satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第369話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ながーい回想後、お茶会の続きが行われ、何か知らんけど、パーティー出ようぜ!とラルが言われましたとさ。
そんな次の日の話。
ラル「いきなり飛ばさんでくれます!?」
いやぁ、最近出番のない(?)彼と話したいやろ?
ラル「……?」


《L side》
明朝。
薄い空色を伸ばしたような快晴。
私はなぜか目が覚めてしまい、部屋にしーくんを残して、王宮内を散歩していた。ここは滅茶苦茶、広い。ここに住んでいるティールですら、未だに知らない部屋があるくらいに広い。だからこそ、適当に歩いて、適当に部屋を覗いてってするだけで暇潰しにはなる。
……まあ? 人ん家で何してるんだって突っ込みは、なしでお願いしますねぇ~?
「……あれ、あそこにいるの、騎士団の人達だ」
王宮の二階の廊下から、何気なく外を見てみると、ちょうど、騎士団の朝練が行われているのが見えた。
ゼニスさんとアラシ君の二人が、部下さん達を指導しているのだろう。二人は朝練自体に参加はせず、時折、部下さんらを指差したり、ジェスチャーしたりしていた。そして、何より遠くからでも分かる程、鬼の形相であつ~い指導をしているのだ。
「……ゼニスさんが鬼教官なのはティールから聞いてたけど、アラシ君もなのか」
まあ、アラシ君の兄、イグさんがそうだし、特別、驚きはしないが。
ここから高みの見物をしていてもいいのだが、せっかく見つけたのだし、直接、挨拶しに行くのも悪くはない。
「降りるか。……降りた後でも、同じ場所にいてくれるといいんだけど」

私が外に出て、二人を見かけた場所へ行ってみれば、騎士団の朝練はまだ続行中だった。
遠くからでは、影になっていて分からなかったのだが、部下さん達があちこちで伸びていて、まさしく死屍累々状態であった。
「……おはようございます。ゼニスさん、アラシ君」
鬼教官状態だった二人に話しかけるのも悪いかなぁと思いつつも、ここまで来たのだから、挨拶しないわけにもいかない。
二人は私の姿を見て、鬼の形相……ではなく、いつも通りの笑顔を見せてくれた。
「ラル様。おはようございます」
「よお、ラル。こんな朝に会うとはな」
「……ラル様も朝練に参加されますか?」
にこやかにとんでもねぇ提案してくるな。流石、ゼニスさん。容赦ない。
「いえ、遠慮しておきます。今日は朝のお散歩中なので」
どんな訓練メニューをこなしているのか分からないが、朝からバテバテになりたくはない。やるならせめて、心の準備くらいはしたい。やりたくはないけども。
「そいや、あっちにいた時、ルー爺んとこの朝練、出てたって聞いてたな。……ラルはゼニスさんと朝練やったことあんの?」
「過去に何度か。とは言え、そこまでスパルタ指導を受けた記憶はないけどね。……スパルタと言えば、アラシ君の指導もなかなかだね?」
「ん~……そうか? 普通だろ」
あ、あれが普通なのか。こわ。
流石、イグニースの弟。容赦ねぇ。
「ラル様。もうそろそろ、訓練も折り合いがつきます。少々お待ちいただけますか?」
「あぁ、いえ。私が勝手に来ただけなので。お気になさらず」
とは言ったものの、ゼニスさんの言葉通り、本当にあと少しだったようで、アラシ君と共に数名に何やら指示出しをした後、再び私のところへと来てくれる。
「お待たせしました、ラル様」
「本当に大丈夫ですか? 何なら、私、帰りますけど」
「いえ。問題ありませんよ。休憩時間なのは間違いないので」
あぁ、そういうこと。
ゼニスさんとアラシ君は、今回の合同訓練について、簡単に説明してくれる。
今回の目的は新人育成。アラシ君の連れてきた騎士団の人々も、比較的、入団歴の浅い人達で、編成されているらしい。そして、ゼニスさんのところも同じ様に新人を集め、彼らの体力強化をメインに訓練を行っているとのこと。
「こうして一緒に合同訓練を行ってみると、流石、フェゴさんの息子さんだなと思います」
ゼニスさんがにこにこと笑いながら、アラシ君の指導姿を褒める。彼は褒められるとは思っていなかったようで、驚いたようにゼニスさんを見つめた。
「そ、そうですか!? どの辺が……?」
「新人とは言え、彼らはアラシ君より年上でしょう? そんな中でも、フェゴさん譲りのスパルタ指導を行えるのは、素晴らしいと思います。フェゴさんに鍛えられてるんですね」
「え、えーっと……そこまで褒められたものでもないですよ」
「ご謙遜を。……私も若い頃、何度かフェゴさんの指導を受けましたが、あれをこなせるだけで称賛物です」
フェゴさん……アラシ君のお父さんで、現騎士団長さんだったか。
同じ騎士団長として、交流もあるのだろう。ゼニスさんとフェゴさんはお知り合いのようで。
「お知り合いと言いますか……団長として、あちらが先輩ですから、色々とご鞭撻してくださったのです。私なんて、まだまだ若輩者ですよ」
「そんなに凄いんですか? フェゴさんの指導」
単なる興味本位で聞いたのだけれど、二人は無言で何度も頷いた。その反応だけで、笑えないくらい厳しいんだなと悟る。
「……イグさんより厳しい?」
「厳しいよ。……なんなら、兄貴のやつなんて、優しいもんだって思う時すらある。そんくらい、親父の指導はやべぇぞ?」
よかった。フェゴさんの指導を受ける機会がなさそうで。
「あー……そ、そいえばさ。ラル?」
「? うん?」
これ以上、フェゴさんの話はしたくなかったのか、若干、苦い顔をしているアラシ君がこちらに別の話題を振ってきた。
「ツバサと一緒にパーティー出るんだってな?」
……今度は私が嫌な顔をする番だった。
それを見たアラシ君は、イグさんを連想させるような嫌な笑みを見せる。
「ツバサが嬉しそうに話してたぜ?」
「そうですか……なら、よかったです。……なんで笑ってるの?」
「え? 深い意味はねぇけど?」
……そうですか。
どこか面白がっているように見えたけど、深い意味がないならいいです。はい。
──なぜ、一般人の私が参加することになってしまったか。それは昨日のお茶会まで遡る。

