satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第172話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でのんびりしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ケアル邸に到着して、すぐに寛ぎ始める男子二人でした。
さてさて、今回もケアル邸からお送りしますよー!


《L side》
ひんやりしていて気持ちいいシーツのせいで、自宅以上にのんびりし始めるティールと、予想以上の部屋の広さに興奮気味なしーくん。
そして、そんな二人に頭を抱える私。
「……すみません。うちの二人が」
「大丈夫ですよ。お外、暑いですもん。ここの室温、あんまり下げてないんですけど」
これから外に出るからだろう。急激な温度変化は体に悪いし、不調の原因にもなる。その判断は正しいと思うが、それと人様の家でだらだらしていいことにはならない。
アラシ君が自分の飲み物を一口飲み、首を傾げた。
「普段からきちっとしてるティールが珍しいな?」
「暑いの駄目なんすよ、私の相棒は」
「そ、そんなんで仕事は成り立つのか……?」
「大丈夫。その辺は調整できるから……涼めるときに涼むのが一番だよ~」
アラシ君の疑問にものんびり答えるティールにアラシ君は少し心配そうである。彼も一応はプロなので、そのときになれば、かっちりスイッチを切り替えてくれる……と思う。
「ラルさん、その子が雫くん、ですか? じいじの話にあった……?」
「あぁ、うん。……そうだった。今回が初対面だもんね。しーくん、こっちおいで。お兄ちゃん達にご挨拶」
「うんっ!」
ソファに座らず、サロンのあちこちを見て回っていたしーくんがぱーっと駆け寄ってきて、三人に向かってペコッと頭を下げる。
「雫です! よろしくおねがいしますっ!」
礼儀正しく挨拶をするしーくんを数秒だけ見つめる三人。ちらちらとお互いアイコンタクトを交わしたものの、すぐにいつもの明るい笑顔を見せた。
「よろしくね。私はツバサ。で、こっちがアラシと、レオン……それから、リランだよ」
「今日から二週間、よろしくな?」
「よっろしくー……ま、諸事情あって、俺は最初の一週間いないけど~」
「あうあうっ!」
人懐っこいリランはもうしーくんを気に入ったのか、尻尾を振って、じゃれあっていた。流石にアラシ君やレオン君のときみたいな激しくさはないものの、しーくんに構ってアピールをしまくっている。
「まっちろドラゴン! よろしくねー!」
「あんっ♪」
しーくんを気に入ってくれて何より。
遊び始める一人と一匹は置いておいて、私はメアリーさんがいつの間にか運んでくれたミルクティー片手にツバサちゃんに話しかける。
「一緒に行くって話だけど、いつ出発するの?」
「んと、今、カルタム達が馬車に荷物を運んでいるので、それが終わり次第ですね」
「スプランドゥールって隣街とは言うけど、ここからだと距離があるよね。馬車とはいえ、時間がかかるんじゃない?」
ようやく暑さから多少の復活をしたティールが、全体重をかけていたソファから体を起こした。そして、目の前のアイスコーヒーを手に取る。
「あ、それは大丈夫です。途中にある大型移動魔法陣使って、ショートカットしますから。今から出ても、お昼前には到着します♪」
「ごほっ……ソ、ソウナンダァ……」
びっくりしすぎて思わずむせてしまう相棒。気持ち分かる。私もミルクティー飲んでたら、同じ反応をしていただろうから。
大型移動魔法陣とは、各地に点在する移動専用の魔法陣という、そのまんまの意味である。ただ、大きいし、魔法式が複雑とか、なんとかの理由で一回の利用には多額の使用料を支払う必要がある。少なくとも、一般人がほいほい使えるような額ではなかったはずだ。
だからまあ、私達が初めての場所に行こうとすると、バッジで行けるところまでワープして、近くのダンジョンを突破し、ショートカット……みたいな方法で長距離移動をする。これはこれで、裏技みたいな移動方法ではある。だって、一般人が探検隊バッジなんて持っているわけがないからだ。
なので、一般人が行きたければ、のんびり何泊かしつつの馬車移動か、運び屋にぴゅーっと運搬してもらうか、探検隊を護衛につけるか……という方法を取るしかないのである。
……お金持ちこっわい。
「ねー、レオンお兄ちゃん!」
「ん~?」
リランをわしゃわしゃしまくっていたしーくんが何か聞きたいことでもできたのか、レオン君の名前を呼ぶ。
「なんで、お兄ちゃん、せーふくなの? ラルたちといっしょ、いかないの?」
「あ~……それはねぇ」
この時期に制服であり、一週間というワードから何となく想像はつく。言い淀むレオン君に代わり、アラシ君が肩をすくめながら口を開いた。
「こいつ、赤点四つで補習なんだよ。本当なら夏休みなんだけど、成績悪すぎて、勉強しに行くんだってさ」
