satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第392話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界であわあわしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ティールとサフィアのお話が終わりました。よきかなよきかな。
今回はまたラル視点に戻して、進めてくど~


《L side》
丘の頂上から少し離れたところを探して、帰り道でもある下り坂をほんの少しだけ下っていた。
これと言って、したいこともないし、することもない。仕方なく、ぼーっと空を眺めて、暇を潰していた。
空は変わらず、満天の星が輝いて、じっと見ていると周りに何の気配もないからか、この空に吸い込まれそうだ。
……どのくらい、一人で空を眺めていたのだろう。
ふいに、ちりんと鈴の音が聞こえる。その音で我に返り、辺りを見渡した。しかし、鈴を鳴らした人物も、それらしい影も気配すらもない。相変わらず、人気のない丘だ。
「……動物でもいたのかな?」
私達が来てから、誰一人として人を見かけていない。もしかしたら、普段から人の出入りはないのかもしれない。それなら、野生動物が住み着いてても不思議ではないか。とは言え、そんな野生動物に鈴を鳴らす手段があるのか、そもそも鈴を持っているのか等々、気になる点はあるけれど。
……まあ、この私が何物かの気配を感じられない時点で、『普通の何か』があるとは思ってないのだが。
とまあ、ここまでだらだらと考えていたけれど、これと言ってすることはない。なので、暇潰し程度に、もう一度、辺りを見回してみたり、その辺の茂みを覗いてみたりしてみる。
「……ラル!」
名前を呼ばれ、そちらを振り返ってみると、手を振りながら、こちらへと駆け寄ってくるティールの姿があった。
「ごめんね、待たせた」
「ありゃ? 頃合いを見て戻るつもりだったんだけど……むしろ、私が待たせてた? 探させちゃったかな」
「ううん。ここ、そこまで遮蔽物ないから、探したって程じゃないさ」
まあ、確かに、頂上からここまで一本道だけど。
「……その様子だと、きちんとお別れ、できたみたいだね」
ずーっと何かと考え事をして、難しい顔をしていたティールだったけれど、今は晴れやかな表情をしている。
「うん。……多分、言いたいことは全部、言えたと思う。もしかしたら、後から出てくるかもしれないけど……その時はその時で、また空に報告でもするよ」
「そっか。……なら、帰ろっか」
「うん」
私とティールは二人並んで、坂を下っていく。この辺は外灯もなく、それなりに薄暗い。探検で培ってきた経験があるので、この程度の暗さなら、私もティールも歩くには問題はない。けれど、バッグに入っていたペンライトを使わない手もない。
わざわざ、周囲に気を配りつつ帰路に着く必要もないよね。疲れるし。
「いやぁ、思ったよりも大冒険になっちゃったね? こんな遅くなるとは思ってなかったよ。完全に日が沈んで、星が綺麗に見える時間……に?」
「? ラル?」
星が綺麗に見える時間……星の光が届く時間。つまるところ、空は真っ暗である。
今の季節は夏。夏は基本、日の入りが遅い。実際、私達がここへ辿り着いた時、日は傾きかけていたとは言え、まだ空は明るかった。それが今は真っ暗……?
「ねぇ、ティールさん」
「いきなり、さん付けしないでよ……何?」
「私達、ここに来ること、誰かに言いましたっけ?」
「え? ん~……言ってはない……ね?」
そうだよね。私もそんな記憶はないし、ここに来る時も、ティールが案内してくれた秘密の抜け道を使って、ここまで来ている。どこへ行くと伝言も残していないし、書き置きもしていない。つまり、王宮にいる人々が私達の居場所を知る術はない。結果、我々は数時間、行方知らずとなっているわけで。
「もしかしなくても、今頃、王宮じゃ大騒ぎしてる……? 私らが王宮内から、煙のように消えちゃってるわけじゃん?」
「…………うん、まずいかもしれない」
「私だけならともかく、ティールも一緒だもんね。ここじゃ、ティールは『王子様』だもんなぁ~……! 最悪、誘拐を疑われかねない。……走るぞ、ティール!」
バッグから連絡用の端末を取り出しつつ、空いていた片方の手で、ティールの手を掴み、一気に走り出す。
「わわっ! い、今更、走って戻っても、騒ぎになってたら、もう遅くないかな~~!!??」
「えぇい! のほほんと歩くより、ましじゃー!!!」
いきなり引っ張られたにしては、ティールもきちんと順応してくれているようで、私と歩調を合わせて走ってくれていた。……まあ、どちらかと言えば、合わせているのは、私の方なのだが。
こういう場合、誰に連絡するといいんだ? 手堅くブライトさん!? いや、セイラさんとか、セラフィーヌさんの方がいいのか……? セイラさんの場合、ティールに何かあったとなれば、どんな手を使ってでも、探し出してきそうだし……
「……? あれ?」
誰でもいいから連絡しようと画面操作していると、とある違和感に気付き、思わず足を止める。
「ど、どうしたの? 急に止まっちゃって」
「ない」
「……な、ない? 何が?」
「連絡がない。こういう時、とりあえず、本人達に連絡してみるもんじゃない? そういうのがない」
怒涛の不在着信履歴もないし、大量のメッセージ着信もない。言ってしまえば、いつも通りの画面である。他愛ない連絡と仕事の連絡くらいしかないのだ。
たまたま、私に連絡が来ていないだけかとも思ったが、ティールも自身の端末を操作して、画面を見せてくれた。私同様、綺麗な画面である。
「ぼくにもない。両親から電話もメッセージも……あ、ノウツから仕事の連絡は来てるけど」
あぁ、そう。それは見なかったことにしてください。今、それは重要じゃないので。
重要なのは、私達の安否を確認するような連絡がないこと。ないってことは、私らがいないことがバレていないか、或いは、心配されていないかの二択だ。
前者はほぼ、あり得ないだろう。なぜなら、いつもなら、皆で夕食をいただいている時間だから。そこで、私達がいないのは周知されるはずだからだ。
となれば、後者の場合。その場合、誰かが手回ししてくれていることになる。そして、それができる人物が一人だけいる。
私は、その人物に連絡を試みる。数コールの後、電話を取ってくれた気配を感じた。
「……もしもし、ラルです。遅くなりましたが、ティールと一緒に戻ります」
『そうか。……気を付けて帰って来なさい』
「はい。後程、お部屋へお伺いします。失礼します、ブライトさん」
『あぁ』
……よし、走らなくてよさそうだ。
私はティールに今の状況を簡潔に伝える。ブライトさんが誤魔化してくれた件について、ティールは驚いた表情を見せる。
「父上が? そういうの、鈍そうなのに」
「ルーメンさんに何を聞かされたの、ティールは。……私個人としては、むしろ、こういうことに関しては、鋭い方だと思うけどね?」
「そうかなぁ……?」
「とにかく、帰ったらお礼しに行かないとね」
「まあ、うん。そうだね」
……お礼と一緒に話もしに行かないとね。