「──パーティーに参加してくれないかしら!?」
私の手を握り、唐突にそんなお願いをされた。
全くもって訳が分から……いや、先程までの話の流れで、なぜ頼まれているのかは分かる。分かるけれど、なぜ護衛を増やす必要があるのかが分からない。
そもそも、私はパーティーとか煌びやかな世界とは無縁の人間だ。社交界とか知らんし、貴族社会とか、もっと知らんが!?
エスともノーとも言えない私に、ティールが近寄り、ぽんぽんっと優しく肩を叩いてくれる。そして、代わりにセラフィーヌさんに質問を投げ掛けてくれた。
「セラフィーヌさん、なんでラルを……というか、そもそも護衛を増やす必要がある理由から伺っても? でないと、ラルも返事できないかと」
「あら、ごめんなさい! そうよね。急に言われても困るわよね。今から説明するわ」
と、パッと私の手を離し、こほんと咳払いをする。
「実は、今度のパーティーの参加者の中にケアル家に因縁をつけてる相手が急遽、参加することが分かってね……いざって時の護衛を増やしたくて」
因縁、ですか。
過去に決裂した相手からの恨みでも買ったんですかね……そういう世界ってどこにでもあるのか。
「決裂というか……そういうことはなくて。頭皮の因縁を持ってる?」
とうひ……頭皮? 頭?
頭の因縁とはなんやねん。何があった、過去に!!
セラフィーヌさんのこの言葉にツバサちゃんは思い当たることがあったのか、ぱちんっと手を鳴らした。
「前にじいじの言ってた、モーグラーって人のこと?」
「ツバサ、モーグラーじゃないわ。モグーラ様よ?」
「セラちゃんも違うから。モーラス様ね。モーラス様」
どれが正しいんだ。……セイラさんの言った名前が正しいのか?
セラフィーヌさんは詫びる素振りもなく、にこりと─正しくは目元は笑っていないが─笑いつつ、首を傾げる。
「あら、そうでしたっけ? モグラ様ではなかったでしたっけ?」
モグラじゃないよ、モーラス様。……もしかして、セラちゃん、まだ怒ってる?」
「まさか! もう十年以上も経ちますもの。流石に怒ってませんわ。我が家にした嫌味、嫌がらせの数々など……とうに忘れました♪」
いや、絶対に忘れてないし、怒ってるな。根に持ってるよ、セラフィーヌさん。
セイラさんも困ったように笑うだけで、それ以上は追及しなかった。
「セイラさん、そのモーラス様って人と、何かあったんですか? というか、何かなきゃ、あんな風に思いませんよね」
「そうですね~……? 先程は因縁と言いましたが、一方的にあちらが根に持ってると言いますか……」
黒い笑みを浮かべるセラフィーヌさんには、とてもじゃないが聞けなかったので、セイラさんに聞いてみた。すると、セイラさんはこそっと簡単に教えてくれる。
──事の発端は十何年も前の事。
ルーメンさんが若く、アルドアーズさんが王位につく前の話だそうだ。
この頃の海の国の貴族社会は、今以上に差別的な思想が強く、アルドアーズさんの友人であるルーメンさんに難癖をつける貴族も多かったらしい。
そんな一人に、モーラス様もいた。
モーラス様は、特に差別的思想が強かったらしく、事ある毎に「平民の癖に」とルーメンさんに絡んでいた。しかし、ルーメンさんは悪口、嫌味等々を華麗にスルーし、気にも止めてなかったと言う。そんな態度が、モーラス様は気に食わなかったのだろう。
次第に悪口、嫌味、嫌がらせはエスカレートし、挙げ句の果てに、この国の未来の主君であるアルドアーズさんや、女神と崇拝される白雪ちゃんに対し、暴言を吐いた。
それがルーメンさんの逆鱗に触れ、魔法でモーラス様の髪を綺麗さっぱり失くしたのだと言う。
「……それ以来、モーラス様とケアル家の因縁が始まったのです。大体はルーメンお爺様に対してなのだけれど、いつだったか、セラちゃんにも目を付けたことがありまして。……セラちゃんが高校生くらいの時、だったかしら? まあ、セラちゃんはモーラス様を笑顔で言い負かして、倍返ししちゃったみたいですけど」
うへぇ……なかなかに執念深いお方のようで。というか、メンタル強者だな。その執念、もっと別の方向で活かせればいいのに。