「おべんきょか。たいへんだ」
四つて……レオン君、ヤバイな?
しーくん的には、赤点四つのヤバさよりも、お勉強あるの大変だねという感想らしく、再びリランと遊び始める。しーくんの疑問は制服の理由であって、赤点四つはどうでもよいのだ。
しかし、同じ学校に通う私達はそれを聞き、「ふーん」と軽く流せなかった。私もティールも少しの呆れと同情を込めた表情を浮かべる。
「ちょちょ!? それをこんなところで言いますか、アラシさん!?」
ストレートに暴露されたレオン君は珍しく、慌てた様子でアラシ君に詰め寄る。しかし、アラシ君は冷めた表情で、レオン君を避ける。
「いやいや、すぐバレるし、隠す必要ないじゃん。つか、お前が悪いんだろ? 夏祭りじゃ仕事あるのにさ」
「な、夏祭りまでには補習終わるし……大丈夫だろ?」
「ったりめーだ、馬鹿! 追加で補習受けたりしたら、俺に怒られるんじゃなくて、ルー爺に叱られるんだかんな!? 分かってんのか!?」
「わ、わかってる……それは何としても回避しなきゃいけない案件だからな……!」
補習のラストに確認テストとやらがある。これに合格しなければ、もう一週間お勉強頑張ろうね、という不名誉なお手紙をいただく羽目になるのだ。そうなってしまえば、スプランドゥールで行われる夏祭りには到底間に合わない。地元であるお祭りではないのだ。ちょっと行ってくるね! で行ける距離ではないし、行ったところで、次の日の補習にも間に合わない。
「参考までに聞かせてもらいたいんだけど、レオンが赤点取った教科ってなんだい?」
これを聞いて、なんの参考にするのかは分からないけれど、まあ、きっとただの興味本位でティールが質問をする。これに答えたのはレオン君……ではなく、ツバサちゃんだ。
「えっと……一般教養のやつですね。『外国語』に『数学』……あとは『近代歴史学』に『科学』です」
「うわ。全部、一年生共通の教養科目じゃん……」
ティール、その哀れみの目をやめろ!!」
あらら? 歴史に詳しそうなレオン君が歴史学を落とすとは。考古学研究部所属なのに。
「ラル、考えてみろよ。歴史は歴史でも、近代だぞ? レオンが好きなのは考古学だ」
「……近代に遺跡は出てこない?」
「そゆこと。レオンが赤点取って当然の科目ってことだ」
「なっ!? それは俺を馬鹿にしすぎだろ!? 俺だって真の実力を発揮すれば、赤点回避なんてちょちょいのちょいだってーの!」
「……ほー? じゃあ、その実力とやらを解放すれば、今後の赤点はないと?」
にやりと皮肉混じりに聞くアラシ君に、レオン君はうっと言葉につまり、そっと視線を外して明後日の方向を見る。この行動の意味は、「それは保証できません」の意味だろう。それを察したらしいアラシ君も、これには盛大なため息をついた。
ここで、コンコンっとノック音が聞こえ、扉が開けられる。ケアル家に仕えるカルタムさんがそっと入室し、恭しく頭を下げた。
「お嬢様、出発の準備が完了しました」
「分かった。じゃ、そろそろ行きましょうか♪ ま、まあ、レオンは学校……だけどね」
「くそー! 赤点めー!!」
「お前が取ったんだろ。……自業自得じゃねぇか」
どうやら、今回の旅前半戦は、レオン君抜きとなるらしい。ムードメーカーみたいに明るい彼がいないのも新鮮かもしれないな。
後半戦は……来れるといいね。レオン君……?
「そういえば、ラルさん達のお荷物は?」
「あぁ、荷台じゃなくて手持ちで入れるよ。あれしかないし」
二週間分の量とは思えないバッグの大きさではあるけれど、この世界には異次元収納の機能のついたバッグがあってだね……そういうことです。
私達三人の荷物はそれぞれが持ち─しーくんのはティールが持ってくれているけれど─、ツバサちゃん達と玄関ホールへと向かう。
今回の同行者には、メアリーさんと姿を見せないエデンさんがいるらしい。カルタムさんや他のメイドさん達はお留守番だそうな。まあ、あちらはあちらでお世話係がいるのかもしれないし、大勢の執事さんやメイドさんを連れ歩く必要もないのだろう。
「メアリー、お嬢様を頼みましたよ」
「はい! お任せください、カルタム様!」
「リランも。利口にしているのですよ」
「わふっ!」
もふもふよ中型犬姿のリランが元気よく吠える。が、利口にするという約束が守られるかはちょっと分からないけれども。
カルタムさんやメイドさん達、補習組のレオン君に見送られ、私達は馬車に乗り込んだ。そして、目的地であるスプランドゥールへと向かうのだった。



~あとがき~
いざ、出発!

次回、スプランドゥールへ向かう馬車の中であれこれ話します。

今回、前半戦はレオン君不在です。
彼の代わりに雫がいる感じですよ。あっち行けば、他にも人はいるし……なんとかなるやろ!
とはいえ、明るくアラシ君を茶化してくれるレオン君がいないのは、個人的に寂しいなと思います。アラシ君視点、楽でいいかもしれませんが(笑)
……レオン君が復活できるかは今後の展開次第ですね!

ではでは。