satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第234話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回から、雑談混じりにあれこれ話してます。「これです!」って言えないな。
一応、奇跡の洞窟編ではあるけどね。
今回も、明けの明星内の工房からお送りしまーす。工房でいいんかな。作業部屋かもしれん。まあ、そんなところからの続きです。


《L side》
あぁ、これ、関係あるな。私らにバレちゃいけないヤツだな。
挙動不審になる二人を見て、気づかれないようにティールと目配せをする。ティールは少しだけ困ったように笑い、小さく頷いた。
「ごめんごめん。雫、もう聞かないよ。だから、落ち着いて。ね?」
「うゆー……ごめんね、ティール。ないしょ、よくないけど、これはいいないしょだから!」
そうか。いいことなのか……しーくん、それ以上は喋らない方いいよ。多分、あらぬ方向からぽろっと言っちゃいそうです。
「むー……ラルみたいに、ないしょ、じょーずになりたい」
「ん~?? そこはならなくていいよぉ? 私の真似しなくていいからねぇ? とまあ、ツバサちゃんも、そこまで慌てなくても、大丈夫だよ」
「う……すみません」
一連の流れを見ていたアルフォースさんから、小さな笑いが聞こえてくる。そして、優しそうな笑みのまま、しーくんとティールの方を見る。
「雫くんはお昼前に髪を乾かした方がいいかな。もしかしたら、風邪引いちゃうかもしれないし」
「そうですね。……一旦、ぼくと部屋戻ろうか」
「うん!」
しーくんの返事ににっこりと笑い、次にツバサちゃんを見る。こちらも優しそうな眼差しは変わらない。
「ツバサ、夏祭りのことを話さないように注意しないとね。それと、ツバサも部屋に戻って着替えてきな。舞の練習で汗かいただろう?」
「はーい!」
これは昼食前に一旦お開きムードだな。話のキリもよかったから、問題はないが。
「君は? ぼくらと部屋に戻る?」
「あ……と、そう、だな」
ティールとしーくんと一緒に部屋に戻るのもいい。しかし、この際だから、やりたいことをやってしまうか。
「ごめん。少し調べたいことがあるから、しーくん任せてもいいかな」
「もちろん。じゃあ、また後で」
「ラル。しらべもの、がんばってね」
ティールはしーくんを抱っこして、アンナさんにお礼を言った後、部屋へと戻って行った。
「ラルさん、何か調べたいことあるんですか?」
「まあね。今回の仕事に直結する話ではないとは思うけど。……だからまあ、個人的な興味、かな?」
「ほわ、そうなんですか」
「そそ。ってことで、資料室の資料、お借りしてもいいですか?」
ここに来てから何度か出入りはしているものの、一応、目の前にアルフォースさんがいることだし、許可を取っておくに越したことはない。もしかしたら、今日は使えませんなんてこともあるかもだし。
しかし、私の心配は杞憂だったようで、アルフォースさんは快く了承してくれた。
「よし、動きますかぁ……またね、ツバサちゃん。あと、リランもね」
「はい♪」
「あんあんっ!」

私はアンナさん達のいる部屋を出て、資料室へと向かう。今の時間帯は他のギルドメンバーさん達ともよくすれ違う。こちらに来てから顔見知り程度にはなったメンバーさん達に話しかけられるようにもなっていた。
「あ、フェラディーネさん。こんにちは! 今からどちらへ?」
「あ、こんにちは。えっと資料室で調べものを」
「そうですか! あそこは奥に行くほど埃っぽいので気を付けてくださいね~」
「は、はい。ありがとうございます」
「ラルさん! こんにちはー!」
「え? あ、こ、こんにちは!」
うちのギルド以上にフレンドリーである。これもまた、トップに立つルーメンさんの人柄故なのだろう。……その法則に則るのなら、フェアリーギルドもそこそこクレイジーなギルドなのでは。……まあ、今更か。そして、そこの一員であるという事実には目を瞑っておこう。ほら、もう卒業しているわけだし。ホームにしているとはいえ、関係ない関係ない……!
誰に向けた言い訳でもないが、どうでもいいようなことを考えていたら、資料室に到着していた。中へ入ってみると、ちらほら人はいるものの、誰も私を気にかける素振りはない。
レイ学の図書館程の規模はないにしろ、有名ギルドに相応しい立派な資料室だった。何度か使った感覚だが、ある程度の資料は揃っていると思う。
そして、そんな場所で何を調べるのかと言うと、初日に見た銅像の人物、女神ミルティアについてだ。
ずっと抱えていた違和感を解消したいのはもちろん、女神ミルティアがどんな神様であるのか等々を調べたかったのだ。これは私の興味があるだけだ。なんなら、趣味の一環かもしれない。
しーくんに聞かせた絵本の内容や、残された伝承なんかをまるっと信じている訳ではない。どこまで信じられるものなのかは、いまいち線引きができないからだ。が、そうだとしても、真実は必ず残っていると思う。
例えば、ミルティアは存在した……というのは間違いないと思う。銅像や伝承が残るくらいだ。そこは信じていい……と思う。
では、この地を救ったとはどういうことなのか。ミルティアは本当に消えてしまったのか。ケアル家との関係とは。ミルティアは、ウィルさんやフォース君みたいに元は天界に住む神様だったのか否か。
とりあえず、なんでもいい。女神ミルティアに関する情報がほしい。
……本当は、こんなことをしなくても、ウィルさんやフォース君に聞けば一発なのだ。余程のことがなければ、二人は教えてくれるだろう。特にウィルさんは、頼られるのが大好きなお兄ちゃん。嬉しそうに講義してくれるに違いない。
しかし、この夏休み中に二人と会う予定はない。連絡を取ってもいいが、こんな私個人の好奇心だけで聞くのも変な話だ。
何より、女神ミルティアがどんな神様なのかが不明な以上、二人から聞くのはリスキーな気もするのだ。
ウィルさん曰く、一人の神が消えるなんて早々ないと言う。それこそ、禁忌に触れるようなことをしない限りは。しかし、ミルティアはしている可能性がある。その場合、ウィルさんやフォースくんの口から女神ミルティアのことは、口にしてはならない存在かもしれないのだ。
そのため、彼らに聞いてもいいのか見極めるための確証がほしかった。その確証を得るためになんでもいいから、女神についての情報がほしいのである。
「さて、やりますかね」
私はダンジョンや経済関連の資料を閲覧している人達からは離れ、国の歴史関連が並ぶ本棚を覗く。そして、片っ端から関係のありそうな本や資料を抜いていく。
一通り運び終えると、ざっと全てに目を通した。目次を確認し、関連のありそうな項目を探す。あるいは、索引で『ミルティア』や『女神』と言った単語がないかをチェックしていく。あれば、そこの項目を読み進め、なければ除外。それを何度も繰り返していく。
そんな地味な作業を三十分程していただろうか。もしかしたら、もっとかけていたかもしれない。
最後の資料を読み終え、私は盛大なため息とともに机に突っ伏した。
「……くそ。なんでだ」
女神ミルティアに関する資料が圧倒的に少ない。私の知りたかったことがほぼ見つからないとは、これ如何に。
まあ、少ないとは言え、一応は出てくる。
例えば、絵本にあった、「荒れ地を再生させるためにミルティアが現れた」というのはいくつかの資料に書かれていた。となれば、これは真実なのだろう。その手段については書いてないけれど。
他にも、ミルティアが王になった、何らかの政策をいくつも発足した、とある男性と子を成した、子の名前はハレンとサナである等々。
こうしたざっくりした情報は出てくるものの、それ以上が出てこない。例えば、ミルティアが行ったとされる詳しい政策内容は出てこない。ミルティアと結婚した男性の詳細もない。子供達の記録もなし。
極めつけは、ミルティア自身のこと。
一応、いつに生まれただの、結婚はどーの、死去した年代とか書いてあるにはある。が、重要な部分が解読不可能なのだ。資料が古すぎて読めなかったり、虫に食われたように穴が空いてしまっていたり。散々である。
「やる気失せた……資料は大切に扱え、このやろう……!」
予想外の展開ではあるものの、思考は放棄せず、もんもんと考え続ける。
この私が情報収集でしくじるはずがないのだ。資料検索は手広く行ったし、検索もれや無関係なものはできる限り省いた。……はずなのだが、この低堕落はなんなのだろう。軽くへこむんですが。
……待て。探し方は間違っていないと仮定しよう。すると、なぜここまで資料が見つからない?
答えは簡単だ。「女神ミルティア」に関する情報に規制がかけられている。
もちろん、ここの資料室がたまたま収集していなかったという可能性もなくはない。なくはないが、ここは、ミルティアが降り立った地とされるスプランドゥールにある一番のギルドだ。収集していないなんてあり得るだろうか?
……答えは否だ。あのルーメンさんが、そんな手抜きをするはずがないし、ミスをするはずもない。
そう考えれば、何らかの理由で情報公開をしていない、隠していると推測できるのではないか? それも、親方のルーメンさん自身が、だ。
……では、そこまでする必要性とはなんなのだろう?



