satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第323話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でほんびりしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
朝練風景……というか、処刑風景(笑)をお見せしました。朝練なんてなかった。いいね。


《L side》
セラフィーヌさんとの朝練を無事に終え、部屋へと戻るが、予想通り、ティールはまだ夢の中だった。
私は軽くシャワーを浴び、着替えを済ませる。濡れた髪をタオルで拭きながら、ベッドに置きっぱなしになっていた端末を拾い上げる。
「ちょっと早いけど、起きてるかな~?」
端末を操作して、とある相手の連絡先をタップし、連絡を試みる。何回か呼び出し音が聞こえて、相手の声が聞こえてきた。
「もしもし。早くにごめんね、ムーン」
『いえいえ。問題ありませんよ。何かありました?』
私が連絡した相手はチームの頼れるお兄さんの一人、ムーンだ。ムーンの電話口からは特に何か聞こえることはないから、外にいるわけではなさそうが、一応、念ため。
「まあねぇ。……今、どこ?」
『家です』
「他には?」
『ともとクラウさんがいらっしゃいます』
ふーん。クラウもいるのか。なら、好都合だな。
「昼過ぎ、他のメンバーをそこに揃えて欲しい。大事な話がある」
『分かりました。フォースさんもですか?』
「そっちにいるならね。後で聞いてみる。どうするかはその時にまた連絡するよ」
『はい』
……ふむ。
ムーンは元々、聞き分けのいいと言ってはなんだが、何かあっても深く追求をするタイプではない。こちらが話すのをじっと待つタイプだ。それは分かっているけれど、一般的な心理として、「大切な話がある」と言って、気にならない人はいないだろう。
「聞かないの? 何の話するのって」
『えぇ。そのうち分かりますからね。それにラルさんは僕達を悪い方へ連れていくこともしないでしょう?』
「まあ、するつもりはないけどさ。……前から聞きたかったんだけど、ムーンのその絶対的な忠誠心はどこから来るの?」
『ラルさんは僕の救世主みたいなものだからですかね?』
「んえ~? 何かしたっけ」
『してくださいましたよ。……貴女には何でもないことかもしれませんけれど、ね?』
意味深だな……ま、これ以上は聞いても教えてくれないだろう。
「興味本位で聞くんじゃなかったわ。……それじゃあ、悪いんだけどよろしくね?」
『はい。お任せください』
ムーンとの連絡を終え、次はフォース君に連絡をしてみる。ムーン以上にコール音が続くが、連絡が切れることはなく、やがてコール音は途切れ、無音が訪れる。
「……え、出たの?」
『…………出てますけど』
「もしもしくらい言ってもよくね?」
『お互い様じゃね?』
確かに。
『何』
「この前、相談した件、答えが出たから皆に話そうと思って。……この後、昼くらいに家行ってくんないかなーと」
『……了解』
ぶっきらぼうな返事が聞こえて、私は少し驚いた。フォース君のことだから、「嫌だけど」くらいは言われるかと思ったけど。
「案外、あっさりだね」
『何? これに拒否権あんの』
「ないけど、一発目は拒否るかなって」
『ねぇなら言うな。めんどくせぇ』
と、一方的に切られた。
機嫌悪くね? いや、いつも通りか? まあ、前に相談したい連絡した時とほぼ同じようなやり取りだった気もするし……普通、なんだろうか。
……なんて考えてみるものの、顔が見えないフォース君とのやり取り以上に本音が見えないものはない。ここであれこれ思案するのも無意味ってものだ。
私が二人に連絡した理由は一つ。
明けの明星への入団の是非を伝えるため。
チームに関わる事柄だ。一人で決めて、勝手に話を進めるわけにもいかない。
「……さて、と」
連絡を取り合っている間に自力で起きてこないかと淡い期待をしていたのだが、泡沫へ消えてしまったようだ。未だにぐっすりである。
私はティールを見下ろし、静かに拳を振り上げる。そして、無表情のまま一気に振り下ろした。
「いい加減に起きろ」
「……ってぇぇ~!?」

文字通り、ぶん殴って叩き起こしたティールと共に食堂で朝食を食べていた。
その食事で私はギルド入団の話を持ちかけた。
「決めたの?」
「まあ、とりあえずは、ね」
その話をするためにはルーメンさんを捕まえる必要がある。先程の朝練中に話しかければよかったのだけれど、とてもそんな雰囲気ではなかったし、アルドアーズさんの件もあって、すっかり忘れてしまっていた。
「この後、アルフォースさんを探して、ルーメンさんの予定を聞いてみよっかなって思ってる」
「そっか。じゃあ、ぼくも一緒に行くよ。特に予定もないから」
「うん。今日くらいは仕事なくていいっしょ。昨日、頑張ったんだし?」
「……別に昨日頑張ってなくても、仕事なくていいよねって言うよね?」
「え……ソンナコトナイヨー?」
これに対して、ティールから「嘘つけ」と聞こえた気がしたが、聞こえないフリをした。聞こえていなければ、どうということはないのである。
慎ましい朝食を終えた私達は、そのまま部屋には戻らずにアルフォースさん探しへと移る。
探すなんて言ったけれど、ぶっちゃけ、アルフォースさんの居場所に心当たりがある。
「技師部屋に向かおう。アルフォースさん、よくそこにいるし、いなくてもアンナさん辺りが居場所知ってるっしょ」
「そうだね。……ま、また、怪談話にならなきゃいいけど」
以前、ティールと訪れたときはアンナさんに怪談っぽい何かを聞かされたっけ?
人の居場所を聞いているのに、怪談話になる理由が分からない。大丈夫だろう。流石に。
謎にアンナさんの怪談話に怯えるティールを連れ、技師部屋前まで到着した。扉をノックし、部屋に入ってみると、アンナさんの姿をすぐに発見できた。そして、部屋に備え付けあるソファの上で寝ている人物も見つける。仰向けになって、顔には何かの技術書を乗せているが、恐らく、アルフォースさんだ。
「おや、ラルとティールじゃないか!」
私達に気づいたアンナさんが振り返りながらゴーグルを外し、にっこりと笑う。
「こんなところへどうかしたのかい?」
「ぼくら、アルフォースさんに用があって来たんですが……もしかして、休憩中ですか?」
「ん? アルかい?……まあ、叩き起こしていいよ」
えっ!?
気持ち良さそうに寝ているのに、いいんですか。休憩中なら尚更いいんですか!?
「構わないよ。どうせ、アルからは一時間後には起こしてくれって言われてたしねぇ? その約束の一時間ももうすぐ経つし。……あ、どうせなら、ラルの電撃で起こしたって構わないよ?」
ひゃあ!? い、いや、流石にそれは……ちょっと?
「そうかい? アルのやつ、寝起き悪い時があるから、んなこと気にしなくてもいいと思うけどねぇ?」
にやにやと楽しそうに笑う。アンナさんが気にしなくても、私は気にしますんで。
けど、普通に起こして起きなかった時は……考えなくもない、けど。
そうならないことを願いつつ、私はアルフォースさんの側まで近寄り、そっと体を揺すってみる。
「アルフォースさ~ん? 約束のお時間、経ったみたいですよ~?」
「……ん~」
もぞもぞと動きだし、ゆっくり上体を起こす。しかし、まだ寝ぼけているのか、せっかく起こした体もゆらゆら揺れまくっていた。
「だ、大丈夫……なの? これ」
「ど、どうだろう? えーと、アルフォースさーん?」
ティールの呼び掛けにアルフォースさんはそちらを向く。が、目が全く開いていないから、起きているとは思えなかった。
「ん……ティール、く、ん?」
「へ? あ、はい。ティールです……?」
「……くぁ」
会話にならないな、これ。
「おやおや。今回はそっちかい? 心配はいらないよ。数分もすれば勝手に目を覚ます」
苦笑を漏らしながらアンナさんが教えてくれる。そして、アンナさんは再び作業に戻ってしまった。
アルフォースさんは未だに眠そうに目を擦り、意識がはっきりしていなさそうだ。これはもう少し待つしかなさそうか。
「あぁ、そうだ。ラル、ティール、立ってるのもあれだろう? その辺の椅子にでも座って待ってな」
あ、はーい……
アンナさんに言われ、近くの椅子に座って待つ私達。そして、アンナさんの宣言通り、数分で目を覚ましたアルフォースさんがこちらへ近寄ってきて、照れ臭そうにお礼を言ってきた。
「お恥ずかしいところをお見せしました。アンナ先輩の代わりに起こしてくれてありがとうございます」
眠気覚ましのコーヒー片手にアルフォースさんは私達の向かいの席に座る。
「いえ、それはお気になさらず。……ぼくらの方こそ、お休みのところごめんなさい。アンナさんがいいって言ってましたが、本当に起こしてしまってよかったのですか?」
「はい。元々、気分転換に休んでてそのまま寝てしまっただけですから。それでお二人は僕に用事があって来たんですよね? 親方へのアポの相談とかですかね?」
あらやだ、察しがよい。流石、ルーメンさんの補佐役。
アルフォースさんの言葉に私は頷くと、彼は懐から手帳を取り出し、パラパラと捲っていく。
「そうですね、早くても今日の夕方くらいならお時間は取れるかと。ご用件は?」
「ギルド入団の話を」
「分かりました。では、今日の夕方、ラルさん達が来ると親方にお伝えしますが、よろしいですか?」
「それでお願いします」
私が頷くのを確認したアルフォースさんは、さらさらっと手帳に何かをメモすると、パタンっと閉じる。
「はい。承りました♪」
「ありがとうございます」
「いえいえ。これが仕事ですから」
答えはすでに心に決めているとはいえ、改めて伝えるとなると緊張する。まだ時間はあるし、その前にチームの皆に話す必要もあるのだけれど……それはそれだな。
「では、私達はこれで失礼します」
「はい。わざわざありがとうございました……と、いけない。少しよろしいですか?」
椅子から立ち上がり、そのまま部屋を後にしようとしていた私達は互いの顔を合わせ、首を傾げる。
? なんだろ?
「こんなことを言うのも変ですが、今日のツルギとツバサは昨日の疲れが残っているみたいで。だから、その、ツルギの襲撃はないと思ってくれればと」
あぁ、そういう。
「流石のツルギも今日は来ないんだな」
「つまり、久々の平和な一日が過ごせるわけだ」
「あってもなくても変わらないくせに」
まあ、それはそう。あってもなくても、私の生活になんら支障はない。
「あはは……いつも息子の相手をしてくれてありがとうございます」
いつもにこやかな笑みを絶やさないアルフォースさんだけれど、この時は困ったように笑った。



