satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第239話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で探検してる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回までが導入です! 奇跡の洞窟探検前の! 導入です!!
ラル「長かったな、導入」
そうだね!!
さてさて、今回からようやく、探検します。きっと! 多分!!
ラル「保険かけるなぁ」
そそそそそんなことないよ!!


《L side》
私達の目の前にあるのは、自然の洞窟には不釣り合いで頑丈そうな扉。それは誰一人として通さないという意思があるかのように異様な存在感を放っていた。
「理解していたつもりだけど、こうして目の前にするとまた違いますねぇ……『明けの明星』が管理する高難易度ダンジョン、ヤバイわ」
「ここに来るまでの警備も厳重だったからね。それくらいしないと危険なダンジョンってことなのかな」
なのかな。もしくは、危険とは別の何かがある可能性もあるが……それを解明するのもまた、探検隊の仕事だ。
「途中に検問所があるなんて聞いてなかったけど、案外、すんなり通してもらえてよかったよ」
ティールの言う通り、ここに辿り着くまでに中継地点のようなもの、所謂、検問所みたいなところを通ってきていた。そこでは、私達の名前と探検隊バッジを確認した程度の簡単なものだった。検問所で止められたときは、身体検査でもされるのかと思ったのだが、そんなことはなかった。
「普通に考えれば、事前にルーメンさんから話があったんだろうね。……にしても、あそこの警備員さん、なかなかの強面さんだったな」
「そだね。……もしかしたら、それを加味した上で、配属されてるのかも。ほら、ああいう強面の人に睨まれたら、大抵の人は逃げるだろう?」
あー……なるほど?
使えるものは使ってしまえ精神というべきか。確かに、あの警備員さんに睨まれたら近寄らないだろう。怖いもん。
「ルーメンさんのことだから、それくらいは考えてそうだよなぁって。……って、君もルーメンさんと同じ立場なら、似たようなことしそうだな」
「……は? なんの話?」
「ううん。こっちの話」
なんじゃそりゃ。
ティールが何を考えているかはさておき、私は先程の警備員さんから受け取った鍵を取り出した。その鍵は特殊な形状をしているわけでもなく、普通の鍵。特徴と言えば、持ち手の部分に白色の宝石があり、そこに『明けの明星』のギルドマークが掘られているくらいだ。
あそこで渡されたのだから、目の前の扉を開ける鍵なのは予想がつくが、生憎、目の前の扉には鍵穴一つない。じゃあ、どうやって開けるんだいって話だが、実は、鍵を渡されたとき、使い方は聞いていた。
鍵を片手で弄びつつ、扉の前に立つと、そっと鍵を掲げる。すると、宝石が一瞬光を放ったかと思えば、それに呼応するように、扉がゆっくりと開かれた。
「わお。……警備員さんの言う通りにしたらマジで開いた。マホー、スゴーイ」
「なぜ、片言。……その技術、魔法だけじゃなく、科学要素もあるみたいだけどね?」
「マホー、ムズカシイ。リカイ、フノーデス」
「この前のサバイバル合宿で魔力石使った肉焼き器作ってたじゃん。それと似たようなもんだろ……おい、こら。無視するな!」
ティールが何か言っている気がするが、私は気にせず、ダンジョンへと足を踏み入れる。そのまま、ある程度、奥まで進んでやろうかと思ったのだが、それはできなかった。
「これ……は」
「ラル? どうかし……って、何これ。凄い……!」
私とティールの前に広がるのは、満天の星空の下にいるのではという錯覚を起こしそうなくらい輝く洞窟内。周りには満足に明かりもないためか、星空の中に放り出されたようにも感じた。ほんの数秒、二人して息をするのも忘れてしまうくらい目の前の光景に見とれてしまっていた。が、慌てて思い直す。ここはすでにダンジョン内。言わば、魔物の巣穴である。気を抜いては危険だ。
「……これ、もしかして全部、宝石?」
「そうだね。たくさんの宝石が星みたいに光ってるんだ。サイズは小さいけど……うん。どれも質はいいと思う」
壁から少しだけ露出する宝石達を観察していたティールが嬉しそうに頷く。
「仮にここにある宝石全てが高品質なら、ギルド管理下に置かれるのも頷けるし、厳重なセキュリティも納得だよ」
ふむ。つまり、違法に採掘されないよう、ギルド直々に管理している……ということか。とは言え、決め打ちはよくない。これについては可能性の一つとして留めておこう。
「……母上がここにいたら、間違いなく発狂するな」
「セイラさんが? 流石にそれは言いすぎじゃない?」
「そんなことないよ。生粋の鉱石マニアが暴走しないわけがない」
と、冷めたように言い放つ息子。……セイラさんがここにいたら、「ティール、冷たいです!」と涙目で訴えているかもしれない。
私はセイラさんの心中をお察ししつつ、ティールと共にダンジョンの奥を目指して進んでいく。
ここの主な敵はよくいるゴブリン系統……ではなく、ゴーレム系統だった。洞窟らしく、岩で造られた体を持つゴーレムばかりだ。
岩のゴーレムと言えば、リアさんの精霊、ソイルを思い出すが、目の前の敵はソイル程の力は持っていないらしい。とは言え、ゴーレムというのは防御力が高いのが特徴だ。ちまちました攻撃では倒すことは叶わない。できるなら、高火力な攻撃を繰り出し、機能停止させる。できなければ、コアを破壊するのが一番なのだ。
で、私が選んだのは後者の方法。理由は単純。そう何度も高火力が出せるわけがないから。
ティール、援護!」
「了解。……やるぞ、スイ! セツ!」
『あいっさー!』
『ほいっさー!』
まず、ティールにゴーレムの足止めをしてもらう。今回はスイちゃんとセツちゃんを上手く使い、ゴーレムの邪魔をしてくれている。その隙に、私がゴーレムの弱点であるコアを見つけ、そこに雷姫による一閃をお見舞いする以上。
コアを破壊されたゴーレムは形を保てなくなり、ばらばらと崩れていく。それをきちんと見届けてから、雷姫を鞘に収めた。
「ラル、お疲れ様。……昔、リアさんのソイル相手に特訓したのが活きたね」
ティールはスイちゃんを手元に置き、セツちゃんは腰に収めつつ、ふわりと笑顔を浮かべる。
彼の言葉と共に過去の記憶……対ゴーレム戦闘特訓と称して、リアさんのソイルに散々やられるという特訓内容が浮かんできた。
「今、笑顔でソイルやゴーレムを突っ込ませてくるリアさんを思い出した……」
「いや、ピンポイント過ぎじゃない? まあ、あの頃のラルの攻撃は効きにくかったけどさ」
確かに、リアさんと特訓していた頃は雷姫を持ってなかったし、メイン武器に関しては迷走しまくってた時代ですけども。
『ごっちゃ、えらいのら!』
『いいこいいこするのら!』
「いやいや……お前ら、何様だよ」
この先も、こんな感じのゴーレムだけなら、何体か現れたとしても問題はない。攻撃パターンはいくつかあるものの、覚えられない程ではないし、単純な動きしかしてこないからだ。
「よぉし……どんどんいくぞー」
「なんか気の抜ける掛け声だな~……感情がない」
んなことはないっすよ。ちょっと作業っぽいなぁと思い始めただけです。
……なんて、思っていた時が私にもありましたとも。ええ。
ダンジョンの奥へと進むにつれ、ゴーレムにも様々なバリエーションが増えてきた。俊敏な動きをするゴーレムや不規則な動きをするゴーレム等々。
つまり、序盤でやっていたティールに足止めをしてもらい、私がコアを破壊するというパターンが使えなくなってきたのだ。
「おわ!? なんか人みたいな動きしてくる奴がいる! 最初の奴より、ランク高めなのか……?」
『てぃー、うしろからもばーんってくるよー』
『ばーん』
「くそ。これ以上増えんなよ。こっちは処理しきれてないんだけど!」
一体倒す前に別の個体が現れ、私とティールは分断される。協力して倒していた分、これはかなり面倒な展開である。
「ゴォォ……」
「くそ。個々の動きが読めな……っ!」
俊敏なゴーレム─恐らく、アイアンゴーレム─のぶん回し攻撃をひらりとかわし、背中に位置するコアを捉える。
「邪魔!」
コアを壊す勢いで刀を振るったのだが、敵の方もその殺気に気づいたのか、体をずらし、コアの破壊を免れた。……まあ、そこは予想の範囲内ではあるが。
ティール! 狙える!?」
「もう狙ってる!」
「お仕事はやぁい……怖いねぇ」
剣から水の弓に持ち変えていたティールは、青く光る瞳でゴーレムのコア目掛けて、矢を射った。そして、すぐさま弓を手放し、セツちゃんを呼び寄せ、背後に迫っていたゴーレムのパンチを防ぐ。
「ラル! 多分、コアはうなじ辺り!」
「見えた! あと、もう飛んだ!」
「え。早くない……?」
ティールがゴーレムを抑えている隙に敵の頭上へ跳躍し、雷姫を首筋へと突き立てた。コアが壊れる手応えを感じ、すぐに離脱する。
「ふぅ……これで全部?」
「この部屋にはもういなさそう。……お疲れ様、ティール」
「ラルもね。……にしても、久々に手こずってる感覚がするな。まあ、これも慣れたら問題なさそうかな?」
まあ、そうだね。倒せない相手ではないと思う。……そう、思うが。
ここに出てくる敵は、すんなり倒せないが、少しの時間をかければ確実に倒せる相手、くらいのレベルだ。
なぜ、そのようなダンジョンへ私達を行かせたのだろう?
もちろん、目的の石の採取をさせるのが一番の理由だろう。だが、ルーメンさんはここを『あえて』選んでいる気がしてならない。となると、当初聞いていた依頼とは別に、何かをさせたいのではないか? そうなると、単なるアイテム採取と奥地調査ではなくなってしまう。
それに、報酬金額に見合うだけの難しさと聞いてはいたが……なんだ。この感じは。私達の実力に合わせた敵しか出てこないからか? それだと、まるで……
「──! ラル!」
「っ! あ、ごめん。何?」
「何じゃないよ。急に黙るんだもん。どうかした?」
「あ、ううん……その、少し考え事」
「そっか。……考え、まとまりそう? なんなら、もう少しここに留まる? 一応、見通しは悪くないから……また敵が出てきても、ぼく一人でどうとでもなるよ」
そう言ってくれるのは頼もしい限りだ。
まあ、ここで考えても意味はなさそうだが。
「……いや、先に行こう。まとめるには情報が足りない」
「分かった。じゃあ、行こっか」
「うん。……もう少し、まとまったらティールにも話すけど、今は何も聞かないでくれると嬉しい」
「いいよ。ラルのタイミングで教えてくれれば」
もし、私の感じているそれが正しいとしたら、いつも以上に……もしかしたら、今まで受けてきた依頼の中でも、トップクラスに難易度が高いかもしれない。
そうだとしたら、私達がどう行動するかによって、今回の依頼達成か否かが左右しかねない。……うわ。なんて面倒な。




