前向きだからさ~? 新しい知識はスポンジみたいに吸収すんの」
レオン君がこっそりとツバサちゃんの雰囲気が変わった理由を教えてくれる。そして、「ツルギはこういうの、苦手なんだけどな」と苦笑ぎみに漏らした後、更に続けた。
「んで、スポンジの如く吸収した結果があれ。社交界っつーの? そういう場では普段とは違う雰囲気を出すようになったんだとさ。まるで、本物の貴族みたいだろ?」
確かに周りの貴族達と遜色ないくらい堂々としているし、雰囲気もある。十二歳の子供だとは思えないくらいだ。
「ってなわけで、俺らはそんなツバサのオマケなんだよ。主役を際立たせるための花? 蝶? なんかそんなやつだから、緊張しなくて大丈夫。大体、存在感しかないツバサの横にいれば、俺らなんて気にする人いないし、透明人間みたいなもんだよ」
なるほど。透明人間、か。
確かに、レオン君の言う通り、ツバサちゃんに視線は注がれているものの、後ろに控えている私達には、一つも意識は向けられていないし、視線すら感じない。この場にいる全員、ツバサちゃんしか意識していないのだろう。
よくも悪くも、ツバサちゃんは目立つ存在なのだ。本人は大して気にしてなさそうだが。
ツバサちゃんは真っ直ぐに今回の主催者であろう貴族の元へ向かう。
そこにはブライトさん達の姿もあり、先に話をしていたらしい。
ファンブル卿。先程、陛下が仰有っていた方々が到着されたようですよ」
私達に気付いていたらしいティールが主催者らしき貴族に目配せをする。
主催者の貴族はファンブルという名前らしい。貴族の雰囲気はあるものの、柔らかい物腰のおじさまって感じだ。
ファンブル様はツバサちゃんの姿を見るなり、パッと顔を明るくさせる。
「おぉ! 君がルーメン様の!」
「お初にお目にかかります、ファンブル卿。本日はこのようなパーティーにご招待いただきありがとうございます。ルーメン・L・ケアルの令孫、ツバサ・L・ケアルと申します」
マナー講師の先生から教わったのだろう、令嬢らしい綺麗な一礼だ。
「存じておりますとも! ルーメン様の商会には、いつもお世話になっておりますからなぁ」
「いつもご贔屓にしてくださって、ありがとうございます。実は、ファンブル卿が愛用してくださっているシリーズの新商品が今後、発表されると祖父から言伝て預かっています。そちらの商品もぜひ、お試しください♪」
「なんと! それはよいことを聞いた。是非、買わせていただきますよ」
「ふふっ。ありがとうございます♪」
ルーメンさんから言われた通り、初対面の相手にも、きちんと新商品の宣伝している。これがお嬢様の力……いや、ツバサちゃんの力、なのかな。
「……ラル、大丈夫?」
いつの間にか、ブライトさんの横から私の横に移動していたティールが私に話しかけてきた。きっと、初めての場所、慣れない空気に飲まれていないか、心配してくれているのだろう。
「うん。……恥ずかしい話、さっきまでは緊張してたんだけどね~……今はもう大丈夫。ありがと、ティール」
「そっか。なら、よかった。……でも、何かあったら頼ってね?」
それだけを言い残し、ティールはまたブライトさんのところへと戻っていく。
「……レオン君、その顔はどういう意味かな?」
「いんや~? べっつにぃ~?」
とは言いつつも、どこか楽しそうにニヤニヤしている。
別にって顔してなくね? 面白がってるよな。絶対。いや、そういうんじゃないからな!?
「──そう言えば、お二人は仲がよろしいんですかな?」
ファンブル様は唐突にそんなことを言い出した。
お二人というのが、ツバサちゃんとティールを指しているのは明白だった。つまり、ファンブル様も『例の噂』を知っているのだろう。
そして、会場内で噂を知るらしい貴族達の目線も、一気にこちらへと向けられた。
皆、噂の真意が知りたいのだろう。そりゃ、目の前の少女が未来の国王様のお嫁さんかもしれないのだ。気にしない方がおかしい。
「確か、同じ学園に通われているとか……?」
「ええ。ルーメン様のご息女が経営している学園ですから。息子の研鑽にはよい場所ですよ」
「おやおや。陛下のお墨付きなのですね」
お墨付きの意味が違う気がするぅ!!
多分、ブライトさんとしては、できるなら、適当に話題を逸らしたかったのだろう。しかし、完全に違う意味に取られているのは感じたのか、ブライトさんはそれ以上は語らなかった。隣のセイラさんは特に何かを言うことはなく、にっこりと微笑んでいるだけ。
そいや、二人とも、きっぱりと訂正しないんだよなぁ……? その辺もルーメンさん任せというか、ツバサちゃん任せにするつもりなのかな?
ふと、好奇の目を向ける貴族達の中に見知った人を見つける。
