satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第222話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で戦闘する物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回から場所が変わって、森の中を探索中な二人です!
この夏休み中のお仕事話、そこまで長くやるつもりなかったけど、着々と話数を重ねてますね。これは夏休みメインの話ではないので、十話を越えないといいんだが。


《Te side》
ダンジョン内が広いと、同じ場所でも景色ががらっと変わることがある。生い茂る山道だったはずなのに、岩山だらけの場所に出たり、晴れていたのに天候が一転して大荒れになったり。
これもまた、ダンジョンの効果と言うべきなのだろう。もしくは、何者かによる故意的に行われている場合もあるか。
……ぼくが何が言いたいかって、これまた単純なのだけれど。
「なんだこれ。……視界悪すぎ」
木々の障害物で視界が遮られることはあれど、基本、視界は良好だったのに、今は濃い霧に包まれていた。ほんの数メートル先もさっぱりになってしまっている。
そんな状態でもバッジ機能の一つ、マップ表示は優秀で、ぼくの現在位置は問題なく表示されていた。だからって、この霧が邪魔なのには変わりはないけど、迷うことがないのは助かる。
「濃霧ってやつかな。悪天候……」
ラルと歩いていたときはなんでもなかったのに。ぼく一人になった途端、これだ。運がないとはこのことである。
こうも視界が悪いと、自然と動きも慎重になってしまう。進むスピードを落とし、見落としのないよう、うっかり敵の先制を許さないように神経を尖らせる。
そうして探索を続けること、数十分。
遠くの方でモンスターの声を聞いた気がした。もしかしたら、目当ての討伐相手かもしれないと少しの期待を抱きつつも、より慎重に歩を進めた。
「……あれ、は」
ぼくが捉えた敵は確かに、この森に相応しくないやつだ。なのだが──
「ゾンビ的なドラゴン……?」
『ぞんどら』
『ぞんどらぞんどら』
うん。その略称、流行らないと思うよ……?
のっそのっそと歩くそれは、竜特有の強固な鱗も、立派な翼もない。全てがボロボロで、鱗は所々剥がれ落ち、翼も破れてしまっている。それでも、かつての風格を表すように強敵のオーラだけは感じ取れる。
見つかる前に、見失わない程度の距離を保ちつつも、敵との距離を取る。視界が悪いと言っても、気配はあるので、シルエットがぎりぎり見えるくらいは離れておく。それでも、いきなり振り向かれれば、遠心力パワーで威力倍増した尻尾攻撃とか当たりそうだけども。……多分、そんな素早い攻撃はしてこないだろう。
「前回といい、今回といい、なんでお化け関連の依頼をラルは持ってくるのかな」
正確には、今回の相手は、ぼくが嫌いなお化けではないのだけれど。そういうことではなくてだ。
『てぃー! きょーは、ざんげきもきく!』
『よかったねー!』
そ、そうですね……!
なぜか上機嫌なスイとセツは放置して、ぼくはラルに連絡する。もちろん、声は潜めて。
「ラル? 目当てのゾンビドラゴン、見つけたよ」
『お。やっぱ、そっちいくかぁ』
……やっぱり?
『こういうときのティールって何かと引き寄せるじゃないですか。いやはや、運がいいねぇ』
えぇ……嬉しくない。
「討伐相手、ゾンビドラゴンって聞いても大して驚いてないんだね? もしかして、君、討伐相手がゾンビドラゴンって知ってたんじゃあ」
『サプライズってやつだ』
嬉しくない!!
通信機越しに楽しそうに笑うラル。警戒心を感じさせないその声に、安心半分、苛立ち半分と複雑な感情が沸き上がってくる。
「こっち、来れそう?」
『そりゃあ、目当てはそっちにいるからね。今から向か……あ、ごめーん。そこそこ遠いわ。何事もなく急げば十分かかるって感じ』
マップ表示させて、位置情報を見たのだろう。ラルの言葉を聞く限り、思った以上に離れたところにいるらしかった。
くそ、どんだけ広いんだよ。
『私を待っててもいいし、ティール一人でさっさと倒してくれてもいいよ』
「えっ」
いつものラルなら、到着するまで待てって言いそうなのに。いや、別れる前は一人でも問題ないとは言っていたけれども。
『おあ? あー……ごめん。そっちは任せるわ。切るね』
「あ、ちょ、ラル!?」
数秒前はどっちでもいいと言ったくせに、二言目にはそれを撤回し、ぼくに丸投げしてきた。慌てて、ぼくから何度も呼び掛けるものの、ラルがそれに応えることはない。
……何かあったんだろうか。だとしたら、そっちに向かった方がいいかもしれない。
ぼくはちらりと標的の様子を窺う。相変わらず、ぼくに見向きもしないドラゴンは、のっそのっそと歩くだけ。攻撃してくる様子もなければ、暴れる様子もない。しばらく放置していても問題はないようにも見えた。
ラルと連絡取れるようになるまで、見張るだけ見張る? それとも、スイかセツをここに残して、ラルのところへ向かうべき? それとも、さっさとこいつを倒して、ラルと合流すべきなんだろうか?
……いや、こうして、悩んでいる方がもったいないか。リーダーの最初の言葉を思い出せ。ぼく一人でも大丈夫だと言っていたんだ。ならば、ぼくのやるべきことは。
「目の前の仕事を終わらせて、ラルのところに行く、だ」
そもそもの話、せっかく見つけたのに、こそこそ隠れていたり、尻尾巻いて逃げるのは男として駄目だよね。うん。
「やろうか。スイ、セツ」
『ほいさ!』
『ほあほあー!』
ぼくはスイとセツを抜き、中段で構える。偶然とは言え、敵の背後について回れているのだ。ここで不意打ちしない手はない。
ラル程のスピードは出せなくとも、攻撃回数や基本攻撃の威力はぼくの方が上だ。
この一撃で半分くらいの体力持っていくくらいの気持ちで!
「……せやっ!」
ぼくが出せるトップスピードで突っ込み、スイには水属性、セツには氷属性の力を込めた属性攻撃を繰り出した。鱗のない部分を狙い、何度かの連擊を打ち込んでおく。
突然の痛みにドラゴンは苦しそうな声をあげ、翼を大きく羽ばたかせた。飛ぶつもりというよりは、痛みを逃がしたいためにやっているだけらしい。もしかしたら、人が痛みにのたうち回る感覚に近いのかもしれない。
「休ませない……!」
斬擊も有効であると分かった以上、間髪入れずに攻撃するに限る。考える隙を与えない。反撃の暇なんて与えない!
どたばた暴れるドラゴンに何度も何度も斬りかかる。単純な斬擊よりも、属性乗っけた方がダメージは多そうなので、スイとセツに力は込めっぱなしである。
『てぃー! しっぽぶんぶんくるー!』
「了解!」
動きが鈍かった割に、ぐるんっと勢いよく体を捻り、鞭のような尻尾による薙ぎ払い攻撃を繰り出してくる。ぼくは後ろに大きく後退し、尻尾の攻撃範囲から逃げつつも、スイを握る手に力を込めた。
「飛ばすぞ! スイ!」
『あいっ!』
スイを振るい、水の刃をドラゴンに向けて放つ。水の刃と尻尾がぶつかり合い、形を持たない水が押し負けてしまう。ぼくが放った刃は呆気なく無数の水滴となって、地面に降り注ぐ。……普通なら、ね。
「そうなると思ってた。……“水針”」
液体を自在に操る能力で、重力に倣って落ちるのみであった水滴達に別の力を乗せる。一つの刃だったそれらは、無数の小さな針となってドラゴンに向けられる。
「水に形はないし、これだけ少ないと一粒の威力なんてたいしたことない。けど、蓄積すれば岩を砕く力はある」
ゾンビとはいえ、一応の見た目はドラゴン。体力だってその辺の敵よりは多いだろうし、防御力もあるだろう。それでも。
「それに、ぼくのスイが作り出した水だ。……たんと味わえよ?」
普段、ウザったくても、聖剣の名前は伊達じゃないのだ。
針の一つ一つは小さくても、スイの力が込められている。それをいくつも打ち込まれるのだ。これでノーダメージでした、なんてのはあり得ない。
ぼくは無数の“水針”を操り、ドラゴンの全身、鱗と鱗の間を縫って直接体に打ち込んでやる。そして、間髪入れずにスイとセツで連擊。抵抗する時間もなく、ゾンビドラゴンは光の粒となって消えていった。
『てぃー、よーしゃない』
『ひとりのてぃー、るーよりおっかないのー』
……鞘に納めた二人の言葉は聞こえなかったふりをして、ゾンビドラゴンからドロップした品を黙って回収する。失くさないようにバッグにしまい、再びラルに連絡してみる。さっきはガン無視されたけれど、今はどうだろうか。
「これ無視されたら、流石に愛想尽かすよ……?」
『……んと、何の話?』
あ、出た。
「ぼくの独り言だよ。……じゃなくて、君の言う通りに標的は倒した」
『おー……さっすが、我が相棒。仕事が早くて助かるよ~』
彼女ののんびり口調とは裏腹に、背後が何やら騒がしい。具体的に何て言い表せばいいのか分からないけれど、戦闘中……みたいな感じで。
「……ラル? 今、何してるの?」
『モンスターちゃん達とお戯れ』
戯れねぇ……ラルらしいと言えば、らしいか。……ん? 達?
もっと詳しく聞き出そうと口を開きかけたとき、通信機から驚いたような声と、空を切るような音が聞こえてきた。
声はラルの声。空を切る音は敵の攻撃……!
「ラル!?」
『当たってない当たってない。んでもまあ、話してる余裕なくなってきたから、切るわ。ティールはティールで適当によろしく~』
「いや、よろしくじゃない! 場所は!? 今どこ……って、あぁぁ!? もう切ってる! 人の話は最後まで聞け!!」
こういうときのラルさんは行動が素早いようで……本日二度目の音信不通状態。学校とかで、ふらっといなくなるラルの行方を追えないのが普通だけれど、今回はダンジョン内。バッジの機能で探せるのは幸いである。
「えぇっと? ぼくの現在地がここで……ラルは……うわ。めっちゃ遠い……って、めっちゃ敵に囲まれてるのは何!?」
ラルの位置を示す印と、それを囲むように複数の反応。そして、二つ、見知らぬ反応がある。
「この二つは……フラグ回収したって認識でいいのかな。ぼくのいないところで何してるんだ」
嘆いたところでどうしようもないんだけれどね。とりあえず、ラルのところに向かうとしますか……