~あとがき~
キリが悪いんですが、長くなりそうなので、終わりじゃ!

次回、ラルの推測は止まりません。続きます。

言いたいことがない……(笑)
まあ、これを書いている私も、この先の展開を知っているわけではないのでね。この辺を知っておくとこの先、楽しめるよ!
みたいなアドバイスができないという。
ただ、相方曰く、いろんな所に伏線をぺたぺたーっとしているみたいなので、「この辺怪しいな?」とか、「ここ重要かも!」みたいに探してみるのも楽しいかもしれません。

ではでは~

学びや!レイディアント学園 第233話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、奇跡の洞窟編へと突入しました!
え? ダンジョン乗り込んでない? まぁまぁ! 焦ることはないですよ。あれですあれ。準備は必要だもんね!!←
ラル「言い訳だ」
ティール「準備にあの最初の怪談みたいなやつは必要だった?」
必要やろ! 失くせませんよ!
ティール「怪談である必要も?」
もちろん。必要経費だぞ。
ティール「経費だったんだ」


《L side》
ルーメンさんの異名である『赤獅子』の由来として、とある一文をよく耳にする。
──その男が通る道には、必ず真っ赤な血の跡が残り、その姿は赤く染まる獅子の如し──
誰が言い出したか、赤獅子と共に広まったものらしい。この一文から察するに、ルーメンさんの魔物の血を浴びている姿から、『赤獅子』という名前がついたと考えるのが妥当だと思うが。
「ラルちゃんの言う通りだと思うよ。まあ、教えてあげるって言ったけど、私らも親方がなんで『赤獅子』なんて呼ばれてるのか、詳しい理由は知らないのさ」
「え? そうだったんですか? ぼくらはてっきり、お弟子さんの方なら知ってるだろうって思ってたのに」
ティールの驚いたような声にアンナさんは苦笑を漏らした。
「それがねぇ……私らが親方本人に聞いても教えてくれないのさ。なんでも、恥ずかしい話だからなんだのってね? 知っている人物がいるとすれば、親方の身内だろうね。まあ、お嬢と若は年的に知らなそうだから、セラちゃんかアルフォース辺りが濃厚だろうねぇ」
ルーメンさんの娘であるセラフィーヌさんとその夫であるアルフォースさん、か。ツバサちゃんやツルギ君が知っていたら、あの手この手使って、聞き出せそうだと思ったのだが……その二人は無理だろうな。
「……ってことで、そこんところどうなのさ。アルの旦那~?」
アンナさんはニヤニヤと楽しそうにしながら、私達の背後で作業中─この前、ツバサちゃんも使っていたスノードーム型の魔法具の解体中らしい─だったアルの旦那こと、アルフォースさんに話しかけた。
当然、私達も話題を振られた方へと目を向けると、アルフォースさんは作業の手を止め、ゴーグルを外しているところだった。そして、こちらに向けられた表情はどこか困ったように笑っていて。
「アンナ先輩。こういうときだけ、『旦那』って呼ばないでください。その呼び方、聞き慣れないから……何て言うか、むず痒いんですよ」
「いいじゃないか、たまにはさ♪ こんなときじゃないと呼ぶタイミングなんてないんだから。それに、久々にここで作業しているわけだしね」
それは関係あるのだろうか……という突っ込みは無粋なんだろうな。黙っていよう。
「あはは……相変わらずですね、先輩は」
アルフォースさんもアンナさんには敵わないのか、旦那呼びについて、それ以上踏み込まなかった。その代わり、ルーメンさんの異名の話に戻った。
「先程から先輩達が話している親方の異名の件ですが、僕からは何も言えません。僕の口から親方の昔話はちょっと」
と、にっこりと笑いながら手でばってんを作った。にこやかだけど、絶対に言わないという雰囲気がひしひしと伝わってくる。
「ん~……相変わらずなのはアルもだけどね? とまあ、こんな感じに真相は闇の中って訳さ」
知っていそうな人物達は全員、黙秘を貫いているってことか。手がかりなし、と。
……いやまあ、解き明かす手がない訳ではないけれど、そこまでして知る必要もないか。
「あのルーメンさんにも、恥ずかしい過去ってものがあるんですね?」
「うーん。ぼくに話すときのルーメンさん、楽しそうにあれこれ教えてくれるから、自分の恥ずかしい話もそうすると思ったのに……黙りなんて、なんか意外だなぁ」
「ふふ。つまり、親方も一人の人間ってことです」
「だねぇ~……まぁ、そのせいか『赤獅子が浴びた血の中には、高貴なる者の血も含まれる』だの『悪魔の血が入り込んで、戦う度に必ず血を浴びる呪いを持つようになった』だの、根の葉もない噂も立つことがあるんだけど」
噂ってどこから尾鰭が付くか分かりませんからねぇ。これを言い出した人に根拠を聞きたいものだ。
アンナさんは「まあ、あの親方でも流石にないだろって私達は思ってるのさ」と、豪快に笑い飛ばした。
アンナさんには悪いけれど、私達も多少なりとも誤解をしていた。それだけ、ルーメンさんの伝説……『赤獅子』の存在は大きいのである。
これ以上、ルーメンさんについては聞き出せなさそうだ。古株に位置するアンナさんですら、『赤獅子』の由来は知らないときた。切り上げ時である。
「あ、そだ。話は変わるんですけど、アルフォースさん、少しいいですか?」
「はい。何でしょう?」
「そろそろ、依頼された『奇跡の洞窟』の調査に行こうかと思ってまして。そこで、初日に伺った中間地点にある機械のパーツをいただきたいなと」
一応、私個人でも正規ルートを使って調べてみたけれど、結局、なんの部品なのか不明なまんまだった。とは言え、手段を選ばなければ、まだ探れるだろう。しかし、そこまでして、ルーメンさんを敵に回した場合が恐ろしい。
なので、今回はルールに反しない程度の調べもので終わっている。その結果、情報ゼロなんたけれど……
「分かりました。それでは、本日の午後、ツルギの襲撃が終わった後に親方部屋へ来てくれますか? そこで部品パーツの受け渡しと、取り扱いについての説明を親方がしてくれると思いますので」
アルフォースさんの言葉に私とティールは、了承の意味合いで同時に頷いた。頷いたはいいが、アルフォースさんの言葉に引っ掛かりを覚える。
「……ツルギ君の襲撃は確定事項なんですね」
「今更、それを言う? いつでも相手してあげるなんて言ってたじゃん」
初日の宣戦布告から今までずっと一回はツルギ君の襲撃は受けていた。最早、襲撃というか、単なる一日のルーティンみたいになっている。何て言うのだろう。私からすると、どことなく作業みたいになってきた。
それにしても、ツルギ君もツルギ君だ。毎日飽きもせず、私に突っ込んでくるんだもの。そろそろ諦めてくれてもいいと思うんだけれどな。
「ツバサと必要以上にくっつかなければ、ツルギも諦めるかもね?」
「はあ!? 無理! 私からツバサちゃんという癒しを奪うの!? 殺す気か!」
「ちょっと何言ってるのか理解に苦しむなぁ……」
「何よ。私より先にツルギ君を手懐けたティールなんてきらーい」
「それをまだ言うか!? っていうか、ぼくは何にもしてないよ。それに、手懐けたつもりもない」
なーんにも聞こえなーい。
ティールの反論は聞きませんアピールでそっぽ向き、手で両耳を塞ぐ。それを見たティールは呆れつつも、「子供か!!」というツッコミを入れてくれた。
「あっはは! 本当に仲がいいんだねぇ」
「「どこが!?」」
「そういうところかな?」
……ぐぬ。
私とティールのやり取りを見ていたアンナさんの一言に私達は何も言えなくなる。何とも言えない気持ちのまま互いに見つめ合い、下らない口論は鎮火した。
……あぁ、セイラさんやブライトさんもこうしてアンナさんに弄ばれたんだろうか。いや、弄ぶなんて言い方はよくないかな。見守られていた、と取るべきか。
でも、私の知るブライトさんは、こんな風にセイラさんと言い合う人ではない。セイラさんが一方的にアンナさんの餌食になっていたと見た。
「! あんあん!!」
私達の足元で大人しくしていたリランが突然、嬉しそうに鳴き始める。その声につられ、部屋の出入り口を見ると、ツバサちゃんとしーくんが入ってくるところだった。
私達の姿を見つけたしーくんは、ぱっと顔を明るくさせてこちらへと駆け寄ってきた。
「ラル! ティール!」
「おかえり、雫。今日も練習、お疲れ様」
「えへへー! うん! いっぱい、がんばった!」
しーくんはほぼ毎日、ツバサちゃん達と夏祭りの練習をしている。そこでどんなことをしているのかは、「ないしょ!」と全力で隠しているらしいので、突っ込まないようにしている。あれこれ聞いてしまうと、幼いしーくんは隠しきれなくなってしまうので、そこは私達が大人になり、そっと見守ろうと決めたのである。
はあぁ~……それにしても、今日も私の天使は愛らしいなぁ。なんでこんなに可愛いんだろう。
「うゆ? ラル、どーしたの? ボク、へんなとこある?」
「ううん。なんでもないの。……しーくん、いっぱい頑張れて偉いね」
「あいっ! あしたもがんばる!」
頑張りすぎて倒れちゃわないようにね。どっかの誰かみたいに。誰とは言わんけど。
「盛大なブーメランだね」
「うっさいわ。……ツバサちゃんもお疲れ様」
「はい! ありがとうございます♪」
ツバサちゃんはリランにひとしきり構った後、すくっと立ち上がり満面の笑みを浮かべた。彼女もまた、夏祭りで披露するらしい舞の稽古に忙しいのである。
今の私らよりずっと忙しいんだろうな。うん。
「……雫、今日はどうしてこんなに髪が濡れてるの? 何かした?」
ティールの言う通り、しーくんの髪はプールにでも入った後みたいに、水に濡れ、ぺったりとしている。まさか、そこまで汗だくになるようなメニューをこなした……訳でもないだろう。
「んとね、アリアお姉ちゃんと『ひみつのとっくん』したから!」
「アリアと秘密の特訓。凄いね」
「そう! 『ひみつのとっくん』! すごいの!」
あ、誇らしげなしーくんも可愛い。えっへんしてるしーくん可愛い。
「その特訓、ルーメンさんがしーくんにやらせたいって言ってたことと関係あるのかな? どう思う?」
「どうだろう。そんな気はするけど」
「んーとねー……」
「あ!! ダメ! しーくん、それはラルさん達には内緒! 言っちゃダメだよ!!」
しーくんの今にも話してしまいそうな勢いにツバサちゃんが慌てて制止し、しーくんも一瞬、ぽかんとしていたけれど、すぐに気づいたのか手で口を覆う。
「そーだ! おくちチャック!」
この二人、隠し事向いてないなぁ。そんなところも可愛いけど。