~あとがき~
なんか雑な繋げ方で申し訳ねぇっす!
私が適当に付け足したやつのせいです!! すまねぇっす!!

次回、チーム会議。
スカイメンバー大集結です。声だけ出演多めですけど。一応、ここで全員が出ることになりますね。わーい。

夏休み中、ラル達以外のキャラ(フォースとかステラとか)は出番ないやろって思ってたけど、案外、フォース君が出てきますね。まあ、多分、ここら辺が最後です。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第322話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
女神祭の夜も終わり、スプランドゥールの夏も終わりに近づきます。
そう! まとめ回! なんかそんなんです!!(適当)
ラル「これだってテーマがないからって適当すぎか」
ティール「だねぇ~」


《L side》
なんか色々あった女神祭の翌日。
そんな日くらいはゆっくり寝ればいいものの、どうにも身に付いてしまった習慣とやらは簡単には抜けないようだ。朝練の始まる少し前に目が覚めてしまった私は、動きやすい服に着替え、中庭へと移動する。
「朝練なかったら無駄足だわぁ」
とはいえ、着替えている最中にルーメンさんが犯人と思われる爆発音らしきものが聞こえた気がしたので、普通にやっている可能性はある。
『朝練とやらは知らぬが、古兎の気配はあちらからする』
雷姫が指差すのは中庭のある方角だ。
じゃあ、いつも通りやってるのか。あの祭りの後だというのに、元気なものだ。……いや、人のこと言えないか。私も朝練あればやって行こーって思ってるもんね!?
と、どうでもいいことを考えながら中庭までやって来た私が目にしたのは、普段の朝練風景とは少し違うものでした。
簡潔に言えば、二つ、違う部分がある。
一つ、普段より参加人数が少ない。
二つ、アルドアーズさんの姿がある。
一つ目の理由はなんとなく予想できる。何度も言っている、今日が祭りの翌日ということだ。ギルドの面々は街の警備、祭りの運営、準備、後片付け等々の仕事を数多く請け負っていた。それらの疲れやらなんやらが影響し、朝練に参加できない人達がいるのだろう。
元々、参加の有無に強制力はないから、休みの人がいたとしても咎められることもない。
問題は二つ目だ。なんでこんなところにアルドアーズさんがいるのだろう? 昨日、お祭り気分で街中を探索するとか何とか言っていた気がするが。……借りていた部屋がここだった、のだろうか? それにしても、朝練に姿があるのはおかしいし、何より、だ。
「なんで埋まってるの、あの人」
頭以外を地面に埋められているアルドアーズさんの側にはルーメンさんとリラン(犬ver.)がいて、ルーメンさんは謎に怒りのオーラを発している。
もしかして、アルドアーズさん、夜遊びしすぎたんだろうか。だから、ルーメンさんに怒られてる、とか? いやぁ、まさかそんなねぇ??
「よお、ラルじゃねぇか。おはよう」
「あ、おはようございます。カズキさん」
たまたま近くで素振りをしていたらしいカズキさんが私に気がついたのか、わざわざ近寄ってきてくれた。木刀片手に首を傾げつつ、「どうかしたか?」と問いかける。
「あ……と、その、あれが気になって。ルーメンさんとアルドアーズさんは何を?」
「ん? あー……まあ、見ての通りだ。親方によるアルドアーズ様はっ倒しタイム」
いや、謎すぎますが?
「俺も詳しくは知らん。けど、アルドアーズ様が発端で、お嬢に関する変な噂が海の国で流れてんだとさ。それを知った親方がアルドアーズ様を仕置きしてるって訳。ま、噂だけじゃなく、朝帰りしてきた件も含めてっぽいけどな」
つまり、ツバサちゃんの噂を流したアルドアーズ様を叱るため。ついでに、今日の朝帰りも含めて、お仕置きしているのか。
昨日の夜、ルーメンさんの部屋に行った時、アルドアーズさんがどーのと仕事をしていた。もしかして、それも関係しているのか?
「……アルドアーズさん、朝帰りだったんですね。その、お元気ですね……?」
ルーメンさんと大して年齢は変わらないはずだし、大体六十代くらいだろうか。見た目や仕草、話し方等々整っているから、そんなおじいちゃんにも見えないのだけれど。
「おう。それはギルメン、ぜーいん思ってっから」
あ、そうなんだ~……ははっ……
「ルゥ!? いきなり私を埋めるとは乱暴が過ぎるぞ! 親友と言ってもやっていいことと悪いことがあるだろう」
一応、アルドアーズさんも不服らしく、ルーメンさんを見上げながら抗議の声を上げた。そんなアルドアーズさんに対し、ルーメンさんは冷ややかな目を向けるばかりだ。
「ほう? ツバサのことで変な噂を流した挙げ句、堂々と朝帰りをしたお主がそれを言うか?」
「朝帰りは……まあ、なんだ。久々に羽目を外し過ぎたかの~……とは思っておるけども」
「嘘を付け。アズの場合、隙あらばいつも羽目を外すじゃろう」
「そんなことはない。自重するときはするぞ。……ではなくて、噂? それに関しては初耳だが」
「ほーう? この手紙を見ても同じことが言えるのかのぉ?」
袖口からひらりと出したのは、何の変哲もない白い封筒だ。ルーメンさんは封筒から一通の手紙を取り出すと、しゃがんでアルドアーズ目の前に付き出す。
「あぶっ……近い! これでは読めんぞ。少し離れて……えっと?」
少しの間、二人の間に沈黙が流れる。そして、全て読み終わったらしい、アルドアーズさんが「はあ?」と声を上げる。
「な、なん……? ツバサとティールの関係がなぜ、祖国でそうなっておるんだ」
「ワシが知るわけないだろうが! 大方、お主がタチの悪い冗談を言ったんだろう? それを聞き付けたどこぞの貴族共がいらん尾ひれを付けて吹聴した結果じゃろうが」
「いやいやいや!? 確かにツバサとティールの話はしたが、その時、私の周りには女の子しかおらんかったぞ。貴族なんて知らんが!」
「それこそワシが知るか! 自分で調べろ!! 全く、セラの時といい……お主の減らず口はロクなことにならんのぉ!?」
「いやぁ~……それに関しては何も言えんなぁ」
「だろうな! というわけだ、リラン!」
「あんっ!」
散々口喧嘩した結果、アルドアーズさんが悪いという結果に至ったのだろう。まあ、所々しか聞いてなかった私もアルドアーズさんが悪いと思っちゃったけど。
ルーメンさんはびしっとアルドアーズさんを指差す。
「そこいる馬鹿者の頭を思う存分、好きにしてよい!」
「あう~んっ!」
元気よく返事をしたリランはキラリと目を光らせたかと思えば、埋まっていて身動きのとれないアルドアーズさんの頭目掛けてじゃれついた。
「ぎゃーーー!!?? う、動けない相手に、リランはひ、卑怯……! なー!! やめんか、リラン! し、死ぬ!!」
「あんあんあーーーん!」
リランは遊んでほしい一心でアルドアーズさんにじゃれついているだけだ。まあ、逃げも防御もできないアルドアーズさんはされるがままだった。
「その……なんだ? 慣れろとは言わねぇが、大体祭り後の親方とアルドアーズ様ってあんな感じなんだよな。覚えとけ」
覚えたからと言って、このなんとも言えない気持ちはどうしようもないんだけれど。
「毎年、あんなんなんですか?」
「リラン使うのは流石になかったと思うぜ? いつもは朝帰りのアルドアーズ様を引っ捕らえて、フィアとクルスを使って小言を言う程度だからな」
毎年、朝帰りではあるんだなぁ。
……だからだろうか。朝練に参加する他の人達は大して気にする素振りもなく、いつも通り訓練に勤しんでいる。
私もそれに倣うべきか。それにアルドアーズさんには申し訳ないけれど、私ごときがあの間に入って、助けられるとも思えない。
「あら、二人とも、おはよう♪」
「おはようございます、セラフィーヌさん」
次に現れたのはセラフィーヌさんとその夫、アルフォースさんだ。その二人が現れたのをきっかけにカズキさんもぐっと背伸びをして、ひらりと手を上げる。
「じゃ、俺も朝練再開させっか。じゃあな、ラル」
「はい。お話に付き合ってくれてありがとうございました」
アルフォースさんも誰かに何か用事があるのか、セラフィーヌさんに一言二言残して、その場を後にする。残されたのは私とセラフィーヌさんだけだ。
「さて、と。今日も始めましょうか。いつも通りで大丈夫かしら?」
「あ、はい。お願いします」
「うふふ♪ 分かったわ。……そうそう、始める前に雫くんのことなんだけれど」
? 何かあったのかな。いや、何かあったら、こんなのんびり話さないか。
「さっき部屋を覗いてみたら、ツバサとツルギ含めてみーんなぐっすり寝ていたの。もしかしたら、起きてくるの、いつもより遅いかもしれないわ」
「分かりました。昨日、舞を頑張ってましたから。それがなくても、お祭りで大はしゃぎしてましたし、問題ないですよ」
どうせ、うちのティールもまだ夢の中だし。どれだけ遅くなっても、しーくんがお寝坊さん認定はしない。
「ふふ♪ 昨日は三人とも楽しそうだったものね♪ 子供達が起きた後、部屋に朝食も運ぶから、その辺りも気にしなくて大丈夫だからね?」
「わっ! そうなんですか!? 何から何までお世話になってしまって申し訳ないです」
「あら、いいのよ。気にしないで? 毎年してることだもの」
そ、そうなんだ。至れり尽くせりだな、本当に。じゃあ、この後の朝ごはんもティール叩き起こして二人で食べなきゃか。
「そうだ。私からも一ついいですか? セラフィーヌさん」
「あら、何かしら?」
「ルーメンさんが怒ってる理由になった噂って何か知ってますか?」
この質問にセラフィーヌさんは頬を手を当て、何やら考え込む。そして、少し困ったように笑う。
「知ってはいるけれど……ごめんなさい。その話は後ででも大丈夫かしら? 細かなことが決まり次第、お父様がラルちゃんとティールくんに伝えると思うから」
ふむ……? 今は話せないってことか。
噂のことで何かの動きがあって、今伝えても二度手間になってしまうのかもしれない。それなら、大人しく待つか。この場にはティールもいないしね。
「分かりました。では、改めて今日もよろしくお願いします」
「えぇ、よろしくね♪」
私が雷姫を構える一方、遠くの方ではリランが引き回しの刑をアルドアーズさんに執行していた。
いつの間に地面から出してもらっていたんだろう。まあ、なぜか簀巻き状態なのだけれど。
……うん、これも気にしたら駄目なんだろうな。無視だ、無視!



