satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第443話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ラルが全員を叱責して、とりあえずは幕を閉じました。締まりのないのがフェアリーギルドらしさですね☆
そして、今回からは説明パートとなります。


《A side》
俺達が街に戻る頃にはすでに日も沈み、祭り自体も終了しているらしい。関係者達による片付けが着々と進められていて、本来の街の風景を取り戻しつつあった。
そんな中を突っ切って、フェアリーギルドへとやってきた。ギルド内はラルが言っていた通り、打ち上げの準備が進められていて、食べ物や飲み物が次々と運び込まれている。
ギルド関係者全員があの茶番に参加していたとは思えないけど……なんていうか、凄まじい切り替えの早さだな。
ラルは辺りをぐるっと見回すと、とあるテーブルに並べられたフルーツを眺める校長を見つけた。
「親方! 二階の応接室を使いますよ!」
「い~よ~♪ ボクはセカイイチ食べてるから! 説明は任せるよ、ラル!」
「あぁ、そうですか。もう好きにしろ。……フォース君、適当に飲み物を見繕ってくれる?」
「うい~す」
雑な返事をしながら、フォースがふらりと離れる。
俺達はラルに案内されるまま、ギルドの広間を抜け、二階へと上がり、『応接室』とやらに通された。
広間は打ち上げ準備で騒がしかったけど、二階は人がいないのか、がらんとしていた。応接室も内装もまあ、どこにでもある感じで、ソファとテーブル、壁をぐるっと囲む棚の数々……という、ありがちの雰囲気である。
そんな部屋のソファに俺、ツバサ、レオンが座り、対面にラル、ティール、雫……はティールの膝の上に座る。
全員が着席したのを確認したラルは、こほんと咳払いをし、「何から話したものか」と眉をひそめた。
「んなもん、全部だ。全部! こちとら、なんにも分かってないんだからな!?」
ある程度の想像はできても、あくまでも予想の範囲。真相は何一つとして分かっていない。一から十まで話してもらわないと困るってもんだ。
「あー……うん。そうだよねぇ……? なら、そうだな。……全部を話す前に、アラシ君達がどこまで把握してるか、聞いておきたいんだけど」
俺達が知ってること……?
ティールから聞いた、『悪の大魔王』のこと。
その『悪の大魔王』にラルが誘拐された─実際はされてなかったけど─こと。
なぜかギルド関係者が『悪の大魔』とその一派を名乗っていたこと。
……とまあ、そんなところか。
簡単にそれらの事柄をラルに伝えると、ラルはこくこくと頷き、ぴんっと人差し指を立てた。
「ふむ。……なるほどね。とりあえず、お察しの通り、今回の件、フェアリーギルドで計画したことであるってのは間違いない。実は、この『悪の大魔王』関連の事件はね、新人の抜き打ち試験みたいなものなの」
「抜き打ち試験……ですか?」
「そう。まず、『悪の大魔王』事件の真相から話していこうか」
──ラルが言うには。
ギルドに加入、或いは加入していた人物がどれだけの実力を持っているか、親方であるプリン校長の独断と偏見による人選で行われる試験らしい。
簡単に言えば、『悪の大魔王』が起こした事件を解決できるかどうか、そこを試されている。それを毎年、一人、或いは数人が選ばれて、巻き込まれていくとのこと。
そのため、俺達が聞いた『悪の大魔王』が起こしたとされる事件に統一性もなく、被害も小さい事件で済まされていたわけだ。その理由も事情を知らない一般客をなるべく巻き込まないようにするための配慮がされていたからだそうだ。
よく聞けば、過去、事件の被害に遭った店や人達は全員、ギルドの関係者だったらしい。
「そもそも、『悪の大魔王』って名前自体、ギルドの関係者しか知らない単語なんだ。言ってしまえば、これはギルド内で行われる身内ドッキリ企画みたいなもんだから。現にぼくらがラルが拐われたって知らせを受けた時、ぼくらの周りに人はいなかったろ?」
……言われてみれば。
俺達はいたけど、逆に俺達以外の人はいなかったように思う。
「そう。……ただ、ヒマワリのところから、アラシ達がいた場所が死角になってたっぽくて、三人に気付かず、ラルが拐われたって言いながら来ちゃったみたい。本来なら、ぼくと雫、ウィルさんの三人だけがいる時に言う予定だったんだ」
なるほど。となると、今回の対象者は雫だったってことか?
ウィルさんは早々に離脱してたし、ティールも穴の下に降りた直後、離脱しちまったしな。
「ピンポーン♪ 大正解だよ、アラシ君。……今回はしーくんのための試験でした」
「……みんなで、ボクのこと、いじめたかったんじゃないの?」
不安そうな表情を浮かべる雫にラルは大袈裟に思えるくらい、首を横に振る。そして、がばっと思い切り雫に抱き付いた。
「やだやだやだー! 可愛いしーくんにそんなこと、するわけないじゃーん! というか、そんな計画、私が許すわけないし! 大体、しーくんを苛める奴がいたら、私が粛清しちゃうんだから!!」
「あー……はいはい。冗談はおいといてね~」
ティールが適当にあしらうと、ラルはきょとんとした顔でティールを見上げる。
