satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第441話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、アラシ&レオンVSフォースの一部をちらっとしました。
フォースのバトル描写は剣技大会以来ですかね? 言っても、あれとはまた毛色の違う戦法を使用しているんですけども。
さてさて。今回は地下に降り立ったツバサ&雫の様子からです。


《T side》
フォースさんの相手をアラシとレオンに任せ、私達は地下へと降り立った。
上は─どういう仕組みなのか分からないけど、─明るくなってたのに、ここは真っ暗。私の魔法で照らしてみるものの、どこか心許ない。
校長先生の合図で明るくなったし、ここも何かスイッチみたいなのがあるのかな。それとも、管理してる部屋みたいのがある……とか?
「しーくん……明かりのスイッチとか、その辺にありそう?」
「ん~……」
空中に浮かぶスクリーンをじっと見つめていたしーくんは、しょんぼりした様子でゆっくりと首を振る。
「このちかくにはない……ありそうなとこ、あるけど……べつのかいそう……」
ま、まだ地下があるんだ……もしかして、ラルさんはもっと下……?
「ううん。ラルはボクたちとおなじとこ、いる。……! ティールもいっしょだ。こっち」
しーくんが指差した先は長い通路が続いていた。この先に二人が……でも、敵もいるかもしれないんだよね。
「ん~ん……? ここにはほかのひと、いないみたい。……でも、きをつけておくね」
「ありがとう、しーくん♪ 行ってみようか」
「うん」
しーくんに周囲の警戒をしてもらいつつ、私は辺りを照らしながら先に進んでいく。しばらくは何もない通路が続くだけだったけど、とある角を曲がったところで、頑丈そうな檻に囲まれた牢屋が並ぶところへ出てきた。
「ほわ……もしかして、ここにラルさん達が……?」
「うん……たぶん。……ラルー! ティールー!! どこー!!」
周囲に誰もいないことを確認済みのしーくんは思い切り叫んだ。けれど、しーくんの声が空しく響くばかりで、返事は返ってこない……と思っていたら。
「! こっち!!」
「ふぇ!? ま、待って! しーくん!」
私には何も聞こえなかったけれど、しーくんは何かを聞いた……ううん。これは感じ取ったって言った方が正しいのかも。
前を走るしーくんに着いていけば、一つの牢屋の中に私達の捜し人はいた。
ラルさんはびっくりした様子で私達のことを見上げていた。
「しーくん……? それに、なんでツバサちゃんまで……?」
「ラル!」
「ラルさん!!」
「ラル! けが、してない!? こわいこと、されてない!?」
「してないし、されてないよ」
ラルさんの言う通り、見えるところに怪我はなさそう。ボロボロになってる……なんてこともなさそうだし、酷いこともされてない……のかな。
「よかった……本当によかったです……!」
「……ツバサちゃん?」
ラルさんの無事な姿を見たせいか、ずっと張っていた糸がぷっつりと切れてしまった。
だんだん視界がぼやけてきて、それはついに目から溢れ落ちてしまう。一つ、また一つと止まらなくなってしまって。
「え、ちょ……ツバサちゃん!? だ、大丈夫? どこか怪我でもした?」
「いえっ……ちが、くて……なんか、ホッとしちゃって……うぅ……よかったですうぅぅぅっ!!」
「うんっ……! よかったぁぁっ!!」
「しーくんまで!?」
……ありゃ、しーくんも私と同じみたい。
安心感から、わんわん泣き続ける私達をラルさんは戸惑いながらも檻の隙間から手を伸ばして、頭を撫でてくれる。
「なんか……ごめんね? 心配、かけちゃったみたい……? 二人とも、そんなに泣かないで。私は大丈夫だから」
優しくて暖かいラルさんの手。安心させるような声……うん、いつものラルさんだ。
ラルさんは私達が泣き止むまで、ずっと頭を撫でてくれていた。ようやく、私達が話せるまでに落ち着くと、伸ばしていた手を引っ込め、困ったようにはにかんだ。
「それで……これは、どういうこと?」
「ラルさんが拐われたって聞いて! 私、いてもたってもいられなくって!」
「はぁ……なる、ほど? それで、二人は」
「たすけにきたの。ほんとは、アラシお兄ちゃんとレオンお兄ちゃん……ティールときたの。……でも、ティール、わな、ひっかかっちゃって」
「……あぁ。ティールなら、そこにいる」
と、ラルさんは自分の背後を指差した。指した方向を魔法で照らしてみれば、確かにいる……いる、けど。
ティールさんは私達があれ程、騒いだにも関わらず、ぴくりとも動いていなかった。
ティール! ラル、ティールはだいじょぶなの!?」
「大丈夫だよ。寝てるだけだから」
ね、寝て……!? あ、よく見れば、微かに体が上下してる……かも?
「呼吸や脈は正常だから、多分、重度の眠り状態。あれこれ試してみたけど、全然、起きなくてね。……だから、高度な回復魔法かポーションでもないと起こせないと思うよ」
「それなら、私が回復魔法を試してみます! けど、そのためにはここの檻をどうにかしないと……ですね」