~あとがき~
マジでロクな目に遭ってないな、アルドアーズ。まともな姿を見せられる日は来るのだろうか、このおじいさん。

次回、仲間に連絡したり、人探ししたりする。
なんか適当なまとめ方ができなかったけど、そんな感じです。よろしくお願いします!

プロットが上がってくる前に相方から「やべぇよ、この仕置き話だけで半分いきそうだよ(震え声)」という言葉を聞きました。
その言葉通り(?)豪勢に一話丸々っと仕置き話になりました。このジジコンビが楽しそうで何よりだなと思ってます。私はな。
そして、仕置きされる原因となった海の国での噂の全貌は近いうちに明らかになります。少々お待ちを~♪
まあ、ここまで読んで、ルーメンおじいちゃんの思考を想像できる人ならば、大方の予想できそうな気もしなくはない。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第321話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
ティール&ルーメンによる夜会話。この二人の会話は何回目なんすかね~?
まあ、どの夜会話に共通するのはティールのお悩み相談室になってるってところかな!(笑)


《Te side》
ルーメンさんは子供に寝物語を聞かせるような優しくゆったりとした声で、とある昔話をし始める。

─その昔、陸の国には民に慕われていた王族がいた。その王族は女神の血を引き継ぐ者達で、代々、心が清らかで優しい性格の者が多かった。
とある代の王女と王子の姉弟は、街中で花屋を営んでいた兄妹と出会い、各々が恋に落ちた。王女と花屋の兄、王子と花屋の妹……互いが互いを想い、愛を誓い合った仲となる。
それを知った民は喜ばしいことであると四人を祝福した。しかし、一部の貴族らは庶民と王族が共になることをよしとせず、やがて、花屋の兄妹に圧力をかけるようになってしまう。
花屋の兄妹は王族の姉弟に心配させまいと、貴族の執拗な嫌がらせにも耐え続けていた。その嫌がらせの事実を知った王族の姉弟からは普段の温厚な笑顔は消え、怒りに震える。そして、声を荒らげ、貴族らにこう言い放った。