~あとがき~
探検してますね。ね!!

次回、まだまだ進むよ、探検隊スカイ!

この一話でぎゅっといろんなことをした気がしますね。探検とか、バトルとか、ちょっとした考察とか。
詰め込みすぎたかなぁと思いつつも、まあ、いつもかと開き直っているところであります!(笑)
今後もそんな感じでやっていきまーす!

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第238話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で前準備する物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、奇跡の洞窟(前準備)でした! 今回からようやく、探検へと赴きます!
ラルとティールは無事に二つの仕事を終わらせられるのか……!!
ではでは、始まります!


《L side》
昨日、寝る前に準備をしたバッグを持ち、いつも通りに探検隊用の衣装に身を包む。そして、鏡に写る自分を見て、身だしなみチェック。
……うん! 問題なし!
「うっしゃあ! やったるぞー!」
「うわ、テンション高い……ラルにしては珍しいね」
「そういう君はテンション低いな。ティールにしては珍しい」
私同様、探検用の衣装姿のティールはどこかぼんやりとしている。探検大好きな彼にしては珍しい光景だ。
「朝早いからだよ……!」
そんな理由かよ。爽やか王子が聞いて呆れる。
「聞いたことないんだけど……爽やか王子なんて二つ名」
そうだろうね。今、つけたもん。
眠気で冴えない相棒の髪を櫛で整えてやり、思い切り背中を平手打ちする。
「いってぇ!?」
「シャキッとせんかい。いつもよりは難しいだろうダンジョンに今から行くんだからね! 死にたいんかーい! 私はやだ!」
「ぼくだって死にたくないよ! けど、叩くことないだろ」
起きないお前が悪い。
「うー……まだちょっと眠い。ふぁ~……ふ」
緊張感ないなぁ。今から行く場所がどんなところなのか分かっているんだろうか。
「ラル、ティール。おしごと、がんばってね」
朝早いのにしーくんはばっちり目が冴えているようだ。パパも見習ってもらいたい。我が子の目覚めのよさを。
「ボク、おそとまで、おみおくりする!」
「お部屋まででいいのに……しーくん、ありがとうねー!」
「えへへ~♪」
天使の笑みを浮かべるしーくんと未だに眠そうな相棒と共にギルドの正面入口までやってきた。
ここまで来る途中でツバサちゃんにも遭遇し、まさかの天使二人から見送ってもらえることになった。
天国? ここは天国なの!? 私は今から空に羽ばたくの!?
「死ぬの? 君」
「あぁ……死んでもいいかもしれないわ」
「さっきと言ってることが違う……!」
まあ、冗談は置いておいてだ。
「ツバサちゃん、しーくんをお願いね?」
「もちろんです!」
「雫も、あんまりツバサやギルドの人達に迷惑かけないようにね?」
「だいじょーぶ! ボク、いいこでまてるから!」
確かに、私達が長期の仕事で家を空けていても問題一つ起こさないもんな。どっかのアホ狐と違って。
輝く笑顔で私達を見送ってくれる二人に全力で応えつつ─全力なのは私だけだが─、私とティールは『奇跡の洞窟』へと向かった。

