satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第400話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回に続いて、『赤獅子』の謎に迫る回想です。そして、恐らく、最初で最後のアルドアーズ視点の回です。
こんな話だけど、400話。めでたいね()


《Ar side》
ふと目を覚ますと、見たこともない景色が眼前に広がっていた。埃っぽい部屋に、必要最低限の家具すら見当たらない、廃屋のような場所。もしかしたら、どこかの地下室なのかもしれない。
薄暗い部屋の中、俺は両手を縛られた状態で床に転がされていた。
……なんで、こんなところにいるんだっけ?
それを思考するより前に、いかにも悪人面の奴らが、ぞろぞろと入ってくる。その中から一人、俺の前に立ち、じっと見下ろしてきた。
「ようやくお目覚めか」
「……ここ、どこ。あんた誰?」
目の前の男はそれに答えず、背後に控えさせていた男ら数人に向かって、何やら指示を飛ばす。それを聞いた男達は俺に近付き、無理矢理立たせてきた。
「え、何……? 何したいの」
「うるせぇ! さっさと歩け!」
半ば引っ張られるように連れてこられたのは、簡素なテーブルと椅子二つが並べられただけの場所。椅子の一つに座らされ、目の前には偉そうにしていた男が座る。
「俺が聞きたいのは一つだ。あんたと一緒にいた男の情報が欲しい」
「……一緒に、いた?」
あぁ、そうだ。思い出した。
ルゥと別れて、適当に町を歩いていたら、見知らぬ男ら十数人に囲まれたんだっけ。そっから抵抗しまくったけど、後から後から人が増えてきて、数の暴力に負けた結果、気絶したんだったわ。
じゃあ、何。俺、誘拐されてんの? 誘拐の理由がルゥと一緒にいたから?
しかし、こいつらに絡まれた時、ルゥは傍にいなかった。それなのに、一緒にいた男と明言した。
つまり、ここ最近、感じていた気配の正体は……
「あ~……一週間前、俺らを見張ってたの、お前ら?」
「察しがいいな」
となれば、ルゥの命を狙っていたのは、こいつらか。
俺は目の前の男から目線を外し、周りの様子を窺う。
部屋のあちこちに残る傷や赤黒い染み。そして、無造作に放置された拷問器具の数々。更に、こいつらが纏う独特な気配。
見たところ、暗殺者集団っぽいな。そんな奴らが一般人のルゥをなんで狙うんだ? 俺みたいに、あちこちから恨み買うわけでもあるまいに。
「つまり、なんだ。……ターゲットとずーっと一緒にいた俺から情報をもらおうと誘拐したでいいか」
「ほう……状況がよぉく分かってるんだな? お偉い坊っちゃんは頭がいいのかぁ?」
目の前の男が下品に笑い始めれば、周りの男達も声を上げて笑い始める。
お偉い坊っちゃん。……俺をそう呼ぶのか。ちと不味いかもしれない。
「でぇ? 頭のいい坊っちゃん様はこの次、何をしたらいいのかも分かるよなぁ?」
「……」
うーん。何をしても破滅では?
仮に素直にルゥの情報を話したとしよう。こいつらにとって、俺を生かす理由がなくなる。実際、顔を見られているわけだし、いつか粛清対象になってもおかしくない。まあ、今回は解放されたとしても、「今後もいい情報をよろしく」なんて、されたくはないし、結局、事が終わった後に俺も殺されるのは明白だ。
じゃあ、何も話さないとしよう。それこそ、利用価値のないゴミ判定を受ける。即、殺される。
難問だなぁ……これ。
とりあえず、適当に会話を続けてみるか。
「あのさ……俺、あいつと大して仲良くないわけよ。多分、お前らが知ってる程度の事しか知らんよ?」
嘘半分、事実半分。さて、どう出てくる。
「それを判断するのはあんたじゃねぇ。俺だ」
あ、そっすか……まあ、そらそうだわな。
今はまだ、会話が通じる機嫌のようで、じっと俺の出方を窺っている様子だ。
もうちょい、いってみるか。
「この前から見張ってんなら知ってるだろ。俺ら、喧嘩中で絶交中なんですよ。現在進行形で睨み合ってるわけでして。まあ、なんつーの? 俺らってそんくらいの仲なんですわ。そんな俺から何を知ろうとしてるんですかね?」