~あとがき~
展開がめちゃ雑なのは、いい感じの流れが思いつかなかっただけです。あと、相方主導の話じゃないからです。はい。

次回、お仕事編、終わればいいな……!

ラルと一緒にいるティールの戦闘スタイルと、ティールソロのときのスタイルは雰囲気変わります。ソロのときの方がこう……勇ましいというか、冷静と言うか、することがエグいというか。
ま、これは空海ポチャ君も似たようなところありますからね。そういうことだよ!←?

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第221話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で探索してる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、洞窟探検終了しました。
今回からはまた別ダンジョンでお仕事します!
ティール「今更だけど、見た目があれなモンスターを薬にして知らずに飲んでる可能性」
ラル「マジで今更だな。私が調合してるやつなんてなぁ……?」
ティール「その先は言わなくてもいい!」


《Te side》
洞窟での素材採取を終わらせたぼくらは、バッジの機能で次の目的地へと到着したところだった。
周りを見れば、よくある森林ダンジョンの風景。どこにでも森林系はあるし、違いもよく分からない。細部は違うんだろうけれど、ぼくにはいまいち、違いを見つけられそうにない。
「洞窟と違って暑い」
「そりゃ、外だもん。けどまあ、炎天下で動くよりもマシでしょ?」
まあ、そうなんだけれど。
木漏れ日の中を歩くわけで、日差しは直接当たるわけではない。ないけれど、夏特有の熱波というか、不快な風は避けられるものでもない。もちろん、街の中を歩くよりは快適だけど、暑いものは暑い。
……なんて、文句を言っても始まらない。これは仕事。きちんとやらないとね。
ぼくは気持ちを切り替え、数歩前を歩くラルに追い付き、並んで歩く。そして、彼女を横目に問いかけた。
「それで、ここでの依頼って? 魔物討伐とは言ってたけど」
「おうさ。正確には指定されたはぐれモンスターちゃんを討伐すれば終了だよ」
ふうん……はぐれモンスター、ね。
本来なら生息していないはずの魔物のことをはぐれモンスターと呼ぶ。そういった魔物は、環境が体に合わず、そのイライラが凶暴性を増加させる原因になる。そのため、どんなに低レベルなやつだとしても、危険度が桁違いなのだ。今ではこうして、はぐれモンスター退治やるようになっているが、探検隊始めたばかりの頃は「暴れまくる敵に半端な気持ちで近付くな」と言われたものだ。
ま、偶然出会ってしまったが最後……ってやつなのかもしれない。もちろん、冷静に対処すれば、逃げるのも簡単なんだけど。
「本来なら山岳というか、枯れた土地って言うの? なんか、そういうとこを好むモンスターらしいよ」
なるほど。間違っても、こんな青々とした自然豊かな土地にはいないと。
「そゆこと。んでもって、そこそこ大きいみたいだから、見れば分かるんじゃないかな? 大暴れしたら、周辺燃やしたり、簡単に木々も薙ぎ払うみたいだから」
……ドラゴン?
「そこまでは」
なんで把握してないの、うちのリーダー……いや、ぼくもか。夏バテ理由に依頼書の確認をずさんにしたわけだし。人のことは言えないや。行けば分かるなら、問題はないだろう。ラルができない仕事を持ってくるとは思わないしね。
それ以上の話をするつもりがないラルは、森林浴でもしているようにのんびりと景色を楽しみつつ、歩を進める。
それにしても、ダンジョンだと言うのに、敵の気配もあまりしない不思議な空間だ。そのはぐれモンスターが狩り尽くした……んだろうか。そうだとすると、かなり凶暴化してしまっていることになるが。
「洞窟みたいに空気がじめっとしてなくていいねぇ♪」
なんて、遠足みたいな感想を述べながら、楽しそうなリーダーだ。
ラルの様子からして、危険度が増して早急に解決しなければならない……訳ではないのだろうか。ぼくを急かす様子もないし、本人から焦りも感じない。
「? どした?」
「あ、いや……なんでも」
夏休み入る前、ツバサに昔話したせいだろうか。ほんの少し、例の件が頭をよぎる。ぼくらがはぐれベヒーモスに襲われた事件。……事件、なのかは分かんないけど。
「……この前、ベヒーモスの話、しただろ」
「ん? あぁ、したね。イグさんと仲のいい理由をツバサちゃんに教えるためだけに話したおまけだったけど。……それがどうかした?」
「この、はぐれモンスター探しってのがデジャブだなぁって」
今回がはぐれモンスター退治初めてではない。過去に何度も受けているし、難なく解決してきた。だからって訳じゃないと思う。ただ、なんとなくそれを思い出してしまっただけで。
決していい思い出ではないそれを、ラルは楽しそうに笑って見せた。
「なるほど。となれば、今回は私達がイグさん達のポジションだね。なら、ここで誰かの叫び声やモンスターの雄叫びが聞こえれば、過去の我々がいると」
「そ、そうなるのかな。……ここって初心者向けのダンジョン?」
「一応はね~」
雲行きが怪しくなってきてませんか。
ぼくから切り出しておいて、勝手な思い込みなんだけれど、とことん過去のぼくらと酷似してない?
「まあ、初心者ダンジョンに桁違いの敵が紛れるなんて、よくあるじゃない? はぐれモンスター退治依頼なんて、掲示板でよく見かけるし。というか、私らみたいな大ピンチなんて、そうそうある話じゃないよ。初心者さんはきちんと脱出手段持ってるって。初心者だもの」
初心者を過信してないか、それ。
「それに、今、このダンジョンの到達レベル上がってるから。初心者、入れなくなってるから。過去の私達みたいに運の悪い子達、いないって!」
……なら、いいけど。
ダンジョン探索のためのランク上げがされているのなら、太刀打ちできない人は入らないようになっているということ。けど、ここは特別管理指定ダンジョンではない。各ギルドが管理しているところではない以上、入口に門番なんてついてないし、入ろうと思えば入れる。だから、事情を知らない人が間違って侵入という事態は大いにあり得る。だって、過去のぼくらがそうだったから。ま、あのときは、うちのギルドに情報は回ってなかったみたいだけどもだ。
「ぼく、すっごく嫌な予感がする」
「あっはは! フラグ建築しまくったからかな! 私もさ」
君もかよ!?
ラルの勘はよく当たる。なんなら、嫌なものほど、敏感なのかめちゃくちゃ当たる。やめてくれ。そんな事態を引き起こすのは……あ、いや、ラルのせいではないか。