「大切な人達も守れないで何が王族だ! 何が神の血を引き継ぎし者だ!
こんなことを続けるのであれば……私達は王族をやめる!!」

王族の姉弟は代々国宝として受け継がれてきた王笏を取り出し……─

パンッ!
突然響いた破裂音に思わず、肩を震わせる。
音の正体はルーメンさんが手を叩いたというなんてことのないものだった。
目を細め、にっこりと笑うルーメンさんが再び口を開く。
「……と、王族の姉弟は王笏をへし折り、揃って王族の身分を捨て去った。花屋の兄妹と一緒になるために庶民になったと言われておるよ」
受け継がれてきた国宝を壊してまで、愛する人と一緒になることを選んだのだ。
『? どしたの、てぃー?』
『なになにー? なにかあったー?』
こいつらを壊してまで、庶民になろうとは思わない。確かに鬱陶しいし、いなくなればいいのにって思うことも少なくない。けれど、ぼくには、無理だ。
まあ、話に出てきた王笏とぼくの持つこいつらとじゃ、状況が違いすぎるから、比べようがないけれど。
「その昔話を聞く限り、二人の親である王と王妃はどこにも出てきませんでしたね。反対とかしなかったんでしょうか?」
あくまで、国を仕切っていたのは王と王妃なはず。しかし、王族をやめると啖呵切ったのは、その子供達。子供にそんな権利があるとも思えなかった。
「当時の王と王妃も貴族達の横暴には困り果てておって、行く行くは身分制度を廃止しようとしていたらしい。そこに子供らの提案……特に反対もせんじゃろ」
な、なるほど。
話にもあるように、王族らは温厚な性格で平和を望む人達ばかりだったんだろう。
「うむ。そのため、このような陰湿な事件はいい印象がなかったんじゃろう。……まあ、今語った話は簡潔にまとめたもので、本来はもっと複雑な状況じゃったと思うがの。しかし、これがきっかけで陸の国から王族がなくなったのは事実じゃ」
ルーメンさんはお茶を一口飲み、一呼吸置く。そして、穏やかな笑みを浮かべた。
ティールもこの話のようにせよ、とは言わん。じゃが、身分を気にせず、お主の気持ちをラルに伝えてもよいと思うぞ。第一、身分云々を気にするのなら、セイラさんも元は普通の女性、旅人じゃった。二代続けて、伴侶が平民でも問題はなかろう♪」
まあ、それはそうかも知れない。
母さんが何を思って、どんな覚悟で父さんと一緒になったのか知らない。その逆も然り、だ。父さんは強いから、どんなことがあっても母さんを守れる自信があった……んだろうか。それとも、ルーメンさんみたいな後ろ楯があったから?
……その両方、かな。多分。
「心配はいらんぞ? 何かあったら、ワシも手助けしよう♪ 乗り掛かった船じゃ」
「……心強いです」
完全に不安が消えた訳じゃない。今でもラルとの関係が壊れるのは怖いし、嫌だ。ラルの本心を聞くのも、怖い。
……でも、このままもよくはないのも分かる。
「いつかは分かりませんが……ラルに思いを伝えます。必ず」
「うむ♪ そうするがよい」
「はい。ありがとうございます。お話してくださって」
「構わん構わん♪ その様子じゃと、ワシらの手助けなく、ラルに想いを告げられそうじゃな? 鈍感にぶちんライトとは雲泥の差じゃの~♪」
そこまで言われてしまう父さんはどうやって母さんと結婚したんだ。謎すぎる。
「──とーちゃくっ!」
こちらの話が終わるのと、ラル達の話が終わるのはほぼ同時だったんだろう。ミルティアとラルが転移魔法で部屋に戻ってきた。
「ただいま~♪ ティールくん、ラルちゃんを貸してくれてありがとね♪ おかげでゆっくり話できたよ!」
と、ミルティアは満面の笑みを浮かべる。隣にいるラルはどこか考え事をしているのか、大した反応はない。
「え、えーっと、はい。おかえりなさい?」
別にラルはぼくのものではないし、なんなら強引に連れていかれたわけで、貸した感覚もない。強いて言うなら、勝手に持ってかれた……って感じだったけどね?
「ミルティア様、おかえりなさいませ。ラルとはゆっくりと話せましたか?」
「うんっ♪ 十分にね!」
ルーメンさんにも笑顔を向け、大きく頷いて見せた。しかし、次の瞬間、両手で口を多い、大きな欠伸をした。
「おや……時間切れですかな?」
「ん~……みたいだねぇ~?」
ルーメンさんの言葉に返答をする間も小さく欠伸を漏らし、眠そうに目を擦っている。そこでようやくラルが顔を上げ、隣のミルティアをちらりと見た。
「……時間切れ?」
「うん。あくまで、この体の持ち主は『ツバサ・ケアル』だから。私はその体を借りているだけだし、活動限界はどうしてもね~」
「じゃあ、仮にまた会おうと思ったら、来年ですか?」
ぼくの質問にミルティアはゆったりと頷く。
「そだね♪ あと数回はこっちに出てこれると思うから。ま、私としては話したいことぜーんぶ話したし、満足なんだけど。……ってことで、ルーメン。話したいことがあれば、また来年だね~♪」
「そうですな。またお目にかかる日を心よりお待ちしております」
その言葉にミルティアは頷くと、パチンっと指を鳴らして、─目はミルティア本来の色のままだが─涼しげな甚平を着た、本来のツバサの姿に戻る。
そして、部屋の扉まで移動し、ぼくらの方を振り返ると、ひらひらと手を振ってきた。
「それじゃあね♪ 今後も私の転生体である『ツバサ』と仲良くしてくれると嬉しいなぁって思うっ♪」
「こ、こちらこそです!」
「……まあ、約束なので」
「うふふっ♪ では、おやすみなさい。ラルさん、ティールさん」
最後の最後でミルティアではなく、ツバサとして振る舞った彼女は、笑顔で部屋を出て行った。
不思議な人だった。本当に、不思議な人だった……
残されたぼくら三人にしんとした空気が流れる。誰が喋るでもなく、何かをするでもない、なんとなく気まずい空気が辺りを包み込んだ。
しかし、それも長くは続かなかった。沈黙を破ったのはルーメンさんだった。
「二人とも、色々あって疲れたじゃろ? 時間も大分経ってしまったし……今日はもう部屋に戻って休みなさい」
あ、と……もうそんな時間か。
「今日はお時間ありがとうございました。失礼します」
部屋の時計を確認したラルはペコリと頭を下げる。ばくもそれに倣い、ソファから立ち上がり、感謝の気持ちを込めて頭を下げた。
「いいんじゃよ♪ ゆっくり休むんじゃぞ~♪」
にこやかに手を振るルーメンさんに見送られながら、ぼくらは親方部屋を後にした。

自分達の部屋に戻る道中、ぼくらは言葉を交わすことはなく、ただただ歩いていた。
ラルが何を考えているのかは分からなかったけれど、ミルティアとの話を終えてから、どうにも口数が少ない。何を言われたのか、話したのか気にはならない訳じゃなかったけど、聞いても話してくれるとも思えない。
そして、ぼくはぼくで、ルーメンさんに言われたことを思い出していた。
身分なんて気にせず、自分の気持ちに正直になれ、と。
「……素直、ね」
「え?」
「何でもない」
「あ……そ、そう?」
ぼくが何か口走ったのかと思った。何でもないならよかったけど。
「……嘘。何でもあるわ。……ねぇ、ティール」
「え、何?」
ラルが歩みを止め、ぼくも止める。
彼女がいつになく真剣な瞳を真っ直ぐぼくに向けるから、思わず、肩に力が入ってしまう。
「前の……ルーメンさんに誘われた件、本当に私が決めていいの?」
「それは……ギルド入団の話?」
ラルは真剣な表情のまま小さく頷く。
ぼくは安心させたくて、笑顔を見せながら頷いた。
「ぼくの答えは前と変わらないよ。ラルがどんな選択をしても反対はしないし、君に付いていく」
「……そう」
「うん」
「ありがとう。改めて聞きたかっただけなの。……帰ろっか」
ふっと息を吐いたラルは薄く笑い、再び歩み始める。その後を少し遅れて、追いかける。
ここを発つまでに答えを出さなければならない。まだ数日あるけれど、ラルの中で答えが決まったんだろうか?
……大丈夫。どんな答えでもぼくは君といる。それだけは変わらないよ、ラル。



~あとがき~
長かった祭りも終わり。

次回、祭りの後の朝。

ちょいとおさらいをば。知らなくても大丈夫なレイ学世界観のお話です。
この世界には大まかに三つの国が存在します。陸、海、空。多分、それ以外にも小国がいくつもあったりしてそうではあるけど、大きなところってのはこの三つになります。
そのうちの陸だけが王権主義国家ではなく、各地に長、領主(その土地のリーダー的な人)が中心となり、地域を守り、複数人で国の運営をしてます。
ルーメンさん(……ついでにプリンは)その複数人で国の運営してるというメンバーの一人ってことっすね。どっかで言った気がしてるけど。
んでもって、これもどこかで言った気がするけど、海は名前だけめちゃ出てるブライトがトップ。空は……今後出る予定もないけど、クラウの父、ルフトって人です。出る予定もないけど、ルーメン、ブライト、ルフトは顔馴染みという謎設定があります。活かせる日は来るのか。

最後に。
少しずつではありますが、ラルとティールの関係性も変わってくるかなぁと。
明確に変わるのはまだ先なような気がしますけれど、のんびり温かく(?)見守ってくださればと。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第320話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でのんびり待機してる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ラル&ミルティアとの会話パートが終了しました。今回は残された二人、ティール&ルーメンコンビです。
いやはや、二人きりはひっさびさですね!