~あとがき~
これ以上書くと長くなりますので、終わり!
次回に続く~

次回、隠し事向いていない二人の続きとか、ラルによるとある調査とか。

ルーメンおじいちゃんの二つ名の詳細については、また今度だそうです。お楽しみに。

くだらないことでぎゃーぎゃーできるラルとティールの関係が羨ましいなと思います。楽しそうで(笑)

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第232話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で昔語りしている物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ティールとツルギ君の仲良し大作戦が終わりました。無事、ティールはツルギ君という弟分(?)をゲットしましたとさ。
ティール「えっ」
ツルギ「ふふ~ん♪」
さて! 今回からはまた新しいお話!
新しいつっても、前々から小出しにしてきた『奇跡の洞窟』の話です。


《L side》
──これは陸の国にある、とあるダンジョンでの話。
そのダンジョンは洞窟型だ。一見、どこにでもあるダンジョンの一つだと思う。しかし、そこには奇妙な噂が伝わっていた。
例えば、敵が侵入しない安全地帯にも関わらず聞こえてくる不気味な声。
例えば、自分や仲間以外に誰もいないはずなのに、感じる不気味な視線。
つまるところ、不可解な事象が後を絶たないのである。そうして、いつしか「ここは、ダンジョンに挑み、虚しくも散った人々の魂が彷徨う場所」……という、一つの噂が広まったのである。
そんな曰く付きダンジョンへ挑む二人の男達の姿があった。その男達は奥地に存在するという石の採取へとやって来たのだという。
もちろん、ダンジョンにまつわる噂は承知の上で。
男達は手練れであり、ダンジョン内の敵に遅れを取ることもなく倒していった。更には、ダンジョンにまつわる噂すらもどこ吹く風と意にも介さない様子であった。
しかし、それは続かない。
ダンジョンの中腹を過ぎた辺りで事件が起こったのである。
一人の男が連れていたやんちゃな従者達のせいで、ダンジョンに仕掛けられていたトラップを発動させてしまったのだ。このトラップの効果により、二人は離れ離れになった。……とはいえ、ダンジョンにあるトラップなんて大して珍しくもない。トラップを発動させてしまった男も例に漏れず、探索中のよくあることだとさらりと受け流し、探索を再開。
その、探索を再開した直後だった。
「ねぇ……ねぇ……」
と、背後から女の声が聞こえてきた。
その声に男は振り返るものの、そこに人の影はない。気のせいかと正面に向き直るが、再び、男に呼び掛ける女の声が聞こえる。それも、先程よりも近いところから。
再度、振り返ってみても敵はなく、気配すら感じない。間違いなく、この場には男一人しかいないのは明白であった。
奇妙な現象に、訝しげに辺りを見渡す男の背後には忍び寄る影が迫って──