~~

ラルとティールが『奇跡の洞窟』に向けて出発してから、少し経った頃。
アルフォースはギルドの長、ルーメンにラル達のことを報告するために親方部屋を訪れていた。
アルフォースは、スカイの二人が今日行くと知っていても、詳しい出発時間までは聞いていない。しかし、娘であるツバサと、ラル達の子である雫から「今朝、仕事しに行った」といった趣旨の話を聞き、ルーメンの耳にもいれておこうと思ったのだ。
とはいえ、ルーメンのことだ。わざわざ報告しなくとも察していそうだな、と思わずにはいられなかったのだが。
アルフォースの報告を静かに聞いていたルーメンは、椅子の背もたれに体重を預けながら、「そうか」と小さく呟き、それ以上の言葉ない。
そんなルーメンを見て、アルフォースは親方に呼び掛ける。ルーメンは答えはしなかったが、ピクリと眉を動かした。
「……親方の決定です。今更、反論するつもりもないのですが、本当にあのダンジョンでよかったのですか?」
今回の件の話が出た時から、ずっと思っていた疑問を口にした。すでに、彼女達は出発している。本当に今更な疑問だ。
「ふむ。……というと?」
「ラルさん達の実力を確かめるにしても、あのダンジョンは些か厄介なのではないかと」
ラル達がこちらに来てから、彼女独自に『奇跡の洞窟』について調べていたのは知っていた。周囲の話から、ラルの探検に対する姿勢は知っているつもりである。しかし、今回はギルドが管理するダンジョンで、情報は思うように手に入らない。
普段の通りにいかない状況下で、ラルは仕事へと向かったことになる。はたして、それがどのように転ぶのだろう。
また、『奇跡の洞窟』にある例のそれが二人にとってどのように作用するか、アルフォースには想像できなかった。
あの二人が同年代と比べ、実力があるのは分かる。それは、過去の成果からも容易く想像できた。しかし、だからと言って、全くの不安がないとは言えない。
そんな不安を抱えたアルフォースに、ルーメンはにっこりと笑いかけた。
「なぁに、むしろ、その厄介さが今のラル達の力量を図るに丁度よいと言うものさ」
「……そう、なんですか?」
「うむ。それに、ワシらがラル達をここに呼んだ目的はそれだけじゃないだろう?」
親方の言葉にアルフォースは未だ、彼女らに語っていないとある『目的』を思い出しつつ、小さく頷く。
「……ですが、本当にラルさん達は私達の目的……いえ、『真意』に気付けるでしょうか?」
「何を言う。そのための試練じゃろう♪」
「そうですが……」
どこか楽しそうにしていませんか?……とは、言わなかった。否、言えるような雰囲気ではなかった。
ルーメンは何を思ったのか、ニヤリと笑みを浮かべた。アルフォースが感じた『楽しそうにしている』のかもしれないし、これからの展開を『期待している』のかもしれない。
「さて……あの洞窟の秘密をラルは『視る』ことができるかのぉ……? お手並み拝見といこうじゃないか♪」



~あとがき~
今まで以上に短いけど、許して!
きりがよかったの!
本当は入口手前までいこうかって思ってたの! 無理だったの!!

次回、今度こそ、洞窟探検すっぞ!

ぶっちゃけ、ここの話は短くなるだろうと思ってたのです。なんかもう、書けないって投げたくなるくらい、言葉にするのが難しかったです。難産とはこのこと……(笑)
なので、しばらく経った頃に手直しされてる可能性はあります。はい。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第237話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でお話しする物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ラルVSツルギ戦を行いました。ティール視点だったのもあって、淡々としてましたね。
今回から視点をラルに戻し、洞窟の話です!


《L side》
いつものルーティーンを終わらせ、ようやく本日のメインイベントとも言える、ルーメンさんとの仕事の話をするため、親方部屋の前までやってきた。
ツバサちゃんとしーくんは別室待機するらしく、親方部屋の前まで来ることはなかった。あと、なぜかスイちゃんとセツちゃんも、『すいちゃたちもここ、のこるー! しーとつばちゃとあそぶ!』と高らかに宣言し、別室待機である。
主であるティールは二つ返事で彼女らから離れた。一応、自分のメイン武器なのだから、側に置いとくべきだと思うんだけれど……まあ、ここで襲われる心配はないけどもだ。というか、襲われる可能性があるのは私だけか。ツルギ君に。
「じゃ、行こっか」
手慣れた手付きでティールが部屋のノックから、扉を開けるところまでやってくれる。初日にビビっていた彼はどこへやら、である。
「失礼します、ルーメンさん」
「うむ。……そういえば、日の高い内にこうして会うのも久しい気がするのぉ」
「あはは。まあ、いつもは夜ですからね」
あれ。……知らない内に溶け込んでるじゃありませんこと?
「……なぁに、ラル? ぼくのこと、じっと見ちゃってさ」
「いやぁ、その……私の知らないところで成長してるなぁって。お母さん、泣きそう」
「はあ? 何変なこと言ってるの。……あぁ、でも、お母さんはあながち間違ってはないかも?」
そうだねぇ。家では家事に明け暮れる勤労学生だもの。いやまあ、同い年のティールにお母さんなんて、呼ばれたいと思わないけどね。
「そうなのですよ。今、我が子の成長に感動してるところです~」
「……そこはちょっと分かんない。なんで君がぼくの成長で泣きそうに……って、成長ってなんだ!?」
「今更、そこ突っ込む?」
「突っ込むよ! どこにどう成長を感じる要素があったんだよ」
そりゃ、初日の貴方を思い出してくれれば自ずと見えてくると思いますよ。はい。
部屋に入って早々、ルーメンさんそっちのけで話してしまったが、ルーメンさん自身は大して気にも留めていないらしい。黙って優しそうな笑みを浮かべ、こちらを見ているだけだ。
「ごめんなさい、ルーメンさん。仕事の話をしに来たのに、ラルとどうでもいい話なんてしてしまって」
「いいんじゃよ。仲がよさそうで何よりじゃ♪」
そうは言うが、これ以上時間を無駄にする訳にもいかない。私とティールはルーメンさんの対面に座ると、ようやく仕事モードに切り替える。
「アルフォースさんから伺っているとは思いますが、今回の依頼の一つである『奇跡の洞窟』についてよろしいですか?」
「もちろん。……以前に話した中間地点にある機械の交換パーツの件じゃろう。これがそうじゃ」
ルーメンさんがテーブルの上に置いたパーツは二つ。
一つは拳大の大きさで多面カットされた丸っぽくて白色の石。
もう一つは透明で楕円形の石。大きさは先程の石の約四分の一くらいだろうか。そして、この石には、正方形の小さなチップが埋め込まれている。
機械のパーツと聞いていたから、てっきり歯車とかそういうものを想像していたのだが、まさかの石……予想の斜め上のパーツが来るとは。……確かに、機械と魔力石を合わせた道具は存在する。今回の交換ってのもそういうものなのかもしれない。……しれないが、白色の石は魔力石ではないだろう。魔力石特有の力を感じないのだ。だが、これが単なる石ではないのは想像に難くない。小さい方も魔力石……では、ないと思う。透明の魔力石なんて聞いたことがないからだ。
「これが、交換パーツ……?」
ティールも私と似たような想像をしていたのか、少し困惑気味に二つの石を見ていた。ティールの問いにルーメンさんは、にっこりと微笑みながら頷いた。
「中間地点にある機械にも同じパーツが嵌め込まれておる。それと交換してほしいんじゃよ。……それと、これも渡しておこうかの?」
どこからか袋を取り出すと、それもテーブルへと置く。
袋はどこにでもありそうな普通の巾着袋。二つの石を入れても余裕があるくらいの大きさだ。
「奥地で石の採取も依頼しておるじゃろう。その石をここに入れておいてほしくてな」
なるほど。
「交換パーツもここに入れておくとよい。パーツはちと、壊れやすいからの。袋は緩衝材だと思ってくれてよいぞ」
えっと……袋が、緩衝材……? このペラペラが、緩衝……材?
いえ、疑っては駄目。ここは明けの明星。商品開発も行う商業ギルド兼探検隊ギルドだ。きっと、そういう商品……いえ、道具を開発したというだけのこと。そういう機能がついている袋なのだろう。多分。
採取した石もここへと言うからには、この袋は異次元収納付きの巾着袋なのだろう。
「それと、採取を頼んでおる『緑の石』じゃがの。壊れないよう丁重に扱ってほしいんじゃ。あれは少し寒さに弱くてな……洞窟内も温度が低いから、くれぐれも用心するんじゃぞ」
……そこまで話してくれるのに、その緑の石とやらの詳細は教えてくれないのね。話してくれてもよくないですかね。私達も把握していれば、何かと気が楽なのだけれど……それを言っても無駄なのだろうな。くそぉ~……!
肝心なことは何も教えてくれないルーメンさんにやきもきしつつも、要求は受け入れた。
仮に不測の事態でぶっ壊れても知らんからな。私は!! だって! 知らないだもん!!
この緑の石についても独自に調べたかったのだが、如何せん、情報が少なすぎる。どんな見た目なのか、どのような性質のあるものなのか、どういう成分で作られているのか等々……検索しようにも幅が広すぎて難しいのだ。今聞かされた情報があったとしても、石の特定まではできないだろう。
当日までお預けか。全く、仕事が失敗しても知らんぞ。私は……!
ルーメンさんから受け取った交換パーツは巾着袋に入れておく。一応、これで仕事の話は終了だ。
「あの、ルーメンさん。一つ、ぼく達からもよろしいですか?」
「む? 申してみぃ」
「私達が『奇跡の洞窟』の調査に行っている間、しーく……雫を預かってはもらえませんか?」
これはティールと相談して決めたことだ。
もちろん、連れていく選択肢もある。しーくんは後方支援を得意とする。敵との戦闘だけでなく、ダンジョン内部の探索でも大いに活躍するだろう。しかし、今回のダンジョンはギルドが管理する特別なダンジョン。普段、出入りするようなところとは訳が違う。しーくんの実力を低く見ているつもりはないが、どんな危険があるかは分からない。そんなところに、しーくんを連れていく訳にはいかない……という結論になった。
まあ、単純に特別管理指定されているダンジョンに幼児を連れていくのはなぁ~……っていう理由もなくはないけど。
私達の申し出に、なぜかルーメンさんは少々驚いた様子だった。しかし、すぐにニッコリと笑う。
「元よりそのつもりじゃよ。……ワシはてっきりツバサ辺りに頼むもんだと思っておったがの?」
あぁ、そういう意味の驚きか。
「ツバサにもこの後お願いするつもりではあります。ですが、ここで預かってもらうなら、まずはルーメンさんにお話を通すのが筋かなって」
という、ティールの説明に私も横で頷いた。
日帰りで帰ってこれるならいいのだが、もしかしたら、数日がかりになるかもしれない。そうなった場合、一応、大人にも話は通しておくべきだろうと。ここはルーメンさんのギルドだ。長に話をしておくのが普通……だと思うんだが。
「律儀な奴らじゃの、お主らは」
……何事にも保険って必要だと思うんだけどな。律儀なのか? これは律儀って言うのか?
「まあ、よい。雫の件は安心せい。ここにはツバサの他にも、アリアやワシの弟子がおるからの。お主らがおらぬ間の安全は保証しよう。気にせず、ダンジョンに挑みなさい」
「ありがとうございます、ルーメンさん」
「それでは、私達はこれで失礼します」
「うむ。頼んじゃぞ、『スカイ』の二人よ」
ようやく、今回の第一目標である洞窟調査に乗り出す。いや、行きたくないから先延ばしにしていた……なんてことはないのだが。
ギルドの管理するダンジョン、か。一筋縄ではいかなそうだ。あらゆる可能性を考えて行動する必要がある。……ま、なんにもなければいいんだけど。