《Te side》
「! ラル!?」
ぼくの声にこちらを見やるラルの顔は、戸惑ったような表情を浮かべていたものの、そのままミルティアによって、どこかへ連れていかれてしまった。
い、いきなりすぎる……!
「大丈夫じゃよ、ティール。ラルはミルティア様と話をしに行っておるだけじゃ。そのうち戻る」
と、落ち着いた様子でお茶を飲む。
ルーメンさんは、最初からこうなるって分かっていたんだろうか? いや、多分、さっきの言葉からして、どうなろうともミルティアの行動は止められないと達観していたに近い?
「ルーメンさんはラルが連れてかれるって分かってました?」
「ふむぅ……ラルの話を聞いて、ミルティア様はラルと話したいとお考えなのでは……というところまでは分かっていたかの。……じゃが、あのように強引な手段を用いるとは思っておらなんだ」
そこはルーメンさんも予想外だったってことか。
ルーメンさんは困り顔で自分の髭をそっと撫でる。
「いやはや、ミルティア様とは過去に二度、話をしておるが……ワシが思う斜め上の行動をここまでなさるとはなぁ。本人は大層、楽しそうではあったがの」
そう言われて、先程までのミルティアを思い出す。
悪戯と称しツバサとして入ってきたり、ルーメンさん達との出会いだったり、半ば強引にラルを連れ出したり……その、何て言うか。
「話に聞いていた以上に天真爛漫と言いますか……嵐みたいなお方ですね」
おとぎ話の女神と同一であると誰が思うのかってくらいギャップがある気がする。
「否定はせんよ~……それにワシもあの方の子孫。どうも勝てる気がせんのじゃよ。……じゃから、ワシらはここで二人の帰りを待つとしようぞ」
「あはは……ですね」
二人の行き先に心当たりもないし、あそこまでするってことは、ミルティアは本当に二人きりを望んでいるってことだ。
いざって時は、雷姫さんだってついているし、問題ないだろう。
……うん、大丈夫。多分。
「ほっほっ♪ 今宵はチェスはやめておこうかの。その様子じゃと集中できんじゃろ?」
「……そ、うですね」
大丈夫だってのは分かってるつもりけど、どうしても気になってしまう。こんなんじゃ、勝負なんてできっこない。
ルーメンさんの言葉に甘えさせてもらい、今日はお話だけにしてもらおう。
「ごめんなさい。そうして貰えるとありがたいです」
「構わんさ♪ 早速なんじゃが、ワシから気になることを聞いてもよいかの?」
「あ、はい。ぼくで答えられることなら」
「祭りの様子を見てても思うたんじゃが、ツルギはティールに随分と懐いとるようじゃなぁと思うてな」
ぼくとしてはそこまでじゃないと思っているんだけど、他人から見たらそう見えるのか。
でも、まあ……ツルギを捕まえたときもラルがツルギを弄ってたし、実際にそうなのかな。比べるのも変な話だけど、ツバサがラルを慕うみたいな関係ってこと……?
「みたい、ですね? ぼくとしてはラルとも仲良くなってほしいな~って思わなくもないんですけど」
初めはツンツンしているように見えたし、なんなら、ラルの仲間ってことで好かれてもなかったぼくは仲良くなれたし。そこでツルギにも人懐っこいところもあるのだと分かった。
ラルとツルギはお互いの出会いと第一印象が最悪だったけれど、今後の展開としては仲良くなることも不可能では……ない、と思いたい。
「うーむ。それに関しては諦めた方がよいかもしれんの」
「えっ」
「見た目は種族のこともあり、父親であるアルフォースに似とるんじゃが、性格に関しては幼い頃のセラのよう似ててなぁ」
あ~……っと? それって、まさか?
幼い頃のセラフィーヌさんはぼくの母上を姉と慕うくらい懐いていたと聞く。で、父上に対する評価って確か……そこまでよくなかったような?
「うむ。セラもライトを嫌ってはおらんし、別の意味では慕っておるんじゃろうが……如何せん、大人となった今でも事ある毎にライトにつっかかるんじゃよ。そんなセラに似たツルギじゃ。……その先は分かるじゃろ?」
現状、仲良くなる可能性は低い、か。
ラルも口ではツルギと仲良くしたい的なことを言ってても、ツルギの反応がいいからって彼を挑発し、からかうのをやめない。まあ、ラルのあれは愛情表現の一つみたいなところあるけど、今のツルギにそれは分かんないよなぁ。
「可能性として、ツルギが成長し精神面でも大人になれば。或いは……なんてことはあるかもしれんの。まあ、こちらも望み薄ではあるか~」
「あ、はは……そうですよね」
仮にラルが挑発行為をやめたとして、仲が進展するかと言われると、それもまた怪しいところである。ラルが何もしなくても、ツルギは何かしてくるからだ。襲撃がいい例だ。始まりはラルの一言でも、未だに続くのはツルギの執念深さとも言える。
「おぉ、そうじゃ。ツルギと言えば」
「? 他にも何か?」
ぼくは記憶の中に該当するようなものがあったっけと考えながら、脳内検索をしながらお茶を飲む。
うーむ。……特にヒットしないんだけどな。何かあったっけ?
「ツルギ本人から聞いたぞ? お主、ようやく自分の気持ちに気づいたようじゃな~♪ ラルに対する気持ちをな」
「ぶっ!?」
口に含んでいたお茶を思わず吹き出してしまい、おまけに盛大に噎せてしまう。
な、なな、なぁぁぁ!!??
「おっと。大丈夫かの?」
「っげほ。は、はっ…………だ、だい……大丈夫、です。ってあぁ!? ごめんなさい……っ!」
動揺からか滅茶苦茶、噎せまくって乱れた息を整えた。そして、ようやく我に返ったぼくは慌てて、テーブルに溢れたお茶を布巾で拭き取った。
ツルギ、なんつー爆弾をルーメンさんに渡してるんだ。やめて!? 渡っちゃいけない人に渡ってる気がするよ!?
ラルがルーメンさんとの交渉に慎重になるのも分かる気がする。こういうことがあるからですね!?
……いや、何言ってるんだろう、ぼく。落ち着け?
「すまんすまん、そこまで慌てるとは思わんかった。いきなりすまんかったの?」
「い、いえ……だ、大丈夫です。こちらこそごめんなさい。大袈裟に反応してしまって」
まあ、ぼくの心情的には相応な反応でもあるんだけれど……うぅ、なんだ。滅茶苦茶恥ずかしいな。えぇっと、話はなんだったか。
ようやくラルに対する気持ちに気づいたとかなんとかって話か。……これかぁ。
「……あ、えっと……そう、ですね。気づいた……です、はい」
自分の頬が熱くなるのを感じて、思わず俯きながら頷いた。そんなぼくにルーメンさんはどこか生暖かい目で「ようやくかぁ」と呟いた。やれやれ、遅いんだよ、みたいな雰囲気である。
……ぼくってそんなに鈍感だろうか?
『てぃー、きづくの、おそい!』
『いーちゃとおなじくらい!』
「スイ、セツ……いきなり出てきてなんなんだ」
どこから現れたのか、スイとセツがひょっこりと出てきて、ぼくの周りを飛び回り始める。いや、マジでどっから出てきた? 部屋に置いてきたはずなのに、なんでいるんだ?
「二人の言う通りじゃの。何を今更~♪」
「うえぇ!?」
「お主の両親……というか、特にライトの方はティールと同じ……いや、それ以上の鈍感さを発揮しておったからの。セラやカズキらが散々お節介せねば気づかんくらいじゃ」
散々、お節介……それは超がつくくらいの鈍感さ、かも? いや、人のこと言えないかもしれないけど。
「まあ、あの二人の馴れ初めは今は置いておくか。気になるなら、当人達に聞くがよい」
……聞きたいような、聞きたくないような。複雑な気持ちだ。大体、親の恋愛話をどんな気持ちで聞けばいいんだろう。そもそも、普通の会話するよりハードル高くないか?
まあ、ラルに相談したら、快く協力してくれそうだ。そういうの、好きそうだし。……いや、それはそれでどうなんだろう。友人の親の付き合うきっかけ話を聞かされる心情って……! 気まずくない!?
……いやいや、母上とガールズトークをしてしまうラルのことだ。なんら問題ない気がしてきた。ぼくの親友、こういったことに関しては心が強い……!
「して、ティールはラルに思いを伝えんのか?」
その問いにぼくはすぐに答えられなかった。ふと視線をテーブルに落とし、じっと考える。
ぼくはラルのことが好きだ。それは一人の女の子、女性として、好きってやつだ。それは分かっている。……でも。
「なんて言われるか怖いってのもありますけど、それ以上に王子であるぼくがラルに告白なんてしたら……今の関係が壊れちゃいそうで、それが一番怖い」
親友として、相棒として隣にいたラルがぼくの告白でどう思うか、どう思っていたのか……それを知るのが怖い。結局のところ、ラルに嫌われるのが嫌で、親友や相棒でいられなくなるのが嫌なんだ。
「ふむ、そうか。……はっはっはっ! お主も若いの~!」
あっれぇ? 真剣な話をしていたつもりなんだけどな~?
ルーメンさんが一頻り笑って、目尻の涙を拭った辺りで呼吸を落ち着かせる。
「いやはや、すまんなぁ……こうも歳を取るとつい、な?」
関係あるのだろうか、それ。
「そうだなぁ……ワシから言えることは一つじゃ。立場や身分などは気にせず、ティールの思うままに幸せを掴めばよい。昔、王家だったケアル家は自分達の幸せのために身分を捨てた過去もあるしの~」
その話、ツルギから聞いた気がする。でも、詳しい話は聞けずじまいになってしまったような。
「おや。ならば、この機会に少しだけ、陸の国が王権主義国家でなくなった理由を話そうかの」



~あとがき~
ラル&ミルティアも二話使ったんだもん! この二人も使いますよ!!

