satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第394話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ブライトとラルがあれこれ話しました。


《L side》
話があちこち行ってしまったが……まとめると、だ。
数年前、王宮内で謎の影の噂が立ち始める。それと同時期、ブライトさんは何者かの気配を察知していた。悪しき気配ではなく、むしろ、こちらを見守るような暖かな気配に、その正体がサフィアさんではないかと疑い始める。しかし、それを確かめる術もないため、そのままになり、時は現在まで流れる。
つい先日、前触れもなく、サフィアさん側からのコンタクトがあった。ブライトさんは、昔からサフィアさんの存在を疑っていたこと、手紙の筆跡、内容……それらを加味し、本人であると確信。それと同時に、噂の影の正体もサフィアさんだとほぼ確定する。
そして、ブライトさんは手紙で要請された事柄を受け入れ、今回の協力者となり、手紙と箱の設置を行った。
……これがブライトさん視点での一連の流れか。
「ん? 最後の丘の場所、ブライトさん、知ってたんですか?」
あそこ、ティールとアルドアーズさんとサフィアさんしか知らないみたいなことを言っていたような。しかし、一連の箱と手紙の準備したのがブライトさんなら、あの場所も知らないと、できないのだが。
私の問いに、ブライトさんはゆっくりと首を振る。
「手紙で聞かされるまで、あの場所については全く知らなかったよ。……あそこに母の名が掘られらた石碑があることもね。……この場合、慰霊碑、なのかな」
ふむ。あれを見つけた時、ティールも不思議そうにしていた。ってことは、あれを用意したのは、アルドアーズさん……なのかな。大切な場所に遺しておきたかったのかもしれない。
……本当に、アルドアーズさんってサフィアさんのことを愛しているんだな。ルーメンさんにボロくそに言われてたけど、なんかイメージ変わるな。
「サフィアさんとのコンタクトって、一度きりだったんですか?」
「いや? 何度かあったよ。まあ、一方的だったがね。それがどうかしたかい?」
「……個人的にやり取りは、しなかったんです? 手紙でやり取り、できたんですよね?」
「そうだね。できたと思うが……しなかったよ」
ブライトさんははっきりと答える。そこには強い意思を感じた。……サフィアさんみたいな、何て言うと、変な感じがするけど。
「ブライトさんはサフィアさんと話したいことがない……って、この聞き方はよくないですね。ごめんなさい」
ないわけがない。十数年前に亡くなったとはいえ、実の母親だ。そんな母親が視えずとも、そこにいると確信したのだ。何か思うことはあるし、言えるなら、一言二言くらい、言いたいはず。
「ははっ……構わないさ。そう思われても仕方ない返答をしたから。……私は母と話したいことはないよ」
サフィアさんと同じく、きっぱりと言いきるんだな、この人は。
「仮にあったとして、話す機会があったとして……それでも、私は話さないだろう。……でなければ、あの方は、いつまでも引き摺るなとお怒りになられる。この歳で母の叱責は御免だ」
……確かに、サフィアさん、似たようなことを言ってたけど。
どうやら、ブライトさんは母であるサフィアさんの考えはお見通しのようだ。いや、お見通しというか、理解していると言うべきか。
「そもそも、母は父との再会を望むんじゃないかな。だから、未だにこちらにいらっしゃるのだと思う」
「……アルドアーズさん?」
サフィアさんの口から、神の従者になってまで、こちらに留まる理由は教えてもらえなかったけれど……息子であるブライトさんには思い当たる節がある様子。