なんて心配をしていたものの、探索中に誰かの助けを呼ぶ声も、魔物の雄叫びも聞こえてこないまま、時間だけが過ぎていく。
ぼくらが探している魔物はおろか、他の敵もまばらに出てくるだけで、張り合いがない。まあ、初心者ダンジョンという場所を踏まえれば、それも納得できるような気はする。敵も馬鹿ではない。勝てない相手に無闇に突っ込まない。……そういうことなのだろう。
「思った以上に捜索が難航してますなぁ。マップも予想以上に広い……これだから平面ダンジョンは嫌いなのよ」
ぼくらが入るダンジョンは大きく分けて二つ。階層ダンジョンと平面ダンジョンだ。階層ダンジョンは比較的狭い迷路をいくつも突破していき、奥地へと辿り着くもの。平面ダンジョンは大きな迷路を攻略する感覚に近い。入口があって、目的地である奥地を探し出す。
平面ダンジョンの場合、探す範囲が広いから、はぐれモンスター探しって面倒になるんだよね。標的もじっとそこにいてくれるわけでないから、探すのに苦労するのだ。
その点、階層ダンジョンは狭いし、遭遇率も高い。また、標的のいる階層に踏み込んだ瞬間、肌勘で察せるから、比較的楽ってのはある。
ちなみに、今回ぼくらが行ったダンジョンはどっちも平面ダンジョン。
「しーくんが恋しい。……連れてくるべきだったか。やらかしたなぁ」
捜索系の使い手である雫にかかれば、はぐれモンスターなんて一発で見つけてくれるだろうな。それに、気配に敏感なフォースも適任と言える。
ラルもぼくも人並み以上に敏感だと思うけど、あの二人には負けるというやつだ。
「昨日の今日で雷姫の力使うのもなぁ……やなんだよなぁ。手分け……うーん」
雷姫さんの力を使いまくったの、昨日じゃないけどね。
「手分けするしかないんじゃない? ぼくは大丈夫だよ?」
「……うーん。でもなぁ」
? どうして、ここまでラルが渋るのだろう。体調の心配されてる? ソロで対面した場合の危惧?
「もしかして、そんなに危ないやつが入り込んでるの? それなら、離れない方がいいか」
「……そういうわけじゃない。ティールなら一人でも大丈夫だと思うよ。……けど、こういうときのティールってさ……いや、いいや。悩んでる時間がもったいない。時間決めて手分けしようか」
「了解」
結局、ラルがここまで悩んでいた理由が分からないままだったけれど、一時間だけ手分けして探すことになった。何もなければ連絡して合流し、その後の作戦を練る。見つけた場合は即連絡して、合流できるなら、待って戦闘。無理そうなら単騎で討伐というざっくりした方針を決めた。
正直、ここまで探して、すんなり見つかるとも思えないが、やらないよりはマシだろう。



~あとがき~
冒険してる感がないけど、だらだらしてるこの感じも嫌いじゃない私です。

次回、はぐれモンスターちゃん、発見なるか!?

いつもはラルが「仕事? いいよ。こんなのときくらいやらんでもー!」みたいなタイプなんすけど、色んな理由があって、最初からそこそこやる気のある彼女です。
んでも、この夏休み編でもどっかで「嫌だー! 仕事なんてくそくらえじゃー!(`;ω;´)」みたいなことを言っちゃうシーンとか入れたいですね(笑)

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第220話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でお仕事してる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
ボス前の休憩風景をお送りしました! 今回はボス戦じゃ! バトル描写? 知らん! さらっと! さくっと! 終わらせるつもりです!!(笑)


《L side》
久々の大量モンスター戦闘にバテ気味だったティールも回復し、私達はボス部屋前に到着。
探検隊を何年もやっていても、いざボス部屋前に来ると気持ちが高ぶる。分かっていても、目の前に現れるだろう強者をどう倒していこうか考える瞬間が楽しいのだ。
負けるなんて一ミリも考えていない。なぜなら、私とティールがやられるはずがないから。……と、自信満々に言いたいところだが、単純に私らのレベルでやられるはずのない仕事内容なだけだ。
「よし、準備はいい?」
「いつでもいいよ」
「よっしゃ。踏み込むぞ!」
『王者の角』と呼ばれる素材……どんなモンスターが現れるのだろう? 依頼書にはここの奥に現れる敵からドロップするとしかなかったし、下調べするには時間がなくてボスのことはよく分からなかったのだ。
戦闘中に分析するのもよくあることだから、大して不安もなく、気にしてはないのだが。……素材の名前からして、悪魔みたいな見た目だろうか? それとも、獣……?
そんな考えを巡らせながら、部屋へと踏み込み慎重に奥へと進んでいく。
そして、私達の目の前に現れたのは……
「は? 何あれ」
「繭、かな。……あれが、ボスでいいの?」
微動だにしない大きな繭。部屋に侵入者がいるにも関わらず、ボスと思われるモンスターの気配はない。ということは、目の前の繭がボスとなるが……攻撃も防御する気配すらない。
……おっとぉ? 想像となんか違うぞ?
「まさかの巨大なお虫様退治になるとは……何が出てくるんだろ。蝶? 蛾? 繭から羽化する虫ってなんだろうね」
「さあ……? で、羽化する前に倒しちゃう?」
それが一番楽だけれど、刺激を少しでも与えたら、何か孵ってしまいそうな予感がするのは気のせいでしょうか。
しかしまあ、私らの目的はボスからドロップする素材採取。攻撃せずにここから立ち去るわけにもいかない。それなら、なるべく一撃で倒してしまう……あるいは、孵らないようにできればいいのだが。
「……例えば、ここの室温をめっちゃ下げたら……こう、虫が「今は出てきたら死んでしまう!」って思ってくれないかな。通常ではあり得ないくらいに下げる…的な?」
「なるほど。……それ、やってみようか?」
セツちゃんの柄にそっと手を当てて、ティールがにっこりと微笑む。やれというのなら、やってやるという彼なりの意思表明だ。ここはかなりの広さがあるものの、ティールとセツちゃんならば、やってやれないことはないと私も思う。思うけどもだ。
「……やめておく。あの繭が死ぬ前に、私が死ぬ」
「え~? 人が凍るくらい室温を下げるわけないだろ」
「そういうことじゃないわ。私が満足に動けなくなるって話! そもそも、そこまでやっても相手が動いたら意味がない」
「あはは♪ そう言うと思ってた」
くっそ。ティールなんかに遊ばれるとは。ま、知ってたけどね。私が寒いの嫌いなの知ってて言い出したんだろうし。
ならば、今できる最善策は一つしかない。
「二人同時に攻撃を当てる。これしかないかな~……いい?」
「OK。問題ないよ」
ティールの返事を聞いた私は雷姫を、ティールはスイちゃんとセツちゃんを構える。
「火力は落ちるけど、遠距離攻撃をしよう」
「そだね。不用意に近づくのは怖いからなぁ」
それぞれの武器に、離れていてもある程度のダメージを与えられるだけの力を込める。
雷と水と氷の三属性を合わせた攻撃。全く効きませんでしたなんてことはないと思うが……はてさて、どうなることやら。
「轟かせろ、雷姫!!」
「荒れ狂え、スイ! 吹き荒れろ、セツ!!」
雷姫から放たれた電撃は、スイちゃんが作り出した激流を包み、セツちゃんの冷気と共に繭に激突する。激しい衝突音を辺りに響かせながら、煙が巻き上がる。
先手必勝という言葉通り、普通なら一発KOしていてもおかしくないくらいの威力はあるだろう。なんせ、神器と聖剣二振りの合わせ技だ。並大抵の敵なら一掃している。
「……どう、なんだろうね?」
「手応えがあるのは確かだけど、なんだろうなぁ。ダンジョンのボスだろ? 簡単にいくわけないって思う。あと、なんか面倒なことになりそうな予感も」
「お。奇遇だな。私も同じことを考えていたよ。……ボス戦がすんなり終わるわけないよねぇ」
「そうだよね。……うん。知ってた」
煙が晴れる頃には予想通り、繭からボスが羽化するところだった。これが羽ありだと空中戦になる。それは流石に面倒だが、やるしかないってやつで。
しかし、それは杞憂だったらしく、中から出てきたのは、それはそれは大きな蜘蛛。蜘蛛は私とティールを捉えると、奇声を上げ、木の幹なんじゃないかってくらいに太い足を振り下ろしてきた。
「左右に退避!」
「了解っ!」
私達はそれぞれに別れて踏みつけ攻撃─でいいのかはよく分からないけれど─を難なく避ける。そして、素早く通信機のスイッチを入れる。
「聞くまでもないけど、無事っすかね」
『ぼくを誰だと思ってるの。君の相棒だよ』
頼もしいことで。
さて、この先はどうするか。
相手の武器は恐らく、この太く鋭い足による振り下ろし攻撃。他にあるとすれば、糸とか、魔法攻撃だろう。それはモーションを見ていれば分かるだろうし、防ぐ手立ては私にもティールにもある。なんとかなるか。
そして、こういう敵ほど、弱点は手に届かないところにあるもの。だからこそ、ここまで挑戦的で好戦的なのだ。
ティール、この蜘蛛の足、全部落として」
『了解。狙撃して落とすから、前は頼んだ』
「もちろん。ヘイト集めは得意! で、どっちでやるの?」
『ん~……攻撃力があるのは銃だけど……弓矢で落とすか』
銃は基本、一直線に飛ぶ。それは弓矢も変わらないのだが、ティールの使うのは水の矢。水を操る彼にとって、その軌道は自由自在というやつだ。
『君がその辺、あちこち飛び回るんだもんね。銃は危ない』
……なんだろう。遠回しに馬鹿にされた?
うん。まあ、それはいい。そろそろ、本題に入ろうか。
作戦は単純明快である。敵の主力攻撃を封じ込めたあとで、こちらの攻撃を叩き込む。以上。
「さあさ、お前の足下、チョロチョロさせてもらうよー!」
一応、雷姫の“身体強化”でスピードを上げておき、敵に捕まらないように動いていく。そして、ティールを狙わせないように適度にちょっかいも出しておく。
「雷姫!」
『うむ。軽く痺れさせてやる♪』
巨大蜘蛛さんの真下に移動し、柔らかそうなお腹付近めがけて、電撃を放つ。こいつを完全に痺れさせるほどの電撃ではないものの、動きを鈍らせるくらいの威力はある。
効果はあったらしく、痺れを逃がしたいのか体をぶんぶん震わせていた。そんなことをしても、雷姫の電撃から逃げ切れるわけがないのに。
その隙にティールの放った矢が蜘蛛の足を狙い射った。それも一つではなく、いくつも放たれているため、どんどんっと二本の足が落とされる。
「こっわ。私の相棒、こっっわ!」
『そう? お互い様だろ』
そ、そうなのかな? え、そうなの!?
『次、よろしくね。ラル』
あ、はい……頑張ります……?