行きと同じ道を使い、しれっと王宮内に戻ってきた。そして、アルベルトさんにお願いし、遅めの夕食を終わらせた後、ブライトさんの執務室へ向かう。
部屋の前まで来ると、ティールが部屋の扉をノックする。すると、すぐにブライトさんの入室を促す声が聞こえてきた。
「失礼します、父上。……帰りが遅くなり申し訳ありません。戻りました」
「失礼しま~す、ブライトさん。遅くなってすみませんでした!」
いつも通り、何かのお仕事中のブライトさんが顔を上げ、小さく頷く。
「時間を気にする必要はない。……お帰りなさい、二人とも」
「ただいまです♪ ただいまついでに、今、お時間よろしいですか? そこまで、取らせません」
「ふむ? 構わないよ。何かな」
「ブライトさん。私達とサフィアさんとの遊びになぜ、協力したのですか?」
どう聞いたらいいのか分からなくて、ド直球に聞いてしまった。何のことだと惚けられたら終わりなんだけど、そもそも、非科学的な事象について正論をぶつけるのは難しすぎる。
「協力しろと頼まれたからだね」
……おぉ?
ブライトさんは隠す素振りもなく、すんなりと答えてくれた。
「頼まれたって……どうやって?」
「手紙でだ。先日、部屋に手紙が置かれていてね。今回の件に協力するように書かれていた。……初め、誰かの悪戯を疑ったのだが、手紙は母の字だった。それに信用を得るためなのか、母しか知らないような事柄がいくつも綴られていた。それで、手紙の主が母本人なのだろうと思ってね」
「な、なるほど。それで、父上は何をしてたのです?」
「母にはできないことを私が手伝っていた。主に手紙と箱を置く役目だな。……それが何なのか聞かされてはない。大体、今更、私に手紙まで寄越して、こんなことをしたがった理由も知らない」
何も知らないまま、ブライトさんは物だけ配置したのか……ってことは、庭園前でばったり出会したのって……?
「そう。あそこにある秘密の部屋に手紙と箱を置きに行った帰りだ。あそこで君達に出会うとは思ってなかったから、驚いたがね」
お、驚いた……?
その時のブライトさんを思い出してみても、驚いていたようには見えない。平然としていたように思うけど……?
ティールも私と同じ感想を抱いたのだろう。首を傾げた後、戸惑いつつ、口を開く。
「驚いてたんだ、父上」
「恥ずかしながら、それなりには」
大丈夫です。さっきまでバレてなかったので、恥ずかしくはないです。
……まあ、それはそれとして、だ。
ブライトさんの口振りからして、協力はしたものの、サフィアさんの目的や行動理由、私達が今まで何をしていたのか等々……核心に触れるようなことは何一つとして知らないのだろう。
「母のことだ。何かしらの理由があって、遊びと称して二人と戯れたかったのだろうね。それくらいの想像はできる」
「父上は理由を知りたいと思わないのですか?」
「全く気にならないわけではないが……それの理由について、問い質すつもりはないし、私がそれを知る必要はないと思っている。仮にその必要があるなら、母が事前に知らせていただろう。……勝手な願いなのだが、今回の件は二人の記憶に留めておいてくれるか? 母もそれを望むと思うのだが」
ブライトさんがそう言うのなら……私に拒否する理由はない。
私とティールはブライトさんの言葉に頷く。それを確認したブライトさんもまた、小さく頷いた。
「ありがとう。ティール、ラルさん」
「いえ。……父上、お忙しいところ、ありがとうございました」
「こちらこそです。お時間、ありがとうございました」
「構わないよ。また何かあればいつでも来なさい」
私達はペコッと頭を下げ、ブライトさんの執務室を後にする。
そして、時間も時間なので、ティールともここで分かれ、私は部屋に戻る。
……あ、戻る前に、やることがあるか。



~あとがき~
ルーメンさんやセラフィーヌさんに「鈍い! 唐変木! くそ真面目!」等々言われてるけど、こういう時は何かと気の回るブライト。

次回、ラルのやらなきゃいけないこと。

これで、サフィアの謎解きは(私が忘れてなければ)大方、種明かしできたかな、と。
しかしながら、未だ謎のままなものもあるのは事実です。それはこの後、追々と明かしていく……予定。少々お待ちを!

ではでは。