「わふんっ!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!?」
うっさいなぁ……たかがリランの鳴き声に怯えすぎなのよ。
私の隣で絶叫した相棒、ティールの背後にはちょこんと座ったリラン─恐らく、ギルド内をお散歩中─がいた。
「なんで君はそこまで冷静なの!? おかしくない!?」
「おかしいのは、真っ昼間から怪談話にビビって女子高生に抱きつくお前だ!!」
お化けの類いが苦手なティールが冷静に話を聞けるはずもなく、突然現れたリランの声にビビっていた。まあ、それほどまでに話に集中していたということなのだろうが……嫌なら耳でも塞いでいればいいものを。
……なぜ、燦々と光陽が降り注ぐ夏の昼間にティールに抱きつかれているとか言われると、私達の目の前に座る女性が原因と言えるだろう。
その女性は暗赤色の髪をポニーテールにまとめ、頼れる姉貴分って雰囲気を纏う人だ。
彼女はティールの反応を見て、豪快に笑い飛ばした。
「さっすが、あの二人の息子だね! 反応の仕方がセイラちゃんそっくりさ! いやぁ……? それ以上の反応かね?」
「そ、それは! いきなり怪談話なんて始めるからですっ! ぼく、そんなの頼んでませんよ!? ルーメンさんのお話を聞きたかっただけなのに」
ティールの言葉に目の前のお姉さまはパチッとウインクをしてみせた。
「普通に話すだけじゃ面白くないだろ?」
「普通で! いいです!!」
「そう? 夏っぽくてよかったと思うけどなぁ?」
「ラルは黙ってて」
へ~い……
目の前のお姉さまこと、アンナ・カンナギさんは言わずもながな、『明けの明星』に在籍するメンバーの一人でカズキさんの同期に当たる人でもあるらしい。そして、ギルド商品を手掛ける技師さんだ。
その仕事の関係上、機械いじりもよくするので、趣味でいじり倒す私と滞在中に意気投合した。ちなみに、ファーストコンタクトは私からではなく、アンナさんからである。
「あんた、親方の客人だろう? 機械いじり、好きなんだって?」
と、ギルド内を歩いていたときに話しかけられたのが最初だ。そこから、あれよあれよと世間話をするまでに至る。
今回も仕事の休憩中だったアンナさんに「ルーメンさんの伝説について教えてほしい」とお願いしたのだ。その結果、あの怪談話に繋がる訳だ。
そして、その怪談チックなお話を全否定するティールの反応にアンナさんは首を傾げる。
「あたしの話、面白くなかった? これでも、怪談好きには評判いいんだけどねぇ?」
「話の内容じゃなくて、怪談がよくないんですって!」
ニヤニヤと笑いながら話すアンナさん、確信犯である。絶対、ティールの反応を楽しんでる。確かに、分からんでもないな。
楽しそう(?)にお話ししている二人を横目に、私はふと物思いに更ける。
アンナさんの話が実際にルーメンさんにまつわる話であるとするならば、その相方は誰だったのだろう。かつての相棒……? はたまた、信頼のおける部下だったのか。
……しかし、話の途中に出てくる『やんちゃな従者達』か。心当たりがない訳ではない。そして、初日に見た色褪せた写真に写っていた人物もその『やんちゃな従者達』を連れていたはずだ。
「アンナさん、さっきの怪談ってルーメンさんの若い頃のお話ですか?」
「ん? そうだよ~♪」
なら、相方は多分、ティールのお祖父さんのアルドアーズさんだろう。『やんちゃな従者達』は差し詰め、スイちゃんとセツちゃんのことと見た。まあ、私の知らないところで同じ条件に当てはまる人がいるかもしれないけれど。
「ちょ、何一人で納得してるの?」
ティールのせいでこの怪談のオチ、聞きそびれたんだもん。予測したくもなるでしょ?」
「はあ!? 実際にあった心霊話なんて聞きたくもないよ!!」
完全フィクションなら、ここまでビビらないのになぁ……でも、ノンフィクションだろうと、フィクションだろうと、大した違いなんてないだろうに。
「わふん?」
「……お? なんなら、今からリランも一緒に話を聞くかい?」
アンナさんからの提案にリランがぱっと楽しそうに尻尾を振る。仲間に入れて嬉しそうである。話の内容を理解するかはさておき。
「今度は怪談じゃないですよね……?」
「んー? どぉしよっかねぇ?」
「アンナさぁぁあん!!??」
「あっはっはっ! 大丈夫! 今度は普通に話してあげるさ。ティールの心臓が持たなそうだしねぇ?」
弄ばれるティールもなかなかに面白いけれど、いちいち彼の絶叫で話が止まるのもテンポが悪い。できるなら、普通が望ましいってやつだ。ティールがいなければ、怪談でもなんでもいいのだけれど。
「ラル……今、ぼくを馬鹿にしてるでしょ」
「えへ。事実だからね。仕方ないね」
「このやろ……!」
キッと睨んでくるものの、言い返す程の材料を持たないティールは不服そうに押し黙った。
「二人は親方の伝説について知りたいんだったね。なら、親方の二つ名の『赤獅子』について教えてあげようかね」



~あとがき~
きりがいいんで終わり。

次回、ルーメンの『赤獅子』についてとか。色々。
まあ、そこまで突っ込みませんけど。

ラルは話に出てきた男二人とやんちゃな従者達について推測してますが、ティールはそれどころじゃないので、なんにも考えてません。なので、あれが祖父のアルドアーズと愛剣のスイセツかもしれないとは思ってません。
ぶっちゃけ、フィクションならいいのにとさえ思ってます。考える気ゼロです(笑)

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第231話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でだらだらしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ラル嫌いなツルギ君にラルがどんな人なのかを教えていたティール。しかし、最終的にはラルが好きなのか否か問答が始まったとさ。
ティール「ルーメンさんと言い、ツルギと言い、なんでこうもラルとくっ付けたがるの」
血は争えん……そういうことだ。
ティール「祖父と孫ってそういうことぉ!?」


《Te side》
何か考え込むツルギの近くで、ふわふわと漂うスイとセツは、ツルギの名前を呼ぶ。その声に顔を上げ、こてんと首を傾げた。
『つるちゃ、てぃーはるーをあいらぶゆーらとおもてるのら??』
「うん。僕はそう思ってるよ」
ちょ、本人の言葉は!? 意思は無視なの!?
「お前ら、いい加減に」
『てぃー、うるさーい』
『せっちゃたち、つるちゃとおはなししてるのー』
「うるさ……!? お前らに言われたくないけどな!?」
ぼくらがギャーギャー騒ぐ中でも、ツルギはじっと考え事をしていた。そして、ぼくを見上げて、「例えばだけど」と前置きをした。
「ラルがティール以外の男の人と付き合うとか、結婚するとかって話になったらどーするの?」
いきなり、話が飛躍している気がするのは気のせいだろうか。いや、一応は繋がってるのかな。恋愛的な意味の好きってやつに。だとしても、なんでそんなことを聞かれるのかは分からないが。
「……どうって、どうもしないけど」
「ほんとに? 心からおめでとうって言えるの?」
「そりゃあ、ラルが望んだことだ。ラルが幸せなら、受け入れるだけだよ。だから、おめでとうって言うかなぁ」
「それ、ちゃんと考えた? 想像してよ。ラルがティール以外のやつと結婚するところ!」
「そ、想像!? 必要ある?」
「しないとダメ」
あ、はい……
有無を言わせないツルギの空気に思わず、頷いてしまった。
ラルが誰かと結婚するところを想像すればいいのかな。えーっと……?
純白のドレスに身を包み、普段は流れるようなブロンドの髪を綺麗にアップにしたラル。そんな彼女が幸せそうな明るい笑顔を見せる。けれど、それはぼくに向けられたものではなくて。ぼくではない、誰かに向けられたもので。ラルが幸せそうなのを離れて見ているぼく、か……
──それは、嫌……だな。
「ほらね。ちゃあんと考えれば、答えは出てるじゃんか」
「……え?」
「今、ティール、はっきりと『嫌だ』って言ってたよ?」
ツルギに指摘され、無意識に発していたと気づいた。慌てて、口を覆うものの、出てしまったものは取り消せない。
今、ぼくは、嫌だって言っていたのか? もしそれが本当なら、矛盾する。ラルが望んだことなら、幸せになれるのなら、祝福できると言ったはずなのに。それと真っ向から否定しているようなものだ。これじゃ、まるで……
『すいちゃも、るーがてぃーじゃないひとと、いっしょ、やだー』
『せっちゃもやー! てぃーも、やなのねー?』
「みたいだね。それが答えだよ。ティール」
……ぼくは、ラルを好きだって? 友達じゃなく、仕事仲間でもなくて、一人の女の子として……女性として、好きだと?
それを自覚した途端、脳内が混乱するのと同時に、顔が熱くなるのを感じた。
待て待て待て……落ち着け。こんなの言いたくはないけど、ぼく、王子だよな。そして、ラルはどこにでもいる─かは、怪しいくらい個性的ではあるが─普通の女の子だ。流石にそれはどうなんだ?
いや、両親も似たような境遇ではあった。今更、気にするような問題ではないかもしれない。でも、きっと嫌な思いはさせてしまう。それも、考えられないくらい、たくさん。それなら、この気持ちは黙っていた方が身のためというか、ラルの幸せに……さっき、ぼく以外の人といるのは嫌だと言った手前、かなり複雑だけども。
「くふふ♪ ティール、赤くなったり、青くなったりして、面白いねー!」
「はい!?」
「にひひ♪」
な、泣いてたツルギが楽しそうにしてくれてて何よりだけども……なんだけども、なんだろう。この、してやられた感。
「……身分差で迷惑かけるかもって思ってるんなら、その心配はいらないんじゃないかな?」
まるで、ぼくの心を読んだようなことを言う。戸惑うぼくを放置し、ツルギは楽しそうに笑った。
「だって、『愛』とか『友情』の前に、そんなの障害にもならないもん。大昔の陸の国がそうだったからね!」
……それって、どういう?
しかし、それ以上は何も言わず、ツルギはぴょんっとベンチから立ち上がる。こちらを振り返り、再び楽しそうな笑顔を浮かべる。
「僕、ラルは嫌いだけど、ティールは気に入った! ティール、優しいし、僕の話に共感してくれたから。それに、反応も面白い」
「はいぃ!? 素直に喜べない! え、反応が面白いってどういうこと?」
「そーゆーとこっ」
……えぇ?
詳しく説明せず、ニカッと少年らしくも、どこかツバサの面影を感じる笑顔を向けた。
ティール、僕の話を聞いてくれてありがと!」
「あぁ、うん。それはいいんだけど……」
「さっきのラルに対するそれは、少しずつ、考えてみたらいいよ。……僕、色々話したら、眠くなってきたから戻るね! おやすみー!」
え……あ、え!?
最後の方は完全にツルギのペースだった。いまいち、理解できないまま、一人にされた気がする。
とはいえ、今ここでうだうだ考えたとして、何かいい答えが浮かぶ気もしない。
「……ぼくも、帰ろう」
誰に宣言するわけでもないけど、そう呟いてベンチから立ち上がった。
いつもよりも遅くなった帰り道は、ツルギに遭遇した以外は特に何かがあるわけでもなく、無事に部屋の前に到着。
自分の腕につけてあるブレスレットをかざして、扉を解錠する。そして、二人が寝ていたときのために、ゆっくりと開けた。
部屋の中心の電気は消されているみたいだが、奥の方ではぼんやりと明るい光と、ゆらゆら動く影が見えた。
「ただいま」
「おかえりぃ……遅かったねぇ?」
髪を緩く二つ結びにし、眼鏡をかけたラルが手元の書類から目を離さずに、質問を投げ掛けてきた。
テーブルの上にいくつか散らばる書類。仕事の書類か?
「ちょっとね……色々話し込んじゃった」
ルーメンさんとではないけど。
「ふーん。まあ、いいけど。早く寝ろよ」
淡々とした返答。少しだけ仕事モードだな、これ。
「分かってる。……ね、ラル?」
「んー?」
「……ラルは、さ」
ラルには色々、聞きたい。ルーメンさんのところで考えた、将来についてとか。ツルギに言われた気持ちのこととか。けど、それを口にする勇気はなかった。
「どしたん」
「ううん。大したことじゃ、ないんだけどさ。……ぼくと、一緒に探検隊するの、好き?」
だから、脈絡もない質問が出てきてしまった。流石のラルも意図が読めないのか、少しだけ眉をひそめる。
「は?……いきなり何よ」
「なんとなく」
「……前にも言ったけど、私はティールが必要とするなら一緒にいるよ」
「……ずっと?」
ラルは、黙って頷く。
「私はティールの味方。だから、私は君のしたいことの手助けをする。それがリーダーとして、パートナーとして……親友としてやれることだと思うから」
そう、だよな。ラルはそういう人だ。
「何があったのか知らないけど、ティールはティールのしたいことをすればいいんじゃないかな。私はそれに付き合うだけ」
「相棒だから?」
「そぉね。私のだぁいすきな相棒のためだからね」
と、そこでラルはようやく顔を上げ、ふわりと笑う。優しくて、暖かな笑み。昔からそれを見ていたはずなのに、ルーメンさんやツルギにラルのことを言われたせいだろうか。不覚にも、ドキッとしてしまった。
「? なぁに? じっと見ちゃって。何か他に言いたいことでもあるの?」
「あ。……な、何でもない。ラル、君もほどほどにして、早く休みなよ?」
「ほーい」
あの二人にあんなこと言われなきゃ、気にしないのにな。……これから、普通でいられるだろうか……?