私が敵の注意を惹き付け、ティールがその隙に蜘蛛の攻撃手段でもあり、移動手段でもある足を次々と落としていく。
アリアちゃんの狙撃能力も大したものだとこの前、痛感したばかりなのに、ティールはティールで、別の意味で痛感している。
ティールは足を狙うだけでなく、敵のブレス攻撃(糸吐きなのか、魔法攻撃なのかは不明)のモーションに入るのを見逃さず、的確に邪魔をしていく。そのお陰で、私は糸に捕まることもなければ、魔法攻撃を受けることもなかった。
「……今更なんだけど、蜘蛛って口から糸出すんだっけ?」
『今、そんなのどうでもいい~……ラル! ラスト!』
……はぁい。
ティールが残りの足を全て破壊し、私は“身体強化”を使って、敵の頭上で高く飛ぶ。そして、雷姫を握る手に力を込め、一気に振り下ろした。
じわじわと体力を削っていたのもあるのだろう。たった一太刀で呆気なく討伐された蜘蛛。見届け、残った角(?)を拾い上げる。
「王者の角というか……虫だから触角なのかな? 蜘蛛に触角ないんだっけ。じゃあ、なんだろ、これ」
黒く尖ったそれは、それなりの硬さはある。武器として投擲したとして、ダメージも与えられると思うほどに。
「どっちにしろ、あの巨大蜘蛛から採れたやつなんだよね。……なんだかなぁ。あれの一部かぁ」
通信機を切りつつ、こちらに近寄ってきたティール。何とも言えない表情で、私の持つ角を見つめていた。
言いたいことは分かるが、素材はそういうものである。そして、素材ということは、これを使った何かが存在するわけで。
ティール、これの用途知ってる?」
「? 知らない」
「これを粉にして、他の薬草とまぜまぜするとあら不思議。万能薬に大変身ってよ」
「……飲むの? これを? 誰が?」
「そりゃ、人が?」
「「…………」」
数十秒の沈黙のあと、ティールは角からそっと目を逸らした。想像でもしたんだろうか。心なしか顔色が悪い気もするが、洞窟は暗いので明確な判断はできなかった。
「行くかぁ。仕事はまだ残ってる」
「そ、そうだね……行こうか」
さっさと回収した角をしまい、私はバッジを取り出した。そして、次の目的地に座標を合わせて、何の躊躇いなく起動させると、私とティールは光に包まれた。



~あとがき~
さっさと終わらせた結果、面白くもない何かができてしまった……反省。

次回、次なるお仕事へ!

ティールは虫が苦手ってわけではないですが、知らなくていいことってありますよね……そういうことです。←?

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第219話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわちゃってる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、めちゃくちゃ大量にいた敵をやっつけました。戦闘シーンは描写してないけどな!
今回もそんな適当な感じでお仕事している二人の様子を見ていこうかと思います。


