satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第295話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でお話ししてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、三人から五人へパーティーが増え、わちゃわちゃ感が増えました。ネタ切れ感も否めませんが、大丈夫……もうそろそろ真面目な話を始めるんで……!
ということで、ラルとウィルの話です。


《L side》
私とウィルさんは夏祭りの喧騒から離れ、人気のない小さな公園へと移動した。
お祭りで賑わう大通りから少し離れただけで、こうも静かになるのだから、どれだけ通りに人が集まっているのかが分かる。
少しの木々と茂みに囲まれたこの空間なら、他の人もやってこないだろう。
「で、話ってなぁに? こんな静かなところに俺を呼び出し……はっ! これが噂の告白イベント!? 駄目だよ、ラルちゃん。ラルちゃんにはティールくんがいるだろう!?」
「何一人で勘違いして突っ走ってるんです。何、告白イベントって」
「あはは♪ ごめんごめん、冗談だよ。少しは場を和ませようって思ってさ。改まって話がしたいなんて言うってことは、真面目な話なんだろうなーって?」
分かってて悪ふざけに全振りするんですね、ウィルさんらしいですけれども。
にこにこと笑顔を絶やさないウィルさん。本当に真面目な話をすると思っているんだろうか。
「……話の前に確認しても?」
「うん。何かな」
「かつて、地上に降り立った癒しの女神、ミルティアのことは知っていますよね」
「……ん。知ってるよ」
一瞬、真剣な表情を見せるものの、それはすぐに消え、にこりと笑顔に戻る。
「懐かしいね、その名前。俺、彼女のことはティッピーって呼んでたの」
ティッピー……相変わらず、変なあだ名つけるな。でも、あだ名をつけるくらい、親しい間柄でもあったのだろう。
「ティッピー、かなりのお転婆でね? 世話するこっちも色々と大変だったよ」
「世話? ウィルさん、ミルティアを世話してたんですか?」
この質問にウィルさんは素直に頷く。
「あの子、他の神とは少し事情が異なってて、特殊な生まれなんだ。まあ、そういう理由もあって主に俺が世話してたかな?」
ウィルさんの口振りから、ミルティアが神の実子であることは確定なのだろう。しかし、その親はウィルさんではない、か。
仮にウィルさんがミルティアの親なら、この状況下でもっと興奮気味に昔話してきそうだもの。弟のように可愛がるフォースくんの話ですら、滅茶苦茶興奮するのだ。実子だとしたら、その比ではないはず。
でも、そんな雰囲気はウィルさんから感じない。なんなら、憂いすら感じる。
「……それで? ティッピーの名前が出てきたってことは、それ関連の話?」
「えぇ。全てをお話しすると長くなりそうなので、簡単に話しますね」
私は『奇跡の洞窟』で知ったこと、視たものを全て話した。
女神の涙のこと。
ミルティアとアルマのこと。
そして、能力を通じて、ミルティアの思念体らしいものと会話をしたこと。
それら全てを静かに聞いたウィルさんは、苦笑しつつも驚いた様子で手で口を覆う。
「うっそ、ティッピーと話したの? まあ、なるほどね。ティッピーなら、あり得なくはないか……“予知”を使って、ラルちゃんに過去を視られると分かってたんだな」
“予知”?
「……あぁ、ごめん。今のなし。聞かなかったことにして」
ウィルさんの真剣な声に触れてはならない領域なのだと悟る。所謂、神様の禁忌なのだろう。
じゃ、聞かなかったことにしよう。
「まあ、ここまでは単なる経緯の説明でしかなくて。本題はミルティアから伝言を預かってるってところです」
「伝言……? ティッピーから? え、俺宛?」