~あとがき~
次回からっす。探検は。

次回、ラルとティールで『奇跡の洞窟』調査!
もちろん、一話では終わりません!!

何気にちゃんとした探検は今回が初めてかもしれませんね。いやまあ、幽霊屋敷探検とか、モンスター討伐とかはしてますが。
きちんとダンジョンの名前が出てきて、探検隊らしい探検をするのは、初めてかなって。
いやぁ、ここの題名、レイディアント学園なんすけどね。学園ものとは……(笑)
まあ! 休みに探検は! お約束ですもんね!! そういうことです!!!!

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第236話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でどんぱちする物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ラルによるミルティア様とはなんぞや! という調査を行いました。分かったような分からないような感じで終わりましたね。えへへ!
今回は久しぶりにラルVSツルギ戦いきます。まあ、一話で終わりますんで、楽しんでってくだせぇ~
視点は観戦組の方がいいので、ティールです。


《Te side》
ツバサとリランとぼく達で平和に昼食を終えた。アルフォースさんの話では、ツルギの襲撃後に部屋へどうぞってことだったけれど、こういう日に限って、ツルギは顔を見せなかった。……そういえば、今日一日、ツルギの顔を見ていない気がする。
少しの間、ギルド内をうろうろしていたのだが、ツルギの姿を捉えることはなかった。このまま続けても無駄だと判断したのか、ラルはいつもの笑顔で「先にルーメンさんのところ行くか」とぼくらに告げる。
流石のツルギでも、ルーメンさんの部屋でラルを襲うことはないと思う。……多分。
ツバサと雫は、ラルの言葉に素直に頷く。リランも同意するように一鳴きした。
一日に一回はあったから、この後に来るつもりなのだろうか。ツルギも仕事があるだろうし、今はタイミングが合わなかったのかもしれない。
ラルがどう思っているのかは分からないけれど、ぼくは念のためと辺りを見回してみる。まあ、ツルギらしき少年は見当たらないのだが。
雫とツバサが前を歩き、例の中庭を横切ろうとしたとき、ラルがピタリと歩みを止める。
「ラル、どうかした?」
理由はなんとなく察してはいるが、一応、聞いてみた。もしかしたら、ぼくの予想外な理由で止まった可能性もなくはないからだ。……限りなくゼロだとは思うんだけども。
「しーくん達をお願い」
ラルはぼくの問いには答えず、楽しそうに笑ってぼく達から離れる。なんかもう、それだけで答えになっているような気がしてきた。
「ほわ。ラルさん?」
「大丈夫。いつものだから、ぼくらは離れてよっか」
『いつもの』で通じたのか、ツバサは素直に頷いて、ラルの方をじっと見ている。というか、『いつもの』で通じてしまう程、ツルギとのバトルが定着してしまった事実に驚いているけど。
それはさておき。
……ラルは、すでにツルギの反応を察知している。だから、いち早くぼく達から離れ、動きやすいように開けた場所へと移動した。つまり、ラルにはツルギの居場所の検討がついている訳で。となれば、彼がどう動くのかもある程度の予想もしているはず。それは、ツルギ自身も分かっていそうだけれど、諦めることなくラルに挑む姿は潔くもあり、健気でもあって……
「ツルギも頑張るなぁ」
ぼくには到底、真似できないと思ってしまうのだ。
なんてことを考えていると、どこからともなく、魔法による遠距離攻撃がラルを襲う。しかし、ラルを狙ったというよりは、牽制に使われているのは、軌道から明らかだった。
ラルは焦りもせず、武器も構えず、最小限の動きでそれを避ける。そこに物陰から─もしかしたら、幻術で姿を消していたのかも知れない─ツルギが飛び出してきて、刀でラルに斬りかかった。……が、それもラルにはお見通しだったらしく、軽々と避けてしまう。
「んもー! ツルギ! 危ないでしょー!」
武器を構えていないラルの身を案じたのか、ツバサからの抗議が入る。確かに当たれば、無事ではすまない。できるなら、雷姫さんを構えてほしいものだけれど、ラルにその気はなさそうだ。
武器を構えないラルに対して、ツルギはお構いなしに連続で刀による攻撃をしていく。その攻撃一つ一つは、十二歳にしては完成度も高く、同年代相手ならツルギが負けることはそうそうないのだろう。
……が、相手が悪い。
ラルは完全に見切っていて、彼の攻撃を簡単に避けていく。その姿はどこか、ダンスをしているようにも見えた。
「流石、ラル。軽々とやってるな」
「うむむ。ツルギお兄ちゃんのこーげき、ラルにはあたらないかもー」
と、チームの分析班が呟いた。
「う? そうなの?」
「そーなの。ラル、どーたいしりょく、すごいの。それに、ラルはこーげきをよけるわざも、たーくさんしってる!」
それは多分、リアさんによるものだろう。
ラルはチームの司令塔。だからこそ、視野も広く、鋭い観察眼を持つ。あらゆる可能性から、チームの……或いは自分の勝ち筋を見出だす。それが、ラルの戦い方。
攻めの主導権を持っているのはツルギ。しかし、バトル自体の空気を握っているのはラルだ。
何度も何度も攻撃をしているのに、それが全く当たらない状況に焦りを覚えない訳がない。ツルギも例外なく、表情と動きに焦りが見え始める。そして、それを見逃すリーダーではない。
「んふふ。どうした? 君の実力はそんなものなのかな?」
「むぐ……そんなわけないだろ!」
「そうだろうねぇ~……ほれほれ、もっと本気で来てよ! そんなへなちょこ攻撃で私を倒せると思わないでよ、お兄ちゃん?」
相手の神経を逆撫でするような悪趣味な笑顔でツルギを挑発する。完全に悪役顔だが、これもまた、ラルの作戦の一つなんだろう。悪趣味だけど。
というか、年下の子にする笑顔じゃないと思うんだけどなぁ……いいんだろうか、そんなんで。