「そう。あの二人、いつだって喧嘩ばかり……いや、喧嘩というより、主に母が父を叱り飛ばしていたんだがね。でも、そこには、確かに二人だけの絆のような……信頼があった。現に、実子は母との間にしか成していない。父には多くの愛人がいたんだ。それこそ、腐る程に」
「庶民の考えであれなんですけど、凄いっすね……やっぱ、そういうもんなんです? 王族って」
この国の王族が一夫多妻制なのは知っている。望むのなら、何人の妻を娶っても問題はない。まあ、ブライトさんはセイラさんしか迎えてないのだが。
「そういうものだった、という方が正しいね。父の代までは必要だったのだよ。とはいえ、あの人は後継者作りのための愛人ではなく、政略のために作っていたらしいがね。それを母も了承していたが……だらしない父のことだ。そんな状況を父は父で楽しんでいたんじゃないかな。……本当に性根が腐っている」
最後のは単なる悪口では?……触れないでおくか。
かつて、この国の情勢があまりよくなかったこと、そして、それを変えたのはアルドアーズさんなのは伝え聞いている。そんなアルドアーズさんを支え続けていたのが、サフィアさん……か。
「荒れた時代を生き抜いてきた二人だ。二人にしか分からない何かがあるんだと思う。……父と母は互いに互いを支え、必要としていた。それ故、死して尚、母は父を待ち続けているのかもしれないな」
「それが……サフィアさんがここに留まる理由だと?」
「あくまで、私の考える妄想のようなものさ。確かめる術がないから、何とも言えない」
それはそうだが。
けれど、まあ、今日会ったサフィアさんの様子や、能力で視た二人の雰囲気……そして、ブライトさんの語る背景を元に考えれば、的を射ている気はする。
「私もそんな気がします」
「……ふっ。そうか」
私とブライトさんはお互いに小さく笑い合った。
もし、そうだとしたら、本当に素敵な話だ。なのだが、それならなぜ、アルドアーズさんはあんなに女性関係がアレなんだろう……? そういうのって、純愛を貫き通すものでは。
……私の固定概念なのかな、これ。考えても仕方ないのかな、これ。
「? ラルさん?」
「……ブライトさんから見て、アルドアーズさんってどんな方なのですか?」
「ふむ。……どんなと言われると難しいが……反面教師とでも言うべきか。あぁはなりたくないと常日頃から思っている」
今回とは関係ない話題なのだが、ちょっと気になったから聞いてみた。返答としては、概ね予想通りだ。アルドアーズさんとブライトさん、性格がほぼ真反対って感じだもんなぁ。
「ありがとうございました。沢山の質問に答えてくれて」
「構わんさ。お役に立てたかな」
「それはもう、めっちゃ助かりました。主に私の好奇心だったのですけれど。……その、突然、こうして待ち伏せして、無理矢理、お話を持ちかけちゃったりして……ごめんなさい」
ここまで話しといて、今更、謝罪するのもおかしな話なのだが。
ブライトさんは私の謝罪を薄く笑って受け流し、首を横に振る。
「そんなことは気にしないでくれ。こちらとしては、いい気分転換になった」
そいや、この人、ここには仕事しに来てたんだった。じゃあ、そろそろ帰ろ。これ以上はマジで邪魔だろう。
「また、機会があれば、こうして話してくれると嬉しい」
「そう言ってくれると助かります。……それでは、私はこれで。おやすみなさい」
「おやすみなさい。よい夢を」
私はブライトさんにペコッと頭を下げると、中庭を後にした。
ちなみに、気になったので、ちらっと後ろを振り返ってみた。
ブライトさんは本を広げ、どこから取り出したのか高級そうなペンをくるくると回しながら、物思いにふけっていた。
……まあ、知ってた。本来の目的はそっちですもんね!