次回、ティールとルーメンの夜会話。後編。

こっちは和気藹々としてますね。まあ、経験値が違うからな! 伊達に毎夜、話し込んでねぇぜ!(笑)

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第319話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
ミルティアさんとラルの対話パート。
今回で終わる……お、おわ……る? と思います?
ラル「なんで疑問っ!?」
ミルティア「あはは♪」


《L side》
私がこんな質問をするとは思ってなかったのだろうか。ミルティアは驚いたような表情を浮かべ、何かをするでもなく沈黙した。
私としてはずっと気になっていた。
世界のため、家族のため、その選択をしたんだろう。きっと、それしかなかったから。
でも、最愛の家族と、パートナーと離れるのは嫌だったはずだし、恐怖なんかもあったと思う。
それなのに今はこうして明るく振る舞い、あたかも笑い話のようにしてしまうのは、なぜなのか、と。
ミルティアはふっと表情を元に戻し、街の夜景へ視線を移した。
「そうだねぇ……当時はそれしか方法がなくて、恐怖も存在してたよ。……でも、ラルちゃんなら分かるんじゃないかな。こういう時、何を思って、どうしたらいいのかってさ。そういう感性は似てると思うんだよね、私達」
今度は私が黙る番だった。
私だったら何を思うのか。どうするのか。
死への恐怖。
大好きな人達を置いていく悲しみ。
信頼してくれているパートナーへの罪悪感。
色んな負の感情を抱きつつも、それらは押し殺してしまう。そして、私一人で実行するんだろう。
皆を助けられるなら、私の命なんて安いものだと言い訳をして。
「例え、私がいなくなって悲しむ人がいたとしても、それ以上に救える命があるのなら。……何度時間が繰り返されても、私は同じ選択をする。……って、私は思ってたんだけどね。あの人は違ったみたい」
「……あの人?」
ミルティアは小さく笑い、くるっと私の方を振り返る。そこにはどこか寂しさが窺えて。
「ラルちゃんも視たんじゃないかな? 私と一緒にいたアルマだよ」
「顔までは視てないですが……黒マントの」
「そう。……ちょっと昔話してもいいかな?」
私が黙って頷くと、ミルティアは「ありがとう」と小さく笑う。
「私が世界に命を捧げた日。……その日、私は一人で身を投げたの。それで丸く収まるはずだったんだけど、予想外というか、予定外なことが起きちゃって」
予定外を起こしたのが、アルマ?
「そ。私が身投げした時、彼も落ちてきたの。流石の私もアルマのこと、落ちながらだけど叱っちゃった。……でもね」
先程まで憂いを帯びていた瞳は今はなく、パッと嬉しそうに微笑んだ。
「あの人、『お前のいない平和な世界で苦しみながら生きるのなら、俺はお前と共に死を選ぶ』って言うんだよ? 馬鹿だなぁって思った。けど、同時に嬉しくなっちゃった。あの時代で、私と彼は一緒にいられなかったから」
ミルティアの考える幸せとアルマの考える幸せは違ったのだろう。
ミルティアはアルマに生きてほしいと思っていた。だからこそ、一人で犠牲になる道を選んだのだから。けれど、アルマはミルティアのいない世界に幸せはないと思ってしまったんだろう。
だから、共に死ぬ選択をした。
それにミルティアは呆れつつも、許した。
それはきっと、ミルティアもアルマと共にいたかったから。……きっと、最期の瞬間まで。
それを叶えられた二人は幸せだっただろう。
ハッピーエンドではないにしろ、二人にとってはトゥルーエンドではあって。
仮に、私はそうなったら、受け入れられるんだろうか。私のした最善で最悪の選択に誰かが伴うことになってしまったら。
……あぁ、それはきっと、私にとってのバッドエンドになる気がする。
一人が二人になった時点で、私の考え得る一番のバッドエンドとなってしまうのだろうな。つくづく、自分勝手で身勝手な考えだと思うけれど。
「? ラルちゃん?」
「……何でもないです。変な質問してごめんなさい」
「ううん。なんでも答えるって言ったからね♪ 後は何かあるかな?」
「いえ。今のところはありません。ありがとうございました」
「いえいえ♪ もし何かあれば、来年また会いに来てくれたらお話しできるよ。なんなら、消えた私だから話せる天界のあれこれとか話しちゃうかもよ~♪」
滅茶苦茶、面白がってるな。言うつもりないだろう。仮にあったとしても聞きたくない。平穏な生活を送るってさっき決めたはずだ。好奇心がないとは言わないが、平和が一番。
「遠慮します。神様に殺されたくないので」
「ありゃ、残念♪」
クスクスと面白そうに笑い、本当に冗談で言っていたんだろうなと感じる。
……冗談、だよね?
「じゃあ、そろそろルーメンのところに戻ろっか~♪……って言いたいところなんだけど、最後に私から一つだけ」
「まだ、何か?」
「んーとね? これはアドバイスかな? 本当のところ、これを話すために二人になったと言っても過言じゃないかもね!」
え、あ、え? そこまで重要なアドバイス? しかし、私はミルティアに相談したいようなことも、した記憶もないけれど。
「まだ『ツバサ』として半年もない付き合いだけれど、そこでラルちゃんとティールくんを見てきた私からのアドバイスです」
「は、はぁ……?」
なぜ、ここでティールの名前が?
ミルティアは真剣な眼差しを私に向け、ピシッと指差した。さながら、何かを教える先生みたいに。
「ラルちゃんはもっと素直になった方が言いと思いますっ」
「す、素直……?」
「そ! 特にティールくんとの仲について! だって、ラルちゃん、ティールくんのこと好きだよね?」
そりゃあ、数年一緒に過ごしてきた仲間だし。好きじゃなきゃいないし、探検隊も組みませんけど。
「違うちがーう! 仲間とかパートナーとかじゃなく、一人の男の子として! 恋愛の話っ!」
「…………はあ!?」
真面目な話かと思ったら、そういう方向!? なぜ! 今!! ここで!?
流石に戸惑いが隠しきれず、数歩後退りしてしまう。そんな私を見て、ミルティアはクスクスと楽しそうに笑った。
「……ふふっ♪ いきなりごめんね? でも、ラルちゃんは本音を隠すのが上手だから。恋愛に限らず、もう少し素直になってもいいのかなーって思ったの♪」
初めからそう言えばいいよね……? 恋愛をジョブで持ってくる意味とは?
「ま、すぐに素直になれって言われてなれるものでもないと思うけどね? でも、少しでもいいから、ラルちゃんが素直になれば……私が視た未来よりも早く幸せになれれるかも?」
私が視た未来……ミルティアが“夢見”で何かを視た?
何を。どんなものを。
話の流れからすると、私の幸せな未来を視たみたいだが……単純にそんな未来の話を引き出すのにティールの名前を出す必要はない。
……と、なるとだ。待て? 待ってくれ。
幸せな未来。幸せな未来をどう定義するかにも風景は変わるが、恋愛を初めに話したとなると、その未来に私といるのは……?
そこまで考えて、頬が熱くなるのを感じた。
なんて馬鹿げた妄想をしているんだ。会話の流れからそう推測できるってだけだ。確証はないだろう。
「あの……私の何を視たんです」
「ふふっ♪ これ以上は私から言えないので秘密でーす♪」
否定させろ! この考えを!
ミルティアは心底楽しそうに笑い、ここへ来た時みたいにぎゅっと私の腕を掴む。
「よぉし! 今度こそ、ルーメンのところへ帰ろ~う♪」
「え、あ、ちょ……!?」
パチンっとミルティアが指を鳴らすと、ふわりと浮遊感が体を包み込む。
嘘だろ! ここで帰るの!?