「じゃなかったら、ウィルさん指名しないですって。……私には意味が分からなかったんですけど、ウィルさんに伝えれば分かる、と。……『私は幸せだったよ』だそうです」
ミルティアからの伝言を伝えた瞬間、ウィルさんはにしては珍しく、かなり驚愕したらしく、数秒の間、言葉を失っていた。
そして、ようやく安心したような表情を浮かべ、一言、「そっか」と小さく呟いた。
「ティッピー、あんなことがあったのに、『私は幸せだったよ』……か。それなら、俺も安心したよ」
一頻り、一人で納得したかと思えば、くつくつと笑い始める。
「……あぁ、でも、流石だな。俺がこのタイミングで知るって把握してたんだろうな。本当にあの子ってば」
あの、ウィルさん、そこそこ情緒不安定だけど、大丈夫かな。伝えて大丈夫だったんだよね?
どう踏み込んでいいのかも分からず、言葉を探していた私だったが、そんな私にウィルさんは優しく笑いかけてきた。
「ありがとう、ラルちゃん。伝言、届けてくれて」
「いえ、その……役に立てたのなら何よりです。で、結局、伝言ってなんだったのですか?」
……って、聞いてもよかったんだろうか? もう質問しちゃったけども。
「うん? あ~……そう、だな……? あ、ごめん、ちょっと待ってて」
ウィルさんは私から目線を逸らし、別のことに意識を集中した。そして、何かに対して頷くと、再び私の方へと向き直る。
「話が少し逸れるんだけど、ラルちゃん。ふーちゃんの正体に気付いちゃってる?」
え、なんだ。いきなり。けど、ここで誤魔化す理由はない……素直に言うか。
「そりゃ、ウィルさんの人間……? まあ、その辺りの関係とかフウガ君に対する態度とか見ていれば、なんとなく予想はできますよ。それに雷姫もフウガ君に対して反応を示したので」
「えぇ、ばーちゃん、反応したら駄目でしょぉ? まあ、それなら仕方ない。……さっきの質問なんだけど、あれね、俺以外にも宛ててるんだよ」
「と、いうと……ミルティアに関係する神がウィルさんのお知り合いにいるってこと?」
「ご名答。それが俺の上司にあたる人だ。……ね、ルフさん?」
ルフさん? それがウィルさんの上司さんの名前?
ウィルさんがちらりと見た茂みの中からひょっこりと現れたのは見知らぬ神様……ではなく、型抜きに夢中になっているはずのフウガ君だった。
誰かがここへ近づく足音や木々の揺れる音……気配すらも感じなかった。
「あはは♪ そうみたいだね」
それが当然のように、フウガ君はウィルさんの隣に立つと、無垢な少年の笑みを浮かべた。
「ラルお姉ちゃんがビックリしてるみたいだから、あらためて、『じこしょうかい』するね?」
そう告げると、パチンと指を鳴らした。その瞬間、フウガ君は風に包まれ、姿が見えなくなってしまった。
風が消え、そこにいたのは、今度こそ、見知らぬ人物。
ツバサちゃんやツルギ君くらいの見た目の少年。白髪で綺麗な赤い目をこちらに向け、こてんっと小首を傾げた。
「この姿では初めまして。僕はアルフ。『転生の神』と呼ばれ、そこにいるウィルくんの上司みたいなものだよ。……いつも、ウィルくんがお世話になっているね」
……私が何気なく予測し、推察した仮説が立証されてしまった瞬間だった。
「ルフさん、ラルちゃんにバラしちゃってよかったの?」
突然の登場になんの言葉も出てこない私に構わず、ウィルさんはアルフさんの方を見て、困ったように問いかけた。
ウィルさんの問い掛けにアルフさんはニコッと笑いながら頷いた。
「バレたとしても上の奴らに負けるような僕じゃないからね♪ 伊達に何千年と嫌われ者やってないよ?」
「さっきも聞いたし、それ、誇るようなことじゃないから。……本当に色々と大丈夫?」
「大丈夫♪ それに、今代の雷姫の所有者相手じゃあ、遅かれ早かれバレてたと思うし」
雷姫の名前を出し、さも当然のように、私の腰に装備された刀に向かって話しかけてきた。