私達とラルさんの間にあるのは頑丈な檻。無理だと思いつつも、檻を揺らしてみるものの、びくともしない。人の力でどうにかなる物じゃなさそう。
「うむむぅ……ラル、らいひめは?」
「この檻、ご丁寧に全属性耐性が付与されてるみたいで、大抵の攻撃は無力化されちゃうたい。とはいえ、雷姫なら壊せるとは思うけどねぇ……周囲の人を感電死するレベルの力を出す必要があるかな」
「うみゅ……そっか……」
ラルさんだけなら、どうにかできるけど、今は私達もいるし、ティールさんもいる。どうにかするのは難しいのかな……
逆に言えば、このバフを消せればいいんだろうけど……うーん?
「結構、複雑な術式で付与されてますね……流石、全属性耐性……」
牢屋だし、それくらいはしても、何にもおかしくはないんだけどね。だって、捕まった人が簡単に逃げられたら意味ないもん。
でも、今はその頑丈さが恨めしいよ~……!
「らいひめ、ダメなら……ラルがぴ……ぴ、ぴん……?」
「ん~と、ピッキングかな? ごめんね、ピッキングツールを持って来てないんだ」
うん……元々はお祭りの警備とか、お手伝いのために来てたはずだもん。そんなお仕事の時に使わないよね、そういうツール。
破壊もダメ。
バフ消しもできない。
鍵の解錠もできない。
……と、なると。
「転移魔法……じゃなくて、ラルさん、移動系の技は?」
「使えない。それに牢屋だし、何かしらの対策はされてると思うよ?」
う……! た、確かに……!
つまり、八方塞がり……!?
「せっかく、ラル、みつけたのに……たすけられないの……? はやくしないと、アラシお兄ちゃんとレオンお兄ちゃん、フォースお兄ちゃんにやられちゃうのに……!」
せっかく泣き止んだのに、しーくんの目にはまた、うるうると涙が溜まっていく。
「しーくん! お、落ち着いて!? 落ち着いて考えれば、何か方法があるはず……!」
例えば、どこかに鍵ある、とか! 鍵のありそうな部屋を捜す……とか……でも、ここはまだまだ広そうだし、肝心の鍵をフォースさん達の誰かが持っていたとしたら。……そうなったら、今度こそ、フォースさんをどうにかして止める方法を考えるしかなくなる。その方法が思い付いてたら、私としーくんはここにいないんだけど……!
「……フォース君? フォース君がいるの?」
「ん。あのね、おやかたさまたち、ボクのじゃま、するの。みんな、ボクのこと、いじめて、たのしんでるの!」
「……上にいるのは、アラシ君とレオン君で間違いない? 他にしーくん達の味方は来てないの?」
「ゆ? うん……そだよ?」
「……」
ラルさんは数秒、何かを考えるような素振りを見せていたけど、すぐに大きなため息をついた。
「思っていた以上に状況はまずそうね。……となると、早急にここから出たいけど……檻がな……あぁ、もう。ティールが起きていれば、しーくんと合わせ技で無理矢理、破壊できたかもしれないのに」
恨めしそうにティールさんの方を睨むラルさん。けれど、ティールさんが反応を見せるなんてことはない。
一番、現実的なのは、この檻を開けることなんだろうけど……その道具がないんじゃ、それすらもできないもんね。
「ラルさんの言う、ぴっきんぐ……の代わりになるような道具があれば、いいんですよね?」
「……! ツバサお姉ちゃんのアクセサリー、つかえないかな! あれ、ほそいもん!」
うん……? あ、しーくんが選んでくれたアクセサリーのことかな。
髪に留めるために細い金具はついているけど……これで開けられるものなのかな?
「ラルさん、これ、使えますか……?」
私は肩掛け鞄から、ムーンさんのご厚意でいただいた、星の髪飾りを取り出した。それを見たラルさんは何度か瞬きをして、突然、勢いよく立ち上がった。
「それだあぁぁぁっ!!」
「ほえ……? これで開けられそうですか……?」
「ううん。開ける必要はない。というか、それ、売り物にするつもりなかったのに、なんでツバサちゃんが持ってるんだろ……まあ、今はそれをツバサちゃんが持っている幸運に感謝すべきかな」
えーと、つまり、どういうことでしょう……?
私だけじゃなくて、しーくんも現状を理解していないみたいで、不思議そうにラルさんを見上げている。もちろん、私も同じように見上げているんだけど。
ただ、ラルさんだけは自信満々に微笑んでいた。
「ツバサちゃん、その髪飾りに祈ってみて? 私と……あと、ティールが君の隣に立つイメージをしながらね。それをしてくくれば、私達はここから出られるから」
「? え、えと、どういう……?」
「説明は後! 今は早く上の惨状をどうにかするのが先だから。……どう? できそう?」
ラルさんに向かって差し出していた髪飾りを自分の元に戻し、ぎゅっと握る。
なんだかよく分からないけど、ラルさんがそう言うんなら、きっと、大丈夫。
私は一回、大きく深呼吸をして、深く頷いてみせた。
「……私、やってみます」
「ありがとう、頼んだよ。……さあて、ここからは、悪ふざけがすぎた野郎共を説教する時間だ」
……あれ。もしかしなくても、ラルさん、怒って……る?



~あとがき~
ラルのいる安心感よ。

次回、悪の大魔王戦も終盤!

ラルがどうやって檻から出るのか、どうやって事態の収拾を図るのか等々は次回以降で明らかになります。
お楽しみに~

ではでは。