~あとがき~
とりあえず、幸せな未来は約束された。よかったな、ラル。

次回、一方その頃。
久々にティール&ルーメンコンビ。

ラルはきっとミルティア&アルマの最期みたいな展開になったら、嬉しく思う前に、自分を責めるんだろうなと思います。こうなってしまった原因はなんなのかとか。どこで間違えたんだろうとか。
つかまあ、ラルの場合、そうならないように準備するんだろうけど。その辺、用意周到というか、卑怯ですからねぇ(笑)

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第318話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でお話ししてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
ミルティアさんのあれこれを聞いた後、ラルさん、ミルティアさんに拉致られました。そんなこんなで、女の子同士の秘密のお話回。
まあ、変なことはないので大丈夫大丈夫。


《L side》
次に目を開けた時、私はミルティアと共に外にいた。ほんの少し、暑さの残る夏の夜の下で、私は街外れにある丘の上に連れてこられたらしい。ここからはスプランドゥールの街が見下ろせる、そんな所。
その近くには湖と崖のような高い丘のような、そんなところもあって。
「なぜ、こんなところへ」
「……そうだね。ここなら、父様やウィルくん達にバレないだろうし、何より私の思い出の場所の一つだからかな?」
私からそっと離れたミルティアは街を一望できるところまで歩み寄り、こちらに背を向ける。
そうだ。街ではミルティアの気配を辿って、アルフさんとウィルさんが来ているんだったか。二人はいつも逃げられていると言っていたけれど、ミルティアが意図的に逃げていたから?
「……私に話ってなんでしょう?」
「ん~……大したことじゃないんだけどね」
と、私の方を振り向き、はにかみながら答える。
「改めて、あなたと……ラルちゃんとお話ししたいなぁって思ったの」
「……はぁ」
なんで私なんだという疑問は消えない。
それに、話とは何かという疑問については答えになっていないように思う。
「急かさない急かさない♪ ちゃんと順番にお話しするよ。……まず、私が話したいなって思った理由は、洞窟で話したと思うんだけど、未来で……ラルちゃんにとっては現代か。要は、永い時を超えて私の過去を視る子が現れるなんて思わないでしょ? そんな子とゆっくり話してみたいなって思ったの」
単なる興味本位で私と二人になったってことになりますが??
「それにね、お礼もしたかったの。父様とウィルくんに伝言、伝えてくれたでしょう?」
……確かに、それは私と二人にならないと言えないか。あ、いや、待て?
「……洞窟で話した?」
洞窟での会話……もっと言えば、私と精神世界(?)で話した内容を把握しているのか。
「うん♪ さっきも説明した通り、私は魔素、魔力を通じて物事を見聞きできる。加えて、ラルちゃんが触ったあれには私の魔力が含まれているもの。ちゃあんと把握しているよ? もちろん、ラルちゃん達が今日、たっくさん楽しんでたことも、ね?」
……洞窟はともかく、今日の様子も見られていたのか。別に変なことをした自覚はないけれど、この妙な恥ずかしさはなんなのだろう。
「……うふふっ♪ 安心して? 事細かに見ていたというよりは、夢心地っていうのかな。そんなふわふわっとした感じで見てたから!」
何をどう安心しろと。何がどう違うというのだろう。……いや、この件について深く追及するのはやめておこう。変に広げてしまうと、こちらに被害がありそうだ。
私は気持ちを切り替える意味でも軽く咳払いをして、ずっと気になっていたことを聞いてみることにした。
「なぜ、過去の人物である貴女が未来を知っていたんですか? 未来で私が貴女の過去を視ると」
「それはね。私もラルちゃんと似たような能力を持っているからだよ」
「私と?」
ミルティアは小さく頷くとパチッと片目を閉じ、そっと人差し指を口許に持っていくような仕草をした。
「神と人の間に生まれたからなのかな。……私は『夢見』って能力を持っているの」
私と似た能力。
そして、夢、か。
過去や未来を夢として見る的な……?
「惜しい~♪ 過去のことは見れないの。『夢見』はね、未来の出来事を夢として見るの。いつ、誰が、どんなことが未来で起こるのか……それを夢として見る能力だよ」
なるほど。
その能力で私が未来で過去を視ると知ったわけか。だからこそ、過去で私と話すための準備もできたわけだ。
「そういうこと。元々は世界のために準備していた『女神の祝福』を作っていた過程で、その未来を知ったの。そして、その未来通りになるようにと細工を施したってわけ♪ まあ、その未来を見る前から予感みたいなものはあったんだけれど」
? というと?
「うーん。説明しにくいんだけどね? なんだろ。そこにいるわけがないんだけど、誰かいるような……そんな感覚? 違和感みたいな。そんなのを洞窟内で感じてたの。で、後日、夢見でラルちゃんのことを知って、納得したんだ~♪」
私の能力はあくまでそこにあった─或いは、起こるだろう─出来事を視るだけ。つまり、過去や未来に私の意識を飛ばして、その場で見届ける訳ではない。だから、当時のミルティアが私の存在を感知するなんてあり得ない。
実際は勘違いか何かだと思う。しかし、ミルティアはその違和感の正体が私であったと疑わなかった。だからこそ、こうしてミルティアと話ができている。
「もちろん、その時は夢見に出てきた女の子が来世で仲良くなる子だ……なんて分からなかったけどね?」
そこまで分かっていたら怖すぎますけど?
ミルティアはにこっと微笑み、「ちなみに」と話を続ける。
「この時代では……って言えばいいのかな? この子の親、アルフォースが同じ能力を持っているんだよ。そして、この子も将来的には能力を引き継ぐの」
剣技大会でアルフォースさんに耳打ちされた言葉の真意はそういうことか。
アルフォースさんが神の血を継いでいるとは聞いていない。となると、能力を持って生まれたのは偶然なのか。ツバサちゃんが引き継ぐのは……偶然と片付けていいかは分からないけれど。
「ま、ツバサが使えるようになる頃、私の意識は完全に消えて、融合しちゃってるけどね」
「……え?」
「ん? 特別、変なことはないよ。だって、私はもう死んでるんだもん♪ 今は、色んな条件が重なって出てこれているだけで『いつか』消える存在ってだけだよ~♪」
自然の摂理に沿うのであれば、そうなのだろうけれども。いや、だからと言って明るく言うことなのだろうか。こうして存在しているのも奇跡みたいなものの手前、とっくに割り切れてるのかもしれないけども!
私が不思議そうな顔をしていたのだろうか。ミルティアは真っ直ぐな瞳でこてんっと首を傾げる。「どうかした?」みたいな顔をしている。
「……ナンデモナイデス」
そんな顔されてしまえば、私から何かを言うのも変な話だ。反応に困るとはこのことである。
「私の能力の話はとりあえず終わりかな? 話が脱線しちゃったけど、改めて。……父様とウィルくんに伝えてくれてありがとね」
……あぁ、そうか。その話をしていたんだったか。
何度も言うようだが、私は特に何かをしたつもりはないし、何度も感謝される程のことはしていない……つもりなのだけれど。
「……貴女の口から直接伝えた方がよかったのでは? すでに死んだ存在で、消える運命にあるのなら、天界の掟とやらに縛られる必要もないのでは」
この質問にミルティアは困ったように笑う。
「うーん。まあ、それもそうなんだけれど……でも、天界のおじさま達は私は意識すらも存在していないことになっているの。それなのに父様やウィルくんに会いに行ったら、私の意識が存在してるってバレちゃうかもしれないでしょ? そうなったら、この子に迷惑がかかっちゃうよ」
それは……かつて、貴女が禁忌を犯した女神だから?
「うんっ♪ そして今は、普通のどこいでもいる可愛い女の子だしね?」
先程までの困り顔はどこへやら。自信たっぷりに笑い、くるりと回って可愛らしいポーズを取る。
そんなことをしても、今の姿は『ミルティア』で普通のどこいでもいる可愛い女の子『ツバサ』はどこにもいないんだけれど。
私からの同意が得られなかったのが不思議なのか、ミルティアは小さく首を傾げつつも、曇りのない笑みを見せた。
「あれれ? 私もツバサも可愛いでしょ? 一応、今代の私も可愛いって自覚してるつもりなんだけどな~♪」
「それ、自分で言うことではないです」
「そっかな~? ラルちゃんもよく言ってたと思うんだけどな~?」
「あれは悪ふざけに決まってんでしょうが」
否定してくれる人物がいて成立する定番のボケみたいなもんだよ! 鉄板ネタ的な!? いや、堂々とネタって言いたくないけど!!
ミルティアはなぜかニヤニヤと笑ったまま、「そっかそっか~♪」と納得してしまう。
そして、一呼吸置き、ふわりとした笑顔に戻る。
「……とまあ、どんな形であれ、父様やウィルくんに私の気持ちを伝えられてよかった。これで未練なく消えられる」
「それは」
「まあ、もうちょっとここにいるけどね! 多分、この子が成人するまでは、こうして出てこれると思うし~♪」
意外とおるやんけ。少ししんみりしてしまった私がアホみたいだよ!
哀愁漂う雰囲気は一瞬で消え失せ、ほんわかムードへと塗り変わってしまった。
こういうところはルーメンさんみたいだな。……いや、ルーメンさんがミルティアに似ているのか。
「さて! 私が話したかったことはこれで全部かなぁ~……もし、ラルちゃんから何かあれば聞くよ?」
「私が貴女に……?」
「うん。なんでも聞いて♪ 人生の先輩としてでも、女神としてでも。なんでも答えちゃうっ」
なんでもは怖いな。ポロッと知らなきゃよかった新事実もこの人の口からなら、簡単に飛び出してきそうだ。
「……私に加護をかけた理由を伺っても? アルフさんから伺いました。貴女から加護を貰ってるって」
「うん♪ 洞窟でお話ししたときにね~♪ 与えた理由かぁ……未来のため、かな?」
未来?
「うん。なんかラルちゃん、トラブルいっぱいなんだもん。ラルちゃんに何かあったら、この子が悲しむでしょ?」
しれっとさらっととんでも発言したなぁ!? 「トラブルいっぱいなんだもん」!?
ミルティアから貰った加護は、悪い神から身を守るものだってアルフさんに教えられたけど。将来、そんな悪い神とやりあう日が来る可能性があるって思われているってことだよな?
……い、嫌だぁ。平穏に過ごそう。神様に楯突くような未来を歩まないように頑張ろう。
「まあ、あんまり気にしなくて大丈夫だよ? 保険みたいに思ってくれれば」
保険、ね。
「……後、一つだけいいですか」
「もちろん!」
「この時代の貴女……ミルティア様は世界のために自身の命と引き換えに光……魔素を作り、争いを終わらせたと伝わっています。その時、死ぬことの恐怖は感じなかったのですか?」