自分の部屋へと戻る道中。
時間も時間なので、すれ違う人なんていない。流石に、こんな時間に起きてる人はいな……くはないだろうけど、基本的には皆、寝てるだろう。
そんな中、ちりん、と鈴の音が響く。
「……またか」
そう言えば、ブライトさんは影の正体はサフィアさんだろうと言ってたが、鈴の音が何なのかは言っていなかった。ブライトさん的に、あれも、サフィアさんの仕業だと思っているのだろうか。
確かに、サフィアさんの近くで鳴っている……いや、丘の上では鈴の音がなくてもサフィアさんは現れた。なら、鈴の音とサフィアさんは無関係。
それに、私が視たサフィアさんは、鈴っぽい装備品もアクセサリーも身に付けていなかった。つまり、他に何かがいる?
とはいえ、全くの無関係ではないはずだ。噂話では影と鈴の音はワンセットだった。だから、鈴を鳴らしているものも、サフィアさんの関係者……いや、同じ神の従者と考える方が自然だ。
私が思考を巡らせている間も不規則に鈴の音は鳴り響く。
ちりん、ちりん。
「雷姫、心当たりないの? この音の正体」
これが神の従者によるものなら、雷姫は何か知っているかもしれない。彼女もまた、神の御業によって創られし武器、神器だ。神様との繋がりがある。
『ふん。我とて、全ての神と顔見知りではない。これだけで分かるわけがなかろう?』
そう答える雷姫だが、くつくつと楽しそうに笑っている。多分、何か知っているんだ。でも、言わないだけ。
嘘つきと責めたとしても、教えてくれるはずもない。雷姫は別に、ティールみたく優しい訳じゃないのだ。
「……サフィアさんの同僚さん? 何か用でもあるんですか?」
意を決して、呼び掛けてみる。
その呼び掛けに答えるように、ちりん、と鈴が鳴る。そして──
「にゃあ」
私の背後から、可愛らしい猫の鳴き声が聞こえた。条件反射で数歩後退しつつ、振り返ってみると、そこには蒼い目をした白い子猫がちょこんと座っている。
「……ね、こ?」
「にゃん♪」
そうだよ、と答えるように一鳴き。
ツバサちゃんの猫ちゃん説をこんなところで回収するとは……しかし、猫……猫ねぇ?
「フォース君みたいに人ではなく、猫を従者にする神様か。……変な神様もいるものだ」
動物の神様なのか? なんっだ、その神。サフィアさんは動物ではないが? そんなことはいいか。
「鈴の音の正体、君?」
「にゃあ~ん♪」
悪びれる素振りもなく、こくっと頷き、満面の笑みを見せてくる。見れば見る程、人間みたいな猫だ。
『あら、ミィさん。こんなところにいたの?』
「!? サフィアさん!」
『こんばんは、ラルさん。また会えて、嬉しいわ』
気配もなく─霊なので、当然と言えば、当然なのだが─、私の後ろから、ふわりと半透明のサフィアさんが現れる。
もう二度と会わないのではって思ってたのに、こんなに早く再会するとは思ってなかったです!!!
「こ、こんばんは……? あ、あの、ミィさん、とは?」
『この白い猫さんのお名前よ。ね、ミィさん?』
「にゃんっ!」
サフィアさんの呼び掛けに、子猫は自信たっぷりに返事をする。
「……そう、なんですか。ところで、サフィアさん。天界に帰ったのでは?」
『そう。帰ろうと思ったのだけれど、ミィさんがいなくて。……私ね、ミィさんがいないと、天界と現世の行き来ができないの』
……だから、影と鈴はセットなのね。
サフィアさんはミィさんとやらに近付き、その場にしゃがみ、優しく頭を撫で始める。
『ミィさん、どこへ行っていたの?』
「にゃ……にゃあ。にゃん、にゃ~♪」
『まあ、そんなところへ? うふふ♪ 駄目よ? 一人でそんなところへ行っちゃ、主様が心配なさるわ。それに、主様に知られたら、叱られてしまいますよ?』
「みゃ!」
『まあっ♪ そうなの? ふふっ♪ そうね、分かるわよ、ミィさん。……でも、主様はミィさんのこと、大好きで、大切でちょっぴり過保護なの。程々にしましょうね』
「にゃあ~」
……私には、何をどう会話されてるのか、さっぱりです。
「ミィさんはサフィアさんと同じ、神の従者さんですか?」
『そう。同じ主に仕える従者仲間。ミィさんの方が先輩さんなのだけれど』
サフィアさんが仕える神は恐らく、経緯から察するに転生の神。つまり、この猫も、転生の神の使い。あの、神様の……
そんな思考を巡らせていると、サフィアさんが制止するように、自身の口に手を当てる。
『ラルさん、それ以上はよくないわ。主様の加護があるとはいえ、迂闊に口にしていい名前ではないのだから』
「……そうですね。気を付けます」
『そうしなさい。……ふふ、いい子ね』
「こ、この歳でいい子……って褒め方はどうなんです?」
『あら、いいじゃない。私にとっては、ラルさんは孫も同然ですよ?』
「……孫!? なんで!?」
『私の可愛いティールと仲良くしてくれるから』
どういう理屈だ!?
サフィアさんは詳しく教えるつもりはないようで、にこりと微笑むだけだ。
『さあ、ミィさん。帰りましょうか』
「にゃあ!」
『ふふ、そうねぇ♪ 帰ったら、主様に自慢しましょうね。……ラルさん、またね』
「はい。……猫さんも、さようなら」
「にゃあ? にゃあんっ♪」
もう、会わないことを祈ってます。あの神様とは、あまり関わりたくないので。
ミィさんの鈴がちりんと鳴れば、一人と一匹は、私の目の前から姿を消した。
──転生の神、『✕✕✕』の使い、か。
私は頭に浮かんだ『転生の神の名』を追い出すように何度か首を振る。そして、ぐっと背伸びをした後、部屋を目指すために歩き始めた。
「世間って狭いなぁ」
なんてことを思いながら。
世間と言うか、世界と言うか……いい言い回しが思い付かないのは、今日一日が長かったせいだ。きっと、そう。



~あとがき~
サフィア編、これにて終幕。

次回、海の国編、そろそろ終いでござる! まとめ回が始まるよ!
(ただし、すぐに終わるとは言ってない。)

年一で書いてる天界組の話を読んでくれている方々にはお馴染み(?)の白猫のミィちゃんです。遂に、本編デビューしちゃいました。
相方に「(鈴の音の正体)出せよ? 出せよ!?」と言われていたので、きちんと出せて何より。

ではでは。