警備をしているらしいアラシ君だ。今の持ち場は会場内らしく、入口付近に待機している彼もまた、こちらに視線を向けていた。ただ、周りと違うのは完全に怒りオーラを出しているってことだ。表情には、辛うじて出ていないものの、オーラというか、目は完全にお怒りモードである。
や、やめてくれ……アラシ君……! そんな目をこっちに向けるな!! 分かる、分かるよ? 君の気持ちは十分に分かるけどね!? 隠せ! きちんと隠せ!!
レオン君も気付いた─もしかしたら、私が見すぎたせいかもしれないが─のか、ちらりとアラシ君の方を見て、すぐに正面を向く。しかし、どうやら笑いが堪えきれないのか、ぷるぷると肩を震わせていた。
「な、なあ……? ア、アラシのやつ、隠す気あんのか?」
「いやぁ……? その気がないから、オーラがだだ漏れなんでしょ……?」
まあ、そんなアラシ君はさておき。
ファンブル様はツバサちゃんの返答を待っているらしく、にこにこと笑って黙っていた。それを察してか、ツバサちゃんは少しだけ不思議そうにしつつも、「仲はいいと思います」と答えた。
ティールさ……ティール様とは学園の先輩後輩の仲で、生徒会の一員としても大変よくしてくださっています」
「ほほう? では─」
「学園のティール様は凄いんですよ。副会長という立場から会長を支えていますし、その傍ら、私達後輩へと気配りもかかしません。きちんと休めているか、仕事は滞っていないか、分からないところはないか……色んなことを気にしてくださる、優しくて頼りになる先輩なのです♪」
「んっ!? え、ちょ、なん……えっ!? ツバサ様!?」
唐突の褒めちぎりにティールも素に戻りかけてる……まあ、ギリギリ体裁は守ってるかな。多分。
ツバサちゃんは曇りのない瞳でティールのいいところを一から十まで語っていく。もちろん、プライベートな部分や話せないところには触れず、当たり障りない範囲ではあるが、要するに「めっちゃいい人で、優しくて、頼りになって、ティール先輩は凄いんだぞ!」ってことらしい。
思ったこととは違う話がツバサちゃんから話される現状に、周りの貴族もぽかーんとしてしまっている。まあ、当然っちゃ、当然の反応かもしれない。
「あらあら、ティールってば、学園ではそんな存在なのですねぇ♪」
「らしいな」
対する、ティールのご両親は止めるつもりはなく、むしろツバサちゃんの「ティール凄いんだぞ!」アピールを楽しそうに聞いている。
そして、褒められまくってるティールはと言うと、どうしていいのか分からないようで、助けてくれという目を私に向けていた。
いや、ごめん。助けるとかないわ。天使に褒められとんのやぞ? ご褒美やん。受け取れ。素直に受け取れ。
そんな感じに頷いておけば、ティールから「ラルの意地悪!」という視線を感じるけれど、無視しておいた。
「──なので、ティール様は頼りになる先輩なんですよ?」
「な、なるほど。……つまり、ツバサ嬢とティール様は先輩後輩以上の関係はない、と?」
「? それ以外の関係が他にあるのですか?」
ツバサちゃんの純粋な瞳にファンブル様も「何もない」と確信したのだろう。何度か首を振り、「何でもありませんよ」と笑い飛ばした。
……貴族社会というのは、互いの腹の探り合いだ。互いの問答には必ず裏があるし、表は全てが建前になる。それを探り当て、相手の弱みを見つけて優位に立つ。そういう世界らしい。現にツバサちゃんに向けられた視線がそれを物語っている。語らずとも、『ツバサ』という人物を探っていたのだから。
しかし、ツバサちゃんに裏も表もない。つまり、光そのもの。
「悪意だらけの闇の世界に、強い光が差し込めば、闇は勝てっこないよねぇ?」
ルーメンさんはそれを知ってたから、ツバサちゃんに噂の沈静化を任せたのだ。任せたというか、任せなくても勝手に沈静化してくれると思ったから。
純粋無垢なツバサちゃんだからこそできる芸当。他の人じゃ真似できない。
「失敗する確率も十分に考えられるのに、よくやるよね。ルーメンさん」
「にゃは~♪ それがルー爺って人だぜ?」
怖い人。つくづく、敵に回したくない相手だと思うよ。本当に。



~あとがき~
またやらかして、こんな時間に更新だよっっ!!!!
それはそれとして、ツバサちゃんは聖人ですね。
私のキャラに完全光属性キャラ、おらんかもしれん(笑)

次回、パーティーは続くよ。

いつメンにあまり褒められないティール君。褒められ慣れてない人です。まあ、ラルもなんですけど。
というか、素直にあれが凄い、ここが凄いと矢継ぎ早に言われたら、誰だって照れるか……やっぱり、ツバサちゃんは聖人ってことだ。

ではでは。