分かりやすい挑発だったが、今の精神状態では無視するなんて選択肢はない。ツルギは今までの連撃主体のスタイルをピタリとやめ、少しだけラルから距離を取る。そして、刀を下段に構え、意識を集中させていく。
「ツルギ、一気に斬りかかるつもりだ……!」
「みたいだね。まあ、ラルなら大丈夫だよ」
こういう状況下にした張本人だし……とまでは言わなかった。流石に。
ツルギは恐らく、下から振り上げるようにして攻撃するつもりだ。それも、相手の懐に突っ込んで。ツルギのように小柄なら、踏み込めないところまで入り込めるだろう。
ラルもそれくらいは予想している。避けるなら、ツルギが走り出した瞬間に後方へ飛びつつ、雷姫さんを使っての反撃だろうか。或いは、射程外に逃げるか。
……なんて、思っていたのだけれど、ラルはぼくの予想を越え、前進した。雷姫さんはもちろん、何も持たず、その身一つで。
「はわっ!?」
「ありゃ……?」
「……はぁ!?」
見ていたぼくらもつい、声が出てしまった。ツバサも雫もラル自ら突っ込むなんて思ってなかったのだろう。また、ツルギも同じようで、攻撃の手が一瞬だけ止まった。
その隙をラルが見逃すはずがなく、地面を強く踏み込み、高く飛び上がった。軽々とツルギの真上を通過し、彼の背後へと回り込む。
「ほい。私の勝ち」
「……あだっ!」
ツルギが振り返る前にラルからのチョップが振り下ろされていた。
今回もまた、ラルの勝利で終了、かな。ツルギは不服そうだ。
「むぅ……! なんで!」
「なんでって……分かりやすい性格してるからだって言ってるでしょ。真っ直ぐなのは可愛いけれどね。……というか、そろそろ、私を本気にさせてもらえると嬉しいな。これじゃあ、まだまだツバサちゃんにいいところ見せらんないねぇ」
あぁ……ツルギが気にしてることをラルは平気でつつくんだから。……わざとだと思うけどね。
「なっ……う、うるさぁぁい!! もう一回!!」
「嫌でーす。仕事があるので~」
飛びかかろうとしたツルギをひょいっとかわす。なんだか、ツルギが本気で可哀想に思えてきた。
ラルとツルギでは、実力と経験の差が明確に存在する。ツルギがラルに勝てないのは明白である。あるんだけれど、もう少しやり方があるのではと思ってしまうのだ。とはいえ、二人ともこの形で納得しているというか、成立しているから、今更ではある。
「もう! いっかいっ!」
「しつこいなぁ……さっきので君は一回死んでるんだぞ~?」
再試合を望むツルギに対し、ラルは適当に返している。時折、手が出ているツルギだが、それをラルが避けられないはずもなく、何でもないようにあしらっていく。
「あーもう」
淡々としたやり取りに飽きたのだろうか。ラルが再び、ツルギの背後に回り込み、今度は首根っこを掴もうとした。……したってことは、結果的にできなかったわけで。
ラルの意図を読んだのか、ツルギも掴まらんと逃げたのだ。その結果、ラルは思いがけず、ツルギの尻尾に触れてしまった。
「あ、やべ」
「ふぁっ!?」
触られたと知ったツルギはこれまで以上の反応を見せ、今までで一番のスピードでラルから離れる。そして、今まで以上に威嚇モードでラルを睨み付けた。
「へんたい! ラルの! へんたい!!」
「えー? 別にわざとじゃないんですけど~……? まあ、いいや。今日はもうやる気なくなったでしょ? おわりおわり~」
と、全力威嚇モードツルギは放置し、勝手に切り上げて、こちらへと戻ってきた。確かに、あのままでは続きは難しいだろうけれど。
「お待たせ。そろそろ行こっか」
「……その前に一ついいかな」
ぼくの言葉にラルは小さく首を傾げる。思い当たる節がないのだろう。そりゃそうだ。ラルはそういう人だから。
「ツルギの攻撃、当たってたらどうするつもりだったの?」
「うん? どうもしないよ。というか、ティールは私が一回でも当たると思ってたの?」
思ってないけど! そうじゃない!!
「当たっててもツバサちゃんが治してくれるかなって」
「他力本願か!?」
「ほえ……はい! 治します!」
いや、返事しなくていいから……!
「ま、当たったら当たったで、ツルギ君の動揺は誘えるから、何ら問題はないかな」
そこじゃないって、何度言えばいいんだろう。何かを言っても、ラルは変わる人ではないが。
「せめて、雷姫さんを構えてほしかったよ。用心のために」
「? 必要ないでしょ」
……万が一を想定してくれないかな、この人は。
しかし、ここで押し問答を続けても仕方がない。言ったって今後の身の振り方を変えてくれるわけがないのだ。
「はぁ……あ、ツルギは? 一緒に来る?」
「僕、これから別の仕事なの」
揃いも揃って……仕事前に何しているんだろう。実は仲良くなれるのではないだろうか。なんて、ツルギには言えないか。
「……仕事前にラルに挑んでたんだね。お疲れ様」
「う……まあ、負けちゃったけど。……あ、ティールもお仕事、頑張ってね!」
ラルに負けた不満はあれど、笑顔で手を振りながら去っていった。
「私も一緒に仕事なんですけどねー? まあ、いいけどさぁ」
あんなことしておいて、よく言えるな。
何がともあれ、一応、ツルギの襲撃イベントはこなしたわけだ。これでようやく、ルーメンさんのところへと行ける。
このイベントをこなす必要があったのかはよく分からないけどね?



~あとがき~
適当になってしまって申し訳ない。

次回、ラルとティールとルーメンの三人でお仕事の話。

悪い癖なんですけど、いつかに描写したやろみたいなことを繰り返し書いてることがあるんですよね。まあ、書いてる私は以前書いたってのを忘れているのが原因なんすけどね!!
とまあ、なんでいきなりこんな話するんやってことなんすけど、ティールがラルのことを考えるシーンがよく出てくるからなんですね。再三繰り返してますけどぉ!?……みたいな事柄があると思いますが、スルーしてくれていいよってことで。表現は変わってるとは思うんですけどね……(汗)
多分、知らんうちにそっと消えていたりするんで。はい。
まあ、ティールがラルのことを考えるシーンだけじゃなくて、物語全般に言えますけどね。この悪い癖は……気を付けたい……!

