satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第393話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、色々終わらせて、王宮に戻ってきた二人。ブライトからも少し話を聞けました。
今回はラルがしたいことをします。


《L side》
夜も更け、辺りが静まり返る時間。
私は月明かりの下、中庭に設置されているベンチに座っていた。
別に一人になりなかったとか、今日の出来事を整理したかったとかではない。ただ、とある人物を待っているだけだ。
「……? ラルさん?」
「こんばんは。お待ちしてました、ブライトさん」
中庭を訪れたブライトさんは数冊の本と剣─意匠からして、セツちゃん─を携えて、不思議そうにこちらを見つめていた。
「その荷物……もしかして、今夜もまた、隠れてお仕事ですか?」
なんてね。ある程度、予測していたから、私はここにいるんだけど。
王宮には今、セラフィーヌさんが滞在している。時折、ブライトさんに対し、「過剰労働、厳禁!」という旨の訴え(?)を口にし、目を光らせているらしい。
そんな中、ブライトさんが素直に執務室で仕事を続けるはずもない。本当は仕事しているけど、パッと見、仕事をしていないという状況を作るしかない。
そんな場所にうってつけなのが、中庭だ。ここなら、空から月明かりが差し込むし、遠目からなら読書しているように見せられる。
ぶっちゃけ、他にも条件を満たせる場所はあるのだろう。それでも、私が中庭で待っていた理由が一つある。
「セイラか……或いは、セラさんにでも頼まれたのかい?」
「いえいえ、まさか♪ 前、ここでお仕事しているブライトさんをお見かけした際、この事は内緒でって言われましたから。頼まれたとしても、適当に受け流してますよ」
そう。過去、ここに滞在した時、たまたま、中庭で仕事をするブライトさんを見かけたのだ。だから、執務室で仕事しないんなら、ここかなぁと思った次第である。
「ふむ? ならば、君は私と話がしたくてここに? しかし、先程、話は終わったものだと思っていたのだが」
「はい。さっき話さなかった……というか、話せなかったことを話したくて。ティールが嫌がるような話題ですから」
「……ほう。とりあえず、隣、いいかな?」
「どうぞ♪」
私の隣にブライトさんが座り、ちらりと私の様子を窺ってくる。
私は小さく深呼吸し、話を切り出した。
「ブライトさん、先程の手紙の件……あれが全てではないですよね?」
私の言葉にブライトさんは反応を示さなかった。まあ、これは予想通りなので、このまま、話を続けさせてもらおう。
「貴方程の方が、字が似ていて、本人しか知り得ない情報が書いてあったという理由だけで、サフィアさん本人であると断定するはずがない。ブライトさんは慎重な方だと認識しています。……それだけの根拠で、怪しい遊びに付き合うはずがない。ましてや、実際、付き合うのはブライトさんではなく、ティールです。ならば、余計に気を配るはずですよね?」
しかし、現実、ブライトさんはサフィアさんの手伝いをしている。これはブライトさんもサフィアさんも認めていた。だから、「協力者=ブライトさん」という式は覆せない定義である。
なら、この違和感を拭うため、一つ、発想を逆転させればいいのだ。
「順序が逆なんですよね?……ブライトさん、貴方は前々からサフィアさんの存在を疑っていた。そんな中、本人と思われる相手からの手紙を受け取り、確信に至った……違いますか?」
私の問いかけに、今まで無反応だったブライトさんがフッと笑う。
そして、肯定するように小さいながらも頷いた。
「凄いね。正解だよ。……どうして、辿り着けたのか聞いても?」
もちろん。
「とある人が教えてくれました。ブライトさんは感じ取れる人だと」
そう。鍵は私がサフィアさんに問うた、最後の質問に対する返答だ。「協力者は視れなくとも、感じ取れていた」である。
「そうか。……母が言っていたのかな?」
……私は肯定も否定もしなかった。
サフィアさんには会ったことを伝えるなと言われている。協力者であったブライトさんに隠す必要もなさそうだが……でも、ブライトさんは今回の件を大まかにしか把握してなさそうだった。その大まかな部分に『私達と邂逅する』が含まれているなら、言ってもいい。が、そうでないなら、サフィアさんとの約束を優先するべきでだと判断した。
「ご想像にお任せします」
……否定しないのは、肯定も同意な気もしなくはないが、その辺りはブライトさんも分かっているはずだ。深くは問うまい。
「なるほど。……なら、勝手に想像させてもらおう」
「はい。お好きになさってください。……しかし、こうなってくると、ティールが昔に見たという謎の影についても、見当がついていたのでは? まさか、当時、本当にペットが紛れていた……なんて、思ってませんよね?」
この話はティールが傍にいたこともあり、サフィアさん本人には聞けなかった。それ以前に、今回の遊びにも関係のないことでもあるし、優先度が低かったのもあるけど。