「え? 冗談じゃないけど?」
「頼むから冗談にしてくれ。……こほん。話を戻すけど、今回は雫がどれだけの力をつけたのか、それを確かめるための試験だったってことだね。……まあ、ぼくらとしては反対だったんだよ? チームの一員とはいえ、まだ幼いし、雫は……その、素直で優しいから、ね」
……ティールが何を言いたいか、なんとなく分かる。後々、冗談ですまない可能性があるってことだろうな。
「けど、親方に押しきられる形でぼくらも渋々ね」
「まあ、私達じゃ、親方には逆らえないしね~……妥協案として、ティールとウィルさんをしーくんにつけることを条件に私も了承したの。……けど、蓋を開けてみれば、ツバサちゃん達はいるし、ウィルさんはいないし、ティールは早々に離脱してるし。……おまけにフォース君が敵側で参戦しちゃってるし……ったくもー! 私の書いた計画書はどこやったんだよ、あのアホ親方は!?」
……あぁ、一連のシナリオ、ラルが書いたんだ。
「ちなみに、ラルの当初の計画としては、どんな感じに進む予定だったんだ~?」
「ん? そうだね……まあ、大きな路線変更はないよ。しーくんの指示の下、ティールとウィルさんに『悪の大魔王』をやっつけてもらって、私を助けるみたいな。何かあっても、ウィルさんとティールなら、大抵のことはどうにかしてくれるからさ」
な、なるほど……つまり、ウィルさんやティールがいれば、ある程度、不測の事態は対応できる算段だったのか。だから、ラルの中で、二人を雫の側に置くことが条件だったんだな。
「ご、ごめんなさい、ラルさん。私達、しーくんの試験だったのに、勝手についてったりして……」
「ううん。ツバサちゃん達は悪くないから謝らないで? 知らなくて当たり前なんだし。……けど、ティール。君は反省会な? とりあえず、一応の言い訳は聞いておこうか?」
「あ、その、ごめんなさい。……けど、あんなにラルのことを心配してるツバサを置いとけないし……無理に残して、後をつけられる方が厄介なことになりかねないだろ? 大体、ぼくだってあそこでの離脱は予想外だったよ」
「まあ、あれはあっちの独断専行っぽいけどねぇ……? 親方達からすると、ウィルさんとティールってカードが強すぎたんだろうけど。その分、こっちは数を少なくしてたんだから、大目に見ろや」
……そういう問題か?
まあ、それは置いといて、だ。
ここまでの話をまとめると、この一連の茶番劇は元々、雫の腕試し、抜き打ち試験だった。ラルが拐われたのも、あそこで『悪の大魔王』達とバトルになったのも、その一環だった……と。
「そそ♪ つまりは、そういうことだね。……ま、ここまで計画がーとか、色々言ったけど……個人的なことを言うと、ツバサちゃん達が来てくれて嬉しくもあったんだよね、私は」
ラルの言葉に俺達は首を傾げる。そんな俺達を見て、ラルはにこっと笑う。
「そこの護衛二人は、仕方なくかもしれないけど……ツバサちゃんが来てくれたのは、私を本気で心配して、助けようとしてくれたからだよね? その気持ちは予定されたものじゃなく、嘘偽りない事実だから。それは凄く嬉しかった」
「ラルさん」
「だから、改めて言うね。……ツバサちゃん……それと、レオン君とアラシ君も。しーくんと一緒に助けに来てくれてありがとう」
「……っ! いえ……! 本当に無事でよかったです、ラルさんっ!」
ツバサは心底、嬉しそうに満面の笑みを見せる。
ぶっちゃけ、最初の方から嫌な予感はしてたので、ツバサ程の熱はなかったけど……ま、何もなくてよかったのは、そうだと思う。とは言え、面と向かって礼を言われるとは思ってなかったので、多少、照れ臭い気もするけど。
……待て待て。俺はなんで、こいつの礼で照れ臭いなんて、思ってるんだ?
「にゃはは♪ 気にすんなって♪ ラルの言う通り、俺達はツバサについてっただけだから!」
「そ、そうそう! レオンの言う通りだ。……大体、俺は別にお前の心配なんて、一ミリもしてないし。だから、そんな畏まって礼なんてする必要もねぇし……される覚えもないっつーか」
誰に何を指摘されたわけでもないのに、言い訳がましく、つらつらと言葉が出てくる。
そんな俺を不信に思ったのか、ラルが小さく首を傾げる。
「…………ねぇ、アラシ君」
「……な、なんだよ?」
「まさかとは思うけど、照れてる?」
「はあ!? んな訳ねぇし!? お前の感謝ごときで照れ臭くなんか……っ!」
「あっは♪ 私はそこまで言ってないんだけどなぁ……? そっか。私の『ありがとう』に照れ臭く思っちゃったんだぁ?」
あぁぁあ!? なんで言わなくていいことまで言ってんだ、俺えぇ!?
「んふふ。可愛いところあるねぇ、君は」
「う、うるせえぇぇぇ!!!」



~あとがき~
私生活で色々ありすぎて、更新がまばらになってます。すんません……!

次回、説明会は続く!

最後のラルとアラシ君のやりとり、相方プレゼンツです。ありがとうございました。
原案(私)だと、アラシ君はあそこまで反応しないのですが、ふと相方に質問したところ、「照れ臭く思うけど、アラシはそこで黙るような奴じゃない」と言われました。どうやら、アラシ君はそこまで大人しくないらしいです←?

ではでは。