次の日。探検用の装備に身を包んだぼくは、ソファに寝っ転がるだらしない相棒を見下ろしていた。
「ラル、仕事」
「行きたくねぇっす……」
あのあと、ラルは結局、ソファの上で寝落ちしていたらしい。ぼくが起きた─今日は雫に起こされた─ときからずっとソファでぐでっとしていた。朝食を食べ、雫がお祭りの練習に行った後もこんな感じである。一応、ラルも探検用の装備なのだが……そこまで準備して、行きたくないとはなんなのだ。
……はあ。ぼくの心配は杞憂だったのはよかったけど。
「ラル! いい加減にしろ!!」
「いやぁぁ!! 今日は仕事する気分じゃなぁぁい!!」
「知るかぁぁぁ!!!」
無理矢理ラルを立たせて、ずるずると引っ張って歩く。すれ違う人達が見ているのも気にせず、淡々とギルドの出入り口まで引っ張った。
「あ、ラルとティールじゃん」
ぼくらの名前を呼ぶ声が聞こえて、そちらを見てみると、そこにはアラシとツルギがいた。彼らと出会ったからといって、ラルのスイッチが切り替わるなんてことはない。ぼくに引っ張られるがままの体勢である。
「今から仕事なのか?」
「まあね。一応、やる気を見せてくれない相棒と行く予定」
「なるほど……いつもの生徒会室でだらけるラルじゃねぇか」
アラシが呆れつつ、ちらりとラルを見る。その視線に気づいたラルもアラシをちらりと見上げ、どこか不満そうに口を開く。
「だってぇ、この前のやつでやりきっちゃってさぁ」
メインの仕事もまだですが!?
ティール、どんな仕事行くの!?」
ぴょこっとアラシの影から顔を覗かせたのはツルギだ。昨日のあれのおかげなのか、キラキラした眼差しを向けられる。
「え? えぇっと……討伐が二件、素材採取が一件、お尋ね者退治が一件」
「そんなに受けて大丈夫なの?」
「一応、これで通常くらいの量だよぉ。同じところの依頼もあるし……」
ぼくが答える前にラルがのんびりと答える。すると、ツルギがキッと目をつり上げた。
「むっ。ラルには聞いてない!」
「うへ~? 当たりがつよぉい」
「そんなことない。いつもどーりだし」
「ほう? 今まで、ティールは眼中なかったくせによく言いますねぇ、少年。……なるほど? 昨日、遅かった理由はそういうことなのかな、ティール」
えぇっと……黙秘権行使しようかなぁ、なんて。
「あは。……それが答えか」
不敵に笑うラル。そして、ぼくの手からするりと抜け出すと、何事もなかったように歩き出してしまった。彼女が何をどう捉えたのかは分からない。分からないが……
「ちょ、置いてかないで欲しいんだけど!?」
「うっせ! お前は一生、ツルギ君をもふもふしとれ!!」
そこなの!? っていうか、どこに嫉妬してんだ、君は!?



~あとがき~
ティールはツルギ君に気に入られた模様。

次回、今回のメインの一つでもある洞窟探検のお話です。
なので、またラルとティールメインのお話になるのではなかろうか! なかろうか!!

ラルはツバサちゃんに懐かれ、ティールはツルギ君に懐かれる。これは、前々から決まっていたことではあります。初回で大した会話を交わしていない二人でありましたが……
今後、ティール&ツルギコンビが楽しそうにしているところがあるかは、相方の采配次第ですね。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第230話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で語り合う物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ツルギ君のラルに対する不満をティールにぶちまけたところで終わりました。
そんな話を聞かされたティールの返しをお楽しみください。
ティール「楽しむ要素あるかなぁ」
ツルギ「ふんふんっ!」
ティール「不機嫌だね」
ツルギ「ラルのこと、思い出したから!」
ティール「そ、そうなんだ」