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第235話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でもんもんとしている物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、一旦仲間と別れたラル。一人で黙々と調べ物してます。
今回もその続きです。


《L side》
情報を隠す理由については、情報が少なすぎて絞りきれない。
単に知られたくないから?
神に関する情報開示が危険だから?
そもそも、資料が残っていない? 或いは、ミルティア自身がこの世に残そうとしていなかった?
思い付くままに理由を描いてみたけれど、どれも、しっくりこない。
神に関する詳細を隠すのは分かる。ミルティアが女神で、人ではない。それを大勢に知られるのは危険だと判断した。全うな理由に思える。
しかしだ。それにしたって、少なすぎるというものだ。
ミルティアに仕えていた家系であるという情報をツバサちゃんに開示している以上、いつかは自分のルーツを知る手段がいる。それなのに、ミルティアに関する詳細がないのはどうなのか。
まあ、この資料室はギルドメンバーも使用する。他人に見られないように隠しているとするなら、理解できる。……納得はしないが。
「いや、それにしたって、ミルティア自身を隠す必要はない……だって、ケアルは仕えていただけ。情報を隠す必要なんてない」
あ、待て?……主の知られてはならない情報を隠蔽した、と言われたらそれまでか。ふーむ。
私は背もたれに全体重を預け、天井を見上げる。どこにでもある天井を見たところで、私の知りたいものが降ってくるわけではない。
私はなんとなく、ゆっくりと目を閉じる。
「あーぐちゃぐちゃになってきた。……整理するか」
ミルティアの資料はある。少ないながらも、女神に関する情報はあった。しかし、どれも断片的で、詳細は載っていない。
ミルティア自身ではなく、周辺の情報は多くの資料に載っていた。家族、経歴、政策、土地、王としての功績、残された子孫が何を残してきたのか……まあ、それらも詳しいことは不明のままだが。
今、明確に真実だと言えるのは、ケアル家がミルティアに仕えていたこと、この地を救ったという逸話があること。そして、複数の資料に載る程の大雑把な情報達。
私の知りたいミルティアに関する詳細は不明なまま。ある意味、収穫はないと言える。
謎として残るのは、大まかに二つ。
なぜミルティアの情報がない?
隠蔽しているとしたら、その理由は?
ルーメンさんに聞いたところで、はぐらかされそうだ。アルフォースさんを攻める手もなくはないが、あの人は口が固いタイプ。知っていても教えてくれないだろう。まあ、直系ではないアルフォースさんが知っているかは微妙なラインだが。
ツバサちゃんやツルギ君はどうだろう。少なくとも、ツバサちゃんは何も知らなそうだったが。ツルギ君が知っていたとして、私に教える義理はないな。どちらにせよ、無理か。
「はー……手詰まりだぁ」
「何が?」
頭上から声が降ってきて、パチッと目を開けた。そこには不思議そうに私を見下ろすティールがいた。
「……ティール」
「ん?」
「近いです」
このまま近づいてキスでもされるのかなって思ってしまうくらいに近い。最近、こういうのが多いなあと楽観的に思う反面、ティールの天然っぷりに活を入れたくなる。
こういうのを! 女の子にしてはならんと! 何度言えば分かる!?
……なんて、こんなところで言えないので、今回は私の心に押し止めておくけれど。
「あ、ごめん。なんだか難しい顔で唸ってたから、熱でもあるのかと」
「さっきまで元気やったやろがい」
「そうだけど。君、隠すの上手だから」
……そうかな?
私が疑問視しているような表情を浮かべたせいか、彼は困ったように「そうなの」と少し強めに言ってくる。
「で? 何を調べてたの?」
「ミルティアのこと。でも、知りたいことはなーんも出てきませんでした」
「へぇ? ラルにしては珍しいね。あぁ~……だから、手詰まり?」
私は黙って、不満タラタラに頷く。ティールが労うように、私の頭を優しく撫でてきた。その行為に甘えつつも、思考を巡らせようとする。……が、もう集中力が切れたのか、てんで動いてくれなくなった。
「……駄目だ。考えるの疲れた。あ、ティールが来たってことはお昼? 食べに行こっか。しーくんは?」
「手分けしてラルを探してた。その辺にいるんじゃないかな。見てくるよ」
「ほーい。じゃ、漁った資料戻してくる」
「了解。……そだ。……ねぇ、ラル?」
私から離れ、しーくんを呼ぼうとしていたティールだったが、くるりとこちらを振り返る。
「詰まったときは前提を変えるといいんじゃないかな。前提っていうか、別のことに目を向けるみたいな。……アドバイスになるか分かんないけどね」
「別のこと……ねぇ」
「資料が駄目なら、人を頼るとか。手段を変えると見えることもあるんじゃないかな」
まあ、別視点からのアプローチも有効だろう。とはいえ、残念ながら、その周りの人も頼れないって結論に……?
「……ティール。信用のある情報の定義ってなんだろう」
「え? そりゃあ、資料自体が信用に足るかどうかとか……あとは、複数の資料に書いてある……かな。別の資料に同じことが書かれていれば、信憑性はあるよね?」
ティールの言葉を受けて、広げていた資料を片っ端から漁っていく。目につくもの全て、目を通して、情報の再インプットしていく。
ティールの言った定義に従うなら、ツバサちゃんから聞いた、『ケアル家がミルティアに仕えていた』という情報は信用に値しない。
なぜなら、どこの資料を見ても書いていなかったからだ。もちろん、ミルティアにスポットを当てていたから、出てこなくても不思議ではない。だが、今回に限っては、ミルティア周辺の情報が多く出ている。すなわち、それを匂わせる情報がないのはおかしい。
では、出てこない理由とは。……ツバサちゃんが教えてくれたものが間違っているから。
しかし、嘘がつけないツバサちゃんが私達を欺くために嘘をついたとは思えない。だから、私も無条件で信じたし、それを前提に情報収集も、その後の推測も行った。そして、完全に行き詰まった。
しかし、ツバサちゃんから聞いたそれが誤情報だとすると、分かることがある。
なぜ、彼女に嘘をついた? そのような必要があるのはなぜ?
その問いの答えとして、最も近いものは「ケアルは支えていたのではなく、直系の子孫そのもの」だろう。それをツバサちゃんに知られたくなかった、或いは、一時的に隠す必要があったのだろう。ツバサちゃんに嘘を教えたのは、ルーメンさんなのか、理事長なのかは、大して重要ではない。
よくよく考えれば、この城も元はこの地を治めていた王が住む場所だったはずだ。それをケアル家が所有している時点で、疑うべきだったのかもしれない。仕えていただけで、城を継承するとは思えない。継承するならするで、経歴に書かれているはずだから。それがないってことは、そういうことなのだろう。恐らくは、だが。
……とはいえ、これはあくまで推察の域を出ない。確信を得るにはまだ、足りない。
「ラルー!」
「え、あ、しーくん……!」
「急に考え事始めるんだから。……もう終わったかい?」
しーくんを連れてきたティールは飽きれ顔。そりゃそうだ。資料戻すわ~とか言っておいて、一つも戻していないんだから。むしろ、散らかしている。
「ごめんて。今、資料戻すよ」
「手伝うよ。半分貸して?」
「ぼくも! おてつだいっ」
ティールとしーくんの手助けもあって、大量にあった資料達は元の場所へと戻された。手伝ってくれたしーくんの頭をわしゃわしゃっと撫でてあげていると、軽く肩を叩かれる。
「で? 何か分かったの?」
「まあ、ティールのお陰で一応は」
「そっか。少しでも進展したのならよかったよ」
あれを進展と呼んで言いかは謎だ。……手詰まりから抜け出したのは確かだが。
「けどまあ、それでも確信はないから、また時間があるときに調べ直すよ。分かったら教える」
「了解。そのときは手伝うから、なんでも言って」
おー? なんでもは大きく出ますね。なら、こき使おうかな?
「それは怖いなぁ……いやまあ、ぼくにできることなら、なんだってするけどさ。……よし、ご飯食べに行こう!」
ひょいっとしーくんを抱き上げ、資料室の出口へと向かう。私もその後ろについていく。しーくんを抱っこして歩く姿が休日のパパっぽくて、内心ほくほくしていると、ふとあることを思い出した。
「ねー? ティール」
「んー?」
「知ってたら教えてほしいんだけど、『ブレスガーディアン』って聞いたことある?」
実は資料を片っ端から漁っていたとき、時々目にした単語の一つだ。これも例に漏れず、詳細は不明。時間があれば、ブレスガーディアンとはなんぞやを調べたかったのだが、ミルティア自身を指す言葉ではないみたいで、結局、未調査のままに終わってしまった。
「ブレスガーディアン、か。……ごめん。聞いたことないな」
「じゃあ、世界の常識ではないね。それだけ分かればいいや」
名前から推測するに、何らかの守護者なのだろうか。しかし、ミルティアを守る精霊を指すのか、ミルティアに仕えていた人を指すのか、はたまた、全く異なる存在なのか。何れにせよ、今、それを知る手段はない。
また今度だな。うん。
「あー疲れた。甘いもの食べたーい」
「ボクもたべるー! アイス!」
アイス、メニューにあるかなぁ……?
三人で今日のメニューが何なのか話しながら、ツバサちゃん達の待つ食堂へと向かう。
そして、本日のメニューにアイスはなかったが、プリンはあったので、ありがたく頂戴したのだった。