「ってことで、雷姫、久し振り! 話にはなんとなーく聞いてたけど……見ない間に随分と丸くなってるじゃない? 今の主さんの影響?」
『……ふん。それはこちらの台詞。転生の。貴様もかなり角が取れたように思うが? それに、昔はそのような珍妙な姿なぞしとらんかったろう』
無視するわけにはいかなかったのか、渋々といった様子で返答する雷姫。が、そんな雷姫の様子は気にならないのか、楽しげに話を続ける。
「んふふ♪ そりゃ、僕にも色々ありましたから♪ この姿は今の地上の流行りを取り入れた結果だよ! ほら、男の娘ってやつ、流行ってるんでしょ~?」
『知らん。ウィルの小僧にでも聞け』
「ちょ、ばーちゃん! 巻き込み事故しないで!」
え、流行ってるっけ……? いや、今はそんなことどうでもよくてだな。
雷姫とアルフさんが面識あるのも驚きポイントではあるが、それよりも、私にバレても問題ないとはどういうことなのか。そもそも、そこを気にするということは、普通はバレるとまずいってことになる。それがなぜ、問題ないとなるのだろう。
「──うん、そうだよね。色々と気になるよね?」
雷姫と穏やかに─楽しそうにしていたのはアルフさんだけだったが─談笑していたアルフさんが突然、こちらへと話題を振ってきた。
神様とだけあって、独特の雰囲気のある人だ。どことなくウィルさんに似た、掴み所がない、やりにくい相手。いや、ウィルさん以上かもしれない。
無意識に雷姫へと手を伸ばす。そして、私の心情を察した雷姫もアルフさんに対し、少しだけ、語気を強める。
『それで、転生の。わざわざ正体を明かしてまで、我がマスターに何用だ。万が一、何かするつもりなら、我が許さんが』
「あっはは! 君が神である僕に何ができるって言うのさ? けど、本当に主思いの神器になったんだね。大丈夫だよ。君の主さんを取って食おうとしてるわけじゃない。むしろ、雷姫の言う『何か』から守るために僕は現れたんだ。警戒じゃなく、感謝してほしいかな?」
『む……』
会話に入り込めない私も私だが、私抜きで話が進んでいく。つまり、アルフさんは私を守るために正体を明かしたのか? 何かって何。私、何をされるんだ。
「ねえ、ウィルくん」
「なんですかぁ?」
「僕と彼女、二人きりで話がしたいんだ。実は僕、黙って抜けてきちゃったんだよね」
「……ルフさん!?」
黙って抜けてきた……まあ、そうか。あのティールがフウガ君を一人にするわけがない。何かを仕掛けて、ティールとしーくんにバレないようここにやって来たのだろう。
「全く。どうせ、ティール君達に幻覚系の魔法使ったんだな?」
「えへ♪ だって、あのティールって子に『ラルお姉ちゃんのところにいってくる』なんて素直に話しても、通じなさそうだったから」
「うぐ……まあ、そうだけど。それはティール君の真面目な性格であってだな~……はぁ、分かったよ。俺が上手いこと説明してきますー! ルフさん、時間かけるつもりはないんだよね?」
「もちろん。そこは信じてよ♪」
少しだけじーっと疑うような目を向けるものの、ウィルさんは諦めたように「りょーかい」と一言告げ、くるっと踵を返す。しかし、何か思い出したのか、ちらりと私の方を振り向いた。
「ラルちゃん。ルフさんになんかされそーだったら、俺を呼んでいいからね~♪」
「は、はい……信じてますよ、ウィルさん」
「うんうん♪ じゃ、また後で」
今度こそ、ウィルさんは公園の出口へと向かって行く。
……そして、私とアルフさんの二人きりになってしまった。



~あとがき~
フウガ君改め、アルフさんです。

次回、ラルとアルフ。
お楽しみに!

はい。毎年の番外編で楽しそうにしている神様組の一人、アルフさんです。まさかこうして本編に出てくるなんてなぁ……
そして、そんな神様がラルと対話するとは思ってませんでした。言ったらあれですが、一生交わらない相手かなと思ってた。

ではでは。