まあ、それは置いといて、だ。
そのような過去があるから、セラフィーヌさんはツバサちゃんの身を案じているのか。そりゃ、心配になるわな。親だもの。
とはいえ、ツバサちゃん本人は大して気にしてなさそうである。ルーメンさんから話を聞いているのなら、少なからず、今の状況も分かっていそうなものだ。
ツバサちゃんが事態を理解していないだけなのか、単純に重く受け止めてないだけなのか。……どっちもあり得そうなので、何とも言えない。
「お母さん? 私は大丈夫だって」
いつも通り、のほほんとした様子で答えるツバサちゃんに対し、セラフィーヌさんは心配そうにしている。
「そうは言っても……一応、ラルちゃんについていてもらいましょう。変なことはないと思うけど、万が一って言葉もあるし……一応ね?」
と、ツバサちゃんを説得し始めている。
説得はいいが、私、ついていくとか、参加しますとか、一言も言っていないんだが。なんなら、行きたくないけども。
「……ねぇ、ラル?」
話を黙って聞いていたティールが私の耳元にそっと囁く。
「母上の話を聞くに、ツバサにも何かする可能性はあるよね? だって、現に娘のセラフィーヌさんに手を出してるわけだし」
「……それは、そうだけど」
「お願い、聞いてあげれば?」
「むぅ……でも」
「君があぁいう空気感が苦手なのは分かるけど、今、セラフィーヌさんが頼れるのはラルだけなんだ。……なんなら、仕事だと思いなよ。セラフィーヌさんからの依頼」
依頼……仕事だとして、それには報酬が必要だ。じゃなきゃ、嫌なことなんてやってられねぇぞ。
「…………報酬は」
「ツバサのドレス姿を間近で眺められる権利、とか? 近くに控えているんだし、飽きる程、観察してても大丈夫だよ」
………………そう来るか。
流石、相棒。私という人物をよく理解していらっしゃることで。
私とティールが話している間に、どうにかこうにかツバサちゃんを説得し終えたらしい。セラフィーヌさんが私に向かって、手を合わせる。
「駄目かしら、ラルちゃん。特別なことはしなくて大丈夫なの。あのモーグラー…」
「セラちゃん。モーラス様」
「……モーラス様がツバサに何かしようとしたら、追っ払うだけでいいの! ラルちゃんの殺気で!」
「殺気、ですか」
私、そこまで殺気ないと思うけど。
なんて思っていれば、なぜかティールがグッとガッツポーズしてきた。
「やったね、ラル! 滅茶苦茶、得意じゃん。殺気出まくりだから」
「おいこら、お前。殺すぞ」
「お願いっ! ラルちゃんっ!!」
「……分かりました。引き受けます」
まあ、実際にツバサちゃんに何かあったら嫌だしね。それを私がいることで守れるんなら、協力しますか。
「本当に!? ありがとう、ラルちゃーん! なら、早速、ラルちゃんのドレスを決めないと!!」
「……ドレス?」
いや、待て。それは聞いてない。聞いてないけど!?
「そりゃあ、貴族の開くパーティーだよ? ドレスコードくらいはあるさ」
ティールさん!? 分かってて黙ってた!?」
「……言ったら、簡単に頷かないだろ?」
ティールさん!?!?
相棒にいいように、はめられたってことですか!?
「あ、あの、私、ドレスとかじゃなくて、スーツ的なやつでいいです。動きやすさ重視で……」
「今からデザインしていては間に合わないよね。……セラちゃん、私のドレスルームから選んで、手直ししましょ? それならパーティーまでに間に合うわ♪」
「流石、お姉様! そうしましょう♪ ラルちゃん、明日の午後、ドレス一緒に選びましょうね!」
あ、あう……ドレス……嫌です、けど……!
「私達がラルちゃんに似合うドレス、選ぶから安心してくださいな~♪」
「………………ハイ」
「……にゃはは♪ 流石のラルも、あの二人には勝てなかったみたいだな?」
「? ラル、パーティーいくの? すごいね! たのしそうだね!」
今の今までずーっと黙っていたレオン君と、しーくんがにっこにこで話しかけてきた。
しーくんはいいとして、レオン君は単純に、面白そうだから眺めていたんだろうな。
くそう。こんなはずでは……!