「そうだなぁ? あんたが知る限りの奴の情報。そして……そうだな。協力でもしてもらおうか? 大喧嘩しても、行動は一緒にしてたよなぁ? ってぇことは、だ。お前さんらは、ある程度の信頼関係はあんだろ?」
「なるほどねぇ。……お前の欲しいのは情報と俺の協力。俺を使って、あいつの命を頂戴したいってこと」
情報はルゥとの戦闘を優位に進めたいから。
俺は単なる餌にしたい。……ふんふん。うん。結局、俺、死ぬのでは?
俺の考えを知ってか知らずか、目の前の男は薄気味悪くニヤリと笑う。
「あんたが上手いこと動いてくれんなら、俺達だって悪いようにはしないさ。……ちったぁ、あんたの事も調べたつもりだぜ。俺ら、いいお友達になれるんじゃないの?」
「あ……? あぁ……ふ、ははっ♪ あ~ね? なるほどね。そう来るの?」
お偉い坊っちゃん……俺を海の国の王子だと知ってて持ちかけてきてる。そして、今まで俺が何をしてきてるのかも、相手方は察しがついている。
俺が清廉潔白な坊っちゃんじゃない……と。
「それで? あんたの答えは?」
「……答え、ねぇ。ちなみに、考える時間はくれない? 一日とか」
「やるわけねぇだろ。今、答えろ」
だよねぇ~?
圧倒的に有利なのは相手だ。これはどうやっても覆らない。俺やルゥの関係性はある程度、バレてるんだろう。ならば、嘘を並べたとしても、どうにかなる問題ではない。
もちろん、適当な嘘を並べて相手に合わせて、ルゥと合流した後、敵を叩くとかしてもいい。しかし……生憎だが、勝算がない。相手の人数も不明だし、何より、察しのいいルゥが俺と一緒に戦うとも思えない。きっと、馬鹿なあいつは一人でどうにかしようとしてしまう。それじゃあ、意味がない。
なら、ここで猛反発して俺一人で片付ける……のも、現実的ではない。なんせ、最初のやり取りで俺が負けている。そして、今はその時よりも分が悪い。武器なし、道具なし、体もくっそ調子が悪い。
こんなん、勝てるもんも勝てんわ。
あ~……どうしよう。八方塞がりってこの事じゃないのぉ?
……どうにも塞がってるなら、俺の信念に基づいて動くかぁ。あまり、現実的ではないけど、もうどうにもならんし。
「今のところ、ノーコメントにしとく」
「…………あ?」
「だって、俺に対するメリットがない。あいつの情報と命を売って、その先、何があるの? 俺の命の保証? いやいや、生きてる間、お前に脅される未来しかねぇじゃん? そんな人生ごめんだね。大体、俺が友人売るわけないのよ。俺、友達を大切にするタイプなの」
目の前の男の機嫌が一気に悪くなるのを感じる。もう一押し、しておくか。
「そうだなぁ? どうしても俺の協力を得たいなら、力で捩じ伏せてみろよ。……もしかしたら、もう止めてください。なんでもしますからって言い出すかも。……やれるもんならやってみてよ」
言葉で懐柔されない。でも、力なら?
そうやって多くの人を絶望へ陥れてきたのは、周りを見て分かる。今まで、素直に言うことを聞かない相手には、そうしてきたのだろう。なら、俺相手にもそうさせしまえばいい。そっちの方が時間が稼げそうだ。
「……利口な坊っちゃんだと思ってたが、とんだ世間知らずな馬鹿な坊主だったか。……おい! てめぇら、遊んでやれ!」
「あっは! それはそれは……滅茶苦茶、楽しみっすねぇ?」
あいつとは、現在進行形で喧嘩別れ中だけど、多分……いや、どんな手を使っても俺を見つけるだろう。ルゥは……ルーメンとはそういう男だ。義理堅く、世話焼きで優しい奴だから。
ならば、それまでの間、俺はこいつらを引き付けておこう。何もない俺ができる最大限のサポートだ。
──ちゃあんと見つけてくれよ、相棒。それまでは死なずに耐えておくから、さ。



〜あとがき〜
前後編になるなんて聞いてない!!

次回、アルドアーズ視点の回想、後編。

今までのアルドアーズさんって、どうしようもないダメダメおじいちゃんの印象が強いんですけど、彼の根本にある部分はきちんとしているんです。
彼の根底にある性格として、情に厚く、友人、仲間、家族……要は身内を大事する人なんです。彼らを守るためなら、どんな手段も厭いません。そんな人です。
ま、そんな人でも女の子ときゃっきゃっするのは楽しくてやめられないみたいなんで、どうしようもないんですけど。

ではでは。