《Te side》
ラルのはちゃめちゃ作戦により、無限に相手するのかと思われたモンスター軍団をなんとかやっつけられた。
罠の効果時間も切れ、戦闘で騒がしかったこの大部屋にも静寂が訪れた。
「……っしゃぁぁ!! 討伐完了!」
する必要もないはずの討伐をしまくった結果、ラルが満足するほどのドロップ品を手にできた。それはいいことだけど、無意味な殺生だった気もする。いいんだろうか、こんなんで。探検隊として、いいんだろうか?
ようやく終わったと実感した途端、色んな意味でどっと疲れが押し寄せてくる。情けない話だが、へなへなとその場にへたりこんだ。
「あぁ……つっかれたぁ」
「ボス戦前のいい運動だったでしょ?」
……そうだった。本来のぼくらの依頼はここのボスから採れる素材採取。つまり、まだ一つも終わっていない。
「……仕事終わった気でいたよ」
「やっだぁ! 終わってないよ? これからこれから!」
本番前に無茶苦茶、疲れてるんですが……?
ぼくはへとへとだけど、ラルはまだまだ元気みたいだ。体力はぼくの方があるはずなのに、なんでこうも差があるのだろう。
ラルがさっきの戦闘で、手を抜いていたとは思わない。だって、後ろでずっと戦っていた。ラルが手を抜いていたのなら、ぼくはとっくに背後からやられていたはずだから。
うーん、なんだろう。ぼくとは違い、彼女には、精神的な疲れがないのが一番の要因なのかもしれないな。……不公平じゃない?
ティール、思ったよりもバテてる? 大丈夫?」
「あんなエンドレス戦闘でバテない方がおかしいんじゃないかな……? それに、精神的にも疲れたんだよ。君の無茶苦茶に巻き込まれたって事実に!」
「んえー? 楽しかったじゃん?」
どこが!?
もっと文句を言ってやろうと思ったけれど、無垢できらきらした笑顔を浮かべるラルに、何も言えなくなる。
……そんな笑顔を向けられたら、何も言えないじゃないか。狡いよ。
「ま、ここで一旦休憩しよ。見晴らしもいいし、仮に敵に狙われてもすぐに分かるから大丈夫だよ」
と、バッグからアロマキャンドルみたいなのを取り出すと、何の躊躇いなく火をつける。つけた瞬間、ふわりとハーブの香りがぼくらを包んだ。
「……これは?」
「魔物避けアイテムだってよ。この匂いが魔物が嫌うやつなんだって」
へぇ……術以外にもこんなのがあるんだなぁ。それ、使うの初めて見るけど?
「これもこの前の買い物のときにゲットしました」
……ちゃっかり色々楽しんでたのね。
「買い物、楽しかったんだもん」
「そういうところは女の子だよね」
学校でだらだらしていたり、何かあれば脱走を試みようとするラルがデフォルトで、女の子っぽさを感じる瞬間の方が少ない。
仕事をしていたり、何かの事件を解決しようと動くラルは、むしろ男子みたいにかっこよくて、頼りがいのあるリーダーって感じで。
「……ラル、基本、女の子に見えないんだよなぁ」
「は? 私の性別、女ですけどぉ!?」
「……え? あ、ごめん! 口に出てた!?」
声に出して言うつもりのなかったものがつい、知らないうちに出てしまっていたらしい。どこから出ていたのかは分からないけれど、ラルの反応を見る辺り、「女子に見えない」というところだけが出ていたのか。
「出てたわ! 無意識か! 無意識に私を罵倒してんのか、このやろー!!」
「わ、わー! 違うってー!!」
がばっと覆い被さろうとするラルを慌てて押さえた。彼女の両手首を掴み、なんとか押し倒されないように踏ん張る。
いや、ここはきちんと弁明というか誤解を解かないと。このあとの仕事に支障が出ても困るし!
「ぼくは、ラルの笑ったとこ、女の子らしくて好きだし、可愛い洋服着てるときは、とっても可愛いくて似合うって思うし! それから、えっと……仕事するラルもかっこよくていいと思うよ!? まあ、ぼくは可愛いラルの方が好きだけど……どっちもラルだから、嫌なんて思ってなくて……って、聞いてる?」
話すのに夢中で気づいてなかったけど、いつの間にかラルが顔を赤くして、彼女が込めていたはずの力も抜けていた。ぼくがこのまま離してしまえば、こちらに倒れてしまうんじゃないかってくらいだ。
……? あれ。変なこと、言ったかな?
「ほんっっとに……お前というやつは……乙女心を弄ぶの好きなの……?」
「え? ラルに乙女心なんてあるの?」
「斬り伏せるぞ、貴様」
ごめんなさい。
ラルは小さなため息を一つつくと、ぼくから離れる。そして、ちらりと様子を窺うように見てきた。が、何か言うことはなくて。
「あ、あの、ラル? ごめんね? ぼく、嫌なこと、言っちゃった?」
「んーん……そうじゃない。そうじゃないけど、ここに来てなんだかなぁ……」
?? え、っと……ぼく、本当に何かしたんだろうか。ここ最近、ラルに色んな迷惑かけちゃってるから、そのことでも考えてるのかな。
「ねえ、ティール」
「ん? 何でしょうか……?」
「そういうこと、簡単に他の女の子に言っちゃ駄目だよ?」
「……? う、うん」
そういうことってなんだろ。笑顔が可愛いとか好きとかその辺り? 言うような相手もいないから大丈夫だと思うけど、まあ、いいや。
ぼくの返事に何を思ったのか、ラルは再びため息をつく。更に責められるのかと思ったけれど、彼女の口から聞こえてきたものは全く違うものだった。
「さっきのやつ、効果は絶大だったけど使いどころ選ぶなぁ」
えと、乙女心どーのって話はもう終わったみたい……?
「少なくとも、味方巻き込んで使うものじゃなかったね。分かりきってたけど」
「……それ、分かっててやったの? ぼくの苦労なんだったのさ」
当然の疑問にラルは、にこっと笑う。あのいたずらっ子が浮かべるような笑顔で。
「久しぶりにあんなに戦えてよかったでしょ?」
……そう、言われると、確かに久しぶりだったかも。
最後に仕事したのはテスト前……思い出したくもないけど、あの幽霊屋敷疑惑を調べに行ったのが最後だ。そこで討伐依頼もあったにはあったが、大体がラルが先頭に立って倒してしまっていた。ぼくが全力で剣を振るう機会なんて……あったけど、あれはノーカンってやつだ。うん。
夏休み前はテスト勉強やら、ラルに勉強教えるのに忙しくて、仕事なんて一つもしてなかった。夏休み入ったら入ったで、体を思い切り動かす機会もなかった。いやまあ、ラルとの模擬戦があったけど、あれは中途半端に終わってしまったし、そこまで動かしていない。
……なるほど。全く、ラルって人は。
「大切な仕事が探検隊活動再開後、初のお仕事なんて、なんかあれかなって思ったのよね~♪」
ぼくは暑さに弱いから、仕事前に少しでも慣れさせようとしていたんだろう。そのついでに、いつもの感覚を思い出してくれればと、あんな無茶苦茶なモンスターラッシュ戦させたのか。
ほんの数週間空いたくらいで戦えないまでに感覚が鈍るわけではない。が、ラルは仕事に関しては慎重な性格だ。不安要素は少しでもなくしておきたいと思ったんだろうな。
「……荒療治過ぎじゃない?」
「えへ。効果覿面だろぉ?」
そりゃあ、もう。
「ふふん♪ まだ治療は終わってないぞ、相棒! ボスが残っているからね」
「分かってるさ。……君の言う通りにしよう。そろそろ、行こうか」
「はーい♪」
魔物避けのキャンドルの火を吹き消し、ラルはすくっと立ち上がる。そして、ぼくの先頭に立ち、リーダーの顔つきになった。
「今から、今日の目標の一つであるボスを突破する! 指示は逐一出すから、終わるまで気を抜くなよ!」
「了解!」



~あとがき~
爆弾発言やら行動をするときのティール視点、やったことねぇなぁと思ってやりました。

次回、ボス攻略戦!
まあ、大した描写はするつもりないです。一話で終われ。一話で~

恋愛発展というか、反応に関して、空海とはちょっと違う、ラルとティールコンビ。
理由としては、ティールが恋心に気づかずここまで来てるのがあります。どっかで話したかな……? まあ、いいや。言ってたら、おさらいってことで聞き流してくれ!(笑)
なんで違うのって言うところは、こちらの二人の環境にあります。距離が近いんすよね。初めからずーっと。出会って即二人で暮らすし、ラルがお母さんみたいなことやり始めるんでね。ティールもラルの親というか、先生みたいに、彼女にあれこれ指南するので「恋愛」という関係性を考えてないんすよ。
でまあ、ラルが感情を完璧に隠してないときがあります。今回がそうですが。これに関しては、空海ピカと違って、過酷な状況下にいないからです。そこまで必死に隠す必要がないんですよね。
ということで、同じなようで全く違うレイ学世界のラル&ティールの関係がどうなっていくのかは、今後をお楽しみに~

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第218話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でばたばたしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回からお仕事してる二人のお話になってます。うっきうきなラルちゃんと、あんまり元気のないティール君。まあ、なんとかなるでしょう!
ティール「……どういうこと?」
ラル「ここで何を言うのか分からなくなったんだよ。突っ込んでやるな」
……その言葉で私の心は傷付いたわよ!!
今回はラル視点です。ここのお話は二人をごちゃごちゃに視点変えていこうかなと思ってます。まあ、ティールメインなところあるけど。
ティール「……えっ?」


《L side》
初めは私が敵を一掃していたものの、ティールも動く元気が出てきたのか、スイちゃん片手に応戦するようになってきていた。その動きに迷いもなく、ブレもない。暑さでバテていたのも感じさせない動きである。
それなら、例の物を使っても問題ないかな? ちょうど、開けた場所にも出てこれたしね。
「ラル? どうかした?」
見晴らしのいい大部屋でピタリと進行をやめたのが気になったのだろう。ティールが不思議そう……というよりは、心配そうで不安そうな表情を浮かべていた。それは恐らく、私を案じてではない。これから起こるかもしれないことを予期しているからだ。
だって、ティールは私の相棒を丸四年やってきている。私がやりたいことなんて、なんとなく分かっているはずだもんね。
ティール。敵との戦闘、いける?」
「……問題ない、けど。え、本当にやるの? やめるって選択肢はまだ残ってるよ?」
嫌です! やるっていったらやるのだ!
バッグから例の物を取り出し、ミュージカルでもやるのかってくらいにくるくると回る。そして、あれをびしっと天に掲げ、満面の笑みで
「いえーーい! ちきちき! どちらが多くのモンスターちゃんを倒せるでしょ~か対決!」
と、高らかに宣言した。それを聞いたティールは怪訝な表情を浮かべていた。そんな彼は無視だ。無視。
「ルールは簡単! ここにどばーっと流れ込んでくるであろう敵達をばったばったと薙ぎ倒す! さあ!? 準備はいいか、諸君!」
「諸君って……ラルとぼくしかいないんだけど」
こういうのはな、ノリだよ! 楽しんだもん勝ちよ!
「仕事! 仕事で来てるから! 仕事に関係ないことで楽しむとかないから! あーもー! 助けて、フォース! ぼく一人じゃ、このお転婆リーダー止められないよぉぉ!!」
ふっふっふー……奴がいると、一瞬で敵を殲滅されかねない。そして、「おら、これでいいんだろ?(ドヤァ)」みたいな勝ち誇った顔されるのがオチなのだ。それはムカつくので、私とティールの二人の時にやるのが一番なのだ。
嘆いているティールではあるものの、きちんとスイちゃんとセツちゃんを構え、私と背中合わせになる。嫌でもやることはきちんとやってくれるのが、真面目なティールらしい行動だ。
「今からは目の前に現れる敵だけを倒せ。背中は互いが守ればよし! ってことで、発動させまーーす!」
「くっそ! 罠アイテムを味方巻き込みながら使うって何!? 本来、離れて使うもんだよね!」
実感した方が楽しいからかな?
片手に握っていた『呼び寄せ玉』を宙に放り、私も雷姫を構える。
『呼び寄せ玉』は地面に着く前に跡形もなく消滅した。数秒の沈黙の後、私は多くの敵の気配を感じ取る。恐らく、ティールも感じたのだろう。後ろで少しだけ体が強張る気配がした。
「……んふふ。想像以上の気配の多さだねぇ?」
「ラルがやったんだからね。やったんだからね!? っていうか、ダンジョンは無限湧きしない!? 大丈夫なの?」
「あ、この罠の効果時間は三分だから。大丈夫大丈夫♪」
「そ、そう。効果時間あるだけまだましだね……だよね?」
さあ?
この部屋の出入り口は三つ。この三つから雪崩れ込むように敵が入ってきた。種族はバラバラ。きっと、ここの洞窟を根城にする奴らなのだろう。モンスターハウス以上の敵の多さに武者震いしてしまいそうだ。
「やるよ、ティール!」
「この事態を自分らで引き起こしてるのが辛い……誰とは言わないけど怒られそう」
バレなきゃ犯罪じゃねぇ理論だよ。そしてこれは無茶でもなんでもなぁあい! よって、怒られる要素もなし。以上!
「無茶苦茶なこと言ってる自覚ある?」
「さてね。……やるぞ、雷姫!」
『うむっ♪ 久々に感情が高ぶるぞ♪』
その言葉通り、私の背後で雷姫の気配を感じる。思い切り力を使ってやるという前兆みたいなものだ。もしくは単純に楽しくなってるかの二択。
というか、ちょい前にやった、ルーメンさんとの試合でも楽しそうにしていた気がするのだが……まあ、いい。雷姫の機嫌がいいに越したことはない。
「なんで雷姫さんまで、そんなに楽しそうなのさ……はあ。スイ、セツ! 頼むぞ!」
『あいさっ!』
『せっちゃたちにおまかせよ~♪』

背後は無視するにしても、目の前に数えるのを諦めたくなるくらいの大群が押し寄せてきている。それらを斬ったり、電撃浴びせたり、攻撃を避けて敵同士ぶつけてみたり……ありとあらゆる手を使って倒していく。
「なんか、思ったよりも減らなーい」
名前を思い出す前に斬り伏せてしまった獣型モンスターの最期を見届けながら呟く。
「二人で! 相手してるからこうなるの!」
ティールは、スイちゃんで四つ足モンスターに斬撃を食らわせつつ、私に向かって叫んだ。
「後何分!?」
「ごめん。計ってないわ」
「ラルのばぁぁあかぁぁ!!!」
私に対する怒りに身を任せて、セツちゃんを振るった。セツちゃんから放たれた冷気は、ティールに襲いかかろうとしていた敵達を一瞬にして氷像にしてしまう。そして、スイちゃんとセツちゃんを器用に操ってどんどん敵を斬っていく。
「よく叫びながらそんなに動けるよね。リランと同じで体力お化けか」
「平均的な高校男子並みの体力だよ!!」
嘘つけ。知ってるんだぞ。ギルドでの体力測定で一番の体力だったじゃんか。知ってるんだぞ。
それはさておき。
私の思惑通り、換金できそうなドロップ品は湯水のように出るのだが、いかんせん、数が減らない。そりゃ、二対大勢という図式が簡単に覆るとは思ってないが、こちらには広範囲攻撃をばんばん繰り出しているティールがいる。私だって単発よりも、複数個倒せるような技選択をしているのに、「あ、なんか減ってきたわ」と思うような瞬間がないのだ。
無限湧きだとしても、こうも短時間で多くのモンスター生成するものだろうか?
「ふむぅ……なんか理由でもあんのかにゃあ?」
「知るかぁぁ!!」
感情的なティールだが、攻撃自体は的確に狙っている辺り、冷静さが全くないわけではないようだ。
この大群の理由は後で思案するとしよう。今はこのたっくさんの敵達をどうするかだけを考えなければ。
「ま、こんなこともあろうかとってやつっすな。……ここはどかんっと一発、食らわせてやりますかね!」
「……はぁ?」
「あ、大丈夫。大技ぼかんっとするつもりではないから。けど、少しの間、攻撃の手を止めるんで、よろしくな」
「はぁ!?」
「雷姫、私を守って!」
「承知した」
困惑しているティールをよそに、私は雷姫を実体化させて、バッグを漁る。確かきちんと入れてきたはずなのだが。どこにしまったんだったか。
「ラ、ラル? できれば早くしてほしいんだけど!」
「もうバテたのか、パートナーよ」
「バテてないですけど、ちょっとした休憩はほしいじゃないですか……」
「それをバテたと言うんじゃよ、パートナー」
「ぐぅ……もういっそ、こいつらを濁流で流してやりたい……! 水源あれば一発で綺麗にしてやるのに」
そんなことしたら、私も巻き添えだし、ティールもばったり倒れるでしょうが。お母さん、許しませんよ、そんなこと。
敵を相手しつつも雑談できている二人。雷姫はともかく、ティールも一応の余裕はあるらしい。いやはや、頼もしい相棒だな。
「ごめん、待たせた! これだよ、これ!」
お目当てのものを見つけた私はそれをさっきみたいに天に掲げた。
「たららんったら~♪ 『身代わり玉』! これを使えば、敵のターゲットを別のものに置き換えられるんだ~♪ っってことで、なんか大きくて強そうなあいつに投擲っ!」
「説明から行動までが早い!」
適当に目星をつけたそいつに向かって、綺麗な放物線を描きつつ、こつんと命中。その瞬間、眩い光に包まれるも、それも刹那である。見た感じ、大きくて強そうなモンスターさんが変化した様子はない。が、その他のモンスターには大きな変化があった。
今の今まで、私達に敵意を向けていたはずだが、それが大きくて強そうなモンスターさんに変更されたのだろう。一斉にモンスターがモンスターを襲い始めた。
もう一匹も私とティールに興味を示していない。その辺に石ころ同然の存在になったみたいに。
「壮観っすね。バーゲンセールの奥様方戦争を遠目で見ているようです」
「それよりももっと悲惨だろ。なんかこう……集団リンチみたいなってるよ……? 『身代わり玉』当てられたモンスターが気の毒すぎる」
「ふん。この世は弱肉強食じゃろ? 弱き者は強き者に淘汰されるのじゃよ」
「自然界はそうかもしれませんけど、あれはラルが故意にやらせてるものです。モンスター達が面白半分に踊らされただけですが」
「……それも世の理ということじゃな」
「そんな理いらないから!!」
しばらく……と言っても、一分もしないうちに身代わりになってくれたモンスターがやられ、ついでに『呼び寄せ玉』効果も切れたらしい。新たなモンスターが入ってくることもなく、残ってしまった敵達は私とティールの手で倒して終了となった。
いやぁ~……道具の効果も試せたし、面白いもの見れたし、私は満足だよ♪



~あとがき~
マッドサイエンティストみたいなラルだな。

次回、まだまだ続くよ洞窟探検!

補足したいこともなければ、言いたいことも特にないです。はい。
でもまあ、久々にラルが好き勝手してるなぁって思いました。楽しそうなラルでした。
それについていくティールも大変やな。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第217話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で働く物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、誘拐事件解決&二日目終了となりました! ようやくだ!
今回から、少し経って、ようやく仕事する気になった(?)スカイの二人のお話です。視点はティール。なんか面白そうだからです。


《Te side》
スプランドゥールに滞在し始めて数日が経った。初日から馬鹿みたいに情報が溢れるわ、二日目には連続誘拐事件に巻き込まれるわ、三日目にはその事情聴取されるわ、散々な目に遭っている。いやまあ、正確には事件に巻き込まれたのはぼくではないから、実質的な被害はないし、事情聴取も大したことは聞かれてない。多分、ラルの方が悲惨だと思う。彼女がどう思っているかは置いておいて。
そして、ここ数日で日常化していることがある。……ツルギによる襲撃だ。初日にラルに対して襲います宣言していたから、格別驚いてはない。挑まれるラルは涼しい顔して対応しているから、苦になっていないみたいだし。
そのツルギの襲撃は、一日に一回……というわけでもなく、何度も諦めずに突っ込んでくるのだ。ぼくだったら早々に心が折れるところだが、ツルギに「諦め」の言葉はないようで、ところ構わず襲いかかってきていた。
ある時は、ギルドの通路から飛び出し、刀を振りかざし……
「かぁくごぉぉぉ!!!」
「はぁ……だから、殺気を消せって」
「いってぇぇぇ!!??」
と、斬撃を軽く避けたラルに足をかけられ、派手にすっ転んだり。
またある時は、中庭の木の影から飛び出してきて不意打ちしてきたり……
「不意打ちになってないぞ、子狐君。ちらちら可愛い尻尾が見えてたよ」
「ふぎゅっ!?」
と、ツルギの突進をさらりとかわしてチョップされたり。
何回やり取りされたのか覚えてないし、ぼくのいないところでも襲われているらしいので、あれだけれど、今のところツルギは全戦全敗らしい。
ラルを慕っているツバサも、最初はツルギの行いに目くじらを立てていたのだが、今では周りの大人に「あれはツルギの修行」という建前を信じて、怒ることもなくなった。
もちろん、ツルギにそんなことは言えない。だって、毛嫌いしているラルから指導されていると妹に見られている……なんて、ねぇ。
あと、ぼく個人的なことで言えば、夜にルーメンさんのところへ通っているのも日常化していた。ま、特別何かあるわけじゃないし、ツルギみたいなハードなこともされてはない。単なるチェスと雑談目的だ。
……そして、今の今まで、チェスの決着はついていない。ここまでくると、遊ばれてるんだなって感じ始めるこの頃である。

さて、今日も今日とて、ホテルの一室でだらだら過ごす……と思っていたのだが、あの仕事嫌いなラルから「今から仕事行くぞ」と依頼書二枚を突きつけてきたので、洞窟ダンジョンへとやって来ていた。
「ホテルぬくぬく生活も捨てがたいけど、流石に堕落してきて不味いので、探検隊になるぞ!」
なるぞってどういうことだろう。スイッチ切り替えろとかそういう意味かな?
ぼくらはダンジョンの入口で、軽い作戦会議ならぬ情報共有をしていた。入る前に把握しておかなくてはならない情報なんかを擦り合わせるため、いつもやっていることだ。まあ、ミーティングみたいな感じかな。
「あの、なんでそんなにやる気なの? この暑さでよく元気になれるよね」
元気なラルとは違い、ぼくは夏の暑さに若干……いや、そこそこやられてしまっている。情けないけど、暑さにはどう頑張っても勝てそうにないのだ。まあ、目的地は洞窟。外よりはましだろうけども。
ぼくの質問にラルは、楽しそうに笑う。
あ、この笑い方は基本、よくないことを考えているときのラルだ。
「この前の戦利品の一つはを試したくてだな! 掲示板見てたら、よさそうな依頼があってテンション上がってるのよ♪」
この前の……戦利品?
ぼくが首を傾げるのも構わず、バッグから取り出してきたのは一つの玉。ガラス玉にも水晶玉にも見えるそれは、使い捨ての結晶タイプのアイテム。チームに効果を発揮するのもあれば、敵に効果を発揮するのもある。ラルが取り出したのは分類的には後者の方で……敵を自分達のところへ引き寄せる効果を持つ、『呼び寄せ玉』だ。所謂、罠系アイテム。
ちなみに、ぼくと二人の時に使うのはやめろと釘を指したばかりのやつだ。
「……あの、リーダー? この前伝えたはずの言葉は届いてなかったのかな?」
「本日の依頼は二つ! 今から挑む洞窟に現れるボスのドロップ品回収と近くの森林ダンジョンでの魔物討伐!……ってのは、理解している?」
すみません。ぼくの質問は無視?
とはいえ、依頼内容はなんとなく把握している。
この洞窟に潜むモンスターから『王者の角』と呼ばれるドロップ品を回収すること。
そして、魔物討伐は特定のモンスター……そこにいるはずのないはぐれモンスターを退治すること。
ぶっちゃけ、暑さで頭回ってないときに読んだので、詳しい内容は覚えてない。しかし、何も考えてないようで、実は滅茶苦茶考えているラルのことだ。ぼくらにできない依頼を引っ張ってくるはずもない。そこは信頼している。しているけど……
「ボスドロップなら、呼び寄せなんて必要ないよね? はぐれ魔物退治だって、呼ぶ必要ないし。どこで使うの?」
「洞窟の道中で使うに決まってるでしょ! せっかく来たんだよ!? 金目になりそうな品物採って帰る!」
え、なんでそんなに切羽詰まった感じなの? そこまでお金に困ってないよね? え?
「はぁ……いいかい、ティール君」
と、肩を掴まれ、ぐいっと顔を寄せてくる。もう少し近づいたらキスしてしまうんじゃないかって距離だけど、彼女はそんなことお構い無し。いけないことを話すみたいに声を潜めた。
……って、周りには誰もいないんだけどね。
「今回はフェアリーギルドを通してない依頼だ。つまり、稼げば稼ぐほど手元に入る。分かる?」
「……いや、受けた依頼は二つだけだよね。ついでにドロップ品お金にしよってのと、依頼をどこで受けるかは関係なくない?」
「はっ……依頼解決ついでにお金稼ぐのが悪いってか!」
多分、彼女は手に入れた道具の効果を試したくて試したくて仕方がないのだ。その言い訳を考えてるだけに過ぎない。
勢いよくぼくから離れ、大袈裟に反応を見せる。正論ぶつけられて焦ってるんだろうな。ラルらしくもない。
「そこまで言ってない。でも、支離滅裂なのは気づいてね」
「ぐぬ……はいはい! そーですよ! 私はこの道具の効果を試したいだけですよー! いいじゃない! 使ったことないんだもん。新しいおもちゃ手に入れたら、遊びたいでしょ? それと一緒!」
そのおもちゃに付き合わされるぼくの身にもなってもらいたいけどね。
「分かったよ。そもそも、やるって決めたラルを止められるとも思ってないし……じゃ、そろそろ行こっか?」
「ふふ。私の意思を尊重してくれるティールが好き! よっしゃ! いっくぞ!!」
……尊重じゃなくて、諦めてるだけだよ。
稼げる時に稼ごうぜ……というのが建前にあって、彼女の本心は新たに購入した罠を試したい……そんな、私欲まみれのやる気しかない。やる気があるのはいいことだけれど、理由がなぁ……
「その仕事に対するやる気を普段も保てたらいいのに」
「え? それは無理だよ。スタンダードな私は仕事なんてやりたくないもんね!」
……このやろ。
楽しそうなラルの後ろに着いていき、ダンジョンへと足を踏み入れる。
洞窟内は想像通り、外よりも断然過ごしやすく、ぼくはそっと胸を撫で下ろした。
仮に湿気なんかでムシムシしてたら、更に調子狂うところだったよ。よかった、そうならなくて。
「うし! やりますか!」
「……了解」
笑顔を浮かべウキウキ気分のラルと、夏の暑さにうんざり気分のぼく。
いつもなら、探検楽しいって笑顔になれるけど、流石にしんどいかも。
そんなぼくの考えを悟ってなのか、目の前に現れる敵は全てラルが一撃で倒していた。目の前でなくとも、ぼくの背後から出てきた敵ですら、ラルは逃さずに倒していく。その素早い抜刀術と狩人のような鋭い目付きに、仲間であるぼくですら、ほんとちょっぴり、恐怖を覚えるくらいだ。敵が倒れた途端、パッと笑顔になるところが特に怖い。
そして、鼻歌混じりにやられてしまう魔物達に同情してしまう。
ごめんなさい。今のラルは誰にも止められないんです……!
ティール? どうかした?」
「あ、いえ……なんでもないです。気にしないでください」
「? なぜ、敬語……?」
……今の君がなんか怖いからだよ!?
とは言えないので、何でもないよという意味を込めて、微笑んでおく。
ぼくもそろそろ、きちんと戦おう。そうしよう。そうでなければ、ラルの無双が止まらないもんね。うん……!



~あとがき~
終始、まとまりのない感じになりそうなお仕事編(夏休みver.)です。

次回、敵ラッシュタイム!
やる気十分なラルとげんなりしてるティールのコンビによる共闘。お楽しみに。

ここのお話はスプランドゥールに来てから少し経ってます。もっと言えば、あの連続誘拐事件から二、三日経ってると思ってくださいな。そんな感じなので、最初の方にちょっとしたダイジェストみたいなのが入ってます。書いてないけど、こんなことあったんだよ(ティール視点)みたいなね。はい。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第216話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でお話しする物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、連続誘拐犯を懲らしめ、無事に事件解決しました! ということで、二日目のまとめになります。やったね。
視点はアラシ君。なぜなら、この辺のメインがラルじゃなくなるからです。