~あとがき~
久しぶりにラルの思案回でした。
地の文を沢山書いた……(笑)

次回、ラルとツルギ君の話。
初日だけがっつり書いたあれです。

書いてて、若干迷走した感じがします。大丈夫だろうか……?
まあ、なんだ。とりあえず、色々調べたけど詳しいことはわからんわってことと、ツバサちゃんが言っていたケアル家がミルティアに仕えていたという情報が誤りだったということが分かっていればいいと思います。はい。

ではでは。

空と海 11周年

だってよ!!! びっくり!
もうここ最近、何年経ったのか覚えてません。
小説版の方は今年で9年らしいです。(スマホのメモによれば)
9年間でようやく話の半分かと震えています。いろんな意味で。
あの……頑張ります…(小声)

そういえば。
10周年の大台に乗った割に、去年は何もできなかったので、今年こそはと思ってます。
イラストとか描きたいよね。みたいな。
したいことはたくさんあるけど、実現できてないのが悲しいっすね……私の無計画さよ……!

さてさて。
空と海ですが、現在はポチャの家族の話になってます。いや、それだけではないけども……!
のんびりお付き合いくださると幸いです。
今年の目標はポチャとイブの話を終わらせることです。いや、言いすぎた。イブの話に入りたいですね!!
ではでは! 特に何かあるわけではないですが、空と海をこれからもよろしくお願いします!





ピカ「へいへいへーい! 今回もこれだけだとなんか寂しいんで! ちょっと喋ろう」

ポチャ「なんかとは」

ピカ「事務的な感じでよろしくでーすって終わるの、なんか寂しくない? なんやかんや、200話以上続けてるわけですよ。それなのにあれだけで終わるのは寂しいやん?」

ポチャ「ふーん。……で、要約すると?」

ピカ「最近、出番らしい出番がないので、でしゃばりたいです(´・ω・`)

ポチャ「大変素直でよろしい」

イブ「今はポチャさんのお話になってますもんね。その前は私達のお話でしたから」

チコ「アイトさんこと、キアが仲間になる話だね♪
……あ、それも去年の話か~」

フォース「夏休みとかに比べたら、短い話だったはずだけど、それを終わらせんのに1年かけてたの? やだ、今後が怖い」

ピカ「あは。その理論で行くと、ポチャの話も来年の今ごろに終わってることになるな。……え、大丈夫?(´・ω・`; )」

イブ「ど、どうでしょーね?(^∀^;)」

フォース「一応、それなりに書き終えてるらしいが、終盤で躓いているとの噂が」

ピカ「あぁ、いつもの」

フォース「ってことだから、アホがノリノリになるのを待つしかねぇな」

ポチャ「だ、大丈夫なのかな
作者がノリノリになる日なんてあるの」

ピカ「今のところ、低迷期だな!」

イブ「ふぁ!? いやいや、明るく言うことじゃないですよ!?Σ( ̄ロ ̄lll)」

ピカ「まあ、書ききる思いだけはあるので、のんびり待っててくださいな。あわよくば、ポチャの話の先にあるイブちゃんの話にも入りたいらしいから~……ポチャのが終わればな、いいけどな」

フォース「だねぇ」

ポチャ「すでに諦めムードなのやめて? ぼくのやつ、そこまで引っ張るやつでもないよね」

ピカ「あぁ、うん。そうだね……多分?
作者の中では、ポチャの話は日常パートに入るらしいから。一応、本編に関わりの薄い話ってことになってる。一応」

チコ「一応、ですか。念を押しますね……?」

ピカ「全くないとは言えないので」

フォース「へー」

ピカ「ま、そゆことで。現在進行形で主役なポチャ君。今後の展開に一言」

ポチャ「えっ!?
えーっと……と、特にないです……けど、そうだな……父と親方とピカの話とか……ぼくと父とのやりとりとか……そんなのがあるので、その辺りを見てくれたらいいかなって、思います。今のところは?」

ピカ「そだね。ポチャとブライトさんとのやりとりまでいけたら、ええね」

ポチャ「え、いかないの!?」

イブ「この作者さんは何をしでかすか分かりませんからね!」

フォース「自信満々に言うことではねぇけど、実際のところ、その通りだよな」

チコ「あぁ……(;^ω^)」

ピカ「ってことで、今後ともゆるりとよろしくお願いしま~す」

ポチャ「終わりもざっっつだな!?」




ではでは!

空と海 第239話

~前回までのあらすじ~
海からポチャの両親がやって来たぞ!!
セイラ「うふふ。本編でははじめまして。セイラです♪ こちらは夫のブライトですよ~♪」
ブライト「……」
はい! よろしくねー!
かなーり前にポチャの過去編的なやつに出てきました。いつの話やねん……!