──ということが昨日のお茶会で起こった。
つまり、今日の午後にそれがあるわけで。ドレスの着せ替えコーナーが待っているわけでして。
それを想像しただけでテンションだだ下がりである。
「……今からでも、タキシード的なやつにならないかな。それなら選ぶ必要もない。ドレス着る必要もない。何かあったときにすぐ動ける。いいこと尽くしなんですけども」
「ならんだろ」
私の素敵提案をアラシ君は冷めた目でバッサリ切り捨てた。
「お前、男じゃねぇし、普通にタキシードなんて着れる訳ねぇだろ。ドレスコード守れ、ドレスコードを」
それなぁぁぁ!!??
つーか、世の中の女の子全員がドレス着たいと思うなよ!? いや、違う。ドレス自体を嫌がっているわけではない。私が恐れているのは、あのふわふわヒラヒラ地獄である。
何が好きで、あんなヒラヒラのふわっふわなドレス着るんじゃ! 皆がああいうの好きだと思うなよ!?
「なんで、あんなヒラヒラ着なきゃなんないのよぉ~……!」
「それが社交界の正装だからな? 大体、ラルがスーツやらタキシードやら着てみろ。絶対に浮くからな。そっちの方が目立って仕方ないだろ」
「うるせぇ。正論いらねぇんだよ、くそぉ。アラシ君の癖に正論言うな」
「あ? なんで俺が罵られてんだよ。おい」
「ラル様のお気持ちも分かりますが、アラシ君の言うことが一般的であることは確かですね」
ゼニスさんまでぇ……!
私はアラシ君の「さっさと諦めてドレス着ろ」という言葉に渋々頷き、時間も時間だったので、二人とはお別れしたのだった。
やだなぁ、ふわふわヒラヒラ地獄……見るのは好きなんだけど、着るのはなぁ……?



~あとがき~
めちゃなげぇが、きりのいいとこまで書きたかったんや。許してくださいっ!

次回、ドレス選び。

久々にちゃんとラルとアラシ君が絡んでるなぁと思いました。いや、幼児化にも出てきてはいたんだけど、あそこはあまり絡んでないし。

ではでは。