「あぁ、当然。そのように思っていない。……私が思うに、昔、ティールが見た影の正体も母だ。もちろん、私が直に視たわけではないけれどね」
「ブライトさんはどれくらいの霊感をお持ちで?」
「そこまで強くないと思う。……ラルさんが言った通り、私は俗に言う、お化けや霊……それらの類いを視はしないが、感じ取ることができる。ただ、それを大雑把に感じるだけ……そうだな。そこにいる、それが善いか悪いか……それくらいの判断しかできない」
本当に微々たるものだな。ちょっと敏感な人、くらいか。本人的には気配察知の延長線なのかもしれない。
……なるほど。それくらい曖昧なら、霊的な類いは信じないと言った理由も想像できる。
自身の目で視ていないなら、信じるに値しないってことだろうな。……実にブライトさんらしい理屈である。
「あの影の話、今ならきちんとお話ししてくださいますか?」
「構わないよ。ラルさん相手に偽る必要もないみたいだからね。……影の噂が流れたのは、母が亡くなってから数年後。同時期、私は時折、王宮内で何かの気配を感じるようになった。人ではないその気配は悪いものではないから、今の今まで、放置していたんだ」
その気配の正体がサフィアさん……か。
ブライトさんは、「私に、どうにかできるわけでもないから」と、どこか寂しそうに呟く。そして、そのまま、ふと、空を見上げる。
「その気配からは……何て言うのだろう……私達を見守っているような、暖かなものを感じた。だから、もしかしたら、とは思っていたよ。しかし、それを周りや……怖がるティールに伝えられるはずもなく、当たり障りない理由をでっち上げた訳だ。結果、部下達の間で、王宮の七不思議の一つという怪談話になったのさ」
そら、スピリチュアルなこととは、無縁っぽいブライトさんから、そんな話を大真面目にされたら、逆に心配されかねないかもしれない。何とは言わないけど、長期休暇を勧められちゃうかも。
「……あの、なぜブライトさんだけ感じ取れるのですか? ティールは全くなのに」
「さあ? なんでだろうね?」
あら、本人も分からないのか。
ブライトさんは肩を竦め、どこか不敵めいた笑みを浮かべる。
「気が付いたら、そうなっていたとしか言いようがない。明確なきっかけに心当たりもないんだが……もしかしたら、何度か死にかけたことが起因しているかもしれないね」
「…………ふぁ!?」
「よく言うだろう? 彼岸に触れた者はそれに近しい感覚……或いは、存在になると」
待て待て待て! さっき、そういうのは信じねぇって話をしたよなぁ!?
「え、あの、ブライトさん? そういうこと、本気で思ってます? 信じないんじゃあ……?」
「あぁ、信じないよ。……冗談だよ、安心してくれ」
どれが! どの辺から冗談だ!?
顔色一つ変えず、話すものだからどこから冗談の域なのかさっぱりである。頼む、誰か教えてくれ!? 強いて言うなら、不敵な笑みを見せてた辺りか……?
「……どの辺から冗談です? 死にかけた云々から?」
「それは本当だよ」
嘘であってほしかったぁぁ!!
「彼岸辺りからが冗談だ。……そのようなことがあり得るのなら、私以外にも多くの人間が似たような感覚を得ているだろう?」
「ま、まあ、ブライトさんの理論でいくなら、そうかもしれないですが。……え、本当に何度か死にかけたんです?」
「あぁ。若い頃、生死の境を彷徨う経験を何度か。大抵が能力を使用した代償だったか。……この世のものでない何かと触れる機会なんて、これくらいしかないから、きっかけと呼べるのはこれくらいかな、と。……もちろん、確かなことは言えないけれどね?」
能力……“あやつり”か。ティールはアホみたいな使い方しないと倒れないけど、ブライトさんはどんな使い方をしたのやら。
それはそれとして。
私の霊視は生まれつき─中二より前の記憶がないので、実際は知らんけど─だし、今は雷姫の目もあって、強化されちゃってる。フォース君もまあ、似たようなもんだろう。生前視てなくても、神の使いとして、覚醒した可能性は大いにある。だからまあ、後天的に発症するケースも、あるっちゃあるんだろうけど……能力関係はあまり詳しくないからなぁ。
「私としては、大し困ることもないし、気にしていない。むしろ、悪しき気配を過敏に感じれるだけ、いい能力だとすら思うくらいだ。……けれど、あまり他の人には口外しないでくれると嬉しい。特にセイラには。ティール程ではないが、あいつも、これの類いは苦手なんだ」
「そうなんですね。……分かりました。内緒にしておきます」
もしかして、ティールのビビり、過去の経験もあるけど、セイラさんに似た部分もあったりして……?



~あとがき~
過去、ブライトって動かしにくぅ……って思ってたんだけど、相手次第ではスラスラと喋りやがるぜ……!

次回、ラルとブライト。
そして、最後の謎にも答えが遂に。
まさか、ブライトとの話を二つに分ける羽目になるとは。

実は、ブライトとラルって、仲いいんだよな。お互い、思考が似た者同士なので、意気投合するねん。
……まあ、ラルが基本、誰と組ませても仲良しになると言うか、きちんと会話するのもあるのですが。

ではでは。