~あとがき~
なんか……謎にミルティアさんにペース持ってかれてる感。私まで振り回されてる気がしてきたぞ?(笑)

次回、ラルとミルティア。
あとちょっとだけ続くんじゃい。

今のところ、ラルが悪い神様と対峙するシナリオは存在しないです。一応、平穏な生活を送れる……はず。多分。恐らく……きっと?

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第317話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわちゃわちゃしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ツバサちゃんに眠っていたミルティアがぽぽーんっと出てきました。
ってことで、そんな女神様とわちゃっと話します。多分。


《L side》
そう言えば、ルーメンさんは最初からこうなると分かっていて放置していたんだったか。
ミルティアの声を私が聞いたのは知らなかったみたいだが、それを知ったルーメンさんはこうなると分かっていたはず。それなのに、なぜ私達を騙そうと……いや、騙そうとしていたミルティアに乗っかったのか。
私はここまで黙りなルーメンさんを見る。
「ルーメンさんも楽しんでた口ですか。この女神の悪戯に乗っかったと?」
「すまんすまん♪ いやぁ、何。ミルティア様がツバサのままここにいらっしゃったから、これは芝居に付き合わねばと思うてな? こちらとしても、ラル達がどんな反応をするのか見てみたかったしの~♪」
この先祖に、この子孫ありってか!?
わざわざ、あんな悪戯に乗っかる必要性あったか!? ふっつーに真面目に話を進めてもよかろうに! つーか、神様と一緒になって私らで遊ぶってなんなんだよぉぉ!?
と、心で滅茶苦茶に文句をぶつけたい衝動に襲われる私。もちろん、胸の内をさらけ出すような失態は犯さないけど。
「ふふっ♪ 流石、私の子孫。会ったのはこれで三回目だけど、こうして臨機応変に付き合ってくれるなんてね♪」
三回目。
先程も一年ぶりって言っていたし、頻繁に顔を出している訳ではないのか? そりゃ、ミルティアは実際は死んでいて、この世にいない存在だ。こうして出てくる方がおかしいけども。
「うむ。ラルの言う通り、本来、前世の意識が表に出るなぞあり得ん。今世は女神ミルティアではなく、人の子『ツバサ』なのじゃからな。だからまあ、こうしてミルティア様が現れるのは今夜のみ……厳密に言えば、女神祭の夜。ツルギとツバサが『神子神楽』を舞った夜に現れるのじゃ。それも、体の持ち主であるツバサが眠りについたときにな?」
ツバサちゃん達が神子ではなかった頃は表に出ていなかったのか。それなのに、今はこうして表に出てくるようになった、と。
「憶測でしかないのだが、『神子神楽』で発生する『女神の祝福』に原因があるとワシは思うとる」
『女神の祝福』……あの光の粒か。
「あそこで使われる花は、元々は私の魔力で作られた魔力石。私が死んで永い時が経ったけれど、今でも花には私の魔力が微量ながら含まれているの。……それが祭りの日、あの瞬間、一ヶ所に集まるでしょ? だから、ツバサの中に眠る私も集まった魔力に感化され、ひょっこり出てきちゃうってことかな?」
んな、可愛らしいもんなのか?
いやそれはいい。とりあえず、二人の言いたいことは理解した。
あの場で一番多くの女神の魔力に触れるのは、観客……ではなく、舞を踊る神子の二人。ツバサちゃんとツルギ君だ。だからこそ、神子となってから、ミルティアが現れるようになったのだ。
「しかし、初めの年は驚いたものです。まさか、ケアル家の始祖、ミルティア様にお会いするとは思いもせんでした」
「それは私もだよ。借りた体とはいえ、こうしてまた、地に足をつけるとは思ってもなかったもの」
と、二人は楽しそうに笑い合った。
私とティールは互いに顔を見合わせ、思わず苦笑を浮かべる。
「……やっぱ、先祖って似るのか。こう、纏っている空気が同じに思えるんだけど」
「うん。……やりにくいったらないわ」
「それは……ドンマイ?」
うっせ。
えぇい! 私が投げ掛けてしまったとはいえ、いい加減に本筋に戻そう。
ミルティアがここに現れた理由は恐らく、去年も一昨年もルーメンさんに会っているから。だから、「ルーメンの部屋で」という伝言を私に残したのだろう。それはいい。
じゃあ、なんで私とそんな約束をしたのかである。
「お楽しみのところ申し訳ないのですが、話を元に戻してもよろしいですかね」
私の呼び掛けに似た者同士の二人はこちらを振り返った。
「なぜ、私にあんな伝言を残したのですか。まさか、あれも私に対する悪戯だったですますおつもりで?」
「あぁ~♪ もちろん、そんなことないよ?」
ミルティアはにっこりと笑いながら否定すると、私の隣まで近寄り、ぐいっと腕を引き、立ち上がるように促してきた。私はそれに逆らうこともできず、ソファからよろよろと立ち上がり、そのままぴったりとくっついてくるミルティアを見る。
「え……あ、の、ミルティアさん?」
「……うふふっ♪」
え、何。その笑みはなんだ。なんだ、その含み笑いは!?
「ルーメン。女の子同士、秘密のお話ししてくるね?」
「はあ!?」
聞いてないけど! 何、秘密の話!?
戸惑う私をよそに、ルーメンさんは肯定するように大きく頷いた。
「どうぞどうぞ。時間の許す限り、お話ししてくだされ」
それを許可するのはルーメンさんではなく、私では!? 嫌だが!? ティール、ヘルプ!!
私の無言の訴えにティールも困ったように笑う。多分、期待するなってことだ。
まあ、分かる。多分、これ、どうにもならんやつだもん。
「えーっと……秘密の話ってことは、ラルはミルティアさんと二人きり……?」
「ん? 大丈夫だよ? 怖いことしないから。それに、別にラルちゃんを食べちゃおとか、乗っ取っちゃえとか思っていないし、しないから。だから、ティールくんも安心してルーメンと待ってて?」
「あ、と。そういう心配はしてないです」
素直かっっっ!!
ルーメンさん以上にペース握ってくる人とタイマンで話したくない! 怖い! なんか、怖い!!
「ラル、ごめん。従うしかなさそう? 君が望むなら、ついてってあげたいけど……ぼくは邪魔っぽいし」
「うむ。……今年のミルティア様はラルと話をすることを望んでおられるようじゃ。……こうなったミルティア様は意地でも意思を曲げんお方。身を任せるが吉じゃよ」
ルーメンさんが諦めろという表情を浮かべる。まさか、あのルーメンさんがそんな表情をするとは思わなかった。……ますます、怖いんですが?
「あんまり時間は取らせないって約束するよ。……じゃ、ラルちゃん。早速行きましょうか♪」
「い、行く? 行くってどこ─」
言い終わる前に突然の浮遊感が体を襲う。そして、視界が眩い光に包まれ、ここではないどこかへ連れていかれると理解した。
「! ラル!」
私が最後に見たのは、私の名前を呼ぶティールの驚いた顔だった。



~あとがき~
短いんですが、きりがいいんで終わる。

次回、ラルとミルティア。

なかなか強引なお方らしいミルティア様。
ラルもそれを察知したのか、二人で話すのは嫌らしい。が、結局は連れていかれました。
マイペースすぎるのはラルの苦手なタイプの一つです。嫌いとかそういうのではなく、単純に話が進まないのと、自分のペースに引き込みにくいので、苦手だなって思ってます。
プリン親方とかルーメンさんとかがそれに当たります。けど、苦手度としてはプリン親方が上だと思われ。話が通じないんで(笑)
……あとは、自分の土俵に持っていきにくいって理由でイグ兄さんもあれかもしれん。ラル的には。

ではでは。