いつものスカイ基地にやってきた私達。けど、いつも通りとはかけ離れた存在がそこにいるわけで……
「ここに来るのも久しぶりですね! ぜーんぜん変わってないのね」
「そんながらっと変わるわけないでしょ」
一度、来たことがあるみたいな話をしているポチャさんとセイラ様。
「改めまして、自己紹介をさせてください。海の国から参りました王妃のセイラと申します。……王妃なんて名ばかりなので、気軽にお話ししてくださいな」
厳しそうなブライト様とは打って変わって、親しみやすい笑顔を浮かべていた。柔らかな人で、言い方がおかしいかもだけど、どこにでもいるお母さんみたいだ。
「よく言う……一部の財政任されてるくせに」
「んもー! そういうこと言っちゃいけません!」
うん。……どこにでもは……いないかもしれない。
「おれはフォース。んで、こっちのちびっこはイブな。で、王妃様は何しに来たわけ?」
「ちょっと、すーくん!? 何勝手に自己紹介してるの! ちびっこじゃなーーい!」
というか、王妃様って分かってるなら敬語使ってよー!
「あら。私は気にしませんよ~♪ 堅苦しいの、あんまり好きじゃないので。……一番の目的はティールに会うため。第二の目的は……そうね。観光?」
観光。
「ブライトはここへ仕事で来ているけれど、私は国を動かすような重大な会議なんて興味ないもの。やっぱり、ティールが一番!」
と、セイラ様はポチャさんを再び、ぎゅーっも抱き締める。突っぱねる元気もないポチャさんは、されるがままだ。
……ん? 国を動かすような重大な会議? そんなものをギルドでやってるんですか?
「あ、私は詳しいことは知らないんです。そうなのかなーって?」
なんだ……ただの予測かぁ。
「本当にそれだけの理由?」
「ええ。だから、ティール。この辺を案内してくださいな♪」
探るような目をしていたポチャさんだったけれど、それも諦めたのか小さなため息をつく。
「……それで、母さんの気がすむなら、喜んで。でも、トレジャータウンには前にも来ただろ? 案内するようなところなんてないけど」
「一回しか見たことないです。ぐるーっと見てみたいの!」
「あ……そうですか……じゃ、行こっか」
「うふふ♪ そうと決まれば、イブちゃん達も一緒に行きましょう♪」
「お邪魔なんじゃ……ポチャさんと二人きりで親子水入らずの方が」
「大勢の方が楽しいです」
あ、有無を言わせない感じ、上に立つ人って感じだ……
セイラ様のご要望により、私とすーくんも同行することに。
セイラ様がお話ししている間、すーくんがじっとセイラ様を見ていたけれど、何か気になることでもあるんだろうか。まあ、聞いたって教えてくれないんだろうけど。

「うふふ♪ 賑やかで楽しい町ですねっ」
一国の王妃様がのんびりと歩いているってだけでも、町中は大騒ぎ。皆、遠巻きに私達を見ていた。
「母さん、少しは姿を隠すとかやらないの?」
「今更ですよ。あんな登場の仕方をブライトがやっちゃうから」
海から現れたと思われる王様は、姿を隠すためのマントとかもなかったですからね……堂々としてて、ある意味かっこよかったけれど。
「ブライトは自分の力に絶対の自信を持っているんです。自分に敵意を向けた相手は、問答無用で倒しちゃうような人ですし、実際、とっても強いの」
「へぇ……まあ、まとってたオーラっつーか、雰囲気だけでも、大抵のやつははね除けそうだな」
すーくんの率直な感想に、セイラ様は楽しそうに笑って、こくんと頷いた。
「ええ、そうなんです♪ 悪いことしようとしてた大臣とかも、一睨みでノックアウトですっ」
睨んだだけで……!?
「ま、そんくらいの威厳がある方が王様らしいっちゃらしいけど」
「……あ、ちょっとごめん。ここで待ってて」
ポチャさんがぱっと商店の方に走っていった。何か買い物かな?
ポチャさんの背中を見送ったセイラ様はにこっとこちらを振り向いた。
「? どうかしましたか?」
「あの子、ここではどうですか?」
「おれ達、そこまで付き合いは長くないぞ」
「でも、フォースさんの身に付けているマフラーはティールとピカちゃんの隊のものなんでしょう? あの子と仲良くしてくれてるんですよね」
な、仲良くって……そんな! こっちがよくしてもらっていると言うか!
「ふふ、そうなのね。ここではちゃあんと先輩、しているのね。……ティールはね、自分が王位継承の儀に後ろ向きなのを気にしているの」
……王位継承の儀?
「……海の国での王位継承は国民による投票だったな。何人かの候補者の中から次期国王が選ばれるってやつだろ?」
「あら、詳しいのね♪ そうなの。ティールの他にも継承者は何人かいて……ある一定の年齢に達すると、国民の支持率を可視化します。ティールが自分をでき損ないって表現したのは、そこなのよ」
もしかして。
「あんまりよくないってことか」
すーくんの指摘に、セイラ様は小さく頷いた。
「元々、海の国は海中にあるため、閉鎖的な国。陸に上がることも一部の人々しか行わない。……単純に、ティールの頑張りが伝わりにくいのです。『スカイ』の名は私達の国まで届いてはいますが、探検隊自体を知らない民も多い。他のことも原因にありますが……ティールの支持率は中の下ってところなのです。もちろん、具体的な数字は王家の一部しか知らないことですが、なんとなく、体感で分かるものでしょう? 自分のことは」
「そんな。ポチャさん、とっても素敵な方なのに」
「ありがとう、イブちゃん。私もそれはたぁくさん知っています♪ でも、問題はそこじゃないんですよね」
……ほえ?
ティールがそれを理由にブライトと険悪だってところが問題なの。ティールが王様になろうとなかろうと、私の可愛い息子ってことには変わらないじゃないですか! それはブライトも一緒。……なんですけど」
それが伝わっていない?
「そうなんです。ティールが自分を卑下してしまうから、変な方向に捉えがちなんですよ。あの人も口下手だから、変な言い回しになるんです。それで、誤解が誤解を招くんですよ~」
な、なんて悪循環だ……!
「複雑な親子だな」
「ほんとに! どうにかしたいんですけど」
「あんたの本当の目的って、それだろ」
「……うふ♪ そうとも言いますね♪ ここにはピカちゃんがいますから、なんとかなるかなーって」
? どういう……?
私だけが理解していない中、買い物を終わらせたらしいポチャさんが戻ってきた。私達の話なんて知るよもないポチャさんは、不思議そうに首を傾げていた。
「さあ! ティール、次です! つぎー!」
「え、あ、う、うん!?」
考える暇なんて与えないというセイラさんの勢いに、ポチャさんは流されるままに頷いて、ぐいぐいっと背中を押されまくっていた。
「おれらも行くかー」
「う、うん」
パワフルなセイラ様を慌てて追いかけ、再び観光がスタートする。
しかし、さっきのセイラ様のお話やすーくんの台詞からするに、まだ何かありそうなんだよね。この訪問には……?



~あとがき~
振り回していくスタイルなセイラ。

次回、場所は変わって、ピカとプクリン、ブライトの三人のお話です。
真面目です。唯一の真面目な話かもしれん。

どっかで言ったかなぁ……? 海の国の王様選びのお話。レイ学とは少し仕様が変わってます。あっちは基本、王家に生まれた男子がとある条件を満たすと、王になる素質があると判断されるシステムです。半ば、強制的な感じですね。まあ、あれはあれとして、捉えていただければ!
さてさて、ここで補足していこうかな! 知らなくてもいい話なので、本編には書きませんでしたが。知りたいって方だけお読みください。マジで、本編には関わらないところなんで(笑)
海の国のトップは、王位継承権を持つ男子数名による選挙で決められます。もちろん、誰でもなれるわけではなく、王家の血筋の者です。ポチャ君は現国王の嫡男ですので、第一王子となります。そして、第二、第三と続きます。その方々とはブライトやポチャと、親戚くらいの関係になりますかね。仮にポチャに弟が生まれれば、順位はずれます。
まあ、この王様を決める選挙、いつやるのーって感じですが、基本的に現国王が玉座を退くと決まったときですかね。なんで、本番の選挙ってのはまだまだ先な話なんですね!
ちなみに。空の国は問答無用で生まれた順です。男子も女子も関係ないっす。なので、チルちゃんは次期女王様、なんですね~♪

ではでは!