《A side》
ルナのとこに行ってたツバサとリランが戻ってきたところで、次は別のところにいるらしいティールと雫と合流することになった。
「つか、ティールと雫とは別行動だったんだな?」
周りの騎士からラル達が協力してくれてたのは知ってた。しかし、よくよく聞けば、二人は待機させていたらしい。つまり、動いていたのはラル一人だけ。普段ならともかく、こういう事件時に探検隊リーダーとして、隊員を使わないという選択を取ったのが気になった。普通なら人捜しするなら、人数いた方がいいって思うし。
「まあ、ねぇ……」
珍しくはっきり物を言わない。というか、目的地が近づくにつれ、ラルの挙動不審さが半端ない。気のせいか?
「街中での人捜しにティールが不向きだっただけだよ。しーくんも精神的にあれだったし……それに」
「おかえり」
あ、ティール。
帽子の奥に光る目が全く笑ってないが、一応の笑みを浮かべるラルの相棒。そして、ティールに隠れるように雫もいた。
二人の姿……というよりは、ティールの姿を捉えたラルがびくっと震える。ティールが纏う空気だけで、これからを悟ったんだろう。
「待って。何もしてない。怒られるようなこと何にもしてませんって! いつも通り! 普段と変わらないからぁ!」
これでもかってほどに首を振り、─何に対する言い訳なのか分からんけど─弁明するものの、ティールは全く動じていない。
「そっかぁ。一人で五人相手するのが普通か~♪ 朝からずぅっと雷姫さん使うのも普通なんだねぇ」
「スパン空いてますんで!! 継続して使ってませんので!!」
「よく言う。体力切れかかってるくせに」
「なっ……うっせぇぇ!!!」
図星だったのか、ラルは反論するのをやめ、とりあえず叫ぶみたいな選択を取った。
まあ、学校や昨日のラルより、今のこいつは疲れてるように見えるし、ティールの指摘も間違ってないんだろうな。思考力も低下してるのかもしれない。
「全く……君の提案に乗って、一人にしたらこれだ。ま、ぼくも人のことは言えないけどね……っと、ごめんね。アラシ……と、アリアもいるんだ。気づかなかった」
いっつも気配消してるわけじゃないけど、無口なぶん気づかれにくいだよな。アリアって。
とはいえ、今回の場合、ティールは俺達よりもラルしか見てなかったようにも思うけどね。
そして、ずっと黙っていた雫も、どこか気まずそうなツバサの姿を見て、ばっと駆け出した。
「ツバサお姉ちゃん!」
「あ、わ……しーくん!」
思い切り抱きついてきた雫を戸惑いながらも抱き止める。雫はわんわん泣きながらも、一つ一つ言葉を紡いでいく。
「しんぱい、たくさんしたのー!! ぼく、たんけんたいだもん! おてつだいできたもん!!」
「あう……ごめんね。しーくん」
ツバサは困ったように俺を見てくるものの、どうしたらいいか助言するわけにはいかない。置いていかれた雫の文句くらい、何も言わずに受け止めるのが一番。
そういう意味も込めて、俺は黙って肩をすくめる。
「っ~!!」
すぐ近くで変な声が聞こえてきたなと思ってそっちを見る。原因はなんとなく分かるけど。
案の定、ラルがティールに抱きついて、悶えているところだった。さっきまで言い合いしてたくせに、そんなのはお構いなしだ。
「私の天使達は今日も尊い……! 浄化されてしまいそうですっ!」
「はいはい。そうですね。そのまま浄化されて、不真面目な部分がなくなるなら、ぼくは泣いて喜んであげる」
ティールのスルースキルも洗礼されてんなぁ……

このままここにいても仕方ないので、俺達はギルドに戻ることにした。ツバサはもちろん、ラル達もそこに滞在しているわけだし、そこに行かないなんて選択肢はない。
未だに泣き止まない雫をおろおろしつつも相手するツバサと、それを放置する俺達はほんの数分で到着した。
そして、目的地の『明けの明星』正面口には、ツバサの兄であるツルギが仁王立ちで待ち構えていた。見るからに怒っている。そりゃあ、大好きな妹が危険なことしたんだ。当然、怒るわ。
「ツルギ……!」
「ツ~バ~サ~!!」
怒りを露にするツルギに思わずツバサも後ずさり。そのままにしておけば逃げ出しかねないので、俺とアリアで退路を塞ぐ。
「! アラシ、あーちゃん……!」
「今回ばかりはお前が悪い。素直に兄ちゃんの説教受けとけ」
アリアは何も言わないが、黙って数回頷いた。
ツバサが助けを求めるようにラル達を見るものの、あいつらも俺らと同意見なのか、はたまた空気を読んだだけなのか、自分達の世界に入っている。
「ぷんぷんしてるツルギ君も可愛い♪ お兄ちゃんしてるよ~♪」
「そうだね。……ほら、雫もいい加減に泣き止まないと目、腫れちゃうよ?」
「うにゅ~」
自由だな。あいつら……
そんな自由な三人がツバサを助けるはずもなく、ツルギがつかつかとツバサに詰め寄る。
「さっき、報告に来た騎士から話は聞いた! なんであんなことしたんだよ!! 危ないだろ!?」
「だ、だって、早く追いかけないと見失うって……思って」
「だからって、一人で行っていいことにはならない!!」
「……ごめん、なさい」
ツルギの言葉にしょぼんとするツバサ。それまで目をつり上げていたツルギだったが、小さなため息をついたあと、困ったように笑った。
「みんな、ツバサのこと心配してたんだ。だから、怒ってるの。何かあったら悲しいから、怒るんだぞ?」
「……うん」
「僕も……ちょっと怒ってる」
それまで今回、ツバサのやったことに口出ししなかったアリアがそっと口を開いた。ツバサはびっくりしたようにアリアを見上げる。
「危ないこと、禁止……ツバサ、強いけど……首突っ込んでもいいことにはならないよ……?」
「……」
「無事でよかった」
と、ツバサと同じ目線の高さになると、優しく頭を撫でる。
皆、ツバサを大切に思ってるからここまで怒ってくれる……それを理解してくれるといいんだけど。
「あ、あの、ラルさん、ティールさん。……その、本当にごめんなさい」
ツルギやアリアに言われたことが効いたのか、ツバサが申し訳なさそうに頭を下げた。謝られた二人はお互いの顔を見合せ、戸惑ったように笑う。
「いやぁ……ぶっちゃけ、路地裏ではあぁ言ったけど、私はあんまり強く言えないと言いますか。それに、心配はしたけど、怒ってはないかな」
「まあ、ツバサの気持ちも分かるし、アラシ達の気持ちも分かるからね」
ティールの言葉にラルは笑いながら頷いた。
「だよなぁ。目の前に悪党いるなら、放置しておけない。……かといって、ツバサちゃんには、私と同じ考えをしてほしくない。……私らの立場が違うからねぇ」
「ほえ。……立場、ですか?」
ツバサの言葉にラルは、説明するつもりはないのか、単なる独り言と言ってにっこりと笑うだけだ。
ラルは探検隊。探検隊としての立場なら、危険なことにも挑まなければならない……多分、そういうことなんだろう。
「……ぼくはある意味、立場的にツバサと似てるところあるけど、放任されてるから何とも言えないや。……だから、ツバサは恵まれてる。こんなに心配して怒ってくれる人達がいるって幸せなことだと思うよ?」
「まあ、私は怒られることを幸せだと思わないけど。そんなに悪いことしてないじゃん? 終わりよければよくないっすか?」
「君のそれは病気だからな。いい加減、理解してほしい」
「にゃにおう……! ティールもそういうところあるからな! 私だけがやってるみたいな言い方はよくないからね!?」
「頻度はそっちの方が上」
「ラル、ティール、けんか、だめー!」
「喧嘩じゃないよ、しーくん。意見交換! これからのための交換会だから!」
「平行線だろうけどね」
また、二人の言い合いが始まった……好きだな、こいつら。
自分の問いかけから軽い口喧嘩にまで発展してしまい、困ったような表情のツバサをぽんっと叩く。
「とにかくだ。何度も言うようだけど、これからはあんなことすんなよ。ツルギも俺もアリアも……それにラル達だって、皆、滅茶苦茶心配してたんだからさ」
「……うん!」
「あー! 色々あったから、お腹すいた! ツバサ、中入ってごはん食べよ!」
「! ご飯……!」
「あ~も……ぶれないな、アリアは。おい! 喧嘩してるそこの二人と雫も行くぞー?」
何がともあれ、無事に事なきを得たからいい……のかな?



~あとがき~
ざっっつかよ!

次回、ラルとティールのお仕事回。
二人しかいないお話でございます。わちゃわちゃを目指します。

ツバサちゃんが仲間に怒られるシーン。本来なら、ツルギ君とアリアちゃんに怒られて(?)終わりにするはずだったんです。が、一緒にいるラルやティールが完全空気になるのもあれやし、何よりツバサちゃんの性格からして、自分からごめんなさいするかなと。
でもまあ、正直なところ、ラルもティールも「もうやっちゃいけません!」と言える立場にないなと。二人ともツバサちゃんの立場だったら追いかけてますからね。きっと。

ではでは。