《Te side》
ラルの名前を聞くだけで、あそこまでの不満をぶちまけるとは。相当、思うところがあったんだな。我がパートナーながら、恐ろしい。十二歳にかなりのストレスを与えているんですけど……?
「あ、あう……この話、誰かに言ってこなかったのに。つい……ごめんなさい」
お。罪悪感はあるのか。
「で、でも、後悔はしてないからな!!」
あ、してないんだ。
しかし、後悔はないと言っていても、どこか戸惑いを隠せていない。言う相手間違えてしまった、どうしよう、みたいに思っているのだろう。ラルの悪口言っていたなんてツバサにバレたら、また喧嘩になりかねない。そして、そこから嫌われるかもしれないと思ったら、それだけは避けなければと。
ぶちまけた相手、憎たらしい相手のパートナーだしな。なおさら、戸惑うよなぁ。後悔してないとは言ってるけども。
「……うーん。そこまで、戸惑う必要はないよ。別に、ぼくは他の誰かに言ったり、ラル本人に言ったりしないから」
「お、怒ってない……の?」
「怒る? ぼくが?」
「だって、自分のパートナー悪く言われたら、嫌じゃない……?」
あぁ、そっちを気にしてたのか。
「そりゃ、いい気分にはならないけど。……でも、ツルギの言ってることも、半分は間違ってないんだよね」
「……へ?」
ツバサみたいな仕草で、こてんと首をかしげた。流石、双子。性別は違えど、そっくりだ。
「ツルギの言う通り、仕事をやろうとしてくんないよ。探検隊はもちろんだけど、生徒会の仕事もそう」
ラルの放課後は、生徒会室に入った途端、「なーんにもやりたくなーい」とだらだらするところから始まる。仕事あるなしに関わらずだ。そこまで仕事がない日ならともかく、期限の迫る仕事なんてあった日にも、同じようにだらけようとするから、困ったものだ。早くやれと何度言えば聞いてくれるだろう……一生、聞いてくれなさそうだな。
「ま、ツバサが生徒会加入してくれたお陰で、脱走は減ったかな」
「え。脱走……?」
「昔は窓から逃げてたの。やってられっかーって訳の分からない捨て台詞と共に、ほぼ毎日。……ま、ツバサが来たら来たで、ツバサを愛でるのが先とかなんとか言って、早くに仕事しないけど、最終的にしてくれる頻度は上がったかな。……ツバサいない日はあれだけど」
ツバサが生徒会に顔を出せないときは、「ツバサちゃんがいない!? なら、帰るー! 仕事?? やれるわけないだろ!」と、開けた扉をすぐさま閉めようとする。いや、帰るなよって話だ。目の前に積まれた書類が見えないんだろうか、あの会長様は。
「……とにかく、仕事嫌いのサボり魔発言は間違ってないってこと。そこに関しては、弁明の余地すらない。する気もない」
「あ……そ、そうなんだ。……その、ティール? 顔怖いよ?」
「あぁ、ごめんね? 思い出してたら、腹立ってきた。今は夏休みだからいいけどさぁ。休み明けにまたその押し問答始まるのかと思った……いやいや、探検隊の仕事ですら、行きたくない連呼するから、大して変わらないな。明日、言い出したらどうしよう」
今日のところは、嫌だの一言は聞いていないが……当日になって言い出さないかが心配だ。
「まあ、それはいいよ。いつものことだから。……でも、そんなどうしようもないラルだけど、彼女は本当に凄いんだ」
一度、スイッチが切り替われば、人が変わったように仕事に対して真面目に打ち込めるのだ。きっと、根っこの部分は真面目だから。
「始まる前は嫌だ嫌だってうるさいけど……それでも、仕事やり始めたら、指示は的確だし、分析力や観察力なんかも誰よりも優れている。いつだって、ぼくらのことを考えてくれている……そんな頼れるリーダーなんだよ? ま、度が過ぎると無茶苦茶やり始めるから、そこは直してほしいけどね」
ぼくがどんなに言っても、聞いてくれないから、そういう性分なのだろう。付き合う身になってほしいものだけれど。
「ツバサも、ラルのそういうところをかっこいいって思ってるんじゃないかな? 普段のだらけた彼女じゃなくてさ。……それにぼくも、ラルを支えたいって思う。ぼくはラルに助けられてばかりだから」
「支えたい……?」
仕事をしなかったり、文句しか言わないラル。自信たっぷりだったり、反対に心配になるくらい、弱々しくなったりするラル。意地悪な笑みを浮かべたり、ときには優しく包み込むように微笑むラル。どんなときでも手を差し伸べてくれるラル……彼女の良し悪しを知っている上で、傍で助けたいと思う。
「だから、ツルギも嫌いより、普通くらいに思ってくれると嬉しいかな。ぼくの大切な相棒のいいところも見てくれたら……って、どうしたの? ぼくの方をじっと見て」
どこから見られていたのか分からないが、ツルギがぼくの様子を窺うようにじーっと見つめてきていた。
ティールってさ」
「うん?」
「ラルのこと、好きなの? 友達とかじゃなくて、恋愛感情みたいな感じでさ」
……ん???
ぼくが理解していないと思ったのか、ツルギは真剣な顔で補足説明していく。
「だから、よくあるやつだって! 恋愛的な意味の好きかってこと!」
「いや……ぼくが、ラルを好きかって話なのは分かってる。分かってるけど、なんでいきなり、そう思ったのかが不思議で」
「だって、ティール見てたらそう思ったんだもん」
子供らしい直感ってやつ? 素直か!?
「あと、ラルの話してるときのティール、ほわほわしてたもん」
「抽象的過ぎて、意味が分からないですが!?」
そう訴えかけても、ツルギもなぜ伝わらないのかと不思議そうに首を傾げた。お互い、一方通行である。
「あのね、ツルギ? ラルとは親友で、相棒で、仕事上でパートナーってだけ。お互い、そこに恋愛感情はないよ?」
「でも、ティールはラルを『大切』って思ってるんでしょ?」
「そうだね。今までずっと一緒に探検隊やってたから」
「支えたいとも思ってるんだよね。できるなら、ずーっと隣で」
「ま、まあ……そうなるかな?」
何これ。誘導尋問?
「じゃ、ティールはラルを好きなんじゃん。恋愛的な意味の方で」
「ごめん。そこに行き着く過程が不明過ぎる。どういうこと?」
「えー? なんで分かんないのー?」
分かるわけがない。
理解してくれないぼくに、ツルギは本当に困ったように首を傾げていた。どう言えばいいのかと悩んでいるのだろうか。
それ以前に、本人がないって言ってるんだから、それを受け入れてほしいところなのだが。なぜ、ぼくがラルを好きって話になってるんだ。……なんかデジャブだなぁ。
『んあぁぁ! てぃー! なぁんでわかんないのー!』
『せっちゃ、いう! つるちゃー!!』
おい、待て。いきなり出てくるな。黙ってろって言ったはずだろ!?
今まで大人しかったスイとセツがいきなり飛び出し、ツルギの方へと飛んでいく。
『あんねー! あんねー! このまえ、てぃー、るーのりぼん、ちゅーってしたの!』
『そのとき、あいらぶなのーってきいたの! でも、ないないっていってきたのー!』
『でもでも、ないないはないって、すいちゃたちおもうのー!』
「うるさいぞ、お前ら。あと、ぼくはないないって二回も言ってないから」
あれに深い意味はないって言ったはず。なぜ、それが伝わらないんだろうか。



~あとがき~
ツルギ君の話を聞いていたはずなのに、なぜか話題はティールへと移ってます。

次回、ティールが抱く本当の思いとは。
ティール君、主役感強すぎやしませんかね?? いいの?

言いたいことというか、補足はあるんですけど、次回言いますね。
ですが、これだけ言わせてください。
十二歳に諭される十八歳の威厳は何処へ……?

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第229話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわやわやしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、謎の影にびびりまくったり、その影がツルギ君だったり、ツルギ君がバタンキューしてしまったり。色々ありましたね。
そんなこんなで、二人のお話です。


《Te side》
一応、ツルギが目を覚ましたことで、控えめに漂っていたスイとセツがパッと嬉しそうに飛び出してきた。
『よかたー!』
『つるちゃ、おきたー!』
「ふぇ!?」
ツバサにもスイとセツの声は聞こえていたから、きっとツルギにも聞こえるだろうと思っていた。その予想は間違ってなかったらしく、いきなり話しかけてきた二人にビクッと体を震わせた。
「うるさいぞ、スイ、セツ。ツルギはさっきまで気を失ってたんだからね?」
『むうー! でもでもー!』
『おきたの、うれしかったんだもーん!』
あーはいはい……そーですか。
「ごめんね、ツルギ。こいつら、悪い奴らじゃないから、許してあげて」
「その、きらきらしたやつと、水がしゃべったの……?」
……あぁ、知らないのか。まあ、普通は知らないのが当たり前だよね。そもそも、ツルギの前でこいつらが話すのは初めてか。
「うん。こいつらは聖剣で、水を司る水泉と氷を司る雪花だよ。ぼくはスイとセツって呼んでるけどね」
説明しながら、スイとセツを剣に戻す。ついでに、しばらく黙ってろと心で念じておく。二人から返事はないけど、口を出す空気でもないと思ってくれたのか、しんと気配が静まった。
ぼくはスイとセツを帯剣しつつ、首を傾げた。
「……それはそうと、改めて聞くけど、大丈夫?」
「あ、うん。……冷やしてくれて、ありがと」
「ううん。たまたま通りかかっただけだから」
いつも、ラルに攻撃的な態度だったり、果敢に襲い掛かるツルギを見慣れているせいか、しおらしい彼を見るのは変な感じだ。
それに、どこか元気がないようにも見えた。ぶつけたところがまだ痛むのか……或いは、別の理由があるのか。
「ツルギ、本当に大丈夫? どこか痛む? それとも何かあったの?」
「う……べ、別に」
あ、この言い方、何かあるやつだな。
ぼくの言葉に返答はするものの、すぐ視線を地面に落としてしまう辺り、何か思うことがあるのだろう。どこか自信無さそうにぽつりと呟く。
「その……練習してる技が上手くいかなくて……ちょっと、落ち込んでるだけ」
あぁ、さっきのかな?
「それにしては落ち込み過ぎなんじゃ? 失敗もさっきの一回だけだろ。あ、でも、ぼくの知らないところで何度も失敗しちゃってるのかな……?」
それにしては、服の汚れも見当たらないし、体も先程ぶつけたところ以外に傷一つない。それに、ルーメンさんのところへ行くときにもここは通ったが、そのときは誰もいなかったはず。なら、ツルギがここで特訓を始めたのも、少し前なのだろう。一時間くらいか?
「それを抜きにしても、いつも傍にいるヤスさんとヒデさん抜きで夜に特訓ってのも、変な感じするんだよね。それに、ツルギ、この時間の特訓は今日が初めてでしょ?」
「……え」
「ここに来てから、ぼく、ここを通るけど、ツルギを見かけたのは今日が初めてだから」
「う……」
これ、多分、何かを隠しているな。
明確に顔や態度に出ているわけではない。けれど、血は争えないというものだろうか。ツバサ程ではないにしろ、そこそこ顔に出てしまっている。
「何か困ってるなら話、聞くけど……?」
「……」
駄目元で問い掛けてみるも、あまりいい反応は返ってこない。ちらりと横目でぼくを見たかと思えば、すぐに目線を逸らしてしまう。
ぼくを無視するつもりはないみたいだけれど、話すつもりもない……か。
フォースなら、勝手に心を読んでいる場面か。ラルなら、言葉巧みに聞き出してしまいそうだ。そして、今のツルギに必要な言葉を投げ掛けてくれるんだろう。
ぼくは心も読めないし、話を聞き出せるような話術も持ち合わせていない。できることなんてないので、ここから立ち去るのも手ではある。しかし、今のツルギを放置して部屋に戻るわけにもいかない気もする。せめて、落ち込んでいる本当の理由が分かればいいのだが……うーむ。
「こういうのはラルの仕事だよ~……ラルがいたらなぁ」
「……っ!」
「……? ツルギ? どうし……え、どうした!?」
何がきっかけだったのかは分からない。分からないが、いきなりツルギの目に大粒の涙が溢れ始めた。
「えっぐ……うぐ……うぅ~!」
わぁ……マジ泣きだぁ……ぼく、何かしましたっけ……?
「えーっと……ベンチ! とりあえず、ベンチ座ろっか! ね?」
大号泣中のツルギを手を引き、近くのベンチに座らせる。こんなの誰かに見られたら、誤解しか生まないが……誰も来ないことを願うばかりである。
雫が泣いたときみたいに、泣き続けるツルギの頭を優しく撫でる。落ち着くまで撫でていれば、泣き止んでくれるだろうか。雫の場合は、少しすれば落ち着くのだけれど。
泣いている理由も分からないので、何て声をかけていいかもさっぱりだ。
しばらくの間、無言でツルギの頭を撫でていると、次第に落ち着いてきたのか、声をあげて泣くことはなくなってきた。
「うっく……ぐすっ……」
「どう? 落ち着いた?」
「……うん」
目を真っ赤にしつつも、話ができるくらいには回復してくれたみたいだ。今なら、泣いた理由を話してくれるだろうか?
「それはよかった。……でも、本当にどうしたの? いきなり泣き始めたのもそうだけど、普段のツルギはもっと積極的というか。……こう大人しくするタイプじゃないよね?」
「……」
……あ、答えてくれない感じですかね。
流石にここまでくると、なんか居づらいな。一人にしてくれって意思表示なのかな。それなら、今からでも立ち去るけど……気になって、この後、寝られる気がしないぞ。
「………………だもん」
「……え?」
ツルギはどこかふて腐れたように、何かをボソッと呟いた。本当に小さい声だったせいで、肝心な部分が全く聞こえなかったけれど。聞き返す前に、再びツルギの口が開く。
「だって、悔しいんだもん……っ! 毎日、ラルに勝負しても、簡単にあしらわれるから。……そりゃ、ラルの方が年上だし、僕より戦う力も、技術も上だよ。でもさ……悔しいんだよ。僕だって……僕だって、ツバサにかっこいいとこ、見せたいんだもん」
ん~……なるほど?
まあ、どこから仕掛けてもラルはツルギを簡単にあしらっているのは確かだ。正面はもちろん、死角から飛び出してきたとしても、ひょいっと避けてしまう。そして、「ツルギ君は、まだまだだねぇ?」なんて、にやりと笑っているもんな。それを見ていたツバサも、「流石、ラルにさんですっ」と目を輝かせる場面は何回かあったような……そういうことね。
泣き出した理由も、ぼくがラルの名前を出したせいか。名前を聞いて、彼女の顔が浮かんだのだろう。
「だから、今日から夜の特訓を始めたってこと?」
「……ん」
勝ちたいという欲求と、妹にかっこいいと言われたい……兄としての威厳を保ちたいという承認欲求みたいなものか。だからって、あんな無茶なスピードで特訓するのはいかがなものか。
「……ラル、仕事嫌いでサボり魔じゃん」
「へ?」
ツルギの中で何かのリミッターが外れたのか、むすっとした表情でラルの悪口を言い始めた。
「それに、隙あればツバサをもふもふするし……誘惑魔だし……ムカつくことしか言ってこないし」
あ~……パートナーとしてフォローしてあげたい。ラルはそんな人ではないと。……でも、無理。全部、事実だから。フォローしきれません。できませんって。
「……それなのに、そんなやつなのに、探検隊として、優秀ってなんだよ。実力は本物ってなんだよ……! この前の仕事、ギルドの人達にめっちゃ褒められてたし!」
あ、無駄にドロップ品集めたやつかな。全部、ギルドで換金したって言ってたからなぁ。
「ラルの実力が本物だから、ツバサはラルのこと、かっこいいって言うんだ。僕だって言われたいのに……!」
「……おっと?」
永遠とラルの愚痴が始まるのかと思ったけど、結局はそこに戻るみたいだ。
「あのラルから一本化取って、ツバサにかっこいいって言われたいのに!! なのに、ツバサが見てるとこで、ラルから一本取るどころか、逆に取られまくるし……だから、ツバサには、カッコ悪いとこばっか見られちゃうし……なんなんだよ!!!」
ラルが「負けてあげない☆」と宣言してたからだと思います……なんて、言えない。それに、ツルギ相手に全力で構えることはない。かといって、見え透いた手加減はラルはしないだろう。
……そんなの、今のツルギに言ったら火に油だ。黙っていよう。
「だ、だから、僕は……悔しいんだよ……っ!」
口を挟む暇がなかったのもあるが……一気に捲し立てたツルギは肩で息をしつつも、一応、言いたいことは言い切ったらしい。
この様子だと、ぼくがラルのパートナーという事実は忘れている……かもしれない。
「……あ!」
「ん? もしかして、まだ言い足りない? それなら、ぼくでよければ聞くよ?」
「じゃなくて、ティール……ラルのパートナーだよね……?」
「えーっと。……そう、だね?」
「ラルの悪口、言っちゃった……ティール、ラルのパートナーなのに……」
やっぱり、忘れていたんだね。いいけどさ。



~あとがき~
ラルに対する嫉妬心に溢れるツルギ君とそれを黙って聞く、彼女のパートナーのティール君でした。

次回、ツルギ君とティールの夜会。お次はティールのターンです。

夏休み編でラルがツルギ君を淡々とやり過ごすシーンを書いてはないですが、一日に何回あるんでしょうね。ラルのことですから、お遊びにしか感じてないのでしょう。
ラル「わははー! 甘い甘い! そんなんで私に勝てると思うなー!(゚∀゚)」
ツルギ「うがー!!( ゚皿゚)」
みたいなのが毎日なんでしょうか……ツバサちゃんや雫は素直に「ラル(さん)すごーい!」で笑ってそうですが、他の方々は「またか……( ̄▽ ̄;)」って感じなんすかね。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第228話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわちゃってる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ティールとルーメンおじいちゃんとのお話は終わりました。今後もあるかは謎です!(笑)
今回はてけてけ帰るティールとどっかの誰かさんのお話。大丈夫。すぐに誰か分かるから!


《Te side》
ラルと言えば。
なんで、ルーメンさんはあんなことを言ったのだろう。ラルと恋人同士とかなんとか? 愛しのパートナーってなんだ。愛しのって。
ラルを愛おしく思う……思っているように見えてるってことか? どの辺が?
いや、彼女は可愛いとは思うけど……騙されるな? それ以上にサボりやら、怠けることを優先しようとする堕落したダメ人間だぞ。スイッチ入らないとてんでダメダメな人間だよ?
……うん。まあ、いいところもたくさんあるの、知ってるけどさ。
「……それはそれとして、急にそんな話になる流れが分からない」
『りゅ? じっちゃがいってた、いちょし?』
「いちょし?」
ルーメンさんのところでは終始静かだったスイがふわりと飛び出してくる。いや、そもそも、こいつを連れてきた覚えがないけど、一体どこから出てきたのだろうか。
『すいちゃ、いつでもてぃーといっしょ!』
「こわ。少しでもいいからぼくを一人にさせろよ。……で? さっきの流れからすると、『いちょし』は『愛しの』って意味であってるかい?」
『そだよー! るーはてぃーのいちょし!』
セツまでいるのか。どこから出て……いや、いい。どうでもいいや。この際。
「ラルがぼくの愛しの人ってこと? ないってば。そりゃ、ラルのことは好きだけど、友達として相棒として好きなだけだし。それと愛おしく思うのは別だろ」
普段のラルを見て、どう愛おしいなんて感情を出せるんだよ!?
……あ。これ、本人の前で言ったら殺されそう。「私は可愛いやろが! 愛しく思えよ!?」なんて、無茶苦茶言い出すに決まってるんだ。言わないでおこう。
『じゃ、あいらぶゆーだ!』
「違うっての」
こいつらの会話にいちいち付き合っていたら、部屋に戻るのも遅くなりそうだ。ここら辺で適当な相槌だけに切り替えて、さっさと戻ろう。明日は近くのダンジョンに仕事行く予定あるし、早く寝よ。
来たときと同じ道を通り、中庭の横を通りすぎようとしたとき、中庭から「カコンッ…カコンッ」と何かを打ち付けるような音が聞こえてきた。
は? こんな時間に中庭で何が……?
『なにかいるねー?』
『ねー? しろーいね?』
はあ!? ものは考えて発言しろ!
夏と言えば、怪談ってか。え、じゃあ、この音は心霊現象みたいなやつ? いやいやいや!? あり得ないって!!
『てぃー?』
『かべにぺたんこしてどーしたの? そーすると、すずしーの??』
背中を壁にくっつけて、できる限り中庭と距離を取る。取れているかは知らないけども。
『るーにみられたら、わらわれるのら』
うっせ!!!
あーもー! なんでこういうときにラルはいないの!? 呆れ顔で「は? 幽霊? いないいない。何も感じないもん」って言ってほしい! お願い!
……願ったって、ぼくの頼れる相棒は部屋で休んでる頃だろう。ここはダッシュで逃げるか。うん。そうしよう。
『あ。あのしろいの、つるちゃなのら』
あのねぇ……お化けに名前なんてつけてどうすんだよ。つるちゃってどこに由来してるの。
『おばけじゃないよー! つるちゃなの! つばちゃの! にーちゃ! つるちゃ!』
……ツバサのお兄さんってことはツルギ? いや、この時間帯にツルギがいるわけないだろう。実際、ぼくがここを通るようになってから、見かけた記憶がないのに。
しかし、スイとセツが頑なに引かないので、渋々、中庭の方をよく見てみる。
中庭の奥の方で何かが複数揺れている。それを避けながら動く影もあった。
揺れているのは、大木に複数吊るされている小さな丸太で、それらを避けているのがツルギ……みたいだ。手に持った棒─恐らく、木刀を打ち付け、振り子の要領で返ってきた丸太を避ける。そして、別の丸太を攻撃して、それを避ける……という特訓をしているらしかった。
「やってることは古典的だけど、なんでこんな時間に。夜の中庭使用禁止なんて、聞いたことはないけど、誰かを見たのは初めてだな」
今日、たまたま使っているだけなのか。今回からやり始めたのか……それなら、なぜ今日からやり始めたんだろう?
「……ぼく、ラルみたいな推測はちょっとなぁ。いくらなんでも、情報がないや。あっても、ラルみたいに正確な推測はできないんだろうけど」
でも、彼女ならツルギの今までの様子とか、この光景だけで、彼の心情や行動の理由を見抜いてしまうんだろう。
通りすぎてもよかったのだが、なんだか放っておけなくて、遠くからツルギの様子を窺っていた。
ツルギはというと、変わらず丸太を使った特訓に夢中なのか、ぼくを認識していないみたいだ。見られているとも思っていないかもしれない。
少しの間、ただただツルギが丸太を打ち付けているところを見ていると、その打ち付ける間隔が狭くなっていることに気づいた。
意図的に叩くスピードを上げているんだろうか。当然だが、早くなればなる程、難易度は上がる。……とはいえ、流石に、今のツルギに対応しきれるのか、ぼくには分からない。分からないけど……
「動きに粗が出てきてるなぁ。あれ以上はちょっと危ないんじゃ……?」
スピードを出す前は余裕を持って避けていたのだが、その余裕がなくなってきていた。本人もそれくらいは分かっていそうなはずなのだが、構わずスピードを上げていく。そして、目の前に迫る丸太を捉え、さっと構えた。しかし……
「! 斬風……へぼらっ!!」
「うわ。綺麗に顔面入った。あれは痛いなぁ」
技を出す前に丸太が直撃。しかも、ギャグ漫画の世界かと言わんばかりのクリーンヒット。そして、ツルギは起き上がらなかった。
「……感心してる場合じゃないよ。ツルギ! 大丈夫!?」
慌ててツルギの側に駆け寄り、仰向けに倒れる彼を診る。パッと見、目を回しているだけのように思うが……医者じゃないし、何とも言えない。
「顔面ヒットだもんな。無闇に動かさない方が無難か? セツ、いつもの一割未満の力で患部……えっと、ぶつけたところ、冷やしてやって」
『いちわり! つるちゃ、ひやす!』
うん。全身じゃなくていいからね。頼むから、全力でやるなよ? ツルギを氷付けにしないでよ?
気絶しているツルギの額を冷やすため、セツがふわふわっと漂い始めた。ぼくの言う通り、弱めの力で冷気を巧みに操る。なんとなく、ひんやりした冷風を感じるくらいの力加減だ。
「……う」
「あ、よかった。思ったよりも早くに気がついてくれた。大丈夫? 他に痛いところとか、変なところはない?」
目を覚ましたばかりだからか、ぼんやりとした様子でぼくをじっと見つめてくる。こちらの質問も聞いていたか怪しいところだ。
「ツルギ? せめて、大丈夫かそうじゃないかくらいの返事はほしいかなぁって……? 何かあったら、誰か呼んでこないとだし」
「……お前……は、家出王子の……ティール?」
いや……それを思い出してただけかよ!? というか、曖昧か! 一応、こっちに来て挨拶くらいは交わしていたはずだけど。
……まあ、なんだ。ラルばかり攻撃していたし、ぼくとは大した関わりはない。現に二人きりで話した記憶はない。そんなもんなのかもしれない。彼にとってのぼくの存在は、ラルのおまけくらいのイメージだったりして。



~あとがき~
切りどころ不明かー!
まあ、いいや。

次回、ツルギとティールのお話。

今にして思えば、ツルギ君、初登場したときもティールとの会話は特になかったですね。こちらに来てからも、ラルにご執心だったので、ティールなんて眼中になったんでしょう。ラルの近くにいたと思うんですけどね